ナヌークサウルス

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ナヌークサウルス
生息年代: 中生代白亜紀後期, 69.1 Ma
Nanuqsaurus NT small.jpg
ナヌークサウルスの復元図
保全状況評価
絶滅(化石
地質時代
約6910万年前
中生代白亜紀後期マーストリヒチアン
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
階級なし : (未整理)真正爬虫類 Eureptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
階級なし : (未整理)主竜類 Archosaurs
(未整理)鳥頸類 Ornithodira
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
下目 : テタヌラ下目 Tetanurae
階級なし : (未整理)コエルロサウルス類 Coelurosauria
上科 : ティラノサウルス上科 Tyrannosauroidea
: ティラノサウルス科 Tyrannosauridae
亜科 : ティラノサウルス亜科 Tyrannosaurinae
: ナヌークサウルス属 Nanuqsaurus
学名
Nanuqsaurus
Fiorillo & Tykoski, 2014
タイプ種
Nanuqsaurus hoglundi
Fiorillo & Tykoski, 2014
下位分類(
  • ナヌークサウルス・ホグルンディ
    Fiorillo & Tykoski, 2014 (模式種)

ナヌークサウルスNanuqsaurus)は、白亜紀後期マーストリヒチアンアラスカノーススロープ(ブルックス山脈の斜面)プリンスクリーク層に生息していた、絶滅したティラノサウルス科の恐竜の1属。部分的な頭骨の化石のみが発見されており、知られている種はナヌークサウルス・ホグルンディ1種のみである。

形態[編集]

頭部の復元図

ナヌークサウルスはティラノサウルス亜科の中では中型の部類であり、全長はティラノサウルスの約半分にあたる6メートルと推定されている[1]。この体格の小ささは北極圏という高緯度地域の過酷な気候のもと適応したものと古生物学者フィオリロとティコスキーは推測した[2]

ナヌークサウルスの頭部には鋭い鼻筋があり、ティラノサウルスに近縁であったことを示唆している。近縁種の肉食恐竜の形態に基づき、ナヌークサウルスの頭骨の長さは60センチメートルから70センチメートル程度と推定されている[2]

ティラノサウルス亜科として同定された根拠としては、前頭葉涙腺が吻の側に突出した長い構造により分けられている点、口腔先端に位置する歯が後方の歯より小型である点、頭頂部の骨が癒着した構造が挙げられる[2]

北極圏に生息していたということで、羽毛の生えた復元が多い。また、カーネギー自然史博物館の古生物学者マット・ラマンナは、ナヌークサウルスの皮膚が南方のティラノサウルス科よりも分厚かった可能性が高いという趣旨のコメントをしている[3]

発見と命名[編集]

タイプ標本

2006年、アラスカノーススロープのキカク・テゴシーク採石場から中型の獣脚類の化石の断片が発見され、頭骨長は約60センチメートルから70センチメートルと推定された。初めはゴルゴサウルスに、その後はアルバートサウルスに含まれていたが、ペロー自然科学博物館(ダラス自然史博物館)を経て新たな属であることが認められた[2]。タイプ標本である「DMNH 21461」はプリンスクリーク層で発見されており、6910万年前の物である。頭骨の下顎の一部分から構成され、断片は互いに付近で発見された。頭頂葉の一部や前頭葉、右側の鼻腔、左側の歯列も発見されている[2] 。標本は完全に成熟した個体であり、鼻筋が滑らかであった[2]

ナヌークサウルスは2014年にアンソニー・R・フィオリロとロナルド・S・ティコスキーにより記載・命名された。模式種はナヌークサウルス・ホグルンディである。属名は「ホッキョクグマ」を意味するnanuqとトカゲを意味するsaurosに由来する。種小名は、慈善事業家フォレスト・ホグランドの慈善事業などでの功績を称えたものである[2]

分類[編集]

ナヌークサウルス(青)と他の獣脚類との比較

ナヌークサウルスは高度に進化したティラノサウルス亜科とみられ、ティラノサウルスやタルボサウルスズケンティラヌスを含むグループの姉妹群と考えられている[2]

ティラノサウルス科
アルバートサウルス亜科

アルバートサウルス



ゴルゴサウルス



ティラノサウルス科


ダスプレトサウルス



2つの分類群





テラトフォネウス




ビスタヒエヴェルソル




リトロナクス




ナヌークサウルス





タルボサウルス



ズケンティラヌス




ティラノサウルス









生態[編集]

左側の顎の薄片

7000万年前の北アメリカはララミディア大陸の一部であり、寒冷でかつ白夜極夜が存在していた。白夜がある夏の時期は獲物を捕食できる可能性が高まるが、暗い冬には獲物を得る機会は減少し捕食動物はほぼ獲物にありつけなかったと推測されている[2]。本来はベルクマンの法則に従って寒冷地域の動物ほど大型化することが多いが、大型動物は多くの食料資源を必要とするため、ナヌークサウルスが小柄であるのは食料資源の不足が要因である可能性があるとフィオリロは述べている。アラスカに生息していたトロオドンは南方の個体よりも50%ほど大柄であったが、これはトロオドンの眼が大きく極夜の状況下でも視力に頼って狩りを行えたためと考えられている。ナヌークサウルスは寒冷な気候による食料供給の減少ゆえ小型化している可能性が高い[2]

頭骨の形状から、脳の肥大化した領域が嗅覚を司る部位であることが示唆されている。これはティラノサウルスと同様に、獲物の臭いを頼りに狩りを行っていたことが導かれている。これは死肉を漁るよりも積極的に生きた動物を襲っていたことを示している[2]セコイアが繁茂する森林でハドロサウルス科などの植物食恐竜を捕食していたとフィオリロは推測している[3]

古環境[編集]

ナヌークサウルスのタイプ標本はマーストリヒチアンのプリンスクリーク層のものである。7100万年前から6800万年前のキカク・テゴシーク採石場のプリンスクリーク層はマーストリヒチアン後期の初期に位置付けられている。その地点における層の岩石を年代測定したところ、岩石の平均的な年代は6910万±300万年前のものであったため、ナヌークサウルスもその時期に生息していた可能性が高い。層はノーススロープのコルビル川に沿っており、堆積物で構成されている。高緯度地域に分布するごく少数の恐竜の1つであることが分かっている[2]

当時の地球は現代と比較して温暖であり、ナヌークサウルスが生息していたアラスカは現在のワシントン州シアトルに近い気候だった。とはいえ先述のように極夜などもあり過酷な環境ではあった。セコイアの森林が茂り、海岸沿いの平地には花が咲いていたとみられている[3]

出典[編集]

  1. ^ http://news.nationalgeographic.com/news/2014/03/140313-new-species-dinosaurs-tyrannosaurus-rex-animals-science/
  2. ^ a b c d e f g h i j k l Fiorillo, A. R.; Tykoski, R. S. (2014). Dodson, Peter. ed. “A Diminutive New Tyrannosaur from the Top of the World”. PLoS ONE 9 (3): e91287. doi:10.1371/journal.pone.0091287. PMC: 3951350. PMID 24621577. http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0091287. 
  3. ^ a b c ティラノサウルスの小型種、極地で発見