福岡市交通局

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福岡市交通局
Fukuoka City Transportation Bureau
福岡市中央区役所と福岡市交通局の合同庁舎
種類 地方公営企業
本社所在地 日本の旗 日本
810-0041
福岡市中央区大名2丁目5番31号
事業内容 第一種鉄道事業
代表者 福岡市交通事業管理者 坂田憲治 
外部リンク http://subway.city.fukuoka.lg.jp/
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福岡市交通局(ふくおかしこうつうきょく 英称Fukuoka City Transportation Bureau)は福岡市内で公営交通事業を行う福岡市の地方公営企業の一つである。地下鉄事業のみを行い、3線区29.8kmの鉄道路線を営業している。

概要

福岡市の地下鉄事業は正式には福岡市高速鉄道という。旅客案内上は福岡市営地下鉄ではなく福岡市地下鉄の呼称が使用される。JRの座席予約システム「マルス」では福岡市交通局は福岡市高速鉄道で登録されている。

福岡市では、市内中心部のバス事業や路面電車は市営ではなく、民間会社である西日本鉄道(西鉄)による運営であった。そのため、交通局は地下鉄建設に伴い初めて発足した組織である。開業当初は路面電車(西鉄福岡市内線)の廃止で余剰になった西鉄の従業員を交通局が採用していたが、その全員が定年退職を迎え、現在の正規職員は一部の技術系職員を除けばほぼ全員が福岡市直接採用職員である。

地下鉄開業後、西鉄バスは地下鉄が所要時間で圧倒的優位を持つ福岡市中心部と福岡空港を結ぶ空港連絡バス路線を廃止したのをはじめ、並行路線の整理・廃止・減便などを行う一方、地下鉄沿線の郊外部と市中心部を福岡都市高速を経由して結び所要時間で地下鉄に真正面から対抗するバス路線も新設しており、互いに激しい競争を繰り広げている。

福岡市には市営の交通事業として福岡市営渡船も存在するが、こちらは港湾局(港湾振興部客船事務所)の管轄であり、交通局と直接の関係はない。

経営状況

福岡市の地下鉄は1年間で合計1億2386.5万人(平成21年度)が利用している[1]

平成16年度(2004年度)は約14億9600万円の黒字を確保した。黒字を確保したのは平成15年度から2期連続のことであるが、七隈線が開通した平成17年度以降再び赤字[2]となっている。なお、直近の平成20年度の決算においては約5億200万円の赤字であり、平成21年度は約12億300万円の赤字決算の見込みである[3]。このため、21年度の運営費補助金として約50.4億円を福岡市から受けている[4]

なお、日本全国の地下鉄の経営状況は「日本の地下鉄」の項目を参照のこと。

歴史

路線

記号[5] 路線番号 路線名 区間〔( )内は駅番号〕[6] キロ程
  K 1号線 空港線 姪浜駅(K01) - 中洲川端駅(K09) - 福岡空港駅(K13) 13.1km
  H 2号線 箱崎線 中洲川端駅(H01) - 貝塚駅(H07) 4.7km
  N 3号線 七隈線 橋本駅(N01) - 天神南駅(N16) 12.0km
路線図
1000系電車(空港線・箱崎線)
2000系電車(空港線・箱崎線)
3000系電車(七隈線)

以上の3路線で構成されている。空港線と箱崎線は狭軌、七隈線は標準軌鉄輪式リニアである。電化方式は全路線で直流1500Vとなっている。なお、福岡市南区には路線が通っていない。

相互直通運転区間

空港線では、地下鉄車両はJR九州筑肥線筑前深江駅まで乗り入れる。JRの車両は西唐津駅から福岡空港駅まで直通運転している。地下鉄車両およびJR九州303系車両は地下鉄線内はすべてATOによるワンマン運転を行い、JRとの境界駅となる姪浜駅からJR線に入る列車は地下鉄・JRの車両すべてJRの車掌が乗務しJR線内はツーマン運転を行う。ただし、例外としてJR九州103系1500番台車両で運行をするときは、地下鉄線内であっても福岡市交通局の乗務員が姪浜駅でJRの車掌と交代して車掌業務を行い、ATCによるツーマン運転を行う。

箱崎線では、日中(10時台から15時台まで)は空港線の西新駅まで、それ以外の時間帯は姪浜駅まで直通運転している。アイランドシティへの鉄道路線整備構想があり、西鉄貝塚線との相互直通運転が検討されているが、未だ計画決定には至っていない。

延伸計画

七隈線では、全体計画として天神南駅から中洲川端駅を経て築港方面を結ぶ計画と、渡辺通1丁目付近(薬院駅東方)で分岐して住吉通り経由で博多駅に乗り入れる計画がある[7]。また、天神南駅からキャナルシティ博多付近を経由して博多駅に乗り入れる計画[8]も検討されている。2009年9月19日西日本新聞記事によると、福岡市の試算だと薬院駅から博多駅に向かうルートや中洲川端駅経由でベイサイドプレイス博多埠頭方面(築港方面)に向かうルートと比較して、キャナルシティ博多経由は開業6年で黒字化できるとされている。

また空港線でも、福岡空港駅から東平尾公園方面への延伸構想がある[9]

シンボルマーク

福岡市営地下鉄各線では、各駅の駅名や駅周辺の観光地、名物、自然にちなんだシンボルマークが制定されている。例えば天神駅のシンボルマークは、地名の由来となった「天神様」にちなみ、菅原道真が愛したの花をモチーフにし、天神南駅では通りゃんせをする子供を描いている。これらは福岡市出身のグラフィックデザイナー西島伊三雄がデザインしたものである[10]七隈線各駅のシンボルマークについては伊三雄が2001年に死去したため、それ以前に描かれていた原案を元に、息子で同じくグラフィックデザイナーの西島雅幸が完成させた[11]

駅ナンバリング

2011年3月までに駅ナンバリングの導入が完了し、従来のシンボルマークと併用されている[5][6]。これは、ナンバリングをしている国が多く、外国人にはナンバリングがないと分かり辛いという面があり、福岡市営地下鉄は当初シンボルマークがあるため、ナンバリングは不要としていたが、国際化により外国人にも分かり易くという流れによりナンバリングを使用するようになった。

安全対策

乗客がプラットホームから線路へ転落する、あるいは飛び降りるのを防ぐため、ホームドア(防護柵)を地下鉄全駅に設置している(三菱電機[12]。空港線は2004年、箱崎線は2005年末に全駅設置完了、七隈線は2005年の開業時から全駅設置)。地下鉄車両が駅に来ると、車両扉とホームドアが開閉し、乗客は乗降ができる。ホームドアは、ATOを搭載している福岡市交通局の車両とJR九州の303系は車両扉と連動して開閉するが、JR九州103系1500番台は車掌のボタン操作により開閉する(ボタンは防護柵線路側の乗務員室付近に設置されている)。

車両

空港線・箱崎線用の車両はJR筑肥線直通にも用いられる。

運賃

大人普通旅客運賃(小児および割引対象者[13]は半額・10円未満切り上げ)。1997年6月1日改定[14]

区数 運賃(円)
1区 (1 - 3km) 200
2区 (4 - 7km) 250
3区 (8 - 11km) 290
4区 (12 - 14km) 320
5区 (15 - 18km) 340
6区 (19 - 20km) 360
  • 天神駅天神南駅で空港線・箱崎線と七隈線を乗り継ぐ場合の運賃は、一方の駅の改札を出て、120分以内に他方の駅の改札を通る場合、乗車距離を通算して算出できる。
  • 空港線とJR筑肥線、箱崎線と西鉄貝塚線との間には乗継割引が設定されている。詳細は「空港線」、「箱崎線」の乗継運賃の節、または各社局の公式ホームページ等を参照。
  • 天神南駅で空港線・箱崎線の乗車券、または天神駅で七隈線の乗車券は購入できない。また、天神南駅の券売機付近ではこの内容を伝える放送が流れている。
  • JR九州・福岡市地下鉄共通プリペイドカード「ワイワイカード」利用時は、地下鉄線内の運賃が20円引きされる。

企画乗車券

  • 2006年2月6日からは乗車する駅からその隣の駅までの1駅間の運賃を100円にしている。「おとなりきっぷ」の名称で隣の駅まで専用の乗車券を発売しているほか、えふカード・よかネットカード・はやかけん(相互利用可能な他社のICカード含む)を利用した場合でも運賃100円となる。ワイワイカード利用の場合は一律正規運賃より20円引きのため、運賃80円となる。ただし、定期券や他社線との連絡乗車券の場合は地下鉄線内の乗車区間が1駅間であっても割引対象外。この「おとなりきっぷ」を使うと、2駅間を通しで乗るよりも安く乗れる区間がある。なお、乗り越し精算では適用されない。
    • 例:博多 - 東比恵 - 福岡空港(通して乗ると250円、分けて買うと100円+100円で200円、さらにワイワイカード利用の場合は80円+80円で160円となる)
  • 一日乗車券(600円)を発行している。この乗車券を提示することで市内の施設の一部が割引になるサービスも行っている。学校の長期休暇期間には小児専用の「ちかまるきっぷ」(100円)が発売されている。この切符にはマクドナルドのオレンジジュース無料引換券が付いている。
    • また、一日乗車券には、これとは別に土日祝限定の「エコちかきっぷ」というものもある。また、博多どんたくなどのお祭りや特定イベント、特定日(正月など)の時に限定で発売されるものもある。これらの一日乗車券は通常の一日乗車券より100円安い500円。発売予定に関しては、福岡市交通局の公式ホームページで確認できる。
      • 2012年3月25日までは、金曜日のみ利用可能な「ノーマイカーデー1日乗車券」も発売していたが、同年4月から福岡市が「ノーマイカーウィークデー」を実施するのに伴い、発売を終了した[15]
      • かつてはノーマイカーデー1日乗車券は金曜日の5日前から、エコちかきっぷは第2土日のみの発売だった。エコちかきっぷは2009年3月14日から、ノーマイカーデー1日乗車券は3月20日から自動券売機での販売のみとなり、販売枚数制限が撤廃された[16]
  • ちかパス」という地下鉄全線(空港線・箱崎線・七隈線)乗り放題の定期券(定期券ではあるが運賃制度上は企画乗車券)もある。1か月券で12,000円。3か月券(34,200円)、6か月券(64,800円)もある。通常の定期運賃が3区(1か月11,310円)の場合は他のエリアに行く頻度によって、4区以上(1か月12,480円。例:七隈線天神南 - 橋本)の場合はこちらにした方が安上がりとなる。
  • 定期券は、福岡市営駐輪場定期をセットにした「乗っチャリパス」にすることが可能。通常の駐輪場定期料金よりも最大5,400円安くなる。地下鉄沿線のみならず、JR九州および西鉄沿線の定期券連絡運輸区間の福岡市営駐輪場の利用もできる。
  • 福岡市がJリーグアビスパ福岡の主要株主ということもあり「アビスパ応援きっぷ」を地下鉄各駅で販売している。レベルファイブスタジアムで行なわれるアビスパ福岡のホームゲームのいずれかで利用できるフリースタイルチケット(各座席エリアの前売り券の価格)と地下鉄の一日乗車券がついている。

ICカード

2009年3月7日よりICカード乗車券はやかけん」を導入している。

九州旅客鉄道(JR九州)のICカード「SUGOCA」のほか、西日本鉄道のICカード「nimoca」および、東日本旅客鉄道(JR東日本)のICカード「Suica」とも互換性を持たせる方向で、2008年2月「九州IC乗車券・電子マネー相互利用に関する協議会」を発足させ、2010年3月13日に相互利用を開始した[17][18]。他には全日空 (ANA) と提携し、2009年12月16日より「ANAはやかけん」を発行している[19]

みまもりタッチ

みまもりタッチは、福岡市交通局が2010年7月27日より提供中の、ICカード乗車券「はやかけん」を利用して、通学児童の所在確認を提供するサービス。

事前に登録が必要。各駅のICカード対応改札機および公共施設77ヶ所(2010年10月現在)に設置された読み取り機に、児童がICカード乗車券をかざすと、親権者にメールで連絡が行く。当面は無料で利用できる。[20][21]

参考文献・脚注

  1. ^ 福岡市高速鉄道事業概要” (pdf). 福岡市交通局. pp. 21ページ (平成22年). 2010年11月20日閲覧。
  2. ^ 福岡市営地下鉄七隈線 赤字解消、2069年に先送り」朝日新聞 2009年3月13日
  3. ^ 福岡市高速鉄道事業概要” (pdf). 福岡市交通局. pp. 12ページ (平成22年). 2010年11月20日閲覧。
  4. ^ 平成21年度 交通局所管決算の概要 (PDF) - 福岡市交通局
  5. ^ a b 駅ナンバリングの導入について
  6. ^ a b 各駅番号一覧表 (PDF)
  7. ^ 地下鉄七隈線の概要 (PDF) 」 福岡市交通局 p2,p8
  8. ^ 地下鉄七隈線 延伸新ルート キャナル経由最有力 福岡市、議会報告へ[リンク切れ]」西日本新聞 2009年1月16日
  9. ^ 鉄軌道系交通施策 (PDF) 」 福岡市
  10. ^ 福岡市 西島 伊三雄 氏(平成16年12月17日選定)」福岡市
  11. ^ FUKUOKA NOW 故・西島伊三雄さんの思いを入れて 福岡市営地下鉄3号線の駅マーク、まもなくお披露目 (PDF)福岡市文化芸術振興財団機関誌「wa」17号 2003年7月発行
  12. ^ http://www.mitsubishielectric.co.jp/area/installations/kyusyu/kyusyu03.html
  13. ^ 障害者手帳および福祉乗車証所持者
  14. ^ 福岡市高速鉄道事業概要” (pdf). 福岡市交通局. pp. 15ページ (平成22年). 2010年11月20日閲覧。
  15. ^ 福岡市「ノーマイカーデー1日乗車券」の発売終了について
  16. ^ エコちかきっぷ 3月14日から全ての土・日・祝日に発売拡大」福岡市交通局 2009年02月10日
  17. ^ 九州IC乗車券・電子マネー相互利用に関する協議会を発足しました 」福岡市交通局 2008年2月07日
  18. ^ 福岡のICカード乗車券3種出そろう、相互利用は1年先」読売新聞 2009年3月7日
  19. ^ ANAと福岡市交通局の業務提携について」全日本空輸・福岡市交通局 2009年6月10日
  20. ^ http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/187026
  21. ^ http://subway.city.fukuoka.lg.jp/cgi-bin/topics/tpd.cgi?gid=10386

関連項目

外部リンク