「シナモン」の版間の差分

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Laureaceae => Lauraceae
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{{Otheruses|植物}}
{{Otheruses|香辛料}}
{{生物分類表
|名称 = シナモン
|色 = lightgreen
|画像=[[画像:Cinnamomum_verum_-_Köhler–s_Medizinal-Pflanzen-182.jpg|250px]]
|画像キャプション = シナモン<br />『[[ケーラーの薬用植物]]』から
|界 = [[植物界]] [[:w:Plantae|Plantae]]
|門 = [[被子植物門]] [[:w:Magnoliophyta|Magnoliophyta]]
|綱 = [[双子葉植物綱]] [[:w:Magnoliopsida|Magnoliopsida]]
|目 = [[クスノキ目]] [[:w:Laureales|Laureales]]
|科 = [[クスノキ科]] [[:w:Lauraceae|Lauraceae]]
|属 = [[ニッケイ属]] ''[[:en:Cinnamomum|Cinnamomum]]''
|種 = '''シナモン''' ''C. zeylanicum''
|学名 = ''Cinnamomum zeylanicum'' [[ヤン・スヴァトプルク・プレスル|J.Presl]]
|和名 = セイロンニッケイ<!--(錫蘭肉桂)生物名はカタカナ-->
|英名 = Cinnamon
}}
[[image:Cinnamomum verum.jpg|thumb|240px|シナモンスティック]]
[[image:Cinnamomum verum.jpg|thumb|240px|シナモンスティック]]
'''シナモン'''(英:Cinnamon学名:''Cinnamomum verum''、シノ''Cinnamomum zeylanicum'')とは熱帯に生育する[[クスノキ科]]常緑、またその樹皮からられる[[香辛料]]である。'''ニッキ'''とも。また、[[生薬]]として用いられるときには'''桂皮'''(ケイヒ)と呼ばれる。特徴的な芳香成分は[[シンナムアルデヒド]]、[[オイゲノール]]、[[サフロール]]など。
'''シナモン'''({{lang-en-short|Cinnammon}})は[[ッケイ属]](''Cinnamomum'')の複数の樹皮からられる[[香辛料]]である。'''ニッキ'''(肉桂〔ニッケイ〕の音変化)とも。また、[[生薬]]として用いられるときには'''桂皮'''(ケイヒ)と呼ばれる。特徴的な芳香成分は[[シンナムアルデヒド]]、[[オイゲノール]]、[[サフロール]]など。


原産地は[[中国]]南部から[[ベトナム]]のあたりにかけてと推測されている。熱帯各地ではばひろく栽培される。香り高く、『[[スパイス]]の王様』と呼ばれる<ref>[[渡辺一也]]「リキュール&カクテル大事典」([[ナツメ社]])、194項</ref>。
熱帯各地ではばひろく栽培される。香り高く、『[[スパイス]]の王様』と呼ぶ者もいる<ref>渡辺一也「リキュール&カクテル大事典」([[ナツメ社]])、194項</ref>。


== 利用 ==
== 概要 ==
=== 利用史 ===
=== 利用史 ===
世界最古のスパイスともいわれ、[[紀元前]]4000年ごろから[[エジプト]]で[[ミイラ]]の[[防腐剤]]として使われ始めた。また、紀元前6世紀頃に書かれた旧約聖書の『[[エゼキエル書]]』や[[古代ギリシア]]の詩人[[サッポー]]の書いた[[詩]]にもシナモンが使われていたことを示す記述がある。
世界最古のスパイスともいわれ、[[紀元前]]4000年ごろから[[エジプト]]で[[ミイラ]]の[[防腐剤]]として使われ始めた。また、紀元前6世紀頃に書かれた旧約聖書の『[[エゼキエル書]]』や[[古代ギリシア]]の詩人[[サッポー]]の書いた[[詩]]にもシナモンが使われていたことを示す記述がある。
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=== 香辛料 ===
=== 香辛料 ===
[[香辛料]]としての'''シナモン'''(シンナモンとも)は上記のシナモンの樹皮をはがし、乾燥させたもの。独特の甘みと香り、そしてかすかな辛味があり[[カプチ]]等の飲料や[[アップルパイ]]、[[シナモンロール]]などの[[洋菓子]]の香り付けに使われる。[[南アジア]]、[[中東]]、[[北アフリカ]]では料理の香りづけに頻繁に用いられる。[[インド料理]]の配合香辛料[[ガラムマサラ]]の主要な成分でもある。インドの[[チャイ]]の香りづけにもかかせない。近縁種の'''[[シナニッケイ]]'''(支那肉桂、'''ニッキ'''、{{Snamei|C. cassia}})の樹皮からも作られる。ただしシナニッケイからつくられるものは'''カシア'''と呼ばれ、成分が若干異なる。
[[香辛料]]としての'''シナモン'''(シンナモンとも)は上記のシナモンの樹皮をはがし、乾燥させたもの。独特の甘みと香り、そしてかすかな辛味があり[[カクテル]]、[[紅茶]]、[[コーヒー]]等の飲料や[[アップルパイ]]、[[シナモンロール]]などの[[洋菓子]]の香り付けに使われる。[[南アジア]]、[[中東]]、[[北アフリカ]]では料理の香りづけに頻繁に用いられる。[[インド料理]]の配合香辛料[[ガラムマサラ]]の主要な成分でもある。インドの[[チャイ]]の香りづけにもかかせない。近縁種の'''[[シナニッケイ]]'''(支那肉桂、'''ニッキ'''、{{Snamei|C. cassia}})の樹皮からも作られる。ただしシナニッケイからつくられるものは'''カシア'''と呼ばれ、成分が若干異なる。


粉末状に加工したいわゆるシナモンパウダーのほか、樹皮のまま細長く巻いた形のシナモンスティック('''カネール'''({{lang-fr|cannelle}})とも)が広く流通する。
粉末状に加工したいわゆるシナモンパウダーのほか、樹皮のまま細長く巻いた形のシナモンスティック('''カネール'''({{lang-fr|cannelle}})とも)が広く流通する。
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シナモンは、生であれ加熱調理後であれ、[[α-アミラーゼ]]、[[α-グルコシダーゼ]]のいずれに対しても、顕著な阻害作用を示し、糖尿病予防への可能性が示唆されたとする研究が存在する<ref name="sogai1996">[http://dx.doi.org/10.3136/nskkk.43.157 市販香辛料のα-アミラーゼ活性およびα-グルコシダーゼ活性に及ぼす影響]、三浦 理代、五明 紀春、日本食品科学工学会誌、Vol.43 (1996年) No.2 P157-163</ref>。ただし福場博保らによる「阻害効果なし」の研究も存在する<ref name="sogai1996" />。
シナモンは、生であれ加熱調理後であれ、[[α-アミラーゼ]]、[[α-グルコシダーゼ]]のいずれに対しても、顕著な阻害作用を示し、糖尿病予防への可能性が示唆されたとする研究が存在する<ref name="sogai1996">[http://dx.doi.org/10.3136/nskkk.43.157 市販香辛料のα-アミラーゼ活性およびα-グルコシダーゼ活性に及ぼす影響]、三浦 理代、五明 紀春、日本食品科学工学会誌、Vol.43 (1996年) No.2 P157-163</ref>。ただし福場博保らによる「阻害効果なし」の研究も存在する<ref name="sogai1996" />。


==語源==
=== 観葉植物 ===
「シナモン」という言葉はその中茶色をも指す。シナモンは複数の植物種とそれらの一部が作り出す商業的香辛料の名称である。それらは全て[[クスノキ科]]のニッケイ属(''Cinnamomum'')に属する<ref>{{cite EB1911|wstitle=Cinnamon |volume=6 |page=376 |short=1}}</ref> 。数種のニッケイ属植物のみが香辛料のために商業的に育てられている。[[セイロンニッケイ]](''Cinnamomum verum'')は「'''真のシナモン'''」と見なされることもあるが、国際通商におけるほとんどのシナモンはその近縁種の{{仮リンク|シナニッケイ|en|Cinnamomum cassia}}(''Cinnamomum cassia'')に由来する。シナニッケイ由来の香辛料は'''カシア'''(cassia)とも呼ばれる<ref name=fao93>{{cite web |url=http://www.fao.org/docrep/x5326e/x5326e07.htm |title=International trade in non-wood forest products: An overview |author=Iqbal, Mohammed |year=1993 |work= FO: Misc/93/11 – Working Paper |publisher= Food and Agriculture Organization of the United Nations |accessdate=12 November 2012}}</ref><ref name=":1">{{cite book|url=https://books.google.com/books?id=QmevzbQ0AsIC |title=A history of food |date=2009|publisher=Wiley-Blackwell |isbn=978-1405181198 |edition=New expanded |location=Chichester, West Sussex |pages= |quote=Cassia, also known as cinnamon or Chinese cinnamon is a tree that has bark similar to that of cinnamon but with a rather pungent odour |last1=Bell |first1=Maguelonne Toussaint-Samat ; translated by Anthea<!--surname missing-->}}</ref>。
葉は大きく光沢があり、葉脈がはっきりしていて美しく、観葉植物として利用されることもある。

15世紀から英語に実際の用例が確認できる英単語の"cinnamon" は、[[古代ギリシア語|ギリシア語]]の{{lang|el|κιννάμωμον}}(kinnámōmon)から[[ラテン語]]および[[中世フランス語]]を経て取り入れられた。ギリシア語の単語は[[フェニキア語]]からの借用語であり、これは近縁関係にある[[ヘブライ語]]の単語 {{lang|he|קינמון}} (qinnamon) と似ていた<ref name="oed">{{cite OED2|cinnamon}}; also {{OEtymD|cinnamon}}.</ref>。西暦1000年頃に英語で初めて記録された「カシア ''cassia''」という名称はラテン語からの借用であり、突き詰めていくと「樹皮を剥ぐ」という意味のヘブライ語の動詞 ''qātsaʿ'' の一形態である ''q'tsīʿāh'' に由来する<ref>{{cite OED2|cassia}}; also {{OEtymD|cassia}}.</ref>。

[[初期近代英語]]は ''canel'' および ''canella''という名称も使った。これらは複数の欧州言語におけるシナモンの現在の名称と似ており、ラテン語の単語''cannella''(管を意味する''canna''の指小辞形)に由来する(樹皮が乾燥すると丸まることから)<ref>{{cite OED2|canella; canel}}.</ref>。

== 歴史 ==
{{refimprove section|date=February 2017}}
=== 古代史 ===
シナモンは[[古代|大昔]]から知られている。早ければ紀元前2000年にエジプトへ持ち込まれたが、中国からもたらされたと報告している者らはシナモンとカシアを混同している<ref name=":1" />。シナモンは古代国家で非常に高値で取り引きされており、統治者や神への贈り物と見なされた。刻まれた碑文には、シナモンとカシアが[[ミレトス]]にある[[アポローン|アポロン]]の神殿へ贈られたことが記録されている<ref>Toussaint-Samat 2009, p. 437</ref>。シナモンがどこから来るかについては地中海世界では何世紀にもわたって[[香辛料貿易]]を行う仲買人によって市場の独占を守るために秘密にされていたが、シナモンは[[インド]]、[[スリランカ]]、[[バングラデシュ]]、[[ミャンマー]]原産である<ref name="EB">{{cite book |url=https://global.britannica.com/plant/cinnamon|title=Encyclopaedia Britannica |publisher=|year=2008|isbn=1-59339-292-3|location=|pages=|chapter=Cinnamon|quote=(species Cinnamomum zeylanicum), bushy evergreen tree of the laurel family (Lauraceae) native to Malabar Coast of India, Sri Lanka (Ceylon) Bangladesh and Myanmar (Burma).}}<!--better link needed--></ref>。

「''Kasia'' カシア」に関する最初のギリシャでの言及は紀元前7世紀の[[サッポー]]による詩で見られる。[[ヘロドトス]]によれば、シナモンとカシアはどちらも香や[[没薬]]、{{仮リンク|ラブダナム|en| Labdanum}}と共にアラビアで育ち、[[竜|翼のあるヘビ]]によって護られていた{{citation needed|date=April 2017}}。

エジプトの香、{{仮リンク|キフィ|en|Kyphi}}には{{仮リンク|プトレマイオス王国|en|Ptolemaic Kingdom|label=ヘレニズムの時代}}以降、シナモンとカシアが含まれていた。ギリシャ人統治者らから神殿への贈り物にはカシアとシナモンが含まれていることもあった。古代エジプトでは、シナモンは[[ミイラ]]に香気を満たす(防腐処置を施す)ために使われていた<ref name=":0">{{Cite book|url=https://books.google.com/books?id=MaAZMbSxNt4C|title=Herbal principles in cosmetics: properties and mechanisms of action |last=Burlando|first=B. |last2=Verotta |first2=L. |last3=Cornara |first3=L. |last4=Bottini-Massa |first4=E. |publisher=CRC Press |year=2010 |isbn=978-1-4398-1214-3 |location=Boca Raton |page =121}}</ref>。

シナモンは[[アラビア半島]]に冬の[[貿易風]]を利用して「かじも帆も櫂もない筏」で持ってこられた<ref>{{cite book |author1=Pliny the Elder |author2=Bostock, J. |author3=Riley, H.T. |year=1855 |volume=3 |title=Natural History of Pliny, book XII, The Natural History of Trees |chapter=42, Cinnamomum. Xylocinnamum |publisher=Henry G. Bohn |location=London |url=https://archive.org/details/naturalhistoryof03plin |pages=137–140}}</ref>。[[ガイウス・プリニウス・セクンドゥス|大プリニウス]]もワインのための香り付けとしてカシアに言及している<ref name="NaturalisHistoria">{{Cite book |url=https://books.google.com/books?id=L35fAAAAMAAJ |title=Natural History(博物誌)|author=Pliny the Elder(大プリニウス) |date=1938 |publisher=Harvard University Press |isbn=978-0-674-99433-1 |page=14}}</ref>。

大プリニウスによれば、1ローマン・ポンド(327 g)のカシア<ref>アラビアおよびエチオピアからの''Cinnamomum Iners''({{仮リンク|イヌニッケイ|en|Cinnamomum Iners}} ''Cinnamomum Iners'' <small>Reinw. ex Bl.</small>と別種か)。</ref>、シナモン、またはserichatum<ref>中国の[[シナニッケイ]]由来。</ref>は最大300[[デナリウス]]の値が付いた<ref name="NaturalisHistoria"/>。これは10か月の労働の賃金と同じであった<ref name="NaturalisHistoria"/>。[[ディオクレティアヌス]]の{{仮リンク|最高価格令|en|Edict on Maximum Prices}}<ref>Graser, E. R. A text and translation of the Edict of Diocletian, in ''An Economic Survey of Ancient Rome, Volume V: Rome and Italy of the Empire''. Johns Hopkins Press. 1940. {{ISBN|978-0374928483}}</ref>(紀元前301年)は1ポンドのカシアに125デナリウスの価格を与えているが、農業労働者の1日の賃金は25デナリウスであった。シナモンはローマでは火葬用の薪に一般的に使うには高価過ぎたが、皇帝[[ネロ]]は西暦65年に行われた妻[[ポッパエア・サビナ]]の葬儀のために都市の一年分に相当するシナモンを燃やしたと言われている<ref>Toussaint-Samat 2009, p. 437f.</ref>。

{{仮リンク|マラバトゥルム|en|Malabathrum}}(Malabathrum)の葉は、ローマの[[食通]]ガイウス・ガビウス・[[アピシウス]]によって料理や、牡蠣のための[[キャラウェイ]]ソースに使われる油を蒸留するために使われた<ref>''[[アピシウス |De re coquinaria]]'', I, 29, 30; IX, 7</ref>。アピシウスによれば、マラバトゥルムは香辛料の中でもよい厨房が備えていなければならないものである。

=== 中世 ===
[[中世]]を初めから終わりまで、シナモンの源は西洋世界では謎であった。ヘロドトスを引用したラテン語の著作家を読むことで、ヨーロッパ人はシナモンが[[紅海]]を上ってエジプトの貿易港に達することを学んだが、どこからやって来るかについては決して明らかでなかった。[[ジャン・ド・ジョアンヴィル]]が1248年の[[第7回十字軍|十字軍]]においてフランス王ルイ9世に同行しエジプトへ向かった時、彼は「シナモンは[[ナイル川]]の水源の外の世界の縁(すなわち[[エチオピア]])で網ですくい上げられる」と教えられた(そして自身で考えた)と記録した。[[マルコ・ポーロ]]はこの話題について正確な言及を避けた<ref>Toussaint-Samat 2009, p. 438 discusses cinnamon's hidden origins and Joinville's report.</ref>。ヘロドトスやその他の著者らはアラビアをシナモンの源とした。彼らは、シナモンの木が育つ未知の土地から巣を作るためにシナモンスティックを集める巨大な{{仮リンク|シナモン鳥|en|cinnamon bird}}とこのスティックを得るために策略を使うアラブ人について物語った。大プリニウスは1世紀に、貿易商が値を釣り上げるために作った話だと記したが、この物語は[[ビュザンティオン]]において1310年まで語り継がれていた。

シナモンがスリランカで育つという最初の言及は1270年頃の{{仮リンク|ザカリーヤ・アルカズヴィーニー|en|Zakariya al-Qazwini}}の『''Athar al-bilad wa-akhbar al-‘ibad'' 諸国の遺跡と神の僕の記録』にある<ref>{{cite web | last=Tennent | first=Sir James Emerson | title=Account of the Island of Ceylon | url=https://www.biodiversitylibrary.org/item/61724#page/11/mode/1up | accessdate=8 November 2014}}</ref>。その後すぐ、[[ジョヴァンニ・ダ・モンテコルヴィーノ]]の1292年頃の書簡にもこのことが記されている<ref>{{cite web | last=Yule | first=Henry | title=Cathay and the Way Thither | url=http://dsr.nii.ac.jp/toyobunko/III-2-F-b-2/V-1/page/0487.html.en | accessdate=15 July 2008 | postscript=<!--None--> }}</ref>。

インドネシアの筏は[[モルッカ諸島]]から東アフリカまでシナモンを直接輸送し([[ラプタ]]を参照)、その後地元の商人が北へ、エジプトの[[アレクサンドリア]]まで運んだ<ref>{{cite news|url=http://findarticles.com/p/articles/mi_m1310/is_1984_June/ai_3289703|title=The life of spice; cloves, nutmeg, pepper, cinnamon &#124;|last=|first=|date=|work=UNESCO Courier|archive-url=https://archive.is/20120709044345/http://findarticles.com/p/articles/mi_m1310/is_1984_June/ai_3289703|archive-date=9 July 2012|dead-url=yes|publisher=Findarticles.com|year=1984|accessdate=18 August 2010}}</ref><ref>{{cite web|author=Independent Online |url=http://www.iol.co.za/index.php?click_id=588&art_id=iol1078376795319P146&set_id=1 |archive-url=https://web.archive.org/web/20050408160407/http://www.iol.co.za/index.php?click_id=588&art_id=iol1078376795319P146&set_id=1 |dead-url=yes |archive-date=8 April 2005 |title=News – Discovery: Sailing the Cinnamon Route (Page 1 of 2) |publisher=Iol.co.za |accessdate=18 August 2010 |df= }}</ref><ref>{{cite journal |jstor=299440 |pages=222–224 |last1=Gray |first1=E. W. |title=The Spice Trade of the Roman Empire 29 B.C. – A.D. 641 |volume=60 |journal=The Journal of Roman Studies |year=1970 |doi=10.2307/299440 |last2=Miller |first2=J. I.}}</ref>。イタリアからの[[ヴェネツィア]]人商人がヨーロッパにおける香辛料取引を[[独占]]していた。[[マムルーク朝]]や[[オスマン帝国]]といったその他の地中海勢力の台頭によるこの貿易の崩壊は、ヨーロッパ人がその他の交易路のためにアジアへと足を延ばすことになった主要な要因の一つであった。

===近世前期===
1500年代の間、[[フェルディナンド・マゼラン]]はスペインを代表して香辛料を探索し、[[フィリピン]]においてスリランカ産のシナモン[[セイロンニッケイ|''Cinnamomum verum'']]と近縁の''Cinnamomum mindanaense''を発見した。このシナモンは後に([[ポルトガル]]が権益を握っていた)スリランカ産シナモンと競い合うようになった<ref>{{cite journal |last=Mallari |first=Francisco |date=December 1974 |title=The Mindinao Cinnamon |journal=Philippine Quarterly of Culture and Society |publisher=University of San Carlos Publications |volume=2 |pages=190–194 |jstor=29791158 |number=4}}</ref>。

1638年、オランダ商人がスリランカにおいて交易所を設立し、1640年までに工場の支配権を握り、1658年までに残っていたポルトガル人を追放した。オランダ人船長は「島の海岸はシナモンで埋め尽くされていて、これは東洋で最高の品である。島の風下にいたならば、海に出て8[[リーグ (単位)|リーグ]]までシナモンの香りを嗅げる」と記している<ref>{{cite book | last1=Braudel | first1=Fernand | title=The Perspective of the World | volume=3 | publisher=University of California Press | year=1984 | page=699 | isbn=0-520-08116-1}}</ref>{{rp|15}}。[[オランダ東インド会社]]は野生のシナモンの収穫方法の見直しを続け、結局は自身の木の栽培を始めた。

1767年、[[イギリス東インド会社]]のブラウン卿は[[ケーララ州]][[カンヌール]]地区の{{仮リンク|アンジャラカンディー|en|Anjarakkandy}}の近くにアンジャラカンディーシナモン農園を開き、この農園はアジアで最大のシナモン農園となった。イギリスは1796年にオランダを抑えてセイロンを支配した。

== 栽培 ==
[[File:CinnamonLeaves.jpg|thumb|野生のシナモンの木の葉]]

シナモンは常緑樹で、卵形の葉、厚い樹皮、液果([[ベリー]])が特徴である。香辛料を収穫する際は、樹皮と葉が主な使用部位である<ref name=":0" />。シナモンは2年間栽培された後、[[萌芽更新|刈り取られる]]、すなわち幹を地表面の高さまで切る。翌年、たくさんの新しい芽が切り株から生える([[萌芽更新]])。Colletotrichum gloeosporioidesや''Diplodia'' spp.、{{仮リンク|ピュトプトラ・キンナモミ|en|Phytophthora cinnamomi|label=''Phytophthora cinnamomi''}}といった多くの疫病菌がシナモンの成長に影響を与えうる<ref>{{cite web|url=https://www.plantvillage.org/en/topics/cinnamon/diseases_and_pests_description_uses_propagation|title=Cinnamon|publisher=Plant Village, Pennsylvania State University|date=2017|accessdate=28 February 2017}}</ref>。

幹は収穫後、内樹皮が乾燥しないうちに素早く処理しなければならない。刈り取られた幹は外樹皮を削り取ることで処理され、次に内樹皮をほぐすために枝をハンマーでむらなく叩き、次に内樹皮は長いロール状に取り外される。わずか{{convert|0.5|mm|2|abbr=on}}の内樹皮が使用される{{citation needed|reason=the cassia in my pantry seems much thicker than that|date=August 2014}}。外側の木質部は廃棄され、内樹皮は乾燥によって長さ数メートルのシナモンの切れは丸まる。処理済み樹皮は4から6時間完全に乾かされ、換気がよく比較的暖い環境に置かれる。乾燥するとすぐに、樹皮は売買のために長さ5から10 cmに切られる。理想的とは言えない乾燥した環境は樹皮中の有害生物の増殖を促し、そうなると薫蒸消毒処理が必要となる。薫蒸された樹皮は未処理樹皮と同じ高品質とは見なされない。

=== 種 ===
数多くの種がシナモンとして売られている<ref>[http://www.seasoningandspice.org.uk/ssa/background_culinary-herbs-spices.aspx Culinary Herbs and Spices], The Seasoning and Spice Association. Retrieved 3 August 2010.</ref>。
* {{仮リンク |シナニッケイ|en|Cinnamomum cassia}} ''Cinnamomum cassia''(カシアまたはチャイニーズシナモン、最も一般的な大量生産品)
* {{仮リンク|インドグス|en|Cinnamomum burmannii}} ''C. burmannii''(コリンチェ ''Korintje''、[[パダン]]カシア、インドネシアシナモン)
* {{仮リンク|キンナモムム・ロウレイロイ|en|Cinnamomum loureiroi|label=''C. loureiroi''}}(サイゴンシナモン、ベトナムカシア、ベトナムシナモン)
* [[セイロンニッケイ]] ''C. verum''(スリランカシナモン、セイロンシナモン)
* {{仮リンク|キンナモムム・キトゥリオドルム|en|Cinnamomum citriodorum|label=''C. citriodorum''}}(マラバルシナモン)
* {{仮リンク|タマラニッケイ|en|Cinnamomum tamala}} ''C. tamala''(インドシナモン)

カシアは強くピリッとした香りで、パンを焼く条件に適しているため、パン焼き(特に[[シナモンロール]])によく使われる。カシアの中で、チャイニーズシナモンは一般的に色は中くらいから明い赤茶色で、質感は堅く木質で、全ての樹皮層が使われているため他より厚い(厚さ2-3 mm)。薄い内樹皮のみが使われるセイロンシナモンは、より明るい茶色で、よりきめ細かく、より低密度で、よりもろい質感である。セイロンシナモンはカシアよりも繊細で香りが良いと考えられており、調理の間にその香りを失いやすい。

セイロンニッケイ中の抗凝血の働きがある[[クマリン]]の量はカシアよりもかなり低い<ref name="bfr.bund.de">[http://www.bfr.bund.de/cm/245/high_daily_intakes_of_cinnamon_health_risk_cannot_be_ruled_out.pdf High daily intakes of cinnamon: Health risk cannot be ruled out. BfR Health Assessment No. 044/2006, 18 August 2006 <!-- Bot generated title --> ]</ref><ref>{{cite web|url=http://www.hs.fi/english/article/Espoo+daycare+centre+bans+cinnamon+as+moderately+toxic+to+liver/1135249842234 |archive-url=https://web.archive.org/web/20091014212615/http://www.hs.fi/english/article/Espoo%2Bdaycare%2Bcentre%2Bbans%2Bcinnamon%2Bas%2Bmoderately%2Btoxic%2Bto%2Bliver/1135249842234 |dead-url=yes |archive-date=14 October 2009 |title=Espoo daycare centre bans cinnamon as 'moderately toxic to liver' |accessdate=5 September 2010 |df= }}</ref>。

これらの種の樹皮は肉眼で見える特徴と微細な特徴の両方で容易に区別できる。セイロンシナモンのスティック(クイル)は多くの薄い層を持ち、コーヒー・グラインダーなどを使って簡単に粉にすることができるが、カシアのスティックはより堅い。インドネシアシナモン(インドグス)は厚い一つの層から作られた整ったクイルとしてしばしば売られており、コーヒー・グラインダーに損傷を与えうる。サイゴンシナモン(''C. loureiroi'')とシナニッケイ(''C. cassia'')は、樹皮がクイルに巻ける程柔軟ではないため、常に厚い樹皮の破片として売られている。

粉末にされた樹皮は識別がより困難だが、[[ヨードチンキ]]で処理すると純粋なセイロンシナモンではほとんど影響が見られないのに対して、チャイニーズシナモン(カシア)は藍色に呈色する<ref>{{Cite web|url=http://www.botanical.com/botanical/mgmh/c/cassia31.html|title=A Modern Herbal – Cassia (Cinnamon)|last=|first=|date=|website=www.botanical.com|access-date=17 April 2017}}</ref><ref>{{cite book |url=https://books.google.com/?id=IrXszQ77xhYC&pg=PA390&lpg=PA390&dq=iodine+in+cassia#v=onepage&q=iodine%20in%20cassia&f=false |title=The Elements of materia medica and therapeutics |volume=2 |page=390 |first1=Jonathan |last1=Pereira |year=1854}}</ref>。

===格付け===
スリランカの格付け方式はシナモンクイルを4つのグループに分けている。
* Alba: 直径{{convert|6|mm|abbr=on}}未満
* Continental: 直径{{convert|16|mm|abbr=on}}未満
* Mexican: 直径{{convert|19|mm|abbr=on}}未満
* Hamburg: 直径{{convert|32|mm|abbr=on}}未満

これらのグループは詳しい格付けにさらに分けられる。例えば、Mexicanはクイルの直径とキログラム当りのクイルの数によって、M00 000 special、M000000、M0000に分けられる。

長さ106 mm未満の樹皮片はクイリング(quillings)として分類される。フェザリング(featherings)は小枝とねじれた茎のの内樹皮である。チップ(chips)はクイルを刈り落としたかけら、分離できなかった外樹皮と内樹脂、小さな小枝の樹皮である。

==生産==
{| class="wikitable" style="float:right; clear:left; width:18em;"
| colspan=2|<center>'''シナモン生産 – 2014'''
|-
! style="background:#ddf; width:75%;"| 国
! style="background:#ddf; width:25%;"| <small>([[トン]])</small>
|-
|<center>{{INA}} ||style="text-align:right;"|91,400
|-
|<center>{{CHN}} ||style="text-align:right;"|71,146
|-
|<center>{{VIE}} ||style="text-align:right;"|31,674
|-
|<center>{{SRI}} ||style="text-align:right;"|16,766
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|<center>'''世界''' ||style="text-align:right;"|'''213,678'''
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|colspan=2|<center><small>出典: {{仮リンク|国際連合食糧農業機関統計データベース|en|FAOSTAT}}(FAOSTAT)<ref name="faostat14">{{cite web|url=http://faostat3.fao.org/browse/Q/QC/E |title= Global cinnamon production in 2014; Crops/Regions/World list/Production Quantity (pick lists)|date=2017|publisher=UN Food and Agriculture Organization, Corporate Statistical Database (FAOSTAT)|accessdate=2 August 2017}}</ref>
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[[インドネシア]]と[[中国]]が世界のシナモン生産の76%を占めている。2014年、シナモンの世界生産量は213,678[[トン]]で、4か国が合わせて世界の99%を占める: インドネシア(43%)、中国(33%)、ベトナム(15%)、スリランカ(8%)<ref name=faostat14/>。

==食品用途 ==
[[File:Uncooked cinnamon roll buns, March 2010.jpg|thumb|left|加熱していない[[シナモンロール]]のバンズ]]

シナモン樹皮は香辛料として使われる。シナモンは薬味や調味料として料理で主に利用される。特にメキシコでは[[チョコレート]]の製造に使われる。シナモンは鶏肉や羊肉の塩味の料理でもよく使われる。米国では、シナモンと砂糖が[[シリアル食品|シリアル]]、パンを使った料理([[トースト]]など)、[[フルーツ]](特に[[リンゴ]])の風味付けのためによく使われ、{{仮リンク|シナモン・シュガー|en|Cinnamon sugar|label=シナモンと砂糖の混合物}}がこういった目的のために売られている。[[トルコ料理]]でも甘い料理と塩味の料理の両方で使われる。シナモンは[[ピクルス]]や[[エッグノッグ]]といったクリスマスの飲み物にも使われる。シナモンパウダーは[[ペルシャ料理]]の風味を強めるための重要な香辛料であり、様々な濃いスープ、飲み物、甘い食べ物に使われる<ref>{{Cite book|url=https://books.google.com/books?id=6ZLxAQAAQBAJ|title=Spices: A Global History|last=Czarra|first=Fred|date=1 May 2009|publisher=Reaktion Books|isbn=9781861896827|language=en}}</ref>{{rp|10–12}}。

==栄養==
{{nutritionalvalue
| name=シナモン、香辛料、粉末タイプ
| water=10.6 g
| kJ=247
| protein=4 g
| fat=1.2 g
| carbs=80.6 g
| fiber=53.1 g
| sugars=2.2 g
| calcium_mg=1002
| iron_mg=8.3
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| sodium_mg=10
| zinc_mg=1.8
| vitC_mg=3.8
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| source_usda = 1
| note=[https://ndb.nal.usda.gov/ndb/search/list?qlookup=02010&format=Full Link to USDA Database entry]
}}
挽いて粉末にしたシナモンは11%の水、81%の[[炭水化物]](53%の[[食物繊維]]を含む)、4%の[[タンパク質]]、1%の[[脂質]]からなる(表を参照)。100グラムの基準量では<ref name=usdagrdcin>{{cite web|url=https://ndb.nal.usda.gov/ndb/search/list?qlookup=02010&format=|title=Cinnamon, spice, ground, per 100 g |date=May 2016|publisher= US National Nutrient Database, Release 28, United States Department of Agriculture|accessdate=18 September 2017}}</ref>、粉末シナモンは[[ビタミンK]]、[[カルシウム]]、[[鉄]]が豊富に(一日の推奨摂取量の20%以上)、[[ビタミンB6]]、[[ビタミンE]]、[[マグネシウム]]、[[亜鉛]]が中程度に(一日の推奨摂取量の10から19%)含まれている。

==風味、芳香、味==
シナモンの風味は、その組成の0.5から1%を構成する香りの良い[[精油]]によるものである。この精油は樹皮を粗くたたいて粉々にし、海水中で{{仮リンク|浸軟|en|Maceration (food)}}し、次に全体を素早く[[蒸留]]することで調製される。精油はしばしば明い黄色をしており、熟成(老化)すると[[酸素]]との反応によって色は暗くなり、樹脂状化合物が形成される<ref>{{Cite journal|last=Yokomi|first=Naoka|last2=Ito|first2=Michiho|date=1 July 2009|title=Influence of composition upon the variety of tastes in Cinnamomi cortex|journal=Journal of Natural Medicines|volume=63|issue=3|pages=261–266|doi=10.1007/s11418-009-0326-8|issn=1861-0293|pmid=19291358}}</ref>。

シナモンの成分には[[オイゲノール]]<ref>{{cite web|url=https://toxnet.nlm.nih.gov/cgi-bin/sis/search/r?dbs+hsdb:@term+@rn+@rel+8007-80-5|title=Oil of cinnamon |publisher=Toxicology Data Network (TOXNET)|date=6 August 2002|accessdate=29 November 2016}}</ref>などおよそ80種類の化合物が含まれる<ref>{{cite journal|pmid=21929331|year=2011|author1=Jayaprakasha|first1=G. K.|title=Chemistry, biogenesis, and biological activities of ''Cinnamomum zeylanicum''|journal=Critical Reviews in Food Science and Nutrition|volume=51|issue=6|pages=547–62|last2=Rao|first2=L. J.|doi=10.1080/10408391003699550}}</ref>。

===アルコールの香料===
シナモンは{{仮リンク|ファイアボールシナモンウイスキー|en|Fireball Cinnamon Whisky}}といった数多くの[[アルコール飲料]]の人気のある香料である<ref>{{Cite news|url=http://www.thedailymeal.com/11-cinnamon-flavored-liquors-holidays/121613|title=11 Cinnamon-Flavored Liquors for the Holidays|last=Haley Willard|first=|date=16 Dec 2013|work=The Daily Meal|access-date=17 April 2017|language=en}}</ref>。

シナモンと蒸留[[アルコール]]から作られ「シナモンリキュール」と呼ばれるシナモンと[[ブランデー]]の混合飲料はギリシャの一部で人気である。ヨーロッパで人気のあるこういった飲料としては、{{仮リンク|メイワイン|en|May-wine|label=''Maiwein''}}(クルマバソウで香り付けした白ワイン)や[[ズブロッカ]]({{仮リンク|セイヨウコウボウ|en|Hierochloe odorata}}で香り付けしたウォッカ)がある。

==伝統医薬==
シナモンは[[伝統医学]]で使われた長い歴史がある。[[気管支炎]]や[[糖尿病]]といった様々な病態に試されてきたが、シナモン摂取が健康に良い効果があるという科学的証拠はない<ref name="nccih">{{cite web|url=https://nccih.nih.gov/health/cinnamon |title=Cinnamon |publisher=National Center for Complementary and Integrative Health, US National Institutes of Health |date=September 2016 |accessdate=28 February 2017}}</ref>。

==毒性==
{{further|クマリン}}

2008年、[[欧州食品安全機関]]はクマリン(シナモンの主要な成分)の毒性を考慮し、クマリンの最大推奨[[耐容一日摂取量]](TDI)を0.1&nbsp;mg/kg体重と発表した。クマリンは高濃度で肝障害と腎障害を引き起こすこと、{{仮リンク| CYP2A6|en| CYP2A6}}[[多型]]を持つヒトで代謝作用の原因となることが知られている<ref>{{Cite journal | last = Harris | first = Emily | title = German Christmas Cookies Pose Health Danger | url=http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=6672644 | accessdate = 1 May 2007 | publisher = [[National Public Radio]] }}</ref><ref name=efas>{{Cite journal | doi = 10.2903/j.efsa.2008.793| url=http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/793.htm|title=Coumarin in flavourings and other food ingredients with flavouring properties - Scientific Opinion of the Panel on Food Additives, Flavourings, Processing Aids and Materials in Contact with Food (AFC) | journal=EFSA Journal| volume=6| issue=10| pages=793| year=2008}}</ref>。この評価に基づいて、[[欧州連合]]は食品中の最大クマリン含量のガイドラインを、季節料理の生地1 kg中50&nbsp;mg、毎日摂取する焼いた食品1 kg中15&nbsp;mgに定めた<ref>{{Cite news|url=https://www.theguardian.com/world/2013/dec/20/cinnamon-intake-food-argument-denmark|title=Cinnamon sparks spicy debate between Danish bakers and food authorities|last=Russell|first=Helen|date=20 December 2013|newspaper=The Guardian|language=en-GB|issn=0261-3077|access-date=26 November 2016}}</ref>。

クマリンの最大推奨TDI 0.1&nbsp;mg/kg体重は、体重50 kgでクマリン5 mgとなる。

{| class="wikitable"
|-
! !! [[シナニッケイ|''Cinnamomum cassia'']] !! [[セイロンニッケイ|''Cinnamomum verum'']]
|-
| シナモン1 kg中のクマリン (mg) || 100&nbsp;mg – 12,180&nbsp;mg/kg || 100&nbsp;mg/kg未満
|-
| シナモン1 g中のクマリン (mg) || 0.10&nbsp;mg – 12.18&nbsp;mg/g || 0.10&nbsp;mg/g未満
|-
| 体重50 kgでのシナモンTDI || 0.4&nbsp;g – 50&nbsp;g || 50&nbsp;g以上
|}

==画像集==
<gallery class="center" caption="" widths="170px" heights="150px">
File:Cinnamomum Verum vs Cinnamomum Burmannii.jpg|セイロンシナモン(''[[セイロンニッケイ|Cinnamomum verum]]''、左)とインドネシアシナモン(''[[インドグス|Cinnamomum burmannii]]''、右)のクイル
File:CinnamonBarkEssentialOil2.png|シナモン樹皮から調製された[[精油]]
File:“Spiced” Tea – Flavoured by Cinnamon and Cardamom, Comilla, Bangladesh, 26 April 2014.jpg|香料や香辛料としての使用に加えて、シナモンフレーバーティーが温かい飲み物として消費されている
File:Mmm... cinnamon toast (4197664913).jpg|シナモン[[トースト]]
</gallery>


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2018年3月30日 (金) 01:53時点における版

シナモンスティック

シナモン: Cinnammon)は、ニッケイ属Cinnamomum)の複数の樹木の内樹皮から得られる香辛料である。ニッキ(肉桂〔ニッケイ〕の音変化)とも。また、生薬として用いられるときには桂皮(ケイヒ)と呼ばれる。特徴的な芳香成分はシンナムアルデヒドオイゲノールサフロールなど。

熱帯各地ではばひろく栽培される。香り高く、『スパイスの王様』と呼ぶ者もいる[1]

概要

利用史

世界最古のスパイスともいわれ、紀元前4000年ごろからエジプトミイラ防腐剤として使われ始めた。また、紀元前6世紀頃に書かれた旧約聖書の『エゼキエル書』や古代ギリシアの詩人サッポーの書いたにもシナモンが使われていたことを示す記述がある。

中国では後漢時代(25年-220年)に書かれた薬学書『神農本草経』に初めて記載されている。

日本には8世紀前半に伝来しており、正倉院宝物の中にもシナモンが残されている(「桂心」という名称で、薬物として奉納されたもの)。しかし樹木として日本に入ってきたのは江戸時代享保年間のことであった。

香辛料

香辛料としてのシナモン(シンナモンとも)は上記のシナモンの樹皮をはがし、乾燥させたもの。独特の甘みと香り、そしてかすかな辛味がありカクテル紅茶コーヒー等の飲料やアップルパイシナモンロールなどの洋菓子の香り付けに使われる。南アジア中東北アフリカでは料理の香りづけに頻繁に用いられる。インド料理の配合香辛料ガラムマサラの主要な成分でもある。インドのチャイの香りづけにもかかせない。近縁種のシナニッケイ(支那肉桂、ニッキC. cassia)の樹皮からも作られる。ただしシナニッケイからつくられるものはカシアと呼ばれ、成分が若干異なる。

粉末状に加工したいわゆるシナモンパウダーのほか、樹皮のまま細長く巻いた形のシナモンスティック(カネールフランス語: cannelle)とも)が広く流通する。

生理作用

クマリンを含むため、過剰摂取により肝障害を起こす[2][3]。 シナニッケイやニッケイ(肉桂、C. sieboldiiシノニムC. okinawense)は体を温める作用、発汗・発散作用、健胃作用を持つ生薬として利用されておりシナモンにもこれと似た利用法がある。

漢方では桂皮(ケイヒ)と呼ばれる。温熱の作用があるとされ、多くの方剤に処方されている。

シナモンは、生であれ加熱調理後であれ、α-アミラーゼα-グルコシダーゼのいずれに対しても、顕著な阻害作用を示し、糖尿病予防への可能性が示唆されたとする研究が存在する[4]。ただし福場博保らによる「阻害効果なし」の研究も存在する[4]

語源

「シナモン」という言葉はその中茶色をも指す。シナモンは複数の植物種とそれらの一部が作り出す商業的香辛料の名称である。それらは全てクスノキ科のニッケイ属(Cinnamomum)に属する[5] 。数種のニッケイ属植物のみが香辛料のために商業的に育てられている。セイロンニッケイCinnamomum verum)は「真のシナモン」と見なされることもあるが、国際通商におけるほとんどのシナモンはその近縁種のシナニッケイCinnamomum cassia)に由来する。シナニッケイ由来の香辛料はカシア(cassia)とも呼ばれる[6][7]

15世紀から英語に実際の用例が確認できる英単語の"cinnamon" は、ギリシア語κιννάμωμον(kinnámōmon)からラテン語および中世フランス語を経て取り入れられた。ギリシア語の単語はフェニキア語からの借用語であり、これは近縁関係にあるヘブライ語の単語 קינמון (qinnamon) と似ていた[8]。西暦1000年頃に英語で初めて記録された「カシア cassia」という名称はラテン語からの借用であり、突き詰めていくと「樹皮を剥ぐ」という意味のヘブライ語の動詞 qātsaʿ の一形態である q'tsīʿāh に由来する[9]

初期近代英語canel および canellaという名称も使った。これらは複数の欧州言語におけるシナモンの現在の名称と似ており、ラテン語の単語cannella(管を意味するcannaの指小辞形)に由来する(樹皮が乾燥すると丸まることから)[10]

歴史

古代史

シナモンは大昔から知られている。早ければ紀元前2000年にエジプトへ持ち込まれたが、中国からもたらされたと報告している者らはシナモンとカシアを混同している[7]。シナモンは古代国家で非常に高値で取り引きされており、統治者や神への贈り物と見なされた。刻まれた碑文には、シナモンとカシアがミレトスにあるアポロンの神殿へ贈られたことが記録されている[11]。シナモンがどこから来るかについては地中海世界では何世紀にもわたって香辛料貿易を行う仲買人によって市場の独占を守るために秘密にされていたが、シナモンはインドスリランカバングラデシュミャンマー原産である[12]

Kasia カシア」に関する最初のギリシャでの言及は紀元前7世紀のサッポーによる詩で見られる。ヘロドトスによれば、シナモンとカシアはどちらも香や没薬ラブダナム英語版と共にアラビアで育ち、翼のあるヘビによって護られていた[要出典]

エジプトの香、キフィ英語版にはヘレニズムの時代英語版以降、シナモンとカシアが含まれていた。ギリシャ人統治者らから神殿への贈り物にはカシアとシナモンが含まれていることもあった。古代エジプトでは、シナモンはミイラに香気を満たす(防腐処置を施す)ために使われていた[13]

シナモンはアラビア半島に冬の貿易風を利用して「かじも帆も櫂もない筏」で持ってこられた[14]大プリニウスもワインのための香り付けとしてカシアに言及している[15]

大プリニウスによれば、1ローマン・ポンド(327 g)のカシア[16]、シナモン、またはserichatum[17]は最大300デナリウスの値が付いた[15]。これは10か月の労働の賃金と同じであった[15]ディオクレティアヌス最高価格令英語版[18](紀元前301年)は1ポンドのカシアに125デナリウスの価格を与えているが、農業労働者の1日の賃金は25デナリウスであった。シナモンはローマでは火葬用の薪に一般的に使うには高価過ぎたが、皇帝ネロは西暦65年に行われた妻ポッパエア・サビナの葬儀のために都市の一年分に相当するシナモンを燃やしたと言われている[19]

マラバトゥルム英語版(Malabathrum)の葉は、ローマの食通ガイウス・ガビウス・アピシウスによって料理や、牡蠣のためのキャラウェイソースに使われる油を蒸留するために使われた[20]。アピシウスによれば、マラバトゥルムは香辛料の中でもよい厨房が備えていなければならないものである。

中世

中世を初めから終わりまで、シナモンの源は西洋世界では謎であった。ヘロドトスを引用したラテン語の著作家を読むことで、ヨーロッパ人はシナモンが紅海を上ってエジプトの貿易港に達することを学んだが、どこからやって来るかについては決して明らかでなかった。ジャン・ド・ジョアンヴィルが1248年の十字軍においてフランス王ルイ9世に同行しエジプトへ向かった時、彼は「シナモンはナイル川の水源の外の世界の縁(すなわちエチオピア)で網ですくい上げられる」と教えられた(そして自身で考えた)と記録した。マルコ・ポーロはこの話題について正確な言及を避けた[21]。ヘロドトスやその他の著者らはアラビアをシナモンの源とした。彼らは、シナモンの木が育つ未知の土地から巣を作るためにシナモンスティックを集める巨大なシナモン鳥英語版とこのスティックを得るために策略を使うアラブ人について物語った。大プリニウスは1世紀に、貿易商が値を釣り上げるために作った話だと記したが、この物語はビュザンティオンにおいて1310年まで語り継がれていた。

シナモンがスリランカで育つという最初の言及は1270年頃のザカリーヤ・アルカズヴィーニー英語版の『Athar al-bilad wa-akhbar al-‘ibad 諸国の遺跡と神の僕の記録』にある[22]。その後すぐ、ジョヴァンニ・ダ・モンテコルヴィーノの1292年頃の書簡にもこのことが記されている[23]

インドネシアの筏はモルッカ諸島から東アフリカまでシナモンを直接輸送し(ラプタを参照)、その後地元の商人が北へ、エジプトのアレクサンドリアまで運んだ[24][25][26]。イタリアからのヴェネツィア人商人がヨーロッパにおける香辛料取引を独占していた。マムルーク朝オスマン帝国といったその他の地中海勢力の台頭によるこの貿易の崩壊は、ヨーロッパ人がその他の交易路のためにアジアへと足を延ばすことになった主要な要因の一つであった。

近世前期

1500年代の間、フェルディナンド・マゼランはスペインを代表して香辛料を探索し、フィリピンにおいてスリランカ産のシナモンCinnamomum verumと近縁のCinnamomum mindanaenseを発見した。このシナモンは後に(ポルトガルが権益を握っていた)スリランカ産シナモンと競い合うようになった[27]

1638年、オランダ商人がスリランカにおいて交易所を設立し、1640年までに工場の支配権を握り、1658年までに残っていたポルトガル人を追放した。オランダ人船長は「島の海岸はシナモンで埋め尽くされていて、これは東洋で最高の品である。島の風下にいたならば、海に出て8リーグまでシナモンの香りを嗅げる」と記している[28]:15オランダ東インド会社は野生のシナモンの収穫方法の見直しを続け、結局は自身の木の栽培を始めた。

1767年、イギリス東インド会社のブラウン卿はケーララ州カンヌール地区のアンジャラカンディー英語版の近くにアンジャラカンディーシナモン農園を開き、この農園はアジアで最大のシナモン農園となった。イギリスは1796年にオランダを抑えてセイロンを支配した。

栽培

野生のシナモンの木の葉

シナモンは常緑樹で、卵形の葉、厚い樹皮、液果(ベリー)が特徴である。香辛料を収穫する際は、樹皮と葉が主な使用部位である[13]。シナモンは2年間栽培された後、刈り取られる、すなわち幹を地表面の高さまで切る。翌年、たくさんの新しい芽が切り株から生える(萌芽更新)。Colletotrichum gloeosporioidesやDiplodia spp.、Phytophthora cinnamomi英語版といった多くの疫病菌がシナモンの成長に影響を与えうる[29]

幹は収穫後、内樹皮が乾燥しないうちに素早く処理しなければならない。刈り取られた幹は外樹皮を削り取ることで処理され、次に内樹皮をほぐすために枝をハンマーでむらなく叩き、次に内樹皮は長いロール状に取り外される。わずか0.5 mm (0.02 in)の内樹皮が使用される[要出典]。外側の木質部は廃棄され、内樹皮は乾燥によって長さ数メートルのシナモンの切れは丸まる。処理済み樹皮は4から6時間完全に乾かされ、換気がよく比較的暖い環境に置かれる。乾燥するとすぐに、樹皮は売買のために長さ5から10 cmに切られる。理想的とは言えない乾燥した環境は樹皮中の有害生物の増殖を促し、そうなると薫蒸消毒処理が必要となる。薫蒸された樹皮は未処理樹皮と同じ高品質とは見なされない。

数多くの種がシナモンとして売られている[30]

カシアは強くピリッとした香りで、パンを焼く条件に適しているため、パン焼き(特にシナモンロール)によく使われる。カシアの中で、チャイニーズシナモンは一般的に色は中くらいから明い赤茶色で、質感は堅く木質で、全ての樹皮層が使われているため他より厚い(厚さ2-3 mm)。薄い内樹皮のみが使われるセイロンシナモンは、より明るい茶色で、よりきめ細かく、より低密度で、よりもろい質感である。セイロンシナモンはカシアよりも繊細で香りが良いと考えられており、調理の間にその香りを失いやすい。

セイロンニッケイ中の抗凝血の働きがあるクマリンの量はカシアよりもかなり低い[31][32]

これらの種の樹皮は肉眼で見える特徴と微細な特徴の両方で容易に区別できる。セイロンシナモンのスティック(クイル)は多くの薄い層を持ち、コーヒー・グラインダーなどを使って簡単に粉にすることができるが、カシアのスティックはより堅い。インドネシアシナモン(インドグス)は厚い一つの層から作られた整ったクイルとしてしばしば売られており、コーヒー・グラインダーに損傷を与えうる。サイゴンシナモン(C. loureiroi)とシナニッケイ(C. cassia)は、樹皮がクイルに巻ける程柔軟ではないため、常に厚い樹皮の破片として売られている。

粉末にされた樹皮は識別がより困難だが、ヨードチンキで処理すると純粋なセイロンシナモンではほとんど影響が見られないのに対して、チャイニーズシナモン(カシア)は藍色に呈色する[33][34]

格付け

スリランカの格付け方式はシナモンクイルを4つのグループに分けている。

  • Alba: 直径6 mm (0.24 in)未満
  • Continental: 直径16 mm (0.63 in)未満
  • Mexican: 直径19 mm (0.75 in)未満
  • Hamburg: 直径32 mm (1.3 in)未満

これらのグループは詳しい格付けにさらに分けられる。例えば、Mexicanはクイルの直径とキログラム当りのクイルの数によって、M00 000 special、M000000、M0000に分けられる。

長さ106 mm未満の樹皮片はクイリング(quillings)として分類される。フェザリング(featherings)は小枝とねじれた茎のの内樹皮である。チップ(chips)はクイルを刈り落としたかけら、分離できなかった外樹皮と内樹脂、小さな小枝の樹皮である。

生産

シナモン生産 – 2014
トン
インドネシアの旗 インドネシア
91,400
中華人民共和国の旗 中国
71,146
 ベトナム
31,674
スリランカの旗 スリランカ
16,766
世界
213,678
出典: 国際連合食糧農業機関統計データベース英語版(FAOSTAT)[35]

インドネシア中国が世界のシナモン生産の76%を占めている。2014年、シナモンの世界生産量は213,678トンで、4か国が合わせて世界の99%を占める: インドネシア(43%)、中国(33%)、ベトナム(15%)、スリランカ(8%)[35]

食品用途

加熱していないシナモンロールのバンズ

シナモン樹皮は香辛料として使われる。シナモンは薬味や調味料として料理で主に利用される。特にメキシコではチョコレートの製造に使われる。シナモンは鶏肉や羊肉の塩味の料理でもよく使われる。米国では、シナモンと砂糖がシリアル、パンを使った料理(トーストなど)、フルーツ(特にリンゴ)の風味付けのためによく使われ、シナモンと砂糖の混合物英語版がこういった目的のために売られている。トルコ料理でも甘い料理と塩味の料理の両方で使われる。シナモンはピクルスエッグノッグといったクリスマスの飲み物にも使われる。シナモンパウダーはペルシャ料理の風味を強めるための重要な香辛料であり、様々な濃いスープ、飲み物、甘い食べ物に使われる[36]:10–12

栄養

シナモン、香辛料、粉末タイプ
100 gあたりの栄養価
エネルギー 247 kJ (59 kcal)
80.6 g
糖類 2.2 g
食物繊維 53.1 g
1.2 g
4 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(2%)
15 µg
チアミン (B1)
(2%)
0.02 mg
リボフラビン (B2)
(3%)
0.04 mg
ナイアシン (B3)
(9%)
1.33 mg
ビタミンB6
(12%)
0.16 mg
葉酸 (B9)
(2%)
6 µg
ビタミンC
(5%)
3.8 mg
ビタミンE
(15%)
2.3 mg
ビタミンK
(30%)
31.2 µg
ミネラル
ナトリウム
(1%)
10 mg
カリウム
(9%)
431 mg
カルシウム
(100%)
1002 mg
マグネシウム
(17%)
60 mg
リン
(9%)
64 mg
鉄分
(64%)
8.3 mg
亜鉛
(19%)
1.8 mg
他の成分
水分 10.6 g

%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

挽いて粉末にしたシナモンは11%の水、81%の炭水化物(53%の食物繊維を含む)、4%のタンパク質、1%の脂質からなる(表を参照)。100グラムの基準量では[37]、粉末シナモンはビタミンKカルシウムが豊富に(一日の推奨摂取量の20%以上)、ビタミンB6ビタミンEマグネシウム亜鉛が中程度に(一日の推奨摂取量の10から19%)含まれている。

風味、芳香、味

シナモンの風味は、その組成の0.5から1%を構成する香りの良い精油によるものである。この精油は樹皮を粗くたたいて粉々にし、海水中で浸軟英語版し、次に全体を素早く蒸留することで調製される。精油はしばしば明い黄色をしており、熟成(老化)すると酸素との反応によって色は暗くなり、樹脂状化合物が形成される[38]

シナモンの成分にはオイゲノール[39]などおよそ80種類の化合物が含まれる[40]

アルコールの香料

シナモンはファイアボールシナモンウイスキー英語版といった数多くのアルコール飲料の人気のある香料である[41]

シナモンと蒸留アルコールから作られ「シナモンリキュール」と呼ばれるシナモンとブランデーの混合飲料はギリシャの一部で人気である。ヨーロッパで人気のあるこういった飲料としては、Maiwein英語版(クルマバソウで香り付けした白ワイン)やズブロッカセイヨウコウボウ英語版で香り付けしたウォッカ)がある。

伝統医薬

シナモンは伝統医学で使われた長い歴史がある。気管支炎糖尿病といった様々な病態に試されてきたが、シナモン摂取が健康に良い効果があるという科学的証拠はない[42]

毒性

2008年、欧州食品安全機関はクマリン(シナモンの主要な成分)の毒性を考慮し、クマリンの最大推奨耐容一日摂取量(TDI)を0.1 mg/kg体重と発表した。クマリンは高濃度で肝障害と腎障害を引き起こすこと、CYP2A6英語版多型を持つヒトで代謝作用の原因となることが知られている[43][44]。この評価に基づいて、欧州連合は食品中の最大クマリン含量のガイドラインを、季節料理の生地1 kg中50 mg、毎日摂取する焼いた食品1 kg中15 mgに定めた[45]

クマリンの最大推奨TDI 0.1 mg/kg体重は、体重50 kgでクマリン5 mgとなる。

Cinnamomum cassia Cinnamomum verum
シナモン1 kg中のクマリン (mg) 100 mg – 12,180 mg/kg 100 mg/kg未満
シナモン1 g中のクマリン (mg) 0.10 mg – 12.18 mg/g 0.10 mg/g未満
体重50 kgでのシナモンTDI 0.4 g – 50 g 50 g以上

画像集

脚注

  1. ^ 渡辺一也「リキュール&カクテル大事典」(ナツメ社)、194項
  2. ^ 東京都福祉保健局 国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部
  3. ^ シナモンのサプリメント …2006/10(第86号)過剰摂取で肝障害の恐れ WEBニッポン消費者新聞
  4. ^ a b 市販香辛料のα-アミラーゼ活性およびα-グルコシダーゼ活性に及ぼす影響、三浦 理代、五明 紀春、日本食品科学工学会誌、Vol.43 (1996年) No.2 P157-163
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関連事項

桂皮を配合する薬剤

外部リンク