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(ひょう)とは、積乱雲から降る直径5mm以上の[1]。直径5mm未満の氷粒は(あられ)と呼ぶ[1]

雹が降ることを降雹(こうひょう)、降雹による人体や農作物、建物への被害を雹害と表現する[1]後述)。

概要[編集]

雹の断面写真(246倍)
激しい降雹

雹は激しい上昇気流を持つ積乱雲内で発生するのでと共に発生する場合が多い。

雹は空中で、落下して表面が融解し、再び上昇気流で雲の上部に吹き上げられて融解した表面が凍結することを繰り返す。その過程で、外側に他の氷晶が付着したり、過冷却の水滴が付着し凍結したりして、段々と氷粒が成長していく。そのため、大きな雹を割って内部を見ると、融解後に凍結した透明な層と、付着した氷晶の不透明な層が交互にある同心円状の層状構造をしていることが多い。成因は氷あられと全く同じであり、氷あられが成長して雹になる。

雹は成長するにつれてその重さを増していく。その重さを気流が支えきれなくなったり、上昇気流が弱まったり、強い下降気流が発生したりした時に、地上に落下する。

雹は積乱雲の発生が多い夏季に多いが、地表付近の気温が高いと完全に融解して大粒のになってしまうので、盛夏にあたる8月前後よりも初夏の5 - 6月に起こりやすい。また日本海側では冬季にも季節風の吹き出しに伴って積乱雲が発生するので降雹がある。

日本の防災科学技術研究所によると、雹が形成されて地表まで落ちてくる大気気象地形の条件は解明されておらず、雹害のデータベース化などで研究を進めている[1]

雹が落下するときには、小さいものでもパタパタ、パラパラという音を立てる。大量に降った場合、雨の音と混じるなどして非常に大きな音を出し、周囲の音が聞こえないくらいの騒音となることもある。

雹の大きさは1cm以下のものが多いが、時に数cmにも成長し、ゴルフボール大となることもある。記録が残っている中で世界最大の雹は、1917年大正6年)6月29日埼玉県大里郡熊谷町(現:熊谷市)に降ったカボチャ大の雹で、直径七八分(29.6cm)、重さ九百(3.4kg)とされる[2] 。なお、アメリカ海洋大気庁によれば、2003年6月22日アメリカ合衆国ネブラスカ州に降った直径7.0インチ(17.8cm)、周囲18.75インチ(47.6cm)の雹を世界最大としている[3][4]

雹が積雪のように積もることもある。2019年6月30日、メキシコハリスコ州グアダラハラでは2mほど雹が積もったことがある。丘陵地帯では少なくとも50台の自動車が氷の濁流に押し流され、中には氷の下に埋没した車もあった[5]

名称[編集]

「雹」の字音はハク(漢音)・ホク(呉音)で、「ヒョウ」の字音はない。これは「包」の呉音「ヒョウ」につられたものとする説や、古字書『観智院本名義抄』に「ハウ」と記されたものが変化したものとする説、「氷雨」(ひょうう)が変化したものとする説、「氷」の字音「ヒョウ」からとする説などがある。

雹による被害[編集]

降雹による被害を雹害(ひょうがい)という。小さな雹が大量に降った場合、積雪のように堆積してビニールハウスなどを破損させたり、植物の葉を落としたりする。関東地方長野県などの農業地帯、山間部では雹の通り道として降雹が起きやすいと伝えられる地域があり、東京都あきる野市八王子市境の雹留山(ひょうどめやま)がその一例である[1]

直径が5cm以上もあるような巨大な雹は落下速度が100km/hを超え、単独でも甚大な被害を出す。自動車ボンネット窓ガラス家屋を破損させたり、農作物に大きな被害を与えたりする。大きな雹が人間や動物に当たると怪我をしたり、頭部に直撃した場合には脳震盪を起こしたりして、の危険性さえある。

英語圏などでは激しい降雹を"hail storm(雹嵐)"と呼ぶ。

日本の主な雹害[編集]

世界の主な雹害[編集]

雹害の防止[編集]

農作物等への被害を防止するために、上空にソニックブームを発射して雹の発生を抑止する装置が考案、利用されている[17]

1972年国立防災科学技術センターは、大きな雹の防止技術を開発するために、ヨウ化銀200gを詰めた全長78cmのロケットを積乱雲に打ちこむ実験を群馬県榛東村で行った[18]

天気記号[編集]

国際式天気図の天気記号では、

  • 27.前1時間内にひょう、あられ、氷あられ(を伴ってもよい)
  • 89.雨かみぞれを伴う弱いひょう(雷鳴なし)
  • 90.雨かみぞれを伴う強いひょう(雷鳴なし)
  • 93.観測時に弱い雪、みぞれ、雪あられ、氷あられ、ひょう(前1時間に雷電があったが観測時にない)
  • 94.観測時に並または強い雪、みぞれ、雪あられ、氷あられ、ひょう(前1時間に雷電があったが観測時にない)
  • 96.弱または並の雷電で、観測時にひょう、氷あられ、雪あられを伴う
  • 99.強い雷電で、観測時にひょう、氷あられ、雪あられを伴う

の7種類がひょうを表す。

ひょうの天気記号(日本式)

日本式天気図の天気記号では、ひょうを表す記号がある。ただし、雷を伴う場合は優先順位によりこれと異なる表示になることがある。

定時飛行場実況気象通報式(METER)の「降水現象」の欄では、GRがひょうを表す。

観測[編集]

日本では、天気を自動で判別する機械が導入され、目視観測を2019年2月から順次終了したことに伴い、「ひょう」の記録を終了した[19]。機械による天気の自動判別では、落下する物体の大きさを判別することは難しいとされるためである[19]

記録[編集]

この節に登場する場所を記した地図。雷については発生場所のみ示した。の位置(地球内)
ゴパルガンジ
ゴパルガンジ
ビビアン
ビビアン
オーロラ
オーロラ
この節に登場する場所を記した地図。雷については発生場所のみ示した。 (地球)
ネブラスカ州オーロラで2003年6月22日に降った雹。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ a b 中央気象台(現在の気象庁)が発行する1917年(大正6年)6月の『気象要覧』によれば、現地の荒物商「角屋」の主人による話として、1917年6月29日午後、日本の埼玉県北埼玉郡中条村大字今井(現在の埼玉県熊谷市大字今井)に直径29.5 cm (11.6 in)、質量3.4 kg (7.5 lb)(秤にかけるまでに少し融けていたので実際にはさらに重い)の雹が降ったと記載されている[21]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f 【予報士記者の気象雑話 お空のみかた】空の忍者 雹の通り道を探る 八王子・あきる野「雹留山」農業への脅威 各地に言い伝え/発生条件 解明これから東京新聞』朝刊2022年5月31日24面)(同日閲覧)
  2. ^ 熊谷測候所 『埼玉県気象年報』熊谷測候所、1917年(大正6年)。 
    熊谷地方気象台 百年誌編集委員会 『埼玉県の気象百年』熊谷地方気象台、1996年。 ほか。
  3. ^ a b c d NOAAによるPDF文書 Hailの項を参照[リンク切れ]
  4. ^ 英語版「気象記録一覧」の雹の項を参照
  5. ^ メキシコの大都市で大量のひょう 最高で2m、押し流された車も”. AFP (2019年7月1日). 2019年7月23日閲覧。
  6. ^ 気象庁技術報告第73号『青森県60年間の異常気象』24頁
  7. ^ 熊谷地方気象台『埼玉県の気象百年』196頁ほか
  8. ^ 「群馬県の大雷雨と暴風、落雷電死、家屋倒壊負傷多く、降雹のためおびただしい麦・桑の被害」『東京朝日新聞』市内版1917年7月1日第5面
  9. ^ イカロス出版『近・現代 日本気象災害史』93-94頁
  10. ^ 平成12年5月24日関東北部で発生した降雹被害 - 損害保険料率算出機構 ディスクロージャー RISK(2004年7月17日時点のアーカイブ
  11. ^ 「東京都 豊島区や板橋区などでヒョウ」[リンク切れ]
  12. ^ 「駒込駅の屋根を破壊、雹やゲリラ豪雨で騒然 冠水や浸水も 豊島区駒込」ニュース速報Japan(2017年7月18日17:00最終更新)2022年5月31日閲覧
  13. ^ “南砺市で「ひょう」直径4センチほど…視聴者提供映像”. FNNプライムオンライン. (2021年9月6日). https://www.fnn.jp/articles/-/235036 2021年9月22日閲覧。 
  14. ^ “南砺でひょう、農業被害 民家の窓ガラス割れる”. 北國新聞. (2021年9月7日). https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/518648 2021年9月22日閲覧。 
  15. ^ 「ひょう被害 特産サトイモ収穫不安 福野・井波」『北日本新聞』2021年9月8日25面、9日26面
  16. ^ Orange-sized hail reported in India(英語)
  17. ^ 干ばつはVWのせい?、作物に被害と地元団体が非難”. CNN (2018年8月24日). 2018年8月25日閲覧。
  18. ^ 「あすから打ち上げ実験 ひょう防止ロケット」『朝日新聞』昭和47年(1972年)6月14日朝刊13版22面
  19. ^ a b 天気の「快晴」がなくなった 「歴史的転換」迎えた観測” (日本語). 朝日新聞デジタル. 2020年4月3日閲覧。
  20. ^ a b "Appendix I – Weather Extremes" (PDF). San Diego, California: National Weather Service. 2008年5月28日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2010年6月1日閲覧
  21. ^ かぼちゃの大きさの雹(ひょう)について 熊谷地方気象台(2021年7月20日閲覧)
  22. ^ NWS (30 July 2010). "Record Setting Hail Event in Vivian, South Dakota on July 23, 2010". Aberdeen, South Dakota: National Weather Service. 2010年8月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年8月3日閲覧
  23. ^ Largest Hailstone in U.S. History Found”. National Geographic. 2010年4月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年8月20日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]