コンカヴェナトル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
コンカヴェナトル
生息年代: 98–96 Ma
コンカヴェナトル.jpg
コンカヴェナトルのキャスト
地質時代
約1億3000万年前(中生代白亜紀前期バーレミアン)
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
下目 : テタヌラ下目 Tetanurae
階級なし : カルノサウルス類 Carnosauria
上科 : アロサウルス上科 Allosauroidea
: カルカロドントサウルス科 Carcharodontosauridae
: コンカヴェナトル属 Concavenator
学名
Concavenator
Ortega, Escaso & Sanz 2010
タイプ種
C. corcovatus
和名
コンカヴェナトル
英名
Concavenator
下位分類(
  • C. corcovatus
    Ortega, Escaso & Sanz, 2010

コンカヴェナトルConcavenator)は、スペインカスティーリャ・ラ・マンチャ白亜紀前期の地層から発見されたカルカロドントサウルス科に属する恐竜模式種コンカヴェナトル・コルコヴァトゥス Concavenator corcovatus のみで知られる。学名は「クエンカ県の背中にこぶのある狩人」を意味する。化石はラス・オヤス発掘地で発見された。

説明[編集]

コンカヴェナトルを調べる研究者たち
ヒトとのサイズ比較

コンカヴェナトルは中型(推定全長6m)のカルカロドントサウルス類で、いくつかの独特の特徴をもっていた。最大の特徴は、腰に位置する2本の脊椎の神経刺が異様に高くなっていることだ。これが背中に尖った隆条を形作っていた[1]。このような構造は他の獣脚類では一切知られていない。ケンブリッジ大学の古生物学者ロジャー・ベンソンは「ビジュアルディスプレイに用いられる頭のトサカに類似したもの」だったかもしれないと述べた。一方、スペインの科学者は体温調節に使っていた可能性を示唆した[2]

加えて、コンカヴェナトルの尺骨には小さな瘤状の突起がいくつか見られ、これは鳥類の羽軸を支える骨に見られる構造であることから、コンカヴェナトルの前腕には何かしらの特殊化した表皮系が存在していたことが示唆されている[1]

羽毛と鱗[編集]

生体復原図

コンカヴェナトルは羽軸をもっていた証拠となる構造をもっているが、羽毛自体の痕跡はミクロラプトル始祖鳥カウディプテリクスのようなより鳥に近縁なコエルロサウルス類からしか見つかっていない。羽軸は毛包に付着する靭帯によって作られ、鱗は毛包から形成されないので、腕に長い棘状の鱗が存在していた可能性はない。代わりに羽軸はおそらく、単純な中空の、羽毛に近い構造を固定すると考えられている。そのような構造は、ディロンググアンロンのようないくつかのティラノサウルス上科のようなコエルロサウルス類や、角竜類プシッタコサウルスに見られる。こうした構造が鳥の羽と相同のものであれば、コンカヴェナトル以外のアロサウルス上科の獣脚類にも同様の構造が存在したことが予想される[1]。しかし鳥盤類の毛が羽毛ではない場合、コンカヴェナトルのもつ構造は、羽毛がコエルロサウルス類よりも早い段階でより原始的な形で現れ始めたことを示す。羽やそれに関連する器官はジュラ紀中期に生息していたクレード、ネオテタヌラ類の最初のメンバーに存在する可能性が高い。ネオテタヌラ類は、尾部の幅広い長方形の鱗、鳥のような足の鱗、足底のパッドなど、身体の他の部分には大規模な印象が残っているにもかかわらず、腕の周りにはいかなる痕跡も見られない[1]

こぶを体温調節に使うコンカヴェナトルの
2002年の発掘前の現場

尺骨のこぶが羽軸の存在を表すという解釈の妥当性について、ある程度の疑問が専門家の間で提起されている。古生物学者ダレン・ナイシュは自身のブログ "Tetrapod Zoology"で、羽軸にしてはこぶの間隔が異常に離れすぎていると述べている。彼はさらに、多くの他の動物では筋間線に沿った同様の構造が、の付着部として機能することを指摘した[3]この解釈は、2014年にクリスチャン・フォースと他の人たちによって支持された。[4]

その後の2015年の古脊椎動物学会会合で、尺骨に沿ったこぶは筋肉の挿入点または基部を示すという仮説が検討され、その結果が提示された。 エラナ・ケスタ Elana Cuestaは、最初にコンカヴェナトルを研究した2人(Ortega と Sanz)とともに、尺骨のこぶが筋肉間隆起として説明されるかどうかを決定するために前腕筋組織を復元しようと試みた。彼らは、主要な腕の筋肉の挿入点を特定し、それらの間に隆起の列が位置していないと判断した。唯一の可能性は、こぶが肘筋の付着部になる可能性があることを発見した。この筋肉は通常、下の骨に痕跡や隆起がない滑らかな表面に付着する。最もあり得そうな説明は、最初の解釈通り羽軸の基部であり、筋肉に関連する構造である可能性はほとんどないと結論づけた。彼らは、羽軸が後外面に沿って形成されることは珍しいことは認めたが、同じ配置は現代のバンでも見られるため不自然ではないと主張した[5]

何人かの古生物学者はケスタらの説明に未だ納得していない。ミッキー・モーティマー Mickey Mortimer は、尺骨のこぶは実際にはケスタらの言うような後外側ではなく、前外側表面にあるように見えるとしている。また、コンカヴェナトルやその他の非マニラプトル類の筋肉を復元するためには鳥類よりもワニの方が優れた基準であると主張している[6][7]。アンドレア・コウ Andrea Cau はアロサウルスとコンカヴェナトルの前腕同士を比較した結果、コンカヴェナトルの前腕は脱臼しており、尺骨のこぶは後部表面ではなく、本来は尺骨の前面にあると指摘した。鳥類においてはこの構造が尺骨の同じ部分にないため、そのこぶは2010年のコンカヴェナトルの論文で主張されているように、鳥類のそれと相同ではないことを指摘した。ケスタらによる2015年の研究結果について、コウは尺骨のこぶが羽軸とは関係ないとする根拠は他にもあると主張した。コンカヴェナトルの尺骨のこぶは骨の隆起で繋がっているのに対し、鳥類の羽軸は互いに離れている事、またコンカヴェナトルの尺骨のこぶは不規則に配置されるのに対し、鳥類の羽軸は等間隔に配置されている。コウは、系統発生学の観点から言ってもコンカヴェナトルのようなアロサウルス上科は羽軸を持っているとは考えにくいと付け加えた。バラウル(別の獣脚類)の場合には、尺骨の前側のコンカヴェナトルのそれと同側に風切羽とは関係のないこぶがあり、それは尺骨と脊髄とを結ぶ筋肉の付着部と解釈されている[8]

分類[編集]

ペレカニミムスを追うコンカヴェナトル

以下は2013年のカルカロドントサウルス科内におけるコンカヴェナトルの位置づけを示したクラドグラム[9]



アロサウルス


カルカロドントサウルス科

ネオヴェナトル



エオカルカリア



コンカヴェナトル




アクロカントサウルス




シャオキロン


カルカロドントサウルス亜科

カルカロドントサウルス


ギガノトサウルス族

ティラノティタン




マプサウルス



ギガノトサウルス









出典[編集]

  1. ^ a b c d Ortega, F.; Escaso, F.; Sanz, J.L. (2010). “A bizarre, humped Carcharodontosauria (Theropoda) from the Lower Cretaceous of Spain” (PDF). Nature 467 (7312): 203–206. doi:10.1038/nature09181. PMID 20829793. http://pagina.jccm.es/museociencias/Ortega_etal_2010_Tero_Concavenator_Ki_Cuenca_esp_nature09181.pdf. 
  2. ^ Laursen, L. (2010). "Crested dinosaur pushes back dawn of feathers." Nature News, 8-Sept-2010. Accessed online 9-Sept-2010.
  3. ^ Naish, D. (2010). Concavenator: an incredible allosauroid with a weird sail (or hump)... and proto-feathers?. Tetrapod Zoology, September 9, 2010.
  4. ^ Christian Foth; Helmut Tischlinger; Oliver W. M. Rauhut (2014). “New specimen of Archaeopteryx provides insights into the evolution of pennaceous feathers”. Nature 511 (7507): 79–82. doi:10.1038/nature13467. PMID 24990749. http://www.nature.com/nature/journal/v511/n7507/full/nature13467.html. 
  5. ^ Cuesta, E., Ortega, F., Sanz, J. (2015). Ulnar bumps of Concavenator: Quill Knobs or Muscular scar? Myological Reconstruction of the forelimb of Concavenator corcovatus (Lower Cretaceous, Las Hoyas, Spain). Abstracts of papers of the 75th Annual Meeting of the Society of Vertebrate Paleontology: 111-112.
  6. ^ SVP 2015 Day 4”. 2017年6月23日閲覧。
  7. ^ Concavenator Part II - Becklespinax comparison, ulnar muscle details and a last lunch”. 2017年6月23日閲覧。
  8. ^ Le papille ulnari di Concavenator non sono papille ulnari”. 2017年6月23日閲覧。
  9. ^ “Evolution of the carnivorous dinosaurs during the Cretaceous: The evidence from Patagonia”. Cretaceous Research 45: 174–215. doi:10.1016/j.cretres.2013.04.001.