怪獣大戦争

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怪獣大戦争
Invasion of Astro-Monster
監督 本多猪四郎 (本編)
円谷英二 (特撮)
脚本 関沢新一
製作 田中友幸
出演者 宝田明
ニック・アダムス
久保明
水野久美
沢井桂子
土屋嘉男
田崎潤
音楽 伊福部昭
撮影 小泉一 (本編)
有川貞昌 (特撮)
富岡素敬 (特撮)
編集 藤井良平 (本編)
石井清子 (特撮)
配給 東宝
公開 日本の旗 1965年12月19日
上映時間 94分
製作国 日本の旗 日本
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 日本語
前作 三大怪獣 地球最大の決戦
次作 ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘
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怪獣大戦争』(かいじゅうだいせんそう)は、1965年(昭和40年)12月19日公開に公開された日本アメリカの合作映画で、ゴジラシリーズの第6作。製作は東宝ベネディクト・プロ。配給は東宝。カラー、シネマスコープ。上映時間は94分。初回興行時の観客動員数は378万人[1]。登場する怪獣はゴジララドンキングギドラ

解説

東宝の二大特撮看板である「怪獣映画」と、『地球防衛軍』に始まる「空想科学映画」を融合させた作品[2]

ストーリー面では怪獣同士の対決よりも、地球人とX星人の織りなすドラマに重点が置かれている。昭和シリーズでのゴジラが地球外へ飛び出して活躍するのは、本作が最初で最後であった。

オープニングに使われた曲は伊福部昭が戦前に帝国海軍からの委託で作曲した「古典風軍樂 吉志舞」以来、『ゴジラ』のBGM「フリゲートマーチ」などに用いられてきた旋律であり、ゴジラファンの格闘家佐竹雅昭の入場曲[注 1]であるほか、現在は自衛隊のイメージミュージックとして定着している。

フランケンシュタイン対地底怪獣』に続く来日出演となるニック・アダムスは、日本のスタッフや俳優たちと積極的に交わり、明るい性格で非常に親しまれた。共演した水野久美によれば、「アメリカにいるワイフとは離婚するから結婚しよう」と、劇中さながらにしつこく口説かれたという。

ラドンの暴れる特撮シーンの一部は『空の大怪獣ラドン』や『地球防衛軍』『モスラ』等の作品のライブフィルムを使用している。その一方、かなり大規模な都市破壊用ミニチュアも新規に組まれている。

劇場公開当時に流行していた、赤塚不二夫の漫画作品『おそ松くん』中のギャグ「シェー」をゴジラが行う場面があるが、これについてゴジラを演じた中島春雄は、「『シェー!』を撮ろうと言い出したのはオヤジさん(円谷英二)なんだ」とコメントしている[3]

劇場公開当時のフィルムには「明神湖」「鷲ヶ沢」のテロップが焼き込まれていたが、のちに失われ、2013年現在の映像ソフトでは見ることができなかった。しかし、2014年に日本映画専門チャンネルの「総力特集ゴジラ」[4]では、「明神湖」「鷲ヶ沢」のテロップを現存プリントから復元したものが放送された。

ストーリー

196X年[注 2]木星13番目の新衛星Xの調査に向かった地球連合宇宙局の富士とグレンは、高度な文明を有しながらキングギドラのために地下生活を強いられているX星人と出会う。X星人はの特効薬と引き換えに、地球怪獣のゴジラとラドンを借りたいと申し出た。怪獣がどこにいるのかなど分からないという富士たちだが、統制官によると日本国内にいるという。富士たちはX星人の依頼を地球に持ち帰ったが、彼らを見送る統制官は笑みを浮かべながら何かを呟くのであった。

富士たちはX星人の要請を発表したことで地球は歓迎ムード一色となる。さらに、自衛隊の調査でX星人の指摘どおりゴジラが日本の明神湖にいることが判明。数日後、円盤で地球を訪れた統制官たちとの交渉が成立するが、富士とグレンはどこかうさん臭さを感じていた。かくしてX星に運ばれた二大怪獣はギドラを撃退する。一方、富士の妹であるハルノの恋人である町のしがない発明屋・鳥井哲男は、珍しく自分の発明を買ってくれた波川という美女によって「世界教育社」に招かれるが、いつまで経っても交渉が進まない。哲男は何度も世界教育社を訪れるうちに、波川がグレンの恋人であることを知る。不審に思った哲男は世界教育社が所有する目倉島の別荘に潜入するが、そこで捕らえられてしまう。

これらは全てX星人の罠であり、世界教育社はX星人の地球侵略の前線基地の隠れ蓑だった。X星人は癌特効薬データを装ったテープで地球の植民地化を宣言すると共に、電磁波で操られ、秘密裏に地球に再配置された三大怪獣の攻撃が始まり、地球は最大の危機にみまわれる。しかし、目倉島に囚われたグレンと哲男は、グレンとの愛のために命を落とした波川が最後に託した手紙と哲男の発明したレディガードがたまたまX星人の弱点である不協和音だったことを知ると脱走に成功する。

登場メカニック

P-1号
地球連合宇宙局の新鋭木星探検ロケット。2人乗りで富士・グレンによるX星調査に用いられた。昇降用リフト・NBCセンサーを装備している。
最初の調査の際にX星人に詳しく分析されており、後にガンの特効薬のデータを取りに来た富士・グレン・桜井博士を地球に帰還させるために3人乗りのP-1コピー機がX星人により用意されたが、X星人の地球攻撃の際に円盤の攻撃で破壊される。
1サイズのミニチュアが作られ、X星着陸場面のため、実物大の下端部分も作られている。『ウルトラマン』第16話「科特隊宇宙へ」で岩本博士の火星ロケット研究室にP-1号の大型ミニチュアが飾られている[5]。『クレージーの大爆発』(1969年)では、ポスターなどの宣伝素材にP-1号のミニチュアが使われている他、グレンたちの宇宙服も同じ意匠のものが劇中で使用されている。さらに、ヘルメット部分が『ウルトラマン』第25話「怪彗星ツイフォン」に登場する子供の宇宙服に流用され、現存する。
Aサイクル光線車
X星人が怪獣たちを操る電磁波を遮断するための「Aサイクル光線」を放射する、地球連合宇宙局の切り札。地球連合宇宙局の桜井博士が開発。自走することはできず、牽引車を必要とする。
車体には防犯ブザーレディガードの出す音波を元にした、X星人が苦手とする音波を出すためのスピーカーを装備している。
模型製作は「アカツキ工芸」に外注され、大型サイズのミニチュア2台と小型サイズのミニチュア5台が作られた。自走は出来ず、大型サイズは牽引車ともどもピアノ線で引っ張って動かし、小型サイズは下から棒をつけて動かしていた。小型サイズのものは撮影で一台爆破されている(編集で劇中では2台爆発したように見せている)[6]。『ウルトラマン』の第3話・第11話で熱戦砲車として流用(牽引車なし)された後、『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』で「メーサー殺獣光線車」に改造された。『ウルトラマン』第11話ではメーサー殺獣光線車と熱線砲車が一緒に写るカットがある。
X星円盤
X星人の宇宙船。光速の10分の1で飛行することが可能で(田中友幸『決定版 ゴジラ入門』によると最高速度は光速の3分の1)、大気圏脱出時の衝撃もP-1号よりはるかに小さい。機体下部から電磁波を発射することで物体を輸送することができるほか、イミテーションのP-1号やパラボラアンテナを破壊したレーザー砲を装備する。
P-1号、Aサイクル光線車と併せ、メカデザインはすべて渡辺明井上泰幸による。FRP製で、内部に電飾を仕込み、操演用のピアノ線からの送電で発光する[7]。レーザー光線砲を備え、電磁波でゴジラやラドンを捕えたままX星と地球を数時間で往復することができる。司令円盤と併せ、1尺サイズのミニチュアが3機ほど作られた。アップ用のものは3尺ほどあった。
飛来した円盤が空中でピタリと静止する映像は、フィルムの逆回転で表現している。円盤が湖上に浮かび上がるシーンでは、ドライアイスを使って糸を引くような渦を表現している。地球人との初会談のシーンの屋外ロケでは、画面に映る下半分だけの実物大の円盤が作られた[7]

スタッフ

特記の無いものは東宝公式サイトの「MOVIE DATABASE」による[8]

本編

特殊技術

特殊視覚効果

キャスト

※映画クレジット順。特記の無いものは東宝公式サイトのMOVIE DATABASEによる[8]

※以下クレジットなし

同時上映

1965年版
1971年版

海外版

北米へは『Invasion of Astro Monster』(宇宙怪獣の侵略)の題で輸出された後、1970年に『Monster Zero』に改題して『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(The War of the Gargantuas)の再編集版との2本立てで公開された。タイトルクレジット曲が、X星人の円盤が明神湖と鷲ヶ沢からゴジラとラドンを電磁波で運び出すシーンに流れる曲に差し替えられている点以外、シーンの差し替えやBGMの追加は行なわれていない。これは当時、現地でのゴジラシリーズの興業が低迷しており、そういった改変を行なっても興行成績に影響しないためである。本作以降の昭和ゴジラシリーズ作品についても、台詞の吹き替え以外の変更点は見られない[12]

映画監督のティム・バートンはゴジラファンとして知られ、1996年アメリカ映画マーズ・アタック!』は本作で出てくる弱点やクライマックスシーンなどをヒントにしているとされる。

アメリカでは、前述の「ゴジラのシェー」は「ダンシング・ゴジラ」として知られている。

短縮版

1971年、『怪獣大戦争 キングギドラ対ゴジラ』と改題され、春の東宝チャンピオンまつりでリバイバル上映された。

冒頭の「196X年……」というテロップの代わりに「197X年、……」で始まるナレーションが追加されており、ほかにも暴動シーンにも追加ナレーションが挿入されている。

一部のスピードポスターでは『ゴジラ・キングギドラ・ラドン 怪獣大戦争』と表記されている[13]

映像商品の特典について

国内盤DVDの特典には1972年頃に発売された、本作を編集した8mm+ソノシート「ゴジラ宇宙へ行く!」とセットの絵本「ゴジラ宇宙へ行く!」が収録。劇場用予告編はオリジナル原盤が所在不明のため、『怪獣大戦争 キングギドラ対ゴジラ』の予告編が収録されている。

映像ソフト化

  • 1980年代前半に、短縮版を収録したビデオソフトが発売[14]
  • DVDは2003年5月21日発売[15]
    • 2008年2月22日発売のトールケース版「ゴジラ DVDコレクションII」に収録されており、単品版も同時発売。
    • 2005年4月22日発売の「GODZILLA FINAL BOX」に収録されている。
    • 2014年5月14日には「ゴジラ60周年記念版」として期間限定の廉価版が発売。
  • Blu-rayディスクは2014年7月14日に発売。

漫画

関連項目

  • 空の大怪獣ラドン』 - 福岡襲撃シーンが本作に流用されている。
  • 世界大戦争』、『妖星ゴラス』 - 鳥井哲男の下宿の部屋にこの2作品のミサイルや、隼号のミニチュアが置いてある。
  • 地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』 - キングギドラの破壊シーンが本作から流用されているほか、宇宙局のミニチュアも再使用されている。
  • メカゴジラの逆襲』 - 映画ポスターに、劇中に登場しないX星人の円盤が描かれている。
  • ゴジラ FINAL WARS』 - 現代風にデザインがアレンジされたX星人が登場。作中にて「当初は地球人に対し友好的態度を装う」「怪獣を使役する科学技術を用い、地球侵略に悪用する」など、本作での設定を幾つか元にしている。
  • バトルフィールド1942』のModForgotten Hope』のminiModである「Forgotten Hope Defense Force」はこの作品の影響を受けて作られた[16]

脚注

注釈

  1. ^ のちに伊福部によってこの曲をベースとした新曲「闘志天翔〜覇王・佐竹雅昭のテーマ」(1994年)が作られている。
  2. ^ 東宝チャンピオンまつり版」では冒頭クレジットの「196X年」が「197X年」になっている。

出典

  1. ^ 『ゴジラ 東宝チャンピオンまつりパーフェクション』アスキー・メディアワークス〈DENGEKI HOBBY BOOKS〉、2014年、162頁。ISBN 9784048669993 
  2. ^ 野村宏平『ゴジラ大辞典』笠倉出版社、2004年、315頁。ISBN 4773002921 
  3. ^ 朝日新聞 土曜版 2014年1月11日 映画の旅人 ゴジラ - 朝日新聞社
  4. ^ 総力特集ゴジラ”. 日本映画専門チャンネル. 2015年9月13日閲覧。
  5. ^ ウルトラマン研究読本 2014, p. 156
  6. ^ ウルトラマン研究読本 2014, p. 93
  7. ^ a b 『東宝特撮映画大全集』ヴィレッジブックス、2012年、102 - 105頁。ISBN 9784864910132 
  8. ^ a b MOVIE DATABASE 怪獣大戦争”. 東宝. 2015年10月4日閲覧。
  9. ^ 川北紘一(監修)『東宝特撮メカニック大全 1954-2003』新紀元社、2003年、[要ページ番号]頁。ISBN 477530142X。"川北紘一インタビュー"。 
  10. ^ 野村宏平 2004, pp. 18–19.
  11. ^ a b c 「俳優名鑑」『東宝特撮映画DVDコレクション』第13号、デアゴスティーニ・ジャパン、2010年4月、9頁、雑誌コード:22762-4/13。 
  12. ^ デビット・キャリシャー「社会的に観たゴジラ映画 -日米を通して-(上)」 『福岡市総合図書館研究紀要』第5号 2004年 [要ページ番号]
  13. ^ LD-BOX「ゴジラ激闘外伝」付属の冊子より。
  14. ^ 宇宙船』第12号、朝日ソノラマ、1982年、80頁。 
  15. ^ 「DVD & VIDEO Selection」『宇宙船』Vol.106(2003年5月号)、朝日ソノラマ、2003年5月1日、89頁、雑誌コード:01843-05。 
  16. ^ 本多猪四郎「怪獣大戦争」” (2009年1月16日). 2014年12月30日閲覧。

参考文献

外部リンク

  • 怪獣大戦争 - 日本映画データベース
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