GR (トヨタ自動車)

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GR
ロゴ
種類 自動車
所持会社 トヨタ自動車
使用開始 2017年
ウェブサイト https://toyota.jp/gr/
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GRスーパースポーツコンセプト

GR(ジー・アール)は、トヨタ自動車が2017年から展開しているスポーツブランド。TOYOTA GAZOO Racing(トヨタ・ガズー・レーシング)についてもここで述べる。

概要[編集]

トヨタ自動車の社内カンパニーであるGRカンパニーGAZOO Racing Company)がGRブランドの展開を担当している。トヨタのレーシングチームであるGAZOO Racingの活動で得た知見を市販車にフィードバックし、市販車を売って得た利益をGAZOO Racingの活動に還元することで、本社の経営状態に左右されづらい継続的なモータースポーツ活動を可能としている。初代GRカンパニー社長は豊田章男の部下であった友山茂樹。2020年9月1日付で2代目の佐藤恒治に交代した。

GRブランドのベースカラーは白。ロゴマークは黒地に"G"、赤地に"R"という白文字が刻まれる。

市販車は『GR』シリーズとして「GRMN」「GR」「GR SPORT」「GR PARTS」という4段階のピラミッド構造となっている。従来はいちチューニングカーブランドにすぎなかったが、2019年からGRブランド専売車も続々登場しており、スポーツカーブランドとしての発展が期待される。

F』として展開しているレクサスブランドのスポーツカーとの差別化については、「GAZOO Racing(GR)はピュアスポーツで、レクサスはラグジュアリースポーツという位置づけ」「GRはいまあるクルマをチューニングして持ち上げるのではなく、レースフィールドにあるクルマをロードゴーイングカーに落とし込んでいく」と言及されている[1]

歴史[編集]

2007年、トヨタのマスターテストドライバーであった成瀬弘を中心に教え子のテストドライバーやメカニックらで編成した社内チームが、ツーリングカーレースの祭典であるニュルブルクリンク24時間レースに挑戦。成瀬から運転の指導を直接受けた、当時副社長の豊田章男もドライバーとして参戦した[2]。この時ワークスのトヨタ・レーシングと名乗ることを許されなかったため、豊田が設立に携わったポータルサイトGAZOOの名称を用いて「Team GAZOO」を名乗り、広報上ではドライバーも「キャップ(成瀬)」「モリゾウ(豊田)」など本名ではなくニックネームを名乗った。また予算もなかったため、生産終了していた中古のアルテッツァBMW・E90などをマシンに用いた[3]。GAZOO.comはアマチュアレース企画として活動レポートを掲載した。

2009年以降は「GAZOO Racing」として「新車開発の聖地ニュルブルクリンクで人とクルマを鍛える」という目標のもと、LF-AFT-86などの開発モデルを投入し参戦を継続していく[4]。ドライバーは木下隆之飯田章石浦宏明らプロレーサーを加えているが、メカニックやエンジニアは社員から選抜している。チームの監督であった成瀬が2010年6月に事故死する不幸を乗り越え、2014年には3クラス制覇を果たした[5]

2009年の豊田の社長就任後はGAZOO Racingの範囲も広がり、「クルマ好き・クルマファンの拡大」を目指してサーキット体験走行会や、トヨタ・86及びスバル・BRZによって争われるワンメイクレースGAZOO Racing 86/BRZ Race(2022年からはTOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup)」、毎年11月に開催される「TOYOTA GAZOO Racing Festival」といったグラスルーツイベントを開催した[6]。また、2010年に発足したスポーツ車両統括部[7]が手がける走りの楽しさを味わえる市販モデルとして、2009年に本格派の「GRMN」、2010年にライト派の「G's(ジーズ)」というスポーツコンバージョンシリーズが誕生している。

2015年4月より、それまで「GAZOO Racing」「TOYOTA Racing」「LEXUS Racing」と分かれていた全モータースポーツ活動を「GAZOO Racing」と統一した。トヨタ、レクサスブランドのレース活動はGAZOO Racingの傘下に入り、「TOYOTA GAZOO Racing」「LEXUS GAZOO Racing」と呼ばれる[8]。この年以降、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)のワークスマシンは白地に赤・黒のストライプという共通カラースキームを使用する。同時に、走りの味を作り評価できる人材を育成する『凄腕技能養成部』も立ち上がっており、これ以降ラリーやニュルブルクリンクを中心にGAZOO Racingの活動に参加するようになる。

2016年にはSUPER GTを引退した脇阪寿一がTGRアンバサダーに就任。系列の富士スピードウェイの1コーナーの命名権を取得し「TGRコーナー」と改称した[9]。また、若手俳優の佐藤健をCMキャラクターに起用し周知活動を行った。

2017年にはモータースポーツ車両を開発していたTOYOTA GAZOO Racing Factoryを改組し「GAZOO Racing Company」を新設[10]社内カンパニーとして独立性を強め、レースで得た知見を市販車へフィードバックすることでトヨタの車作りに貢献し、採算を確保する方向性が定まった[11]。スポーツコンバージョンブランドをGRシリーズ(「GRMN」「GR」「GR SPORT」および「GR PARTS」)に再編し、地域拠点となる「GRガレージ」を各地のディーラーに設置した[12][13]

2019年にはGRブランド専売車第一号となるGRスープラが登場。またダイハツ・コペンのGR SPORTも発売し、トヨタの枠を超えたブランドとしての第一歩を踏み出した。

2020年にはWRCや地域ラリーで勝つことを目的に開発された、ブランド専売車第二号のGRヤリスを発表している。同車では、セリカ GT-FOUR以来のスポーツ四輪駆動システムとなる『GR-FOUR』、ベルトコンベア式ではないGR車専用の生産ライン『GR FACTORY』などが新たに採用されている[14]

GAZOO Racing[編集]

TOYOTA GAZOO Racing
国籍 日本の旗 日本
本拠地
WEC
WRC
 フィンランド ユヴァスキュラ
創設者 オベ・アンダーソン
チーム代表
関係者
WEC
  • 日本の旗 引地勝義(社長)
  • 日本の旗 佐藤恒治(会長)
  • 日本の旗 中嶋一貴(副会長)
  • 日本の旗 角賢治(パワートレーン開発者)
  • 日本の旗 北條哲平(空力開発責任者)
  • 日本の旗 佐藤真之介(ハイブリッドパワートレーンマネージャー)
  • 日本の旗 春名雄一郎(プロジェクトディレクター)
  • 日本の旗 小島正清(GRパワトレ開発部長)
  • 日本の旗 山崎大地(GRパワトレ開発部)
  • オランダの旗 ジョン・リッチェンス(車両開発プロジェクトリーダー)
  • オランダの旗 ロブ・ロイペン(チームディレクター)
  • フランスの旗 パスカル・バセロン(テクニカルディレクター)
WRC
  • 日本の旗 青木徳生(エンジン・プロジェクト・リーダー)
  • 日本の旗 豊田章男(チームオーナー)
  • 日本の旗 春名雄一郎(プロジェクトリーダー)
  • ドイツの旗 トム・ファウラー(テクニカルディレクター)
  • フィンランドの旗 カイ・リンドストローム(スポーティングディレクター)
活動期間 1975年 -
カテゴリ
チームズ
タイトル
WRC 71993,1994,1999,2018,2021,2022,2023
WEC 62014,2018-19,2019-20,2021,2022,2023
ドライバーズ
タイトル
WRC 91990,1992,1993,1994,2019,2020,2021,2022,2023
WEC
6
2014,2018-19, 2019-20,2021,2022,2023
公式サイト TOYOTA GAZOO Racing
2024年のFIA 世界耐久選手権
エントリー名 トヨタ・ガズー・レーシング
レーサー
7号車
8号車
マシン 7 & 8. トヨタ・GR010 HYBRID
タイヤ ミシュラン
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GRブランドの根幹を為すモータースポーツ活動である。成瀬弘の信条であった、レースを通して技術や人を鍛えることを目的としており、勝つことを第一の目的とした世界選手権のようなビッグカテゴリから、人材育成や市販車開発を目的とする草レースまで幅広く参戦を行っている。表記は「Gazoo Racing」や「GAZOO RACING」などの揺れがあるが、現在公式では「GAZOO Racing」で統一されている。またTOYOTA GAZOO Racingは頭文字を取ってTGRとするのが公式な略称である。

レースからフィードバックしているのはパワーユニットやトランスミッション技術のような自動車に直接生かせるものだけでなく、レーシングカーの開発の手法(開発プロセス、組織論、シミュレーション技術など)もそうである。また市販車のテストドライバーが市販車開発のためにレースに参戦したり、逆にプロのレーシングドライバーが市販車開発の現場に直接携わる機会が増えている。GRスープラは前者、GRヤリスは後者のパターンで開発されている。またC-HRがプロトタイプの段階でニュルブルクリンク24時間に参戦したように、GRシリーズ以外のトヨタ/レクサスの車作りにも大きな影響を与えている活動である。

本社以外にも世界のトヨタ法人の多くが「GAZOO Racing ○○(国や地域名)[注釈 1]」を名乗り参戦しているが、一部マーケティングや参戦体制の都合でGAZOO Racingを名乗っていない場合もある[注釈 2]。また北米のレクサスは2019年を最後にGAZOO Racingを名乗っておらず、日本のレクサスも2019年を最後にTOYOTA GAZOO Racingに引き継いだため、2020年現在『LEXUS GAZOO Racing』としては活動は行われていない。

発足以降、ル・マン24時間5連覇、FIA 世界耐久選手権(WEC)ドライバー/チームズタイトル獲得、世界ラリー選手権(WRC)ドライバー/コ・ドライバー/マニュファクチャラーズタイトル獲得、ダカール・ラリー初制覇、世界ラリーレイド選手権(W2RC)ドライバー/コドライバー/マニュファクチャラーズタイトル獲得、NASCARカップ戦ドライバー/マニュファクチャラーズタイトル獲得などの実績を残している。なおWRCのマニュファクチャラーズトロフィーには、トヨタのエンブレムではなく「GR」のそれが刻まれている。

WEC、WRCでは、トヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパ(TGR-E)が、トヨタの欧州におけるワークスチームとして、モータースポーツ活動を担っている。

チームとしての参戦だけでなくラリーチャレンジや86/BRZといったレースシリーズ、TOYOTA GAZOO Racing Festival(TGRF)のようなイベントなども開催して、モータースポーツ文化振興を精力的に行っている。2020年にはトヨタ・ヤングドライバーズ・プログラム(TDP)やTGRラリーチャレンジなどの育成組織を統合整理し、WECとWRCへの若手ドライバー輩出を目指す「TGRドライバー・チャレンジ・プログラムTGR-DC)」を設立した[15]

公式マスコットキャラクターは「くま吉」「モリゾウくん」「ルーキー」[16]

TOYOTA GAZOO Racing[編集]

LEXUS GAZOO Racing

GRシリーズ[編集]

2017年9月に、GRMNとG'sを再編する形で発足[12]。当初は限定生産の最上級モデルである「GRMN」、GRMNの量産版である「GR」、エントリーモデルの「GR SPORT」、チューニングパーツの「GR PARTS」の4段階のピラミッド構造で展開されていたが、2019年以降発売された「GR」についてはGRブランド専用車の名称となっている(後述)。

基準車(ベース車)とは別のチームを結成して開発し、補強によって高剛性化したボディに高性能サスペンションやタイヤを組み込んで走行性能を高め、専用デザインの内外装部品でコンプリートカーを製作するという手法は「G's」より引き継ぐが、「GR」ブランドはさらなる顧客層への拡販を狙って量産モデルを「GR」と「GR SPORT」の2本立てとすることでブランド自体を明確化、細分化しているのが「G's」との大きな違いである。

「G's」では各車種ごとにフロントグリルをデザインしていたが、「GR」ブランド車ではモータースポーツ車両の開発で培った空力技術を応用してデザインされたフロントバンパーである「ファンクショナル・マトリックスグリル」に統一することで、「G's」ブランド車よりも空力性能を大幅に引き上げ、かつブランドイメージの統一化を図っている[注釈 3]

また「G's」ブランドでは意図的に外していたトヨタマークを復活させることで、「トヨタ車のスポーツモデルブランド」であることを明確にしている。

GRMN[編集]

GRMN(ジーアールエムエヌ、GAZOO Racing tuned by Meister of Nürburgring)はG'sと同時期に登場した、サーキット走行も想定した数量限定生産の最上位かつ最古のシリーズ。エンジン内部にチューニングを施し、ほとんどがマニュアルミッションを搭載し、車輌の特性に合わせてドライカーボンを車体パネルに採用している。また「Meister of Nürburgring(マイスター・オブ・ニュルブルクリンク)」には、2010年に他界したGAZOO Racingの成瀬弘監督への敬意が込められている[18][19]

  • iQ GRMN(2009年、100台限定生産)
  • iQ GRMN スーパーチャージャー(2012年、100台限定生産)
  • ヴィッツGRMNターボ(2013年、200台限定生産)
  • マークX GRMN(2015年、100台限定 及び 2019年、350台限定)
  • 86 GRMN(2016年、100台限定)
  • ヤリスGRMN(2018年欧州限定、400台限定生産)
  • ヴィッツGRMN(2018年、150台限定)
  • センチュリーGRMN(2018年、白黒2台限定製作、非売品)
  • GRMNヤリス[注釈 4](2022年、500台限定)

GR[編集]

「GR」は、最上位ブランドとなる「GRMN」からそのエッセンスを盛り込んだ量販仕様のスポーツモデルとなる。ボディの更なる高剛性化を実施し、サスペンションやブレーキシステムもより高性能な「GR」専用品が用いられ、走行性能も一般公道をはじめサーキット走行も視野に入れた高度なチューニングが実施されている。「車名+GR」はチューニングカーで、「GR」は全車種が持ち込み登録となる。

GR SPORT[編集]

「G's」の後継にあたり、車両の開発から生産に至るまで「G's」と同様にトヨタ自動車が自社で一貫して担当している[注釈 7]

上位バージョンとなる「GR」や以前の「G's」に比べてより多くの顧客層にスポーツモデルを提供するために設定された。「GR」とはフロントバンパー(ファンクショナル・マトリックスグリル採用車種)のメッキが鏡面仕上げになっているのと、「GR SPORT」専用のエンブレムで見分けることができる。

「G's」に倣って補強によるボディの高剛性化と専用のサスペンションや高性能タイヤは装着されるものの、パワートレーンへのチューニングは一切実施されず、動力性能や環境性能も基準車と同一となる(ベース車にない1.5Lエンジンを積むヴィッツを除く)。このように、ライトチューニングではあるが基準車からの変更範囲が広いために持ち込み登録となるものの、一部の車種においては変更範囲を大幅に制限することで車両登録が型式指定となり、基準車と同一の扱いとなっている。また、一部車種においてはチューニングはそのまま「G's」からのブランド替えとなる。

※「G's」からのブランド替え車種(ファンクショナル・マトリックスグリル非採用車)

※※ファンクショナル・マトリックスグリルを使用しない国内市場向け車両

※※※ファンクショナル・マトリックスグリルを使用しない海外市場向け車両

  • ヴィッツGR SPORT[注釈 8](2017年 - 2020年)
  • プリウスPHV GR SPORT(2017年 -)
  • ハリアー GR SPORT(2017年 - 2020年)※
  • マークX GR SPORT(2017年 - 2019年)※
  • ヴォクシー GR SPORT(2017年 - 2021年)※
  • ノア GR SPORT(2017年 - 2021年)※
  • アクア GR SPORT(2017年 - 2021年、2022年 -)[注釈 9]
  • プリウスα GR SPORT(2017年 - 2021年)※
  • 86 GR SPORT(2018年 - 2020年)※※
  • カローラアルティス GR SPORT(2019年 -、タイ、台湾、2022年 -、フィリピン、シンガポール、2023年 -、マレーシア限定)※※※
  • ヤリス GR SPORT(XP130) (2019年-2020年、欧州限定)※※※
  • ハイラックス GR SPORT(2019年 -、南米※※※、南アフリカ、2021年 - 日本、タイ、フィリピン、2022年 - 欧州※※※、インドネシア、2023年 - オーストラリア、マレーシア、2023年 -、パキスタン限定)
  • コペン GR SPORT(2019年 -)[注釈 10]
  • C-HR GR SPORT(AX10/AX50)(2019年 - 2023年、日本、2020年 - 2023年、欧州※※※、オーストラリア、2022年 - 2023年、タイ※※※限定)
  • カローラ(無印ハッチバック)/カローラツーリングスポーツ/カローラサルーン GR SPORT(2020年 -、欧州、2021年 -、ブラジル、アルゼンチン、中国限定)※※※
  • ヴィオス GR SPORT(2021年 -、マレーシア、ベトナム、フィリピン限定)※※※
  • カムリ GR SPORT(2021年 -、ロシア、カザフスタン限定)※※※[21][22]
  • ライズ GR SPORT(2021年 -、インドネシア限定)※※※
  • ランドクルーザー GR SPORT(2021年 -、日本、中東、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、南米、2022年 -、インドネシア限定)
  • アギア GR SPORT(2021年 -、インドネシア限定)※※※
  • ヤリス GR SPORT(XP150)(2021年 -、インドネシア限定)※※※
  • ラッシュ GR SPORT(2021年 -、インドネシア、2022年 -、フィリピン限定)※※※
  • フォーチュナー/SW4 GR SPORT(2021年 -、インドネシア、タイ、フィリピン、ブラジル、2022年 -、インド、2023年 -、パキスタン限定)※※※
  • アバンザ ヴェロッツ GR LIMITED(2021年、インドネシア限定)※※※
  • カローラクロス GR SPORT(2021年 -、台湾、タイ、2022年 -、フィリピン、ブラジル、南アフリカ、2023年 -、インドネシア、マレーシア限定)※※※
  • ヤリス GR SPORT(XP210)(2022年 -、欧州限定)※※※
  • ヤリスクロス GR SPORT(2022年 -、日本、欧州、オーストラリア、ニュージーランド限定)※※
  • RAV4 GR SPORT(2022年 -、欧州、2023年 -、インドネシア限定)※※※
  • C-HR GR SPORT(2代目)(2023年 -、欧州、2024年 -、オーストラリア限定)※※※

GR PARTS[編集]

GRが発売するアフターパーツ。車種によってパーツの種類に差があるが、エアロパーツ、ホイールブレース類、ダンパーのようなチューニングパーツや、フロアマットアームレストといった内装・装飾類のような一般的にイメージされるアフターパーツの他、エンジンオイルデータロガーまで取り扱う。また静電気を除去するアルミテープや、空力効率を高めるコーティング剤のような珍しいアイテムもある。これらは非GR車にも装着・適用することが可能である。

実際の開発は、トヨタのレーシングカー開発を担うトヨタカスタマイジング&ディベロップメント社のTRDが行っている。

GRグローバルモデル[編集]

グローバルモデルとして開発されたGRブランド専用車は、同ブランドの専売であることを明確にするため、他のGRブランドの車種の「車名+GR」と異なる「GR+車名」のネーミングを用いることで差別化を図っている。

GR Garage[編集]

GR Garage 新大阪

「GR Garage(ジーアールガレージ)」は、「GR」ブランドの発足に合わせて全国のトヨタディーラーに設置された専門のカスタマイズとチューニングを行う専門店[注釈 11]。GRコンサルタントが常駐している他、GRブランド車の試乗車や、カスタマイズパーツなどを取りそろえている。試乗車に関しては、運営ディーラーが取り扱うベース車に準ずる。また独自にモータースポーツ活動を行っているGR Garageもある。

2023年11月現在、秋田県福島県新潟県山梨県岐阜県福井県鳥取県島根県香川県高知県佐賀県長崎県大分県宮崎県鹿児島県沖縄県の16県には、まだ「GR Garage」は所在しない。現行店舗に関しては、GR Garage一覧 を参照。

GR Heritage Parts[編集]

廃盤となってしまった古いスポーツカーの部品を復活させ、長く乗ってもらうことを目的とする活動。2021年8月現在までに、A70型・A80型スープラ、2000GT40系ランドクルーザーの部品の復刻を公表している。

G's[編集]

G's(G SPORTS、通称:ジーズ)」は、2010年の「東京オートサロン2010」で発表され、同年4月に発売された「ノア&ヴォクシーG's(初代)」から正式に発足した市販車ブランド。幅広い顧客層に向けて「走りの味」や「クルマの楽しさ」を提供するメーカーコンプリートモデル(トヨタ自動車では「スポーツコンバージョンモデル」と称していた)[23]で、トヨタ自動車が初めて自社で開発から製造を一貫して手掛けたスポーツ仕様車専門のブランド。現在のGRの源流にあたる。

G SPORTSの「"G"」は、2000GTセリカGT-FOURといったトヨタのスポーツモデルにも採用されていた「GT」や、それらに搭載されていた専用のチューンドエンジン(「〇〇-GE」など、形式名に「G」が入るエンジン)などに由来する[23]

本ブランド車の大きな特徴として、基準車(ベース車両)の車体を専用の補強によって高剛性化し、その上で高性能なチューニングが施されたサスペンションとタイヤへ変更することで走行性能を大きく引き上げていることが挙げられる。なお、パワートレーン(エンジンやトランスミッション)には専用のチューニング等は施されず、基準車と同一の動力性能と環境性能が与えられた[注釈 12]。また、販売に関しては全車種が持ち込み登録となっていた。

本ブランドの車両開発においては、「GAZOO Racing」でニュルブルクリンク24時間耐久レース等のモータースポーツに関わった専門の技術者が開発に従事しており、レクサスブランドの「F」モデルと同様に基準車の開発チームとは別の開発チームが結成され、各車種ごとにチーフエンジニアが置かれた。そして、車両の性能評価と走行試験には前述のニュルブルクリンク24時間耐久レースに出場していたテストドライバー(トヨタ自動車社内の呼称はトップガン)が関わるなど、基準車の開発とは異なる手法が採用された。

各車両の生産工程において、基準車を生産する工場の同一生産ライン上[注釈 13]で専用のボディ補強(溶接スポット追加と補強材の追加[注釈 14])や、専用チューニングのサスペンションに高性能タイヤと専用ホイールの装着、そして専用デザインの内外装部品の装着を行うことで無駄な純正部品の発生を抑制し大幅なコストダウンにも貢献した。そのような生産体系を採ることで基準車との価格差を狭め、多くの顧客が購入しやすい価格で提供することに成功した。

ラインナップとしてはファミリー層向けの乗用車(ミニバンコンパクトカー)が中心となり、それらに加えてハイブリッドカーや4ドアセダンSUVなどもラインナップに加わった。が、ピュアスポーツカー(86)や日本市場へも導入される欧州市場専売モデル(アベンシスオーリス)、また軽自動車(ダイハツのOEM車両)には本ブランドはラインアップされることはなかった。

2017年9月、直接の後継となる「GR」ブランドへの再編にあわせ、「G's」ブランド車はすべて販売終了となった。

コンセプトカー[編集]

東京オートサロン大阪オートメッセ東京モーターショーなどの会場で参考出品された。

  • GRMN iQ +スーパーチャージャー・コンセプト(2010年)
  • GRMN FR ホットハッチ・コンセプト(2010年)
  • GRMN スポーツハイブリッド・コンセプト(2010年)
  • FT-86 G Sports コンセプト(2010年)
  • ノア G Sports コンセプト(2010年)
  • ヴォクシー G Sports コンセプト(2010年)
  • プリウス G Sports コンセプト(2010年)
  • マークX G Sports コンセプト(2010年)
  • GRMN iQ レーシング・コンセプト(2011年)
  • GRMN スポーツハイブリッド・コンセプトII(2011年)
  • ヴィッツ G Sports コンセプト(2011年)
  • GRMN スポーツFRコンセプト(2012年)
  • GRMN iQ スーパーチャージャー・プロトタイプ(2012年)
  • GRMN ヴィッツ ターボ・コンセプト(2012年)
  • マークX G Sports コンセプトII(2012年)
  • ヴェルファイア G Sports コンセプト(2012年)
  • GRMN スポーツFRコンセプト PLATINUM(2013年)
  • アクア G Sports コンセプト(2013年)
  • マークX G Sports "カーボンルーフ"コンセプト(2013年)
  • GRMN 86 コンセプト(2014年)
  • GRMN マークX コンセプト(2014年)
  • GRMN 86 プロトタイプ(2015年)
  • TES-CROSS(2015年)
  • S-FR レーシング・コンセプト(2016年)
  • ノア G's コンセプト(2016年)
  • ヴォクシー G's コンセプト(2016年)
  • ヴィッツ TGR コンセプト(2017年)
  • アクア TGR コンセプト(2017年)
  • GR HV スポーツ・コンセプト(2017年)
  • GR スーパースポーツコンセプト(2018年)
  • GR スープラ・レーシングコンセプト(2018年)
  • スープラGR GT4 コンセプト(2019年)
  • GRスープラ SUPER GT コンセプト(2019年)
  • GR GT3 コンセプト(2022年)
  • プリウス 24h ル・マン センテニアルエディション(2023年)
  • FT-Se(2023年)

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ TOYOTA GAZOO Racing Thailand(タイ)、TOYOTA GAZOO Racing South Africa(南アフリカ)、TOYOTA GAZOO Racing UK(英国)、TOYOTA GAZOO Racing Argentina(アルゼンチン)、TOYOTA GAZOO Racing Brasil(ブラジル)、TOYOTA GAZOO Racing Paraguay(パラグアイ)、TOYOTA GAZOO Racing Baltic(バルト三国)などがある。
  2. ^ 例をあげると、トヨタ車体のチームランドクルーザーやD1グランプリのFAT FIVE RACINGはマシンやレーシングスーツに『TOYOTA GAZOO Racing』のロゴがあるが、GAZOO Racingを名乗らずに活動を続けている。
  3. ^ ただし「G's」からのブランド替えとなる一部の車種と86 GRには本バンパーが採用されていない。
  4. ^ 届出上等の名称は「GRヤリスGRMN」となる[20]
  5. ^ CVT車には全日本ラリー選手権で開発、実戦投入されて実用化した「GR」専用の「スポーツCVT制御」と「10速シーケンシャルシフトマチックモード」を搭載する。なおこの一見ややこしい車名は、ヴィッツではなくヴィッツGR SPORTをチューニングしたため、と説明されている。
  6. ^ 「GR」ではあるが、パワートレーンは基準車(2016年7月改良型の6速マニュアル車)と同一となる。また、ヴィッツでは下位モデルの「GR SPORT」からの発展というかたちをとるものの、86には「GR SPORT」が2018年7月に登場して以降も単に「86 GR」と称される。
  7. ^ コペンのみトヨタからの技術の共有を受けた上で、ベース車同様に子会社ダイハツ工業が開発・生産を担当する。
  8. ^ 型式指定車両。
  9. ^ 型式指定車両。但し、17インチパッケージは持ち込み登録となる。
  10. ^ 子会社であるダイハツ工業コペンとのコラボレーションモデル。ダイハツ側でも追加モデルとして同時発売された。型式指定車両。なお、ダイハツ・コペンは他に3モデル(それぞれ2グレードづつ)を設定するが、トヨタでは「GR SPORT」のみ発売。
  11. ^ これに伴い、2012年より展開されてきたTOYOTA 86のカスタマイズとチューニングを行う専門店「AREA 86」は、「GR Garege」に移行した店舗を除き全店舗が閉店した。
  12. ^ 一部の車種においてはマフラーの変更が行われているが、動力性能自体に大きな変更はない。
  13. ^ 一部の車種においては、車両の生産後に他の工場へ回送してから専用の部品を組み込んでいた。そのことを示すコーションプレートが車両に貼られている。
  14. ^ ただし、一部の車両(プリウスαと3代目ノア&ヴォクシー)においては基準車の完成度が本ブランドの基準に達しているため、溶接スポット増しは省かれている。

出典[編集]

  1. ^ トヨタ、2020はハイパーカー、GRスーパースポーツで!市販版の発売は21年?22年? - モーターファン・2019年6月17日
  2. ^ ニュルブルクリンクへの挑戦 2007 レース振返り”. TOYOTA GAZOO Racing. トヨタ自動車 (2007年). 2017年9月19日閲覧。
  3. ^ “【東京オートサロン2016】トヨタ、10回目となるニュルブルクリンク24時間レース参戦を発表”. AUTOBLOG. (2016年1月31日). http://jp.autoblog.com/2016/01/31/toyota-gazoo-racing-tokyo-auto-salon-2016/ 2017年9月18日閲覧。 
  4. ^ HISTORY 人とクルマを鍛える挑戦の軌跡”. TOYOTA GAZOO Racing. トヨタ自動車 (2017年). 2017年9月19日閲覧。
  5. ^ GAZOO Racing 3クラス制覇!”. TOYOTA GAZOO Racing. トヨタ自動車 (2014年6月23日). 2017年9月24日閲覧。
  6. ^ “トヨタ自動車、GAZOOを通じたクルマファンづくり活動を発表”. トヨタグローバルニュースルーム (トヨタ自動車). (2013年3月29日). http://www2.toyota.co.jp/jp/news/13/03/nt13_0310.html 2020年6月7日閲覧。 
  7. ^ “豊田章男社長の肝煎りで始動 異例の開発プロジェクトの狙い”. ダイアモンドonline. (2010年11月8日). http://diamond.jp/articles/-/9990 2017年10月2日閲覧。 
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関連項目[編集]

外部リンク[編集]