サトイモ

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サトイモ
Colocasia esculenta in Gwangju Korea.JPG
サトイモの根茎
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
: オモダカ目 Alismatales
: サトイモ科 Araceae
: サトイモ属 Colocasia[1]
: サトイモ C. esculenta
学名
Colocasia esculenta (L.) Schott[2]
和名
サトイモ
英名
Eddoe

サトイモ里芋、青芋、学名Colocasia esculenta)は、東南アジアが原産のタロイモ類の仲間で、サトイモ科植物の地下部分(塊茎)であると、葉柄を食用にし、葉柄は芋茎(ズイキ)と呼ばれる。

名称[編集]

和名サトイモの由来は、山地に自生していたヤマイモに対し、里で栽培されることから「里芋」という名が付いたとされる[3]

栽培の歴史が長いことから、同音異種や異名同種が多い。タロイモ[2]、イエツイモ、ツルノコモ、ハスイモ、タイモ(田芋)[3]、ハタイモ(畑芋)[3]、イエイモ(家芋)[3]、ヤツガシラ(八頭)など[4]、ハイモ[5]などのほか、ズイキイモとも呼ばれる[6]

英語では taro(ターロゥ:タロイモの意)、eddo(エドゥ:タロイモやサトイモの意)、dasheen(ダシン:サトイモ属 Colocasia を表わす同義語)などと呼ばれ[7]フランス語では colocase(コロカーズ)または taro(タロ:タロイモの意)とも呼ばれている[7]学名Colocasia は、ギリシャ語の「食物」を表す “colon” と、「装飾」を表す “casein” を合成した言葉が語源となっている。

特徴[編集]

掘り出されたサトイモ(掘る前に葉と芋茎は切り落とされている);
(1) 種イモ(親イモ)から出た芋茎の残り
(2) 種イモ(親イモ;食べるに値しない)
(3) 子イモから出た芋茎の残り
(4) 子イモ(芋の子)
(5) 孫イモ(芋の子)
1個の種イモから画像内全部が1として成長し殖えた。

大きな葉がついた葉柄が地上に生え、草丈は1.2 - 1.5メートル (m) ほどになる[8]。地中部には食用にされる塊茎(芋)があり、細長いひげ根が生える。日本のサトイモはを咲かせないと言われるが、実際には着花することがある。着花する確率は品種間の差が大きく、毎年開花するものから、ホルモン処理をしてもほとんど開花しないものまで様々である。着蕾したでは、その中心にではなくサヤ状の器官が生じ、次いでその脇から淡黄色の細長い仏炎苞を伸長させてくる。花は仏炎苞内で肉穂花序を形成する。

サトイモは成長した茎の下部が親イモとなり、その周りを囲むように子イモが生じ、さらに子イモには孫イモがついて増えていくユニークな育ち方をする[9][10][8]。主に子イモを食べるもの、親イモを食べるもの、親イモと子イモの両方を食べる品種がある[11]

サトイモの栽培品種2倍体 (2n=28) 及び3倍体 (2n=42) である[12][13][14]。着果はほとんど見られないが、2倍体品種ではよく着果する。種子ウラシマソウなどと比較してかなり小さい。

歴史[編集]

原産地はインド中国[15]、またはマレー半島[9]などの熱帯アジアと言われているが[11]、インド東部からインドシナ半島にかけてとの説が有力視されている[3]。少なくとも、紀元前3000年頃にはインドで栽培されていたとみられている[3]

日本への伝播ははっきりしていないが、イネの渡来よりも早い縄文時代後期と考えられている[16][17]。なお、鳥栖自生芋(佐賀県鳥栖市)のほかに、藪芋、ドンガラ、弘法芋(長野県青木村)と呼ばれる野生化したサトイモが、本州各地にあることが報告されている[18]。このうち、青木村の弘法芋群生地は県指定天然記念物となっている[19]。伝播経路は不明であるが、黒潮の流れに沿って北上したと考える研究者がいる[20]

日本の食文化とサトイモの関わりは関係が深く、古い時代から月見の宴などの儀礼食に欠かさない食材で使われており、サトイモをの代用にした「餅なし正月」の習俗も日本各地で見られた[3]戦国時代には野戦携行食として、茎葉の皮を剥いて乾燥させた保存食「干し ずいき」「芋がら」が重宝された。

栽培[編集]

植え付けから収穫までの栽培期間は約6か月で[11]、種芋を一つずつ芽出しして春に植え付けて、秋に子イモを収穫する[21]。初夏までに2、3回土寄せして、を少しずつ高くしていくことにより、イモが大きく育ち、たくさん付けさせる[21]。土にイモを埋めて貯蔵すると、翌年の種芋に使うことが出来る[21]。天候に左右されやすく、雨の多い夏に良く育つといわれており[15]、乾燥に弱く高温多湿を好む性質から、夏の生育期に雨が少ない場合は水やりをする[21]。栽培に適した土壌酸度pH 6.0 - 6.5、発芽適温は15 - 30、栽培適温は20 - 30℃とされる[15][11]連作障害があり、同じ畑での作付けは3年以上や、4 - 5年は空けるようにすると言われている[15][11]

適地[編集]

熱帯アジアを中心として重要な主食になっている多様なタロイモ類のうち、最も北方で栽培されている。栽培は比較的容易である。水田などの湿潤な土壌で日当たり良好で温暖なところが栽培に適する。原産地のような熱帯の気候では多年生だが、冬が低温期になる日本では一年草になる[22]。日本では、一般的にで育てるが、奄美諸島以南では水田のように水を張った湛水で育てている。湛水状態で育てた場合、畑で育てるよりも収穫量が2.5倍になるとの調査がある[23][24]。水田でのサトイモ湛水栽培は病虫害予防や余りに対応した転作で有効であるため、九州本土や本州でも広がりつつある[25]

昭和30年代頃までは、高知県熊本県五家荘)などでは山間地での焼き畑輪作農業により栽培されていた[26][27]

Leiden University Library - Seikei Zusetsu vol. 22, page 006 - 早芋, 芋苗英 - Colocasia esculenta (L.) Schott - 芋魁, 衣被芋 - idem, 1804.jpg

植付・播種から生長期[編集]

毎年繰り返される経済栽培では、サツマイモジャガイモと同様に、専ら親株から分離した種芋を土中に埋める方法(いわゆる植付)によって行われる。畑やポットに種芋の芽を上向きにして植え付けて、保温して催芽させる[21]。畑の畝に芽出しさせた種芋を植え付けるときは、株間30 cm空けて定植する[28]。種芋を直接畑に植え付けて育てることも出来るが、種芋が傷ついて芽が出なかったり、畑の中で腐ったりしてしまうものもあるため、芽が出たら一度掘り起こして、芽が出たものを植え付ける方法がとられている[15]

畝ははじめ高さ15 cmほどにするが、春から初夏までの間、およそ20日 - 1か月ごとに2、3回の土寄せを行って、地表に出てくる子イモの芽が隠れるよう畝を徐々に高くして、小型のイモが増えないようにする[28]。土寄せがしっかり行われないと芋が出来なかったり、一度にたくさん土を寄せると芋が小さくなってしまう場合がある[10]。株元から出てくるわき芽は子イモから発生したもので、栄養分が葉の成長に取られるのを妨げて子イモに行き渡るようにするため、わき芽の欠き取りも行われる[10]。また土寄せと同様に定期的に追肥を行って育てられる[8]。草丈70 cm以上になった夏の時期は、乾燥に弱いため雨が少ない場合は葉が枯れてしまうことがあることから、しっかり水やりを行ったり、土壌の乾燥を防ぐために株元に刈草を敷いたりすると効果的である[28][10][8]

種子繁殖は品種改良等の交配目的以外で行われることはほとんどない。実生が親株(成体)と比較して相当小さく、生育にかなりの手間を要するためである。採種後乾燥させることなく直ちに播種することにより容易に実生苗が得られる。

収穫・貯蔵[編集]

晩夏から秋にかけて収穫される。収穫適期になると外側から葉茎が黄色から褐色に変化して枯れてくる[28][29]。食べるものは霜が降りる前に収穫するが、貯蔵用のイモは、霜が降りた後に茎が枯れたものを掘るとよいとされる[28]。イモを収穫する際は、茎は株元で切り、周囲から土を掘り上げて株ごと掘り起こし、土を落としながら親イモ・子イモに分ける[28]

貯蔵用のイモは、地下水が少ない畑に穴を掘って、子イモを付けたまま株ごと下向きにして埋め、藁・籾殻を被せて盛り上げるように覆土する[28]。雨が流れ込まないようにトタン板など被せると春まで貯蔵することが出来る[28]

病虫害[編集]

初夏からアブラムシや、ハスモンヨトウセスジスズメの幼虫が葉につきやすくなり、特に夏に晴天が多いと晩夏から初秋まで害虫が増え続ける[28][11]。ハンスモンヨトウなどのイモムシは、見つけたら取って駆除する[28]。病害では黒斑病(こくはんびょう)[注 1]にかかる場合がある[11]

日本国内の主産地[編集]

主な品種[編集]

サトイモの1品種'ブラックマジック'
日本の農業百科事典

昭和20年代の調査では、15品種群、35代表品種に分類されている[30]

日本で栽培される品種は、子イモでの休眠が必要な温帯適応した品種[31]が多く、親イモのまわりにつく子イモを食べる「土垂れ」や「石川早生」などの品種群や、大きくなる親イモだけを食べる「タケノコイモ」群、親イモと子イモの両方を食べる「ヤツガシラ」「セレベス」「赤芽」「唐芋」などの品種群がある[9][3]。他に葉柄を利用するズイキ用の「赤ズイキ(八頭)」群や子イモ系統で比較的耐寒性がある「えぐいも」群、親イモが太っても子イモがほとんどできない系統である「筍芋」などがある。また、別種ではあるがハスイモの茎もズイキとして流通している[32]京料理に使う京野菜の「海老芋」は、唐芋や赤芽を特殊な栽培方法でエビのような形にしたもので[3]、別種の Colocasia antiquorum の一種である[要出典]

地方独自の品種や特産里芋も存在し、秋田県横手市山内地区の「山内いものこ[33]岐阜県中津川市の旧加子母村に伝わる「西方いも[34]、熊本県阿蘇山麓の「つるの子芋」[35]などが知られる。

  • 土垂(どたれ) - 日本では代表的な子イモ専用の品種で、特に関東地方で多く栽培される[11]。ぬめりが多く、粘りが強くて軟らかいので、煮物汁物など何でも合う[9]。晩生で収穫は10 - 11月で[11]、貯蔵性が高いことから一年中出回るが、旬は初秋である[7]
  • 石川早生(いしかわわせ) - 石川子芋ともよばれる直径3 - 5 cmほどの比較的小ぶりな子イモを食べる品種。早生品種で、8月頃から収穫でき、暖地では7月から収穫される[11]。淡泊な味わいで[7]、皮付きのまま蒸して上だけ皮を剥いて塩などで食べる[36]
  • 女早生(おんなわせ) - 愛知県の在来種で、たくさんつく丸い子イモや孫イモを食べる品種。肉質は白く、きめ細かくてもっちりした食感がある[11]
  • 唐芋(とうのいも)
  • タケノコイモ(竹の子芋) - 主に親イモを食べるサトイモで、直径5 - 10 cm、長さ30 cm以上になる大型品種[37]。子イモも食べられる[11]。名の由来は、地上の出ている部分がタケノコに似ることによる[37]。別名で「京芋」ともよばれるが、主産地は宮崎県である[7]。えぐみがあるため、水であく抜きしてから茹でて使われる。ねっとりした肉質で煮崩れしにくく、煮物に向く[36]。「エビイモ」とも呼ばれることもある[11]
  • エビイモ(海老芋) - 主に近畿地方で食べられる京都の伝統野菜で、別名で「京芋」ともよばれている[37]。改良種で芋がエビの尾のように曲がった形で、ハッキリした横縞模様が特徴。ホクホクしたきめ細かい粉質で、煮崩れしにくい[36]
  • セレベス(セレベス芋、赤目芋、赤芽芋) - インドネシアセレベス島が発祥といわれる大きめのサトイモ。別名で「大吉」や[7]、葉や芽が赤いことから「赤目芋」「赤芽芋」とも呼ばれる[11]。親イモ・子イモ・葉柄が食べられている[11]。土垂よりもイモがやや長く、皮肌の一部が赤い[7]。旬は11 - 12月と言われ[7]、日本在来種に比べてぬめりが少なく、ホクホクした食感で肉質がしっかりしており、煮物などに向く[36]
  • ヤツガシラ(八つ頭) - 親イモに子イモ、孫イモが結合してゴツゴツした塊状に大きくなり、一つの種芋から芽が八方に突き出るので「八つ頭」と呼ばれ、親イモ・子イモとも食用される[38][7]。晩生品種で、しっかりした肉質とホクホク感が強く、縁起物として正月料理のおせち料理雑煮に使われる[9]。イモは水分が少なく粉質[7]。赤味を帯びた葉柄も「赤ずいき」と称して食べられ、皮を剥いて水にさらしてから茹でて、酢の物、和え物、煮物に使われる[36][11]
  • 甚五右ヱ門芋 - 土垂系の小型種で、山形県の伝統品種。イモはやや細長い形で、肉質は軟らかくてぬめりが強い[36]
  • 大野里芋(おおのさといも) - 福井県大野地方の在来種。親イモのまわりに子イモが纏まりつくようにできる。イモは粘質で、親イモ・子イモを食べる[11]
  • 赤芽芋(あかめいも) - 九州地区の赤土で栽培される親イモと子イモが食べられる品種で、芽の部分が赤いのが特徴。イモの皮肌も赤みがかった褐色。粘りがあって軟らかく、煮物に向いている[7]
  • えぐ芋(えぐいも) - 石川早生によく似た子イモを食べる品種で、名の通りえぐみがあるのが特徴。品質的には、他のサトイモに劣る[7]
  • 味間いも
  • タイモ

その一方で欧米圏では観葉植物としての栽培がほとんどで、食用品種としての改良は稀である。

食用[編集]

アフリカガーナで市場に並ぶいもがら

煮物の材料として、日本では極めて一般的な存在である。各地の芋煮会いもたき(いもだき)の主材料でもある。食材としての旬は9 - 11月で、イモの皮の部分にある縞模様がハッキリ出ていて、地肌の部分が黒ずんでいないものが商品価値の高い良品とされる[9]

親イモに寄り添うように、子イモ、孫イモとたくさんのイモができる、これら子イモや孫イモを「芋の子(いものこ)」と呼ぶ。親イモ、子イモ、孫イモが塊状になる品種にヤツガシラ(八頭)があり、イモのつく形状から、子孫繁栄の縁起物として正月料理等にも用いられる[8]

唐芋・ヤツガシラの茎(葉柄)の部分を軟らかく栽培したものは芋茎(ずいき)と呼ばれ、食用にされる[36][21]。芋茎でも皮肌の赤いものを「ずいき」または「赤ずいき」と呼ぶのに対し、軟白栽培したものを「白だつ」または「白ずいき」と呼ぶ[3]。芋茎を干したものは「イモガラ」とも称され[36]、水で戻してから、煮物や味噌汁の具などにして調理されることが多い[11]。サトイモの芽を軟白栽培して長く育てたものは「芽芋」とよび、初秋から春まで出回り、煮物や酢の物などにする[7]。「青ずいき」の別称を持つハスイモColocasia gigantea)は、葉柄を収穫するために栽培されるサトイモの近縁種で、イモは食べない[3]

サトイモは地中海沿岸諸国では古代から食用として栽培されており、古代ローマの料理書『アピシウス』には6種類のコロンカシアの料理法が記されている[39]キプロス島エジプトではサトイモは伝統的な食品として、多くの料理法が今日に伝わっている。ヨーロッパではサトイモの歯ごたえが好まれ、ぬめりは好まれないため、油で揚げたり、レモン汁など酸味の強い調味料を使ったりして、ぬめり取りと歯ごたえの調節を行う[39]

栄養素[編集]

さといも 球茎 生[40]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 243 kJ (58 kcal)
13.1 g
デンプン 正確性注意 11.2 g
食物繊維 2.3 g
0.1 g
飽和脂肪酸 0.01 g
多価不飽和 0.03 g
1.5 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
5 µg
チアミン (B1)
(6%)
0.07 mg
リボフラビン (B2)
(2%)
0.02 mg
ナイアシン (B3)
(7%)
1.0 mg
パントテン酸 (B5)
(10%)
0.48 mg
ビタミンB6
(12%)
0.15 mg
葉酸 (B9)
(8%)
30 µg
ビタミンC
(7%)
6 mg
ビタミンE
(4%)
0.6 mg
ミネラル
カリウム
(14%)
640 mg
カルシウム
(1%)
10 mg
マグネシウム
(5%)
19 mg
リン
(8%)
55 mg
鉄分
(4%)
0.5 mg
亜鉛
(3%)
0.3 mg
(8%)
0.15 mg
セレン
(1%)
1 µg
他の成分
水分 84.1 g
水溶性食物繊維 0.8 g
不溶性食物繊維 1.5 g
ビオチン(B7 3.1 µg
有機酸 0.6 g

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[41]。廃棄部位: 表層
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

生芋の可食部100グラム (g) 中において、炭水化物は13.1 g、タンパク質1.5 g、灰分1.2 g、脂質0.1 gが含まれている[3]。炭水化物はでんぷんを主成分とし、イモ類の中では最も低カロリーである[9][8]。サトイモのでんぷんは、加熱すると非常に消化・吸収がよくなるという特徴がある[3]穀類野菜の両方の性質をもつイモ類の中でも、野菜の性格を強く持つ食材で、タンパク質と脂質は少なく、水分は約84%と芋の中では水分が多い[3]。ビタミン類は糖質をエネルギーへ効率よく変換する働きがあるビタミンB1が多く含まれているが、他の溶脂性ビタミン類は特に多くはないものの、一度に食べる量が多い食材であることから、栄養摂取量は比較的多くなる傾向にある[3]。ミネラル類では、余分な塩分を体外に排出させる働きがあるカリウムが大変多く、イモ類の中ではカリウムが特に豊富なのも特徴である[9]。その他カルシウムマグネシウム亜鉛などもバランス良く含まれている[3]

食物繊維も豊富で、独特のぬめりや粘りはマンナンムチレージムシレージ[注 2]ガラクタンという水溶性食物繊維の成分による[9][3]。マンナンはコンニャクにも含まれる水溶性食物繊維であるため便秘予防に、ムチレージには消化促進や胃の粘膜保護、ガラクタンには脳細胞の活性化や免疫力向上の作用、血糖値や血中コレステロールを下げる働きがあるとされる[32][9][3]。これらの食物繊維は、腸内で善玉菌のエサとなり、腸内環境を良好な状態に保つのに役立つ[3]。生食では、えぐ味や渋味が強い。これはある種のタンパク質が付着したシュウ酸の針状結晶が多く含まれるためで、その結晶が口腔内に刺さることによって引き起こされる。加熱等でタンパク質を変性させると渋みは消える。

主な料理[編集]

含め煮やうま煮などの煮物きぬかつぎ田楽、汁の実、炒め物揚げ物ご飯物など、日本料理中華料理に向く食材である[3]。また豚汁の具などとして用いられる[42]

簡単な調理法として、丸ごと茹でて皮を剥き、塩や醤油をつけて食べるということも行われる。煮物にする際は、直に煮ることも出来るが、ぬめりを除いたほうが味がしみやすくなる[3]

イモは厚めに皮を剥き、焼きミョウバン水に付けておくと、ある程度のぬめり取りと、料理の出来映えよく白くきれいに仕上げることが出来る[9]。下茹でを行うことによってイモに含まれる灰汁やぬめりを取ることができ、茹でている湯に泡が立ったらザルにとって流水で流したあと、新たに水を入れて茹でて調理する[9][3]。米のとぎ汁で茹でることにより、白く軟らかく茹で上げることも出来る[3]

芋茎(ずいき)は灰汁が強いため、切ったら酢水につけて、酢水で茹でてからさらに水にさらし、灰汁抜きをするとよいと言われている[3]

洗う[編集]

サトイモのを洗って除く場合、皮が付いたままのイモを数多くたらいに入れてを張り、これを棒や板で左右に掻き回す。板の方が効率的である。桶やたらいの内径より少し幅の狭い板を用い、板の両端を持って左右に約60ほど交互に回転させる。これによって、サトイモ同士が触れてぶつかり合い、その摩擦によって皮が剥がれる[注 3]。この作業を「芋の子を洗う」または「芋を洗う」と言うが、スイミングプールや海水浴場が混雑する様を「芋の子を洗うような」または「芋を洗うような」と比喩的に表現することがある。

なお、各地の生産地では中が空洞でそこに水が入るようになっている小型の水車の中にサトイモを入れ、それを川や水路の岸に軸を渡して水車を回して洗浄と皮むきを同時に行うこともある。

手がかゆくなる[編集]

サトイモを洗うと手が痒くなるが、これは茎や球茎にシュウ酸カルシウムの結晶が含まれているためである。球茎の皮の下2 - 3ミリメートルほどにある細胞の中に多くのシュウ酸カルシウム結晶が含まれており、大きな結晶が僅かな外力によって壊れて針状結晶へ変わり、外部へと飛び出る。食品としてイモを洗う場合に、作業従事者の皮膚にこの針状結晶が刺さって痒くなる。手のかゆみを防ぐには、手袋を用いるか、手に重曹や塩をまぶすとよい[3][32]

サトイモは極めて若い時期からシュウ酸カルシウムを針状結晶や細かい結晶砂として細胞内に作り始める。やがてこれらが集合して、大きく脆い結晶の固まりとなる。シュウ酸カルシウムは「えぐ味」の原因ともなり、えぐ味はシュウ酸カルシウムが舌に刺さることによって起きるとする説や、化学的刺激であるとする説があり、他にもタンパク質分解酵素によるとする説がある。サトイモは昆虫から身を守るためにこのようなものを作り出していると考えられている[43]

保存[編集]

寒さと乾燥には弱いため、土付きのイモは冷蔵せずに、新聞紙などに包んで13 - 15℃の冷暗所で保存する[9][8]。洗ってあるイモはポリ袋に入れるやラップに包んで乾燥を防いで冷蔵保存し、早めに使い切るようにする[9]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 葉に黒色や褐色の斑ができて、次第に枯れていく植物の病気。病原菌はカビ(糸状菌)の一種で、高温多雨が続くと発生しやすい特徴がある。
  2. ^ 古い文献ではムチンと称してきたが、ムチンは動物性粘液を指すもので、植物性粘液成分はムチレージである。
  3. ^ 抱えて持ち運べる程の小型の専用の水車の中にサトイモを入れ、小川用水路などで水の流れによって回転させ洗う場合もある。サトイモの皮は付着が緩やかでありこのようにして除けるが、サツマイモジャガイモはこのようにして皮を除くことは出来ない。

出典[編集]

  1. ^ 以上は邑田仁監修、米倉浩司『維管束植物分類表 = Syllabus of the Vascular Plants of Japan』北隆館、2013年4月、初版、pp. 47-48.。ISBN 978-4-8326-0975-4
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  10. ^ a b c d 丸山亮平編 2017, p. 105.
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参考文献[編集]

  • 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日、108 - 109頁。ISBN 978-4-415-30997-2
  • 金子美登『有機・無農薬でできる野菜づくり大辞典』成美堂出版、2012年4月1日、186 - 189頁。ISBN 978-4-415-30998-9
  • 講談社編『からだにやさしい旬の食材 野菜の本』講談社、2013年5月13日、188 - 189頁。ISBN 978-4-06-218342-0
  • 藤田智監修 NHK出版編『NHK趣味の園芸 やさいの時間 藤田智の新・野菜づくり大全』NHK出版〈生活実用シリーズ〉、2019年3月20日、112 - 113頁。ISBN 978-4-14-199277-6
  • 丸山亮平編『野菜づくり大辞典』ブティック社〈ブティック・ムック〉、2017年5月20日、104 - 105頁。ISBN 978-4-8347-7465-8

関連項目[編集]

外部リンク[編集]