スピノサウルス

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スピノサウルス
生息年代: 中生代白亜紀前期~後期, 112–93.5 Ma
Spinosaurus swimming.jpg
スピノサウルスの骨格
地質時代
中生代白亜紀前期~後期
(約1億1,200万 - 9,350万年前)
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
下目 : テタヌラ下目 Tetanurae
: スピノサウルス科 Spinosauridae
亜科 : スピノサウルス亜科 Spinosaurinae
: スピノサウルス属 Spinosaurus
学名
Spinosaurus
Stromer1915
  • S. aegyptiacus スピノサウルス・アエギュプティアクス Stromer1915模式種
  •  ?S. maroccanus スピノサウルス・マロッカヌス Russell1996

スピノサウルス(Spinosaurus)は、中生代白亜紀前期から後期(約1億1,200万 - 9,350万年前)の現アフリカ大陸北部に生息していた獣脚類(肉食恐竜[1]

名前[編集]

属名は「トカゲ」を意味する[2]。中国語名は「棘龍」(ジーロン)。

形態・生態[編集]

人間とスピノサウルス標本たちの大きさ比較

体長・体重[編集]

人と巨大な獣脚類のスケール比較。
スピノサウルスは赤色。

骨格標本から推定される成体の全長は15 - 17メートル。有名な大型肉食恐竜ティラノサウルスに匹敵、あるいはそれ以上とも言われる史上最大級の肉食恐竜である[3]。部分的なものではあるが非常に巨大な骨格も発掘されている。体重に関してはティラノサウルスに比べ首などが長く細身なため、幾分軽く4 - 6トン程とする説から、後述する水中生活の際に浮力を抑えるためと推定される骨密度の高さから21トン程まで諸説ある。[4]

背部突起[編集]

高さ1.8メートルにもなる胴堆の棘突起は、学名の元になった。この突起の生体については、いくつかの仮説が挙げられている。最も有名なものとして、皮膚に覆われたを形作っていたという説がある。この帆は当時の炎暑の気候に適応し、ラジエーターとしての機能を果たしたと推定されている[2]。このような胴構造のため自在な運動は出来なかったとも考えられている。

それ以外の有力な仮説として筋肉の隆起という説もある。この仮説の根拠の基盤の一つとなったのが、バイソン属メガセロプス等の大型草食哺乳類の骨格とされている。スピノサウルスやオウラノサウルスや、大小の程度こそあるがアクロカントサウルスプロトケラトプスステゴサウルス等の背部突起は、ディメトロドンエダフォサウルスの突起やカメレオンなどの現生爬虫類の帆的な突起よりも、バイソン等が自身の強力な筋肉を支える背部突起との類似点の方が目立つ。[5][6] また、獲物の魚を探すための姿勢を保つ必要性があったことや、帆を持つことで他の大型捕食者や他のスピノサウルスなどとの闘争において弱点を持つ可能性があることからも、筋肉の隆起の合理性を支持する声もある。また、後述の通りスピノサウルスが四足歩行をしていた可能性が後年に指摘されたが、この「Bison-backed-dinosaur (バイソン型恐竜)」の仮説が出された際に四足歩行の可能性も指摘されており、これは後年の発表より数十年近くも前の事だった。[5][6] 

その他にも、当時に砂漠的な環境があったという前提にて[6]ラクダ達の様に栄養分や水分等を蓄えるコブであった可能性も指摘されている。[7]

食性[編集]

オンコプリスティスを狩りしているスピノサウルスの復元図

バリオニクススコミムス等の近縁種から想像されるその頭部はやや細長く、現生の魚食性ワニであるインドガビアルを思わせる。歯も、魚食性ワニのような“鱗が張り付きにくい表面構造のもの”に類似しており、を主食としていた可能性が高い。近年の化石に対するCT検査では鼻腔には細孔が無数にある。ワニと同様に、この細孔に水の動きを感知するための感覚器が集中していたと推測され、このことから主に水辺~水中で獲物を得ていたと思われる[8]。この一方、現生のワニやクマのように、機会があれば魚以外にも他の恐竜やその死体なども食料としていたと考えられる(事実、近縁種で同じく魚食性が強かったと思われるバリオニクスの化石では、消化器官にあたる部位からイグアノドンの未消化の骨が見つかっている)。オンコプリスティス(軟骨魚類ノコギリエイ目)の化石と共に発見されることが多く、2005年に発見された化石には同種の骨の破片が確認されており、両者が捕食者、被捕食者の関係にあったと考えられている[8]

白亜紀の現アフリカ大陸北部に当たる地域ではカルカロドントサウルスデルタドロメウス、そして本種の3種類の肉食恐竜が存在していた。これらは主食となる獲物の対象を異にしていたが、時にはカルカロドントサウルスに襲われることもあったらしく、カルカロドントサウルスに棘突起を噛みちぎられたと思われるスピノサウルスの脊椎も見つかっており、競合しつつ共存していたことがうかがえる(この事例は、スピノサウルスが四足歩行であったか、二足歩行だとしても従来考えられていたよりも脚が短かったと思われ、後述の説を補強する間接的な証拠にもなっている)[8]

形態と生態に関する新説[編集]

2014年9月11日、シカゴ大学のニザール・イブラヒムが『サイエンス』に発表したところによると、新たに発見されたスピノサウルスの骨格を調査した結果「後脚は水中生活への適応のために、これまで予想されていた復元より短く、陸上では前肢をついて四足で歩行し、深い川で長い時を過ごしサメエイなどの魚を捕食していた」と唱えられた。これが事実ならば、獣脚類で四足歩行をしていた非常に珍しい種であることになるが[9]、当時スピノサウルスが生息していた地域の環境は炎暑で、小さく浅い川が多かった可能性が高く(ある程度の規模の河川があったとしても、現代のアフリカなどの熱帯地域の様に、乾季などの季節によって干上がったり、規模が大幅に縮小する例も多い)、スピノサウルス程の巨大な動物が水生に適応し、生態系を形成できる程の大河が存在したのかという環境的な点や、浮力を活かし辛く、遊泳(特に潜水)にデメリットとなる帆を持っているという生物としての形態的な点(ワニカバエリオプスなど、水中生活に適応した動物の殆どは現生種・絶滅種問わず浮力を活かし易く、遊泳の際に水の抵抗を受けにくい体型となっている)、ディプロドクスなどの当初は水中生活をしていたと推測された恐竜が実はそうでなかったなど研究史の変遷などの点から、疑問視する意見もあり[10]、更なる発見と検証が待たれる。

発見と化石[編集]

アフリカ大陸のエジプトニジェールなどから化石が発見されている。1915年ドイツの古生物学者エルンスト・シュトローマーにより発見された最初の化石はカルカロドントサウルスなどと共に、第二次世界大戦中の1944年、連合軍によるミュンヘン空襲の際に破壊されてしまった。このため、2013年頃に再発見されるまでは良い標本が無く、謎の恐竜であった[11]

スピノサウルスの上顎化石
スピノサウルスの歯。形態面でワニの歯と似ている。

2000年代には化石が相次ぎ見つかり、研究が進んだ。

モロッコで発掘された頭骨化石が2018年、化石収集家により成城学園(東京)に寄贈された。実物は研究のため博物館に貸し出し、校内でレプリカを展示する計画である[12]

分類上の位置[編集]

バリオニクスなどと共にスピノサウルス科に分類される。日本からもこの仲間と思われる歯の化石が群馬県神流町及び和歌山県湯浅町から発見されている。

復元[編集]

全身が見つかっていないため、近縁種のスコミムスなどのデータが使われている。最初の全身復元骨格は、日本の幕張メッセで行われた『恐竜博2009』のために作られ公開された。この標本は長野県飯田市美術博物館が収蔵展示している。続いて、2013年の新標本や2014年の水棲説強化をふまえた新復元の全身骨格が日本の『恐竜博2016』にて公開された[13]

脚注[編集]

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  1. ^ デジタル大辞泉の解説”. コトバンク. 2018年3月11日閲覧。
  2. ^ a b リチャードソン 2005, p. 108.
  3. ^ GAUTAM NAIK (2014年9月12日). “最大の肉食恐竜は泳ぎがうまかった”. ウォール・ストリート・ジャーナル. http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052970203714004580148763687481660 2014年9月13日閲覧。 
  4. ^ Therrien, F.; Henderson, D.M. (2007). "My theropod is bigger than yours...or not: estimating body size from skull length in theropods". Journal of Vertebrate Paleontology. 27 (1): 108–115.
  5. ^ a b Bailey, J.B. (1997). "Neural spine elongation in dinosaurs: sailbacks or buffalo-backs?". Journal of Paleontology. 71 (6): 1124–1146.
  6. ^ a b c Was Spinosaurus a Bison-Backed Dinosaur?
  7. ^ Why Did Spinosaurus Have a Sail?
  8. ^ a b c BBC制作DVD『プラネット・ダイナソー BBCオリジナル完全版』「Episode1:失われた世界」より。
  9. ^ ただし、この調査の対象となったスピノサウルスの骨格は亜成体と成体、さらには別属のシギルマッササウルスなど複数の別個体が混ぜられた標本であり、骨格の構成方法には疑問が投げかけられている。
  10. ^ Kerry SHERIDAN (2014年9月12日). “巨大肉食恐竜スピノサウルスは水中で生活? 米大チームが論文”. AFPBB News. http://www.afpbb.com/articles/-/3025733 2014年9月12日閲覧。 
  11. ^ NATIONAL GEOGRAPHIC 日本語版 2014年9月
  12. ^ スピノサウルスの頭骨化石 成城学園にOB寄贈『東京新聞』朝刊2018年3月15日(東京面)
  13. ^ ティラノサウルスVSスピノサウルス 恐竜博2016より時事ドットコム(2018年3月26日閲覧)

参考文献[編集]

  • ヘーゼル・リチャードソン、ディビッド・ノーマン(監修)『恐竜博物図鑑』出田興生(訳)、新樹社〈ネイチャー・ハンドブック〉、2005年。ISBN 4-7875-8534-7

関連項目[編集]

外部リンク[編集]