海外三十六国

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海外三十六国(かいがいさんじゅうろっこく、かいがいさんじゅうろくこく)とは、古代中国の書『淮南子』墬形訓に記されている36の異国の総称[1]である。

36か国には伝説上の存在とされる異国人物が多く含まれており、それらの国々は『山海経』や『三才図会』などの書籍でも記録や絵を見ることが出来る。

海外三十六国における異国の名称[編集]

西北至西南方[編集]

  • 修股(しゅうこ) 長股人のこと。とても足が長い。
  • 天民(てんみん) 天民人。4つの鳥を使役する。
  • 粛慎(しゅくしん) 粛慎人。雄常という木が生えている。
  • 白民(はくみん) 白民人。とても白い。この国には乗黄(じょうこう)という乗ると寿命がのびる霊獣が棲む。
  • 沃民(ようみん、よくみん) 沃民人。鳳凰(ほうおう)のを日頃から食べている。
  • 女子(にょし) 女子人。おんなの国。女人島。
  • 丈夫(じょうふ) 丈夫人。おとこの国。
  • 奇股(きこ) 奇肱人のこと。腕がひとつで目が3つ。
  • 一臂(いっぴ) 一臂人。体が半分しかない。
  • 三身(さんしん) 三身人。ひとつの頭に体が3つ。

西南至東南方[編集]

  • 結胸(けっきょう) 結匈人。がとても突き出ている。
  • 羽民(うみん) 羽民人。羽根が生えている。
  • 讙頭(かんとう) 讙頭人。羽根が生えておりを捕ることに長けている。帝(ぎょう)に対して反乱を起こした四罪の一つの末裔。
  • 裸民(らみん) 裸民人。衣服を身につけない。『呂氏春秋』にも登場する[2]
  • 三苗(さんびょう) 三苗人。たがいにいっしょに動く。帝堯に対して反乱を起こした四罪の一つの末裔。
  • 交股(こうこ) 交脛人のこと。足が交叉している。
  • 不死(ふし) 不死人。とても長命で死ぬことがない。
  • 穿胸(せんきょう) 貫匈人。胸部にまるい穴があいている。
  • 反舌(はんぜつ) 岐舌人。舌がふたつに分かれている。
  • 豕喙(しかい) 豕喙人。『淮南子』高誘の注に「喙如豕」とあり、豕(ぶた)のような口先をしている[3]
  • 鑿歯(さくし) 鑿歯人。がとても長い。
  • 三頭(さんとう) 三首人のこと。3つ首がある。
  • 修臂(しゅうひ) 長臂人のこと。とても手が長い。

東南至東北方[編集]

  • 大人(たいじん) 長人とも。とても大きい。
  • 君子(くんし) 君子人。2匹のを使う。争わない。
  • 黒歯(こくし) 黒歯人。歯が黒い。
  • 玄股(げんこ) 玄股人。2羽のを使う。
  • 毛民(もうみん) 毛民人。長いにおおわれている。
  • 労民(ろうみん) 労民人。手足などが黒い。

東北至西北方[編集]

  • 跂踵(きしょう) 跂踵人。とても足が大きい。
  • 句嬰(こうえい) 拘纓人。をもつ。
  • 深目(しんもく) 深目人。がひとつだけ。あるいは目のまわりが深くくぼんでいる。
  • 無腸(むちょう) 無腸人。内臓がない。
  • 柔利(じゅうり) 柔利人。がない。
  • 一目(いちもく) 一目人。がひとつだけ。
  • 無継(むけい) 無継人。ふくらはぎがない。

脚注[編集]

  1. ^ 『宋史』芸文志には達奚洪による『海外三十六国記』という本の題名が記されている。
  2. ^ 袁珂 著、鈴木博 訳『中国の神話伝説』上、青土社、1993年 351頁
  3. ^ 袁珂 著、鈴木博 訳『中国の神話伝説』上、青土社、1993年 372頁

参考文献[編集]

関連項目[編集]