ジュラティラント

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ジュラティラント
生息年代: ジュラ紀後期チトニアン,149 Ma
復元
地質時代
ジュラ紀後期チトニアン
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
階級なし : 鳥吻類 Averostra
下目 : テタヌラ下目 Tetanurae
階級なし : (未整理)コエルロサウルス類 Coelurosauria
階級なし : ティラノラプトラ Tyrannoraptora
上科 : ティラノサウルス上科 Tyrannosauroidea
: ?プロケラトサウルス科 Proceratosauridae
: ジュラティラント属 Juratyrant
学名
Juratyrant
(Brusatte & Benson, 2003
シノニム
  • Stokesosaurus langhami Benson, 2008
下位分類(

ジュラティラント学名:Juratyrant "ジュラ紀の暴君"の意味)は、ジュラ紀後期チトニアン前期のイングランドに生息したティラノサウルス上科恐竜の属。J. langhami の1種のみが含まれる。

発見[編集]

完全な骨盤と部分的に揃った脚、頚椎脊椎尾椎からなる単一の標本が知られている[1]1984年ドーセット州で発見されたこの標本は複数の論文で言及されたが、正式に記載されたのは2008年だった。種小名は標本を発見した化石商人ピーター・ラングハミを称えたもの[2]。標本はジュラ紀後期の最後の時代にあたるチトニアンのキンメリッジ粘土の地層から発見され、1億4930万年前から1億4900万年前を示す Pectinatites pectinatus ammonite zone に属する[1]

記載[編集]

発見された部位

OUMNH J.3311-1 から OUMNH J.3311-30 までの一連の標本からなる骨格がジュラティラントのホロタイプ標本である。頚椎と5つの脊椎、完全な仙椎、5つの尾椎、完全な腰帯、両大腿骨、両脛骨および様々な骨断片を含む。腸骨の数多くの特徴がストケソサウルスのものと一致したためかつてはストケソサウルス・ラングハミとして扱われていたが、後の研究で恥骨の差異が示され、種レベルの相違とみなすことができず、ストケソサウルス・ラングハミは独自の属を持つこととなった。ストケソサウルスから分離し、ジュラティラントは4つの固有派生形質および固有派生形質と推定される2つの特徴(保存状態により判断が困難)で定義づけられることとなった[3]

  • 坐骨の伸びた部分が折れているように見える
  • 腓骨の端が脛骨の近位端へ明確な低い隆起を伴って伸びている
  • 坐骨に凸状の小結節が存在する
  • 寛骨臼の下で恥骨に深い水平の穴が存在する
  • 薄いものの卓越した突起が第5仙椎に存在する(推定)
  • 広く凹状の伸筋の溝が大腿骨に存在する(推定)

分類[編集]

推定された体躯とヒトの比較

ジュラティラントは2008年にロガー・ベンソンによりもともとストケソサウルス・ラングハミとしてストケソサウルス属に分類されたが、同属の模式種ストケソサウルス・クレヴェランディと必ずしも近縁ではないことが後の研究で示された。ストケソサウルス・ラングハミは2013年にロガー・ベンソンとスティーブン・ブルサッテにより独自の属であるジュラティラント属に正式に再分類され、ディロングよりも進化したティラノサウルス上科の中の分類群でストケソサウルス・クレヴェランディとの姉妹群として位置付けられた。この分類群にはエオティラヌスも含まれる。[3]

しかし、2013年にLoewen らは、シノティラヌスと共有する前寛骨臼の狭い窪みに基づき、プロケラトサウルス科の中でストケソサウルスと姉妹群をなす位置にジュラティラントを配置するクラドグラムを発表した[4]。数多くのティラノサウルス上科の恐竜の腸骨が不完全あるいは未知であり、現在知られているよりもこの特徴は広く共通している可能性がある。以下にそのクラドグラムを示す。

ティラノサウルス上科
プロケラトサウルス科

プロケラトサウルス

キレスクス

グアンロン

シノティラヌス

ジュラティラント

ストケソサウルス

ディロング

エオティラヌス

バガラアタン

ラプトレックス

ドリプトサウルス

アレクトロサウルス

シオングアンロン

アパラチオサウルス

アリオラムス・アルタイ

アリオラムス・レモトゥス

ティラノサウルス科

ところが、2016年最大節約法ベイズ推定を用いたブルサッテとカールの研究では、ストケソサウルスとジュラティラントはプロケラトサウルス科とディロングよりもわずかに進化したティラノサウルス上科として系統学的に位置付けられた。すなわち、プロケラトサウルス科から除外されたということである。さらに、この系統解析においてはエオティラヌスはこれらの属の姉妹群として分類されている[5]

出典[編集]

  1. ^ a b Benson, R.B.J. (2008). “New information on Stokesosaurus, a tyrannosauroid (Dinosauria: Theropoda) from North America and the United Kingdom”. Journal of Vertebrate Paleontology 28 (3): 732–750. doi:10.1671/0272-4634(2008)28[732:NIOSAT]2.0.CO;2. 
  2. ^ Taylor, M.A. (1989). “'Fine Fossils For Sale' — the Professional Collector and the Museum”. Geological Curator 5 (2): 55–64. 
  3. ^ a b Brusatte, S.L.; Benson, R.B.J. (2013). “The systematics of Late Jurassic tyrannosauroids (Dinosauria: Theropoda) from Europe and North America”. Acta Palaeontologica Polonica 58 (1): 47–54. doi:10.4202/app.2011.0141. 
  4. ^ Loewen, M.A.; Irmis, R.B.; Sertich, J.J.W.; Currie, P. J.; Sampson, S. D. (2013). Evans, David C. ed. “Tyrant Dinosaur Evolution Tracks the Rise and Fall of Late Cretaceous Oceans”. PLoS ONE 8 (11): e79420. doi:10.1371/journal.pone.0079420. PMC 3819173. PMID 24223179. http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0079420. 
  5. ^ Brusatte, Stephen L.; Carr, Thomas D. (2016-02-02). “The phylogeny and evolutionary history of tyrannosauroid dinosaurs” (英語). Scientific Reports 6 (1). doi:10.1038/srep20252. ISSN 2045-2322. https://www.nature.com/articles/srep20252.