仙人

道教 |
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宗派 |
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聖地 |
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仙人(せんにん)また神仙(しんせん)、真人(しんじん)[2] 、仙女(せんにょ)は、中国本来の神々(仏教を除く)や修行後、神に近い存在になった者たちの総称。神仙は神人と仙人とを結合した語とされる。仙人は仙境にて暮らし、仙術をあやつり、不老不死を得たもの。本来、仙は僊と書き、『史記』封禅書では僊人、『漢書』芸文志では神僊と記される。もともと神である神仙たちは、仙境ではなく、天界や天宮等の神話的な場所に住み暮らし、地上の山川草木・人間福禍を支配して管理す。仙人や神仙はいずれも自分の体内の陰と陽を完全調和して、道教の不滅の真理を悟った。彼等は道教の道(タオ)を身に着けて、その神髄を完全再現することができる。基本的に仙人という言葉は男性に指すが、女性の仙人もかなりいる。
目次
概要[編集]
仙人[編集]
仙人は基本的に道教において仙道を体得し不老不死となる。仙人には大きく分けて三種類の仙人がいる。天仙、地仙、尸解仙である。以下は各仙人についての説明である。
天仙→天上に昇って仙人になること。その中でも真昼に衆人が見ている中で天上に昇って仙人になることを白日昇天という。白日昇天はこの天仙についていわれることである。白日昇天は道教の究極的な到達点であるとされ、『魏書』釈老志では「その教え(道教)は、みな邪累を除き去り、心神をあらいきよめ修行を積み功を立て、徳を重ね善を増してゆけば、やがて白日に昇天したり世上に長生することができる」と書かれている。 白日昇天を得る方法としては、『抱朴子』金丹篇では、金丹の一種である太清丹を服用するのが最もよく、太清丹の中でも特に9回焼き煉った第九転の丹は、これを一さじ服用すれば直ちに白日昇天できるという。
地仙→仙道を得てはいるがまだ昇天せず地上の世間に留まって長生すること。
尸解仙→体道者が肉体の死を迎えた時、あたかも蝉や蛇の脱皮のように、魂魄が死骸から脱け出て、後日その魂魄が肉体を取り戻すため、棺など死骸が置かれた場所から死骸そのものも消失するとされる。その際、死骸の消失にあたり、あとに衣冠・仙経・刀剣・竹杖を残すとされている。尸解にあたって死骸の消失の後に留め置くとされる品物のうち、刀剣・竹杖は、後世になると単なる遺留品のしての意義に留まらず、神仙の神通力の依拠としての意義が付与されて重視された。護身・邪気払い・飛空・変身などの道具とされ、さらに特殊な製法が論じられた。天仙、地仙などがあるが位は尸解仙が一番下である[3]。西遊記において孫悟空は「妖仙」などと蔑称されている。神仙、真人もほぼ同義だが、用いられ方にニュアンスの違いがある。
仙人になるために修行をする者は「道士」(羽士)「方士」と呼ばれる。後世専ら、道士は道教修行者一般をさした。方士である徐福は秦の始皇帝の命を受けて東海の仙島に仙薬を求めて出航した。徐福は日本に逢着したともいわれ、日本各地に徐福伝説が残る。中国の軍師として知られる呂尚や諸葛亮なども仙術を修得していたと付会された。
なお、一般に仙人といえば白髯を生やした老人というイメージがあるが、韓湘子など若々しい容貌で語られる者や、西王母、麻姑仙人(仙女)などの女性の仙人の存在も多く伝えられている。
また、仙人は禁欲に徹する必要があるとする伝説もあり、たとえば久米仙人や一角仙人は色欲により神通力を失っている。 老子とは別に道教の源流の一つとなった神仙とは、東の海の遠くにある蓬莱山や西の果てにある崑崙山に棲み、飛翔や不老不死などの能力を持つ人にあらざる僊人(仙人)や羽人を指す伝説である。やがて方術や医学が発展すると、人でもある方法を積めば仙人になれるという考えが興った[4]。
仙人は、死の過程を経ていないので神ではないが、神通力的な力を持っているため、以下のような方術を使うことができる。
⑴身が軽くなって天を飛ぶ
⑵水上を歩いたり、水中に潜ったりする
⑶座ったままで千里の向こうまで見通せる
⑷火中に飛び込んでも焼けない
⑸姿を隠したり、一身を数十人分に分身したりして自由自在に変身する忍術を使う
⑹暗夜においても光を得て物体を察知する
⑺猛獣や毒蛇などを平伏させる
仙人の伝記が書いてある書物→劉向『列仙伝』、王世貞『列仙全伝』、葛洪『神仙伝』、沈汾『続仙伝』など
神仙[編集]
元々法力と神通力を持っている神たち。神仙はすべて人間の形を本体にしているが、化身としては山や川などの自然や自然現象、神話に残る祖霊、重大な歴史的事件や小説の登場人物はなどの形たちにしてる。中国人はそれらを敬い、また彼らの神通力や天に住むことを求めて、自然と神仙とは一体的なものに認識され、人間自身も神仙になることができる。[5]。
代表的な神仙たちは三清 · 玉皇大帝 · 黄帝 · 西王母 · 七仙女 · 八仙 · 関羽 · 嫦娥 · 媽祖 · 鍾馗 · 雷公 · 電母 · 無極五母 · 北斗星君 · 九天応元雷声普化天尊 · 南斗星君 · 北極紫微大帝 · 太上道君 · 素娥 · 南極老人 · 五毒将軍 · 劉猛将軍 · 赤精子 · 五瘟使者 · 二十四諸天 · 二十八天 · 寿老人 · 太上老君 · 嫦娥 · 九天玄女などである。
真人[編集]
仙人の別称、または上級の仙人の呼称。元来『荘子』では道の体得者の謂であったが、神仙思想を媒介にして道教に取り込まれ、「仙人」よりランクの高い神仙といて天界の官僚組織の中に位置づけられた。それとは別に、前漢の末頃から、天命を受けた「真人」が世直しのために現れるという思想が広まった。たとえば、後漢を興した劉秀(光武帝)は「白水真人」と呼ばれ、魏の曹操もしばしば「真人」と称された。[6]
歴史[編集]

『漢書』芸文志・方技略・「神僊」には10冊の書名が書かれているが、いずれも現代には伝わっていない。しかしそこに使われた単語から内容を類推できる。「歩引」は馬王堆から発見された図「導引」と等しく呼吸法などを含めた体の屈伸運動で、長生きの法の一つである。「按摩」は現代と同じ意味、「芝菌」は神仙が食べたというキノコ、「黄治」は錬丹術を指す。これらは黄帝や伏羲など神話的人物の技とみなされていた[4]。また『漢書』方技略には他に「医経」(医学の基礎理論であった経絡や陰陽、また針灸などの技法)、「経方」(本草すなわち薬学)、「房中」(性交の技)があり、健康や長寿を目的としたこれらの技法も道教と密接な関係を持った[4]。
『漢書』以外にも様々な法技が行われていた。呼吸法のひとつ「吐故納新」、五臓を意識して行う瞑想の「化色五倉の術」、禹の歩みを真似て様々な効用を求めた「禹歩」などが伝わる[7]。
仙境[編集]
仙人は主に高い山の上や仙島、天上などの仙境(神仙郷、仙郷、仙界[8])に住む。仙境とは俗界を離れた静かで清浄な所、神仙が住むような理想的な地を指す[9]。(中国の)東海に蓬莱、方丈、瀛洲の三つの仙人の島(三島)があるともいう。仙人がいる、あるいはそこにいけば仙人同様になれる聖地を故事になぞらえ桃源郷と呼ぶこともある(桃花源記)。
成立[編集]
仙人の伝記集として前漢末には劉向[10]の『列仙伝』、東晋には葛洪の『神仙伝』が記され、『封神演義』『八仙東遊記』など古典小説や戯曲にもよく登場する。ヨーロッパの隠者に類似する。また、仙人になるための修行である仙道=不老不死を追求する技術ということから、シルクロードを通じ、ヨーロッパの錬金術と相互に影響しあった部分もある。
修行法[編集]

修行方法には呼吸法や歩行法、食事の選び方、住居の定め方、房中術までさまざまな方法がある。いずれにせよ心身の清浄を保ち気としての「精」を漏らすことは禁物であり、「精」を練り気、神に変え仙人となるための仙丹にまで練らなければならない。また派によっては呪符や呪文を用いることもあった。内丹術を中心とした仙人になるための修行法は「仙道」と呼ばれることが多い。
- 煉丹術(錬丹術 外丹術)
- 不老不死などの霊効をもつ霊薬「仙丹(金丹)」をねる煉丹術(中国での錬金術)がある。これは錬金術そのもので水銀(丹)を原料とする。このため、仙道の求道者、乃至不老不死の探求者、唐の皇帝などが仙薬を服用して水銀中毒になる、などの事例も多かった。
- 内丹術
- 鉱物を原料に金丹を練って服用する外丹に対し、自己の体内に存する精・気・神を薬物として自己の身中に丹を生成する煉丹術を内丹という。道教研究者によれば、内丹説は隋代の蘇元朗に始まるという。外丹術が盛行した唐代には内丹術と外丹術は並存しており、当時の書物である『上洞心経丹訣』などは内丹と外丹を双修すべきことを説いているが、外丹術は宋代には下火になっていった。一方、内丹術は唐末五代に隆盛し、五代の成立と言われる『鍾呂伝道集』や『霊宝畢法』の出現をもってひとつの完成形が示され、北宋に著された『悟真篇』によって大成して、南宋以降にさらに発展していった。北宋の張伯端のように、出家を否定し道教教団とは関わりのないところで修行し弟子に伝える修煉の士もいたが、出家主義をとる全真教に取り入れられた内丹術は道観のなかで「口伝」によって受け継がれてきた。現在では種々の修法があり、およそ700の流派があるともいわれる。北京・白雲観を大本山とする全真教の龍門派からは明末に伍冲虚、清代には伍冲虚の教えを受けた柳華陽を輩出し、この両者は、本来は「口訣」を旨とした「修法」の概要を書物に著した。その丹法は伍柳派と称され、多くの一般賛同者を外部に得て、政治家や軍人、文人などの在家修行者を増やした。現代に伝わる内丹術のひとつの形式は、武息・文息という吐納(呼吸法)により体内の丹田に気を練ることを基本とする。
- 房中術
- 男女で気を巡らす術。体を接触させることは絶対条件というわけではない。
- 陰道・補導の術ともいう。長沙馬王堆から出土した秦末漢初の竹簡『養生方』にすでに記述がみえ、『漢書』芸文志方技略には、房中家として八種の書が挙げられている。『漢書』芸文志の解説に〈楽しみて節あれば、即ち和平にして寿考なり〉というように、もともと性的快楽を調節して健康と長寿を保つ養生法であったが、のちに神仙説や道教にとり入れられ、その重要な修行法の一つとなった。[11]
- 導引術
- 現代では気功法という。各種体操とそれにともなう吐納(呼吸法)により体内の気を巡らせる。
- 導引とも書き、〈吹呴呼吸し、故きを吐き新しきを納る〉(『荘子』刻意篇)とあるように、正気を導いて体内に入れ、これによって心身を調整する道家の養生法の一つ。[11]
- 調息
- 長く大きく呼吸をし息を長くとめる。
- 道教の呼吸法で、息の整え方。道教では、長生不死の為に気の呼吸法をさかんに研究していたが、その時に、息を調えることも大切で『雲笈七籤』巻34に〈調息に正当な方があれば、延年できる〉というように、これもかなり研究の対象となった。[11]
胎息
また自らの先天の気がまわりだすと胎息(胎児の呼吸)という無呼吸にも似た状態の呼吸となるよう修行した。 胎児のような呼吸法。鼻や口を使って外気を呼吸するのではなく、赤子が母親の胎内にいる時のようなかすかな気の摂取を行い、呼気は多く吸気は少なくして、元気を体内に蓄積していくとされる。[11]
- 辟穀(へきこく)
- 五穀(米、麦、粟、黍、稗)を断つ「辟穀」(へきこく)を行なった。必然的に松の実など植物性の食物が主体となった。
- その他
- 霊地、霊木などの気を体内にとり入れる修行もあり、これを俗に「霞を食っている」などという。誤解されがちではあるがこの場合の霞とは朝日と夕日のことを指しており、逆に霧や本当の霞などは食べてはいけないものとされている。
著名な仙人[編集]
日本の仙人[編集]
道教教団[編集]
関連文献[編集]
- 列仙伝
- 神仙伝
- 杜子春伝[12][13][14][15]:芥川龍之介の「杜子春」の典拠作品である中国の神怪小説。
- 三国志演義、水滸伝、笑府
- 大形徹『不老不死 仙人の誕生と神仙術』講談社〈講談社現代新書 1108〉、1992年。ISBN 4-06-149108-3。
関連項目[編集]
- 仙洞御所
- シッダ - インドの宗教・文化に見られる修行によって不老不死などの神通力を得た存在の総称
- リシ - インドにおける神話・伝説上の聖者あるいは賢者達。漢訳仏典などでは「仙人」と訳される。
- 神智学:アセンデッドマスター、古代の智慧のマスター、超越
注[編集]
- ^ Werner, E. T. C. (1922). Myths & Legends of China. New York: George G. Harrap & Co. Ltd. 2007年3月14日閲覧。. (Project Gutenberg eText 15250)
- ^ コトバンク「真人」の項目参照[1]。なお、臨済宗では、この単語を「しんにん」と読むが、これは「まことの人」の意味で、仙人をさす言葉ではない。[2]
- ^ ただし、天仙、地仙というのは葛洪が創造した概念で、尸解仙が仙人の原型である。(『不老不死 仙人の誕生と神仙術』より)
- ^ a b c 横手(2008)、p.016-019、①道家と神僊、方技と神僊
- ^ 岡田荘司 2010年 p.22-23
- ^ 中国文化史大事典. 大修館書店. (2013年5月10日 2013).
- ^ 横手(2008)、p.020-022、①道家と神僊、さまざまなか神仙術
- ^ 伊藤直哉『桃源郷とユートピア-陶淵明の文学』春風社、2010年。ISBN 9784861102189。
- ^ デジタル大辞泉「せん‐きょう〔‐キヤウ〕【仙境/仙郷】」「しんせん‐きょう〔‐キヤウ〕【神仙境】」
- ^ 劉向が作ったというのは仮託であり、実際には後漢以降に成立したものと見られている。
- ^ a b c d 道教事典. 平河出版社. (1994年3月15日 1994).
- ^ 杜子春傳
- ^ 唐代伝奇「杜子春伝」に関する一考察
- ^ 三代伝奇﹁杜子春伝﹂に関する一考察 2
- ^ 三代伝奇﹁杜子春伝﹂に関する一考察 3
外部リンク[編集]
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