貿易風

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地球の大気循環のモデル

貿易風(ぼうえきふう、英語: trade wind)は、亜熱帯高圧帯から赤道低圧帯へ恒常的に吹く寄りののこと。

歴史[編集]

"trade wind" は、貿易のために帆船がこの風を利用して海を渡ったことに由来するといわれているが、実際は以下のような意味である。

もともとは「決まった経路を吹く風」という意味であった。中世後半の英語中英語)において trade[1] は、現在の英語で言う path や track 、つまり、経路や通り道を意味しており、貿易とは無関係の用語であった。この頃の航海者の間では "the wind blows trade" (風は決まった経路を吹く)という言葉が使われていた。

しかし、18世紀になり、大西洋を横断していたイングランド商船団の間でこの言葉が重要視されるようになると、やがて trade は foreign commerce (外国との商業的取引)と同じ意味を持つようになった。この用法は市民や言語学者の間にも浸透し、現在に至る[2]

本来の意味からすれば、恒風や恒向風といった訳語が考えられる。また、恒信風、熱帯東風といった別名もある。

原因[編集]

赤道付近で強い日射のために生じた上昇気流は、圏界面付近を極に向かって流れるが、地球自転によるコリオリの力を受けて次第に東寄りに向きを変え、緯度30度付近で滞留するため、下降流となって海面(地表面)に吹き下りる。これが亜熱帯高気圧であるが、ここから、先に述べた上昇流により生じた赤道付近の低圧部に向けて南北から吹き込む気流が貿易風である。北半球では北風、南半球では南風になるはずだが、やはりコリオリの力の影響を受け、北半球では北東貿易風、南半球では南東貿易風となる。

高さは 8-10 km で、2-3 km の高度を境に二層に分かれる。上層は高温で乾燥しており、下層は低温で湿っている。上層の貿易風には風速の大きいところがあり、偏東風ジェット気流と呼ばれている。

開けた海洋では一年中ほとんど同じ風向の貿易風が吹くが、陸地に近い所やインド洋北部では、季節風の影響力が強いため一定ではない。

貿易風帯の性質[編集]

貿易風は大洋上を赤道方向へ向かっている、空気は自分自身より暖かい水域に向かって流れるため、水面付近を流れる貿易風は下から顕熱、潜熱を供給され、不安定となって対流性の雲(貿易風積雲)ができる。一方、亜熱帯高気圧により沈降性逆転が生じているため対流雲の成長はその下の湿潤層に留まり、雲頂は低く、夏の夕立のようなかなとこ雲が発生することは稀である。

エルニーニョ現象[編集]

エルニーニョが発生すると貿易風は弱まり、異常気象の原因となる。ラニーニャ発生時は逆に強くなる。これは、太平洋赤道上の気圧が、エルニーニョの時は西高東低で東風を阻害し、ラニーニャのときは西低東高で東風を助長するためである。

脚注[編集]

  1. ^ 中世の低ザクセン語である中低ドイツ語 treadからの借用語。
  2. ^ "Trade-Wind", "Oxford English Dictionary" (オックスフォード英語辞典), Second Edition, p.225.

関連項目[編集]