宇宙大怪獣ドゴラ

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宇宙大怪獣ドゴラ
監督 本多猪四郎
脚本 田実泰良
関沢新一
原作 丘美丈二郎
『スペース・モンス』
製作 田中友幸
音楽 伊福部昭
撮影 小泉一
編集 藤井良平
配給 東宝
公開 日本の旗 1964年8月11日
上映時間 81分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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宇宙大怪獣ドゴラ』(うちゅうだいかいじゅうドゴラ、英題:Dogora-the Space Monster)は東宝が製作し、1964年(昭和39年)8月11日に封切り公開された日本怪獣映画。81分、総天然色、東宝スコープ

または、本作品の劇中に登場する宇宙怪獣の名称。

ストーリー[編集]

公開前年に開通したばかりの若戸大橋がドゴラによって破壊される

日本上空を周回中のテレビ中継衛星に、原因不明の消失事件が起こった。時を同じくして世界各国の宝石店が襲われ、多量のダイアモンドが盗まれる事件が頻発する。警視庁はダイアモンド盗難事件を全世界に指名手配されている宝石強盗団一味の仕業として捜査を開始したが、一方の宝石強盗団も正体不明の別の強盗団に強盗を妨害されて苛立っていた。

警視庁の駒井刑事は、マークと名乗る謎の外国人を宝石強盗団の仲間と見て追跡中、マークが逃げ込んだと思われる、ダイアモンドの研究を行なっている宗方博士のもとを訪れマークを発見するも、もう一歩のところでマークに出し抜かれてダイアを強奪されてしまう。が、マークもまた別の強盗団の一味と疑われて強盗団に拉致されてダイアを強奪されてしまう。ところが、マークが強奪したダイアは宗方博士が開発・研究中の模造品「人造ダイヤ」であったことが判明し、マークもまた強盗団の隙を突いて逃亡する。強盗団は数日後に横浜から運ばれるダイアを強奪することを決意する。一方、宗方博士の助手をしている女性・昌代を護衛していた駒井と電波異常の調査をしていた桐野の目の前で、石炭集積場の石炭が空に吸い取られるという事件が起きる。

数日後、ダイアを輸送していたトラックを襲撃した強盗団であったが、強盗団を追っていたマークとの銃撃戦になる。その最中、突如トラックが浮遊してダイヤを輸送していたトラックに落下するという異常が起きる。辛くもダイアを強奪した強盗団であったが、今度の中身は氷砂糖であった。後日、宗方博士の元を訪れたマークと駒井刑事ら警視庁が合流、マークは自身がダイアGメンであることを明かし、駒井たちはマークと共に強盗団に立ち向かうことになる。

宗方博士、そして国連科学委員会の調査によって、両事件とも突然変異した宇宙細胞の仕業だと判明。炭素をエネルギー源としている宇宙細胞は、エネルギー補給のために炭素を大量に含んだダイアモンドや石炭などの炭素物質を必要としたのだった。そして、巨大化した宇宙細胞は「ドゴラ」と命名され、ドゴラは次々と世界各国を襲撃し始める。

解説[編集]

史上初の「宇宙大怪獣」[編集]

従来の怪獣映画とは異なる不定形の宇宙怪獣の表現に挑んだ意欲作。1962年に『スペース・モンス』の題で検討用台本が書かれたが、製作の決定は1964年に入ってからであった[1]。脚本では怪獣名は決まっておらず、『地球戒厳令』『宇宙大怪獣(スペースモンスター)』などの仮題が決定稿まで用いられていた[1]

物語面でも従来の人間対怪獣の構図に並行して宝石強盗団とそれを追うダイアGメンや刑事との攻防が描かれ娯楽性を高めている[2]。アクションシーン等、当時大流行していた『007』シリーズの影響が見られる。だがそのためか、史上初の「宇宙大怪獣」のドゴラがいささか物足りないと評価されることもある[要出典]

ドゴラ自身の造型はクラゲのようでいま一つはっきりしないが、当初の予定ではもっとハッキリと姿を現す予定であった。当時の宣伝用ポスターでは、建物やF-104を宙に巻き上げるドゴラの姿が描かれていたが、実際にはそのような場面はなかった。

大変な工夫と苦労を重ねて撮影に挑んだドゴラであるが、後述の理由により姿が不明瞭な怪獣とならざるを得ず、人間アクションに重点を置いている理由にはこのような面もあった[1]しかし、このドゴラが不定型であることによって、不気味さが際だっているという意見もある。[要出典]

「宇宙大怪獣ドゴラ」の舞台[編集]

本作は、五市合併と政令指定都市化間もない北九州市を舞台のひとつとしており、当時の北九州市のランドマークがいくつも映画に登場する。ドゴラに破壊される「東洋一の吊り橋」若戸大橋皿倉山頂の展望台などであるが、中でも物語に大きく関わる筑豊炭田石炭積出港としての若松港の情景は、その後急速にエネルギー転換が進み、過去のものとなっていく筑豊産炭地区[3]に関する貴重な記録のひとつとなっている。

関連文献には「博多に出現」という記述が見られるが、博多が存在するのは福岡市であり、劇中には福岡市が登場する描写は一切無いのでこの記述は誤りである。

空中に巻き上がる石炭の渦[編集]

本作の最も特徴的なシーンとして、ドゴラがエネルギーとして求めている炭素を大量に含んだ石炭が、空中に渦を巻いて巻き上がるシーンである。 この映像の石炭は、天井に吊るした一斗缶の中に入った、黒く着色した砂を回転させながら落下させて再現させている。しかし、当時のカメラでは高速度での逆回転撮影が不可能だった為、撮影に使用したカメラを逆さまにして正回転撮影で撮影している[1]

一方の石炭の渦に巻き込まれて一緒に空中に舞い上がっていく鉄塔や煙突は操演で行っており、本編終盤で舞い上がるトロッコは上述の砂と一緒に落下させて、それを逆再生させている。

宇宙大怪獣ドゴラ[編集]

放射能が蓄積し、一種の「吹き溜まり」状態になっている日本の上空で、この放射能の影響で宇宙細胞が突然変異した怪獣。炭素をエネルギーとしており、そのため世界各国の炭鉱地帯や貴金属店を襲撃した。単細胞状態では細胞全体から金庫の扉を溶かすほどの高熱を出すほか、人やトラックを浮遊させて排除することができる。その後、北九州上空で複数の細胞が結合してクラゲ状の生物となり、触手で若戸大橋を持ち上げて破壊した。対空砲による攻撃は全く効果がなかったが、対空ミサイルで粉々になったことで、単細胞状のドゴラが大量発生した。しかし、ジバチの毒で細胞が結晶化することが判明し、空中・地上からのジバチ毒の散布で次々と結晶化して全滅した。

ドゴラが出来るまで[編集]

「宇宙大怪獣ドゴラ」は本作の公開三年前に、「週刊少年サンデー」(小学館)での怪獣絵物語用に小松崎茂がデザインした怪物のイラストを立体化したものである[4]。デザインモデルには、原生生物が参考にされている。撮影用のミニチュアは、素材探しから始まって、撮影手法に到るまで、試行錯誤の繰り返される大変手間のかかったものとなった。

東宝特殊美術スタッフの村瀬継蔵は、デザインを見て、まだ開発段階であまり市場に出ていなかったソフトビニールの素材使用を思いつき、コニシの研究所に連日通い、練成実験をして強度に目処がつくと、今度は千葉にあったソフビの貯金箱の工場を訪ね、雌型の制作を依頼した。この雌型には当時で20万円かかる非常に高価なものだったが、村瀬が円谷監督に相談すると、「いいよ」と二つ返事で承諾してもらえたという[5]

つぎに、1尺ほどのドゴラの粘土原型が八木勘寿によって作られ、件の工場でソフビに焼かれ、ついにドゴラのミニチュアは完成した。しかし、通常の吊り操演では破れる危険性が生じたため、村瀬はこれを水槽に沈め、テグスで操る手法を思い付いた。円谷監督にこれを実演して見せたところ、監督は「とうとう成功したな!」と言って大喜びしたという。

こうして撮影が始められ、この軟らかい素材のミニチュアを水槽の中にテグスで吊り下げ、水槽下部にすえつけたバルブからの水流でフワフワとした宙を舞う不安定な「宇宙大怪獣」が表現されることとなった。しかし、この手法ではどうしても細かい泡が発生し、画面に映り込んでしまうのである。また中野照慶によると、水道局の毎週のカルキ投入日には水道水が白く濁ってしまって、水槽の水を透明に保つのに苦労し、あまり特撮カットが稼げなかったという。

単細胞状態のドゴラは、有機ガラスをガラスに挟んで表現され、実景と合成された[1]。結晶状態のドゴラは、塩化ビニールを熱加工して貼り合わせた15㎝ほどのミニチュアに電球を仕込み、ピアノ線から電流を送って発光させた。

その他[編集]

ドゴラの鳴き声は、アサリの呼吸音をピックアップマイクで拾って加工したもの[1]として、公開時に大いに喧伝された。この声は、『怪獣大戦争』(1965年、本多猪四郎監督)の劇中に登場する警報機「レディーガード」の効果音と混ぜ、円谷特技プロ制作のTV映画『ウルトラマン』(1966年、TBS)で「バルタン星人」の登場効果音に流用された。

落下して潰れる密輸団の自動車、ダイヤ輸送トラックのミニチュアは、「郡司模型製作所」に外注された、ブリキの叩き出しによる金属製のミニチュアが使われ、金属ミニチュアならではのリアルなクラッシュ表現に成功している。

他作品に登場したドゴラ[編集]

特撮テレビ番組『ゴジラアイランド』(テレビ東京)にも登場する。死霊界からやってきた人語を話す死神という設定で、ゴジラにスペースゴジラの霊を憑依させた。語尾に「~ですはい」と付ける。武器はエロエロアザラシの呪文、名刺手裏剣など。スペースゴジラが倒された後に天国から天使の輪が飛んできて昇天させられた。造形物はマーミットのソフビ人形。声は山口勝平

FC版ゴジラでは唯一背景として登場している怪獣である。

1966年に朝日ソノラマから発売されたソノシート『大怪獣戦 30怪獣大あばれ!!』収録の「宇宙怪獣対地球怪獣」に地球を襲う宇宙怪獣の一体として登場する[6]

1967年8月にノーベル書房から刊行された、金城哲夫著の『怪獣大全集3 怪獣絵物語ウルトラマン』では、宇宙人&宇宙怪獣によるウルトラマン攻略会議の場面の挿し絵(作画・南村喬之)で、バルタン星人やメフィラス星人にまじってドゴラらしき宇宙人が列席しているのが描かれている。

登場兵器[編集]

合成ジバチ毒
分裂したドゴラの細胞が筑豊地域の廃坑に生息するジバチの毒で結晶化することが判明したため、全世界の製薬会社に発注された。筑豊地域に出現したドゴラに対し、特殊噴霧器や落下傘、F-86戦闘機から散布され、全てのドゴラを結晶化させることに成功した。
尚、「ジバチ」とはクロスズメバチの地域名だが、劇中に登場するジバチがスズメバチのことかは不明。
特殊噴霧器
合成ジバチ毒をドゴラに噴霧するために使用された。四脚の先に61式戦車と同様のキャタピラが付いており、自走が可能。筑豊地域に出動し、石炭集積場を襲撃するドゴラに対して使用された。

キャスト[編集]

※映画クレジット順

スタッフ[編集]

特殊技術

同時上映[編集]

喜劇 駅前音頭

その他エピソード[編集]

  • 本作公開のおよそ1ヶ月前である、1964年7月11日に公開された『無責任遊侠伝』(主演:植木等、監督:杉江敏男)のオリジナル予告編の末尾20秒ほどの部分に、本作の特報が同時収録されている。本編の映像やスチール等は使用せず、動く文字、イメージ的な特撮カットなどで構成されている。この特報映像は『無責任遊侠伝』DVDの映像特典である、同作予告編の中で確認することができる。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f 『東宝特撮映画大全集』 ヴィレッジブックス2012年、82 - 85頁。ISBN 9784864910132 
  2. ^ 『日本特撮・幻想映画全集』 勁文社1997年、158頁。ISBN 4766927060 
  3. ^ 劇中の主人公の台詞でも「今では廃坑になっている区域が…」と言われるとおり、当時から少しずつ寂れ始めていた。
  4. ^ 雑誌「宇宙船」VOL74(朝日ソノラマ)「ウルトラゾーンの時代」
  5. ^ 『東宝特撮映画大全集』(ヴィレッジブックス)では通った企業は「小林商店」(現・株式会社コバヤシ)、金型の金額は35万円と記述している。
  6. ^ 『ゴジラ大辞典』 笠倉出版社2004年、284頁。ISBN 4773002921 

参考文献[編集]

  • 『大ゴジラ図鑑2』(ホビージャパン)
  • 『怪獣とヒーローを創った男たち」(辰巳出版)
  • 『宇宙大怪獣ドゴラDVD』(東宝ビデオ)

関連項目[編集]

  • 石田礼助 - 当時の国鉄総裁。劇中、宗方博士が自分のことを「ヤングソルジャー」と呼んでいるが、これは前年の石田の就任演説から採られている。
  • 『外道記』 - 菊地秀行の小説。作中に登場するキャラクターを若き日の円谷英二が偶然目撃し、それをもとにドゴラが構想されたという設定。

外部リンク[編集]