クーペ

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クーペ:coupé クペ、クッペ[注 1])とは、車体形状や使用形態により分類される自動車の形態のひとつで、1列もしくは、2列シートを有し、2枚ドアの箱型乗用車[1]のことである。

概要

1932年式フォード・クーペ
スポーツクーペの一例。アストンマーティン・DB9
セダンをベースにしたクーペの一例。ホンダ・アコードクーペ(2代目)

自動車ではドアが左右2枚のみのものを指す。またハッチバック車で3ドアと呼ばれるものやセダン車で5ドアファストバックと呼ばれるもの、または全高が1,400mm程度のCセグメント以上のクラスの4ドアセダン型乗用車やハードトップ構造を持った一部の4ドアセダン型乗用車のものでも、「クーペ」と名乗る場合がある。スポーツ性や動力性能の高さを特に優先したクーペは「スポーツクーペ」と呼び分けられる場合もある。ドアが左右2枚のみでも、一般にステーションワゴンスポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)等は含まれないが、旧来のクーペ以外での分類は曖昧で、シューティングブレークでクーペのようなスタイルを持つものや、5ドアではあるがクロスオーバーSUVでクーペを名乗るものがある。

ドアを2枚だけにすることでボディ剛性やスタイリングの向上が見込めるのがメリットで、実用性よりも趣味性を重視する消費者に好まれる。人の乗り降り、物の積み下ろし、狭い場所でのドアの開閉のしづらさなど、実用性では4ドア(5ドア)に劣るが、不便な車が買える余裕があるという意味でステータス性を却って向上させている面もある。

本来、クーペは「主座席は1列」とされ、後部座席は元から存在しないか、あってもエマージェンシー(補助用、緊急用)的なものとして設置されることが多かった[注 2]。現在では、クーペと呼ばれる車種の多くは後部座席を持ち、4人乗りまたは5人乗りとなる。しかしその座席空間は狭い場合が多い。スポーツクーペにおいてそれは顕著であり、後部座席は補助席程度の窮屈な空間、子供用、あるいは事実上の手荷物置き場としてしか活用できない場合すらある。このようなものは「2+2」(ツープラスツー)や「2/2」(ツーバイツー)と呼ばれることもあり、メーカー自身が車名に用いる場合もある。

セダン型乗用車をベースにしたクーペ型乗用車の場合、そこまで極端ではなく、一旦乗り込めば大人でも(ある程度は)快適な座席空間を実現した車種もある。大きなボディサイズを持つ高級クーペの場合は、セダン同様の快適さや豪華さを備えた車種もある。ただしいずれにしても、その後部座席に乗り降りする際は、前の座席をレバーやスイッチなどを使って前方向に倒し、できた空間とドア開口部の隙間とに体を滑り込ませるようにする。当然ながら倒す対象のシートに乗員がいる場合は一旦降りる必要がある。後部座席の乗り降り時に不便を伴い、一般的に居住性も劣るため、後部座席を日常的に使用する用途で自動車を選択する場合、クーペは根本的に不向きとされる。逆に、後席にドアが無いことから、子供を乗せる場合はむしろ安全であるという意見もある。

後部座席への乗り降り、またはデザイン上の理由から、クーペのドアは4ドア車に対し、前後に長いものが採用される。そのため駐車場車庫などの隙間といった狭い場所(空間)でドアを開ける場合は特に注意を要する。リンク機構を用いてドアヒンジの支点が外側に移動するようにし、ドア開口時の後端のせり出し量を固定支点の一般的なヒンジドアと同じとしながら、ヒンジ側の開き量を大きくしている車種もある(トヨタ・ソアラ(2代目)、ルノー・アヴァンタイムメルセデス・ベンツ・CLクラスSクラスクーペなど)。

クーペのスタイルには、リアウィンドウの下端とリアデッキとの間に「ノッチ」を持つものと、屋根から車体後端までなだらかな線(面)で繋いだものとに大別できる。前者を「ノッチバック」、後者を「ファストバック」[注 3]と呼ぶが、これは単に「バック」(背中)の形状を指す用語で、クーペのみに当てはまるものではなく、セダンやCUVにもファストバックは少なからず存在する。

以前はクーペと固定式ハードトップとは「Bピラー」の有無で区別されており、1950年代から1970年代のように両方が並び立つ時代もあった[注 4]ビッグスリートヨタのように多数の車種をラインナップするメーカーでは、ひとつの車種、または姉妹車にノッチバックとファストバックのクーペ、あるいはハードトップとクーペの両方を用意する例も見られた[注 5]。1970年代以降、Bピラーを持つ「ピラードハードトップ」の増加により、クーペとハードトップの定義は曖昧なものとなっていった。

自動車のクーペの種類

ノッチバッククーペ

ノッチバッククーペの一例。トヨタ・ソアラ(3代目)
ノッチバッククーペの一例。ポンティアック・GTO(5代目)

ボンネットキャビントランクルームの3つの箱からなるスリーボックススタイル。一般的なノッチバックセダンと同様に落ち着いた印象を与え、高級やフォーマルといったキャラクター付けのために用いられる[注 6]。実用面では、後席のヘッドクリアランスやトランクリッドの開口面積を確保しやすい。

ノッチバッククーペは、ほとんどの場合、独立したトランクリッド(トランクの蓋)を持つが、ファストバックの中にはトランクリッドではなく、さらに開口部の大きなバックドアを持つ「ハッチバック」スタイルとなったものも多い。車室とラゲッジスペースを繋げて利用できる「トランクスルー」構造は、どちらの形状にも見られる。

年代が新しくなるほどノッチバックとファストバックの境界線が曖昧になってきており、メーカーによっては2ボックス型のハッチバックや、サッシュレスドアを持つ4ドア車、さらにはクロスオーバーSUVでもクーペを名乗る車種が現れ、多様化が進んでいる。

ファストバッククーペ

ポルシェ911 2.4
ファストバッククーペの代表格とも見なされることがあり、30年以上に渡り同じフォルムを守り通した。

リアウィンドウが比較的寝かされ、リアデッキとの間に明確なノッチを持たないスタイル。独立したトランクリッドを持つものと、開口部の大きなバックドアをもつハッチバックとがある。ハッチの開き方には、跳ね上げ式と横開き式があり、日本車では跳ね上げ式が主流である。

セダンや2ボックス車にもファストバックモデルはあり、前者がサーブでは「コンビクーペ」(Combi coupé、この場合の「コンビ」とはステーションワゴンの意)、メルセデス・ベンツ・CLAクラスや同CLSクラスは「4ドアクーペ」という商標となっており、後者がマツダではMAZDA3の2ボックス車が「ファストバック」という商標となっている。

カムテール

コーダ・トロンカ(カムテール)の例。アルファロメオ・TZ2

ファストバックの類型で、屋根からのラインが下がりきる前にボディ後端をすっぱりと切り落とした形状のものを、特に「カムテール」(Kammtail 英語)、「カムバック」(Kammback 米語)、「コーダ・トロンカ」(Coda tronca 伊語)などと呼ぶ。

1930年代ドイツ人のヴニバルト・カム(Wunibald Kamm)博士[2]が提唱した「流体の中を進むもっとも効率の良い形とされる魚類のような流線型(涙滴/水滴型)の物体の場合、その後端を切り落としても抵抗はほとんど増加しない」という理論に基づくデザインである。「カム」は博士の名に由来し、「コーダ・トロンカ」は切断された(トロンカ)コーダ)を意味する[2]

全長の短縮による軽量化と運動性の向上が期待できることから、まずレーシングカーに採用され、1960年代以降はスポーティーなイメージや空力性能の良さを形でアピールする意味もあり、カムテールを取り入れる市販車が相次いで現れた。

その他の呼称

フィクストヘッドクーペ
ジャガー・Eタイプ Sr-1 FHC
フィクスト(フィックスド)ヘッドクーペ(FHC)
もともとオープンモデルとして開発された自動車に、固定式の屋根を設けたモデルをいう。これはイギリスが発祥の言葉である。なお、fixedの発音は[fíkst]であり、日本語表記はフィクストがより原音に忠実である。
ドロップヘッドクーペ
ジャガー・XK120 SE DHC
ドロップヘッドクーペ(DHC)
を持つオープンモデルではあるが、ドイツ車での「カブリオレ(カブリオ)」同様、幌の内側に完全な内張りを持っており、幌を閉じればほぼクーペと同等の居住空間を得ることができるモデルを指す。これもイギリスで生まれた言葉である。
ハッチバッククーペ
トヨタ・GRヤリス
ハッチバッククーペ
主に通常の3ドアハッチバックから派生したボディ形式。ドアの枚数はそのままに、後述する4ドアクーペ同様、車高を低めにし前ピラーを更に強く寝かせた車種。本来ならば「3ドアハッチバック」と呼ぶべきものだが、メーカーにより「ハッチバッククーペ」と呼称される場合もある。厳密な定義は無く、(キャビンを短くした2座席車を指す)本来の「クーペ」という言葉の用法からは外れるものの、2ボックス型3ドアハッチバックとクーペの折衷型として1970年代以降、主に欧州系を中心とした各自動車メーカーから登場している。同クラスの一般的な「3ドアハッチバック」と比べ、室内はとても狭く(特に後部座席周辺)、乗り降りもしづらい、実用性よりもスポーティーなキャラクターを優先したクーペ風の2ボックスハッチバック車である。しかし既存のバックドアを持った2ボックスセダン(=いわゆる実用型の3ドア、または5ドアハッチバック)同様、そのように認識する者は全くと言っていいほど皆無である。
4ドアクーペ
アウディ・A7
4ドアクーペ
通常の4ドアセダンから派生したボディ形式。ドアの枚数はそのままに、車高を低めにし前後ピラーも強く寝かせた車種。本来ならば「4ドアセダン」と呼ぶべきものだが、メーカーにより「4ドアクーペ」と呼称される。厳密な定義は無く、本来の「クーペ」という言葉の用法からは外れるものの、セダンとクーペの折衷型として2000年代以降、各自動車メーカーから登場している。同クラスの「4ドアセダン」と比べ、室内は狭く、乗り降りもしづらい、実用性よりもデザインを優先したクーペ風の4ドア車である。
1990年代の日本では、大衆車クラスにまで「4ドアハードトップ」が拡大設定されていた[注 7]が、全て一般的な4ドアセダンの延長線上のノッチバックスタイルであり、2000年代以降のドイツ車のようなファストバックスタイルではなかった。
「4ドアクーペ」には、後のブームの火付け役となったメルセデス・ベンツ・CLSクラスを代表例として、BMW・6シリーズ グランクーペBMW・2シリーズ グランクーペフォルクスワーゲン・CCフォルクスワーゲン・アルテオンなどがある。アウディ・A7は大型のリアゲートを持つ5ドア車だが、これも同様にメーカーは「4ドアクーペ」であると主張している。日本では2003年にマツダ・RX-8が登場している。
アストンマーティン・ラピードポルシェ・パナメーラも同様のスタイルを持つが、こちらは「4ドアクーペ」の呼称をメーカーは採用していない。

高級車におけるクーペの存在

メルセデス・ベンツ・CLクラス

後席用のドアを持たないクーペは実用性に欠けるため、ビジネス用途からは一般的に忌避される。しかし逆に、高級車の歴史においては、その実用性を廃した点が「特別感」「パーソナル感」を強調し、さらには「贅沢の象徴」とされ、一定の存在価値を持っている。 フェラーリランボルギーニといった、いわゆるスーパーカーだけではなく、快適な乗り心地と豪華な装備を持つ大型高級乗用車にもクーペは存在し、多くの高級車メーカー(ブランド)において、イメージリーダーとして重要な役割を担ってきた。 4ドアセダンはビジネスにもプライベートにも使えるが、2ドアクーペはプライベートにしか使えない。だから贅沢だという価値観である。

トヨタ・クラウン日産・セドリックホンダ・レジェンドといった日本メーカーの高級車には、4ドアセダン以外にもかつては2ドアのハードトップやクーペモデルが存在し、パーソナル感を重視するオーナードライバー達に選択されてきた。 トヨタは高性能と豪華装備を兼ね備えた2ドアクーペのスーパーカーであるレクサス・LFAを限定生産したほか、その後もLCをラインナップしている。 日産では同じくクーペボディを持つGT-Rが、ホンダではNSXをラインナップしており、共に両社のフラグシップを担っている。

メルセデス・ベンツBMWにおいては常にクーペモデルはセダンより一段上位のものと位置づけられているが、ロールス・ロイスにおいてはさらに顕著である。かつて販売された2ドアクーペのカマルグは、販売当時、ファントムVIを除くと同社ラインナップ内で最も高価格のトップモデルであり、なおかつデビュー当時は世界で最も高価な市販乗用車でもあった。 ファントムVIはあくまで特別生産車であり、カマルグは「ショールームで買うことのできる世界一高額な車」とされた。近年も、ファントムのクーペモデルおよびドロップヘッドクーペは、サルーン(セダン)より高価格であった。また、2009年からはファントムより一回り小さなセダンとしてゴーストがラインナップされているが、このクーペ版として2013年からレイスも登場しており、ベースとなったゴーストと比べ高価格である。

クーペ車種の動向

自動車が新しい物としてもてはやされた時代にはクーペはスポーツカーを中心に高い人気を誇った。しかし21世紀に入ると自動車がそれほど真新しくなくなり、人々に地球環境への意識が高まりを見せ始めると、徐々にコンパクトカーミニバンのような実用性に優れた自動車に圧倒されるようになった。特に排気量が概ね2,000cc以下の車種でクーペを導入する事例は非常に少なくなっている。

かつてクーペのみを作ることをアイデンティティとしていたスポーツカーメーカーも、ラインナップにクロスオーバーSUVなどを導入する例が増えており、例えば現在のポルシェのクーペの売上は2割に過ぎなくなった[3]。このようにクーペはブランドのスポーツイメージ向上や自動車文化の多少の振興にはなっても、収益のメインにはならなくなり、クーペの開発自体を諦めるメーカーも珍しくなくなった。

こうした現状を踏まえ、メーカー側もトヨタ・86/スバル・BRZBMW・Z4/トヨタ・スープラアウディ・R8/ランボルギーニ・ウラカンのように、共同開発やプラットフォームの共有によってコストを削減してクーペを存続する努力をしている。また、トヨタ・C-HRBMW・X6ルノー・アルカナ/ルノーサムスン・XM3メルセデス・ベンツ・GLCクーペポルシェ・カイエンクーペなどクロスオーバーSUVでありながらクーペのスタイリングを取り入れる例も増えてきており、形を変えて生き残りを探っている状態であるともいえる。

アメリカ合衆国

アメリカにおいては、1960 - 1970年代に現地メーカー各社からスポーツクーペが多数登場、一躍人気を博した。中でもシボレー・カマロフォード・マスタングは高い人気を得ている。また、同時期のアメリカで流行したマッスルカーは、大排気量・高出力のエンジンをハードトップやクーペタイプのボディに搭載することが基本である。2000年代以降は環境意識の高まりから大排気量車は敬遠されており、メーカー側でも縮小傾向があるものの、それでも上記2車種は今なお高い人気を得ている。現行のカマロやマスタングにはダウンサイジング・ターボ搭載車も登場し、高まる環境意識に対応している。

またアメリカでは女性の社会進出が早く、彼女らの通勤の足としてセクレタリーカーというジャンルが形成された。このアメリカ独自のジャンルでは小型クーペが人気を博し、特に日本車のトヨタ・カローラGTSホンダ・CR-X日産・シルビアなどが人気車種となった。またホンダ・アコードクーペシビッククーペトヨタ・セプターといったアメリカで開発された日本メーカーの車種も登場し、これらは日本にも輸出された。2000年代以降は車高の低い構造がセキュリティ上敬遠されるようになり、これらのジャンルはセダンと共に小型のクロスオーバーSUVに取って代わられるようになり、現在はシビッククーペが残るのみとなっている。

日本

日本車におけるクーペモデルは1937年に登場したダットサン16型が最初といわれる[4]。戦後はマツダで発売されたR360がクーペを名乗っていたが、これらは後年のようなスタイリングや性能に特徴を持たせたものではなかった。

日本車でスタイリングを重視した本格的なクーペが登場したのは1965年の日産・シルビアが最初で、その後いすゞ・117クーペマツダ・ルーチェロータリークーペといった高級モデルが続々と登場した。1970年に発売されたトヨタ・セリカ[注 8]は、その価格の安さと「フルチョイスシステム」によって好みの内装が選択できる先進性で大ヒットを記録し、他社からも同種のスペシャルティカーを発売させる大ブームへとつながった。

1980年代後半から1990年代初頭のバブル景気と相まって、若者たちのデートカーとしてクーペモデルが好まれるようになった。こうした中で、日産・シルビア、トヨタ・セリカ、ホンダ・プレリュードホンダ・インテグラなどの2ドアクーペがヒットを記録、折からのハイソカーブームもあり、各社から4ドアハードトップも多数ラインナップされた。

しかし、1991年に発生したバブル経済崩壊以降は、実用性を重視したステーションワゴンはともかく、ミニバントールワゴン、クロスカントリー系SUVなどのRV車がヒットし、セダンよりさらにスタイリング重視でなおかつ、セダンよりさらに実用性と居住性に乏しいクーペ系車種は既存の小型セダンやハッチバックをベースとした低価格帯の小型クーペを投入[5]するものの結局不発に終わっただけでなく、クーペ全体が急速に敬遠され、結果的にセダンより一足先に淘汰されるようになった。さらに2000年代以降には、原油価格の高騰を受けて経済的な軽自動車コンパクトカーの売上が高まっていった[6]

ごく一部では根強い人気を保つ車種もあるものの、全体としては軽自動車やCセグメントクラス以下の大衆車なども含めてクーペ系車種は順次廃止され、各メーカーの現行ラインナップでは1、2車種程度しかない状態が続いている。日本国外向けに用意されるクーペ(主に北米市場向け)も国内向けには導入されない場合が増えた。富士重工業(現・SUBARU)は、1996年アルシオーネSVX生産終了をもってクーペ専用車種を廃止し、その後2000年インプレッサのモデルチェンジをもってクーペ市場から撤退。三菱2000年GTOFTOミラージュアスティホンダ2006年インテグラトヨタは2010年のSCの販売終了をもって、それぞれクーペがラインナップから一旦姿を消した。

その後トヨタは、富士重工業との資本提携の一環としてクーペスタイルのスポーツモデルを共同開発することになり、2012年にトヨタ・86/スバル・BRZとして発売され、両ブランドでクーペが復活することとなった。さらにレクサスブランドでも2014年からRCLC、2019年にはGRブランドからBMWとの共同開発で(オーストリアからの海外生産車種となる)GRスープラを順次復活させ、更に2020年には既存の5ドアハッチバックであるヤリスを基に2ボックススタイルの3ドアハッチバッククーペに改め、低重心・ワイドボディ化したスポーツモデルのGRヤリス[7]を投入した。一方のホンダも2010年ハイブリッドカー専用車種のCR-Zで再参入し、その後NSX北米からの海外生産車種として復活させた。またマツダは2012年のRX-8の生産終了を最後に純粋なクーペ専用車種から撤退しているが、同社の主力車種であるロードスターには2シーターのクローズド・クーペモデルが用意され続けている。

日産自動車は他社がクーペを生産終了・販売終了させる中、一貫してクーペ車種をラインナップしており、現在もフェアレディZGT-Rを生産・販売している。

クーペ一覧

クーペのカテゴリを参照。

語源

carrosse coupé の一例

フランス語の「couper クペ」(切る)という動詞の過去分詞形である「coupé クペ」(切られた)[注 9]が語源である。1列の座席を備えた有蓋馬車(=屋根付き馬車 =箱型馬車)はドアが2枚ついているものであり、これが「向かい合った2列の座席(ボックスシート)がある普通の馬車を途中で切った形」と見なされ、それが「切られた馬車」を意味する「carrosse coupé」(カロッス・クペ)[注 10]と呼ばれる様になった。やがてその表現の形容詞(クペ)だけが馬車用語として独立し、形式自体を指すようになり、日本語では「クーペ」として定着した。

ギャラリー

ここでは、クーペのなかでも変わり種の車種を紹介する。

脚注

注釈

  1. ^ フランス語発音は[kupe]で、「クペ」または「クッペ」(アポロ仏和辞典・角川書店 ISBN 4-04-012700-5)となる。発音記号でもkupeで短母音である。カタカナで一般的に表記される「クーペ」という長母音の表記は、本来のフランス語発音からは間違ったものとなる。
  2. ^ 古くはトランク、つまりキャビンの外に収納式の補助席を持つものが一般的であった。
  3. ^ fast の発音が fˈæst または fάːst のため、日本語では「ファーストバック」と表記、発音する場合もある。「ファーストフード#Fast foodの日本語表記における混乱と問題点」も参照。
  4. ^ 当時のハードトップに4ドア車は少なく、主に2ドアか、バックドアを持つ3ドアであった。
  5. ^ フォード・マスタングやTE37カローラレビン/TE47スプリンター・トレノなど。
  6. ^ アメリカ・フォードは初代フォード・マスタングで、「マッハ1」や「コブラ」などのスポーツ系モデルをファストバック、「グランデ」を始めとするラグジュアリー系モデルをノッチバックとしており、マスタングをベースとした上級車種のマーキュリー・クーガーもノッチバックとするなどの使い分けを行なっていた。
  7. ^ 日産・プレセアトヨタ・カローラセレス/スプリンターマリノ
  8. ^ Bピラーが無いため、当時はハードトップに分類されていた。
  9. ^ コッペパンの「コッペ」も同じ由来。もともとフランス語起源の言葉なので、フランス語圏以外でも「coupé」と「e」の上にアクサンテギュを付けて綴られる例がしばしばある。なお、イギリス英語での発音は[kuːˈpei](クーペイ)とアクセントが後ろにあり、カナダ英語およびアメリカ英語発音は[ˈkuːp]クープ)とアクセントが前にある。
  10. ^ フランス語は、英語と異なり、基本的には形容詞は名詞の後ろに配置する基本からはずして形容詞を名詞の前に配置する場合は、特別なニュアンスを帯びたり、若干意味が異なることがある。

出典

  1. ^ 広辞苑第六版【クーペ】
  2. ^ a b 沼田亨「コーダ・トロンカ大集合」『カーグラフィック 2011年6月号』カーグラフィック、2012年、198頁
  3. ^ ポルシェの通期決算、営業利益は25%増…過去最高 2015年
  4. ^ MNISSAN HERITAGE COLLECTION ダットサン16型クーペ
  5. ^ 例・トヨタ・サイノス日産・ルキノクーペホンダ・シビッククーペ三菱・ミラージュアスティスバル・インプレッサリトナがこれに該当。このうち、シビッククーペだけが日本国内で生産されておらず、日本メーカー製の小型クーペとしては唯一、北米からの逆輸入車扱いとなった。
  6. ^ 『社団法人 日本自動車販売協会連合会』統計データより
  7. ^ ただし、最廉価版として設定されている1.5L・直列3気筒の自然吸気エンジンを搭載した「RS」のみ、その性格上、スペシャルティカー扱いとなっている。

関連項目