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{{複数の問題 |
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|独自研究=2013年5月 |
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|未検証=2013年5月 |
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{{Infobox disease |
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|Name= アスペルガー症候群<br>Asperger syndrome |
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|Image= Riboflavin penicillinamide.jpg |
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|Alt= Seated boy facing 3/4 away from camera, looking at a ball-and-stick model of a molecular structure. The model is made of colored magnets and steel balls. |
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|Caption= アスペルガー症候群の人たちは特異的な興味を持つ。上の少年は[[分子構造]]に魅惑を感じている。 |
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|DiseasesDB= 31268 |
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|ICD10= {{ICD10|F|84|5|f|80}} |
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|ICD9= 299.80 |
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|OMIM= 608638 |
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|MedlinePlus= 001549 |
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|eMedicineSubj= ped |
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|eMedicineTopic= 147 |
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|MeshName= Asperger+syndrome |
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|MeshNumber= F03.550.325.100 |
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'''アスペルガー症候群'''(アスペルガーしょうこうぐん、''Asperger Syndrome'', '''AS''')、'''アスペルガー障害'''(Asperger disorder、'''AD''')とは、[[知的障害]]を伴わないものの、興味・[[コミュニケーション]]について特異性が認められる、ヒトの[[発達障害|発達における障害]]である<ref name="NIH2015" /><ref name="ichikawa">[https://www.jspn.or.jp/journal/symposium/pdf/jspn107/ss415-416.pdf 市川宏伸「成人アスペルガー症候群への対応と支援」(日本精神神経学会)]{{リンク切れ|date=2015年4月}}</ref>{{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|pp=21-22}}。[[オーストリア]]の[[小児科医]]の[[ハンス・アスペルガー]]にちなんでつけられた診断名である<ref name="Kaplan" />{{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011}}。 |
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特定の分野への強いこだわりを示し、運動機能の軽度な障害が見られたりすることもある。しかし、[[自閉症|古典的自閉症]]に見られるような[[知的障害]]および[[言語障害]]はない<ref name="Kaplan" />{{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|pp=21-22}}。世界保健機関、[[アメリカ合衆国]]、[[日本国]]などにおける公的な文書では、(古典的)自閉症とは区別して取り扱われる。 |
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<!-- 疫学 --> |
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その原因は不明である<ref name="NIH2015">{{cite web|title=Autism Spectrum Disorder|url=http://www.nimh.nih.gov/health/publications/autism-spectrum-disorder-qf-15-5511/index.shtml |publisher=米国国立メンタルヘルス機構|accessdate=2016-03-12 |date=2015-09}}</ref>。アスペルガー症候群を持つ成人が周りに大きな影響を与えることが有る。例えば[[カサンドラ症候群]]というのは、アスペルガー症候群の夫(パートナー)と情緒的な相互関係が築けないために妻に生じる、身体的・精神的症状である。レオ・カナー自身が自閉症児の両親の離婚率の低さに言及もしている。<ref name="NIH205">{{cite web|title=Divorce among parents of children with autism: dispelling urban legends|url=http://aut.sagepub.com/content/17/6/643.full|accessdate=2016-05-31 |date=November 2013}}</ref> |
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<!-- 管理 --> |
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効果が示されたと広く支持される治療法はない。放っておくと[[うつ病]]や[[強迫性障害]]といった二次障害になることがあるとの指摘もある{{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|pp=139-141}}。日本では、アスペルガー症候群、自閉症、学習障害、[[ADHD]]といった発達障害の子供に対して個々のニーズに合わせて支援するシステムが出来ており、[[特別支援教育]]([[特別支援学級]])がある<ref>{{Cite web |date=2003-2 |url=http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_f/F-112/06.pdf |title=自閉症及びアスペルガー症候群の児童生徒への特別支援教育 |format=PDF |publisher=東條吉邦 |accessdate=2014-9-14}}</ref>。 |
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== 分類 == |
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[[File:Autism Spectrum Disorder.svg|thumb|400px|right|[[自閉症スペクトラム]]図{{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|loc=Chapt.2}}]] |
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第一に[[ICD-10]]と[[DSM-5]]では、分類体系が一致していないことに留意すべきである<ref name="Kaplan">{{Cite |和書| |author=B.J.Kaplan |author2=V.A.Sadock |title=カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5診断基準の臨床への展開 |edition=3 |publisher=メディカルサイエンスインターナショナル |date=2016-05-31 |isbn=978-4895928526 |at=Chapt.31.5}}</ref>。[[世界保健機関]](WHO)は現在のICD-10において、[[広汎性発達障害]](PDD)のひとつであり、[[自閉スペクトラム症]](ASD)の一種であると分類している<ref name="Kaplan" />。 |
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一方で[[アメリカ精神医学会]]は、[[神経発達症]]のひとつであり連続モデルであるとしている<ref name="Kaplan"/>。そのため[[DSM-5]]改定においてはASの診断名が削除され、代わりに[[自閉スペクトラム症]]の深刻度にて記載するようになった<ref name="Kaplan" /><ref name="DSMV">{{cite web|title=299.80 Asperger's Disorder |work=DSM-5 Development |publisher=American Psychiatric Association |accessdate=21 December 2010 |url=http://www.dsm5.org/ProposedRevisions/Pages/proposedrevision.aspx?rid=97# | archiveurl= http://web.archive.org/web/20101225152454/http://www.dsm5.org/ProposedRevisions/Pages/proposedrevision.aspx?rid=97| archivedate= 25 December 2010 | deadurl= no}}</ref>。ASは自閉スペクトラム症の一つの型であるとされる<ref name="Kaplan" />。 |
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また、[[高機能自閉症]](HFA, 知的障害のない自閉症)とASが、どの程度重複しているかは不明である<ref name="Kasari">{{cite journal |vauthors=Kasari C, Rotheram-Fuller E |title= Current trends in psychological research on children with high-functioning autism and Asperger disorder |journal= Current Opinion in Psychiatry |volume=18 |issue=5 |pages=497–501 |year=2005 |pmid=16639107 |doi=10.1097/01.yco.0000179486.47144.61 }}</ref><ref>{{cite journal |journal= J Autism Dev Disord |year=2008 |volume=38 |issue=9 |pages=1611–24 |title= Examining the validity of autism spectrum disorder subtypes |vauthors=Witwer AN, Lecavalier L |doi=10.1007/s10803-008-0541-2 |pmid=18327636}}</ref> 。 |
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== 特徴 == |
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[[File:Asperger Syndrome hist.svg|thumb|400px|right|古典的[[自閉症]]とアスペルガー症候群の比較{{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|pp=21-22}}]] |
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特徴としては以下が挙げられる。 |
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:'''古典的自閉症とASの共通点'''{{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|pp=21-22}} |
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:* [[#社会的コミュニケーションの困難|社会的コミュニケーションの困難]] |
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:* [[#狭い興味と反復行動|狭い興味と反復行動]] |
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:''' 古典的自閉症とは異なる点'''{{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|pp=21-22}} |
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:* ASでは、IQは少なくとも平均以上であり、知能の遅れはない |
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:* 古典的自閉症では、IQはどの値でもありえるが、知能の遅れが認められる |
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=== 社会的コミュニケーションの困難 === |
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アスペルガーの人は、多くの非アスペルガーの人と同様か、またはそれ以上に強く感情の反応をするが、何に対して反応するかは常に違う。彼らが苦手なものは「他人の情緒を理解すること」である。 |
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例として、教師がアスペルガーをもつ子供に(宿題を忘れたことを問いただす意味で)「犬があなたの宿題を食べちゃったの?」と尋ねると、その子は押し黙ってしまう。この時、教師に自分は犬を飼っておらず、普通犬は紙を食べないことを説明する必要があるのかどうかを考え、教師の表情や声のトーンから暗に意味していることを理解できないのである。教師がこの子は宿題のことをうやむやにしようとしている、反抗的である、と考えたりしてしまう場合もある。 |
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上記の例のように、アスペルガーをもつ子供は、言われたことを額面どおり真に受けることが多い。成長の上で問題となるのは、親や教師が励ますつもりで「テストの点数など、さほど大事ではない」等、きれい事ばかり言ったり、反対に「テストで点数を取れなければ、何も買いあたえない」等、現実的なことばかり言い聞かせること、つまり極端な教育をすることである。結果的に持つべき水準からかけ離れた観念を持って行動してしまう危険性がある。 |
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彼らは、“大人の発言には掛け値がある”という'''疑い'''を持ちにくく、持ったとしても、はたして掛け値がどのくらいなのかを慮ることが困難であるため、発言者の願望を載せて物事を大げさに表現すると狙った効果は効き過ぎることになる。 |
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アスペルガー症候群の人間は、それ以外の人々が[[モラトリアム]]を経由して獲得できると言われる「[[自我同一性]]」の獲得が困難とされる{{Sfn|宮尾益知|2010|p=156}}。自分が過去から連綿と続いている存在であるという認識を持つことが出来ず{{Sfn|宮尾益知|2010|p=156}}、[[中庸]]の考えを持たない為、極端で観念的な思考に走りやすい傾向がある{{Sfn|宮尾益知|2010|p=156-157}}。[[被害妄想]]、[[対人恐怖]]などを起こすこともあり{{Sfn|宮尾益知|2010|p=157}}、[[統合失調症]]と誤解されるような病的な精神状態になってしまうこともある{{Sfn|宮尾益知|2010|p=157}}。精神に混乱をきたし、自分の世界に引きこもる、その混乱を周囲に対する怒りに置き換える、などの傾向を見せる{{Sfn|宮尾益知|2010|p=157}}。 |
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非自閉症の人(NT:neurotypical, 典型的な精神の人)は、他者の仕草や雰囲気から多くの情報を集め、相手の感情や認知の状態を読み取ることができる。この能力が自閉症の人には欠けており、他者の心を読むことが難しい([[心の理論]]の欠如)。 |
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そのような、仕草や状況を読み取れない人は他人が微笑むようすを見ることはできても、その微笑みがなにを意味しているかが理解できない。多くの場合、彼らにとって「行間を読む」ことは、困難ないし不可能である。最悪の場合、対人コミュニケーションにおいて、表情を読みとることができない。つまり、人が口に出して言葉で言わなければ意図していることが何かを理解できないのである。しかし、彼らはボディーランゲージなどを通して相手に伝えることは可能である。とはいえ、この種の能力差は、健常者から深刻な障害をかかえるケースにまでわたって[[スペクトラム]]状(連続体)に分布している。したがって、アスペルガー症候群に分類されるケースにおいても、表情や他人の意図を読み取ることに不自由のない人もいる。また、彼らはしばしば[[アイコンタクト]]が困難である。ほとんどアイコンタクトをせず、それをドギマギするものだと感じる場合が多い。その一方で、他人にとって不快に感じるくらいに、じっとその人の目を見つめてしまうようなタイプもいる。アイコンタクトなどにおいて、相手から発せられるメッセージを理解しようと努力しても、この障害のために相手の心を解読しそこねることが多い。例えば、初対面の人に挨拶をする際に、社会的に受け入れられている通常の手順で自己紹介をするのではなく、自分の関心のある分野について一人で長々と話し続けることもある。 |
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他人に自分の主張を否定されることに強く嫌悪感を覚えるという人もいる。このことは学校などで学習上の大きな障害となる。例えば、教師が生徒にいきなり答えさせ、生徒:「これは○○だと思います」、先生:「 違うよね、これは××だよ」というように、否定して答えやヒントを教えるような方法は、アスペルガーの人には相当な苦痛やストレスとなる。しかし、多くの成人は、忍耐力のなさと動機の欠如などを克服し、新しい活動や新しい人に会うことに対する耐性を発達させている。 |
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これらのことは子供時代や、大人になってからも多くの問題をもたらす。アスペルガーの子供はしばしば学校での[[いじめ]]の対象になりやすいとの指摘がある。理由として彼ら独特の振るまいや言葉使い、興味対象、身なり、そして彼らの非言語的メッセージを受け取る能力の低さを持っていることが主な原因とされる。彼らに対し、前述の言動やアスペルガー症候群という病気自体が理解できず、アスペルガー症候群患者に対する嫌悪感を持つ人が多いとされている。このため教育の場である学校において、今後はサポート体制の確立や自立の支援、他の子供への理解を深めさせる、といった総合的な支援策が必要になるという指摘がある。 |
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「アスペルガー症候群」という一つのカテゴリーであっても、人によって障害の度合いは千差万別である。例えば、学校の友達とうまく話せたり、話をうまくまとめられるなど、至って軽度な場合もある。また、上手く話せず、それでもよい友達に巡り会えたから必死で耐えているというように、自閉度が中度–重度なこともある。この障害は、カナータイプの自閉症などと違い、一見「定型発達者」に見えるために、周りからのサポートが遅れがちになったりすることが問題となっている。 |
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=== 特異性の高いコミュニケーションが障害とは限らない === |
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症候群という表現は、アスペルガーの人は障害者(異常)で、その他の者は定型発達者(正常)というように感じる。しかし、特徴の見かたを変えると、客観的で、事実を正確に理解して表現することに長けているともいえる。以下に挙げられている「言葉を額面どおりに受け取る」や「些細なことにこだわる」という特徴も「厳正に規則を守る」と言い換えることができる。例えば、パソコンのように順序だったものや規則的なものに興味を持てば、才能を開花させることも可能である。また、「行間を読むことが苦手」というのは、行間を読まないコミュニケーション方法ということである。それは単に、「行間を読むコミュニケーション(アスペルガー以外の多数派)」に対しての「少数派の方法」という関係なのである。 |
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つまり、少数派であるために、多数派の人と自由にコミュニケーションが取れない、あるいはコミュニケーション方法の違いを理解されないという問題が、社会生活での障壁となりやすい。 |
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=== 狭い興味と反復行動 === |
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アスペルガー症候群は、興味の対象に対して、きわめて強い、偏執的ともいえる水準での集中を伴うことがある。例えば、1950年代のプロレスや、アフリカ独裁政権の国歌、マッチ棒で模型をつくることなど、社会一般の興味や流行にかかわらず、独自的な興味を抱くケースが見られる。しかし、これらの対象への興味は、一般的な子供も持つものである。両者の違いは、その異常なまでの興味の強さにある。アスペルガー児は興味対象に関する大量の情報を記憶することがある。 |
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また一般的に、順序だったもの、規則的なものはアスペルガーの人を魅了する。これらへの興味が物質的あるいは社会的に有用な仕事と結びついた場合、実り豊かな人生を送る可能性もある。例えば、コンピューターに強い興味を持って取りつかれた子供は、大きくなって卓越したプログラマーになるかもしれない。それらと逆に、予測不可能なもの、不合理なものはアスペルガーの人が避ける対象となる。突然のアクシデントや、論理的に話し合いのできない感情的な人間なども、その例である。 |
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彼らの関心は生涯にわたることもあるが、いつしか突然変わる場合もある。どちらの場合でも、ある時点では通常1~2個の対象に強い関心を持っている。これらの興味を追求する過程で、彼らはしばしば非常に洗練された知性、ほとんど頑固偏屈とも言える集中力、一見些細に見える事実に対する膨大な(時に、写真を見ているかのような詳細さでの)記憶力などを示す。[[ハンス・アスペルガー]]は、彼の幼い患者を『小さな教授』と呼んでいた。その13歳の患者は、自分の興味を持つ分野に網羅的かつ微細な、大学教授のような知識を持っていたからである。 |
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臨床家の中には、アスペルガーの人がこれらの特徴を有することに全面的には賛成しない者もいる。たとえばWing と Gillberg はアスペルガーの人が持つ知識はしばしば理解に根付いた知識よりも表層だけの知識の方が多い場合がある、と主張している。しかし、このような限定はGillbergの診断基準を用いる場合であっても、診断とは無関係である。 |
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アスペルガーの児童および成人は、自分の興味のない分野に対しての忍耐力が弱い場合が多い。学生時代、「とても優秀な劣等生」と認識された人も多い。これは、自分の興味のある分野に関しては他人に比べてはるかに優秀であることが誰の目にも明らかなのに、毎日の宿題にはやる気を見せないからである(時に、「興味のある分野であってもやる気を見せなかった」という報告もあるが、それは他人が同じ分野だと思うものが本人にとっては異なる分野だからだと思われる。例えば、数学に興味があるが答えが巻末に載っている受験数学を自分で解くことに興味が相対的に変化し、日本語の旧字体に興味はあるが国語の擬古文の読解問題には興味が持てない、など)。ノートやテスト用紙に文字を手書きすることを、快く思う子供、またそうでない子供もいる。一方、学業において他人に勝つことに興味を持ったために優秀な成績を取る人もおり、これは診断の困難さを増す。 |
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=== 感覚 === |
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アスペルガーの人は他の様々な感覚、発達、あるいは生理的異常を示すこともある。その子供時代に細かな運動能力に遅れをみせることが多い。特徴的なゆらゆら歩きや小刻みな歩き方をし、腕を不自然に振りながら歩くかもしれない。手をぶらぶら振るなど(常同行動)、衝動的な指、手、腕の動きもしばしば認められ、[[チック症]]を併発している場合も多い。 |
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アスペルガーの人は感覚的に多くの負荷がかかっていることがある。音、匂いに敏感だったり、あるいは接触されることを好まなかったりする。例えば、突然大きい声でまくしたてられたり、頭を触られたり、髪を触られるのを好まない人もいる。音に神経質過ぎて不眠を訴える人も多い。これが子供の場合、教室の騒音が彼らに耐えられないものである場合等、学校での問題をさらに複雑にすることもある。 |
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一方で、自己の疲労感、眠気、空腹感、のどの渇き、尿意、発熱、寒気、暑さなどに対する自覚が鈍く、ぎりぎりになるまで気づかず、計画的な解消行動をとれない人もいる。このことは、程度が重度でさえなければ、本人の日常生活にはさほどの支障をきたすものではないが、団体行動を難しくする一因になる。 |
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アスペルガーの人は、自分があまり興味を持たない事柄に関して、「実体験から因果関係を導き出し、一般法則として身に付ける」ことが不得手なことがある。例えば、「寒気がして鼻水が出るなら風邪を引いている」「黒板の文字が見にくくなってきたら近視が進んでいる」などの法則を自分で発見することが難しい。もちろんそれらの問題が「激しく」「突然に」現れれば気付くこともあるが、ゆっくりと進行してくる問題には、その不快な状態にも「こんなものだろう」と勝手に納得して慣れてしまう。そして、その状態を「工夫すれば解決できるもの」とも思わず、我慢するか、諦めてしまうのである。このようなことは定型発達者にも起こるが、アスペルガーの人には生活に支障をきたすレベルで起こるということである。 |
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例えば、「冬でも厚着をすれば寒くない」という法則に気づかない場合、最低気温を更新するような厳寒の日でも「今日は特に寒いなぁ」と思いながらいつもの服装で出かけ、ただ耐えていたりする。「寒い」ことに特に肉体的に耐性があるわけではない。この場合、他人より一層寒さが堪え活動力が下がるが、その自覚がないということである。この場合、本人は「冬の服装は、Tシャツにシャツにコート」などと覚えており、そこから自分で「特に寒い日はTシャツを重ね着してもよい」と発想を飛躍させることが難しいのである。反面、「異常に寒い日は変な重ね着をしてもよい」というお手本をテレビを見たり本で読んだりすれば、その概念はすんなり入り、身に付くという面もある。テレビや活字のように一度時間をかけた編集を経たメディアで得る情報は信じられるが、自分の感覚からくる法則やリアルタイムの会話による情報にはあまり信頼を置いていないと言い換えることもできる。なお、これらの困難は「自分にとってあまり関心のない/不得意な分野」に強く現れる。「自分にとって関心のある/得意な分野」に関しては、観察力や注意力に不足はなく、目端も利き、かえって常識にとらわれない新しい発想をすることも可能である。 |
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別の行動の特徴として、やまびこのように、言葉やその一部を繰り返す反響言語([[エコラリア]])と呼ばれる症状を示す場合がある。 |
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宮尾益知はアスペルガー症候群の感覚面での特徴として、「ちょっとした態度や言葉で著しく傷つき、それが[[トラウマ]]となりやすい」「幻覚や妄想じみたこだわりを見せる傾向がある」「過去のトラウマから、第三者にとってはちょっとしたことでも[[フラッシュバック]]を起こして大騒ぎをする」「大変まじめで、それゆえに壊れやすい」という見解を出している{{Sfn|宮尾益知|2010|p=146-147}}。 |
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== 併発しうる疾患 == |
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=== 睡眠障害 === |
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{{出典の明記|date=2016-04|section=1}} |
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近年では、アスペルガー症候群を含む[[発達障害]]と[[睡眠障害]]との関連性が発見されてきた。睡眠障害といっても、[[ナルコレプシー]]や[[睡眠時無呼吸症候群]]などの先天的な障害ではなく、[[睡眠相後退症候群]]や[[非24時間睡眠覚醒症候群]]などの[[概日リズム睡眠障害]]、[[不眠症]]、[[過眠症]]などの後天的な障害のことである。毎日の睡眠は、脳を整理・形成する働きを持っており、脳の働きや思考メカニズムが定型発達者とは異なるアスペルガー症候群の場合、睡眠障害は非常に起こしやすい二次障害である。睡眠障害は、一度なるとどんどん悪化してしまう傾向があり、難治性であるために、睡眠障害を起こさないように就寝や起床の時間を規則正しく生活することが重要であるとともに、症状が見られた場合は早急に治療をすることが必要である。睡眠外来で診てもらう時は、アスペルガーなどの発達障害をもっていることを申告することが望ましいだろう。 |
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なお、日本で唯一「子どもの睡眠と発達医療センター」を設置している兵庫県立リハビリテーション中央病院の三池輝久医師は、「幼児期の睡眠こそが、潜在している発達障害の発症を左右させる原因である。」との、全く逆の展開も発表している。 |
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=== 精神疾患 === |
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一部のアスペルガー症候群の人は、その特異性から他者とコミュニケーションがうまくいかずに、頻繁にイライラしたり落胆することが多い。このような状況が長年に渡って続くことにより、二次障害として[[うつ病]]などの精神障害を引き起こすことが確認されている。 |
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* [[うつ病]] - ASの少なくとも60%に認められる {{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|pp=139-141}} |
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* [[不安]] {{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|pp=139-141}} |
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* [[強迫神経症]] - 不安が原因となる{{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|pp=139-141}} |
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* [[摂食障害]] {{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|pp=139-141}} |
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* [[精神病]]と[[統合失調症]] {{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|pp=139-141}} |
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このような二次障害を予防するためには、アスペルガー症候群に定型発達者と同じコミュニケーション方法を望んだり、興味の対象を無理に広げさせたりしないことが重要である。アスペルガー症候群の人はほとんどの場合が、自分の行動が自分の意思によるものだということを強く認識している場合が多く、それを否定されると多大なストレスが伸し掛ることが多いのである。 |
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=== 身体的な疾患 === |
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* 神経炎、免疫不全{{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|pp=139-141}} |
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* 胃腸障害{{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|pp=139-141}} |
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* [[てんかん]] {{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|pp=139-141}} |
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== 原因 == |
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=== 出生前の要因 === |
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* [[抗うつ薬]]、特に[[SSRI]]を妊娠中に使用することは、母体の[[うつ病]]を考慮しても、子供が[[自閉症スペクトラム]]になるリスクを増大させる<ref name="pmid26660917">{{cite journal |author=Boukhris T, Sheehy O, Mottron L, Bérard A. |title=Antidepressant Use During Pregnancy and the Risk of Autism Spectrum Disorder in Children. |journal=JAMA pediatrics. |volume=170 |issue=2 |pages=117-124 |date=2016-2-1 |url=http://archpedi.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2476187 |pmid=26660917 |doi=10.1001/jamapediatrics.2015.3356}}</ref>。 |
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* [[バルプロ酸ナトリウム]]を妊娠中に使用することは、母体の[[てんかん]]を考慮しても、子孫が[[自閉症]]や[[自閉症スペクトラム]]になるリスクを増加させる<ref name="pmid23613074">{{cite journal |author=Christensen J, Grønborg TK, Sørensen MJ, Schendel D, Parner ET, Pedersen LH, Vestergaard M. |title=Prenatal valproate exposure and risk of autism spectrum disorders and childhood autism. |journal=JAMA. |volume=309 |issue=16 |pages=1696-1703 |date=2013-4-24 |url=https://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1681408 |pmc=4511955 |pmid=23613074 |doi=10.1001/jama.2013.2270}}</ref><ref name="pmid23613078">{{cite journal |author=Meador KJ, Loring DW. |title=Risks of in utero exposure to valproate. |journal=JAMA. |volume=17 |issue=3 |pages=84 |date=2013-4-24 |url=https://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1681385 |nihms=473691 |pmc=3685023 |pmid=23613078 |doi=10.1001/jama.2013.4001}}</ref><ref name="pmid23973243">{{cite journal |author=Meador KJ, Loring DW. |title=Prenatal valproate exposure is associated with autism spectrum disorder and childhood autism. |journal=The Journal of pediatrics. |volume=163 |issue=3 |pages=924 |date=2013-9 |url=https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0022-3476%2813%2900809-3 |pmid=23973243 |doi=10.1016/j.jpeds.2013.06.050}}</ref><ref name="pmid23999195">{{cite journal |author=Wood A. |title=Prenatal exposure to sodium valproate is associated with increased risk of childhood autism and autistic spectrum disorder. |journal=Evidence-based nursing. |volume=17 |issue=3 |pages=84 |date=2014-7 |url=http://ebn.bmj.com/content/17/3/84.long |pmid=23999195 |doi=10.1136/eb-2013-101422}}</ref><ref name="pmid24026277">{{cite journal |author=Singh S. |title=Valproate use during pregnancy was linked to autism spectrum disorder and childhood autism in offspring. |journal=Annals of internal medicine. |volume=159 |issue=4 |pages=JC13 |date=2013-8-20 |url=https://annals.org/article.aspx?articleid=1726872 |pmid=24026277 |doi=10.7326/0003-4819-159-4-201308200-02013}}</ref><ref name="pmid24692263">{{cite journal |author=Smith V, Brown N. |title=Prenatal valproate exposure and risk of autism spectrum disorders and childhood autism. |journal=Archives of disease in childhood. Education and practice edition. |volume=99 |issue=5 |pages=198 |date=2014-10 |url=http://ep.bmj.com/content/99/5/198.long |pmid=24692263 |doi=10.1136/archdischild-2013-305636}}</ref>。 |
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=== ミクログリア仮説 === |
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{{main|自閉症#ミクログリア仮説(ニューロン/グリア)}} |
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=== 生理学的特徴 === |
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2012年の[[京都大学]]の神経化学研究チームの発表によると、アスペルガー症候群の者は対人相互作用などに強く関係する上側頭溝・紡錘状回・扁桃体・内側前頭前野・下前頭回などの脳全体に占める割合が、通常人と比べ相対的に低いことがわかった<ref>{{Cite web|title=自閉症スペクトラム障害でミラーニューロン回路の不全|author=佐藤 特定准教授|url= http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2012/120815_1.htm |date=2012-08-15|publisher=[[京都大学]]|accessdate=2015-04-15}} - 京都新聞2012年8月18日付27面、産経新聞2012年8月18日22面、日本経済新聞2012年8月19日34面、毎日新聞2012年8月18日29面、掲載内容。</ref>。 |
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== 診断 == |
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鑑別疾患として、[[社交不安症]]、[[強迫症]]、[[スキゾイドパーソナリティ障害]]が挙げられる<ref name="Kaplan" />。 |
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他の精神疾患と誤診される可能性があるとの意見や報道がある<ref>読売新聞 シリーズこころ「統合失調症」相次ぐ誤診 2008年12月26日</ref>。誤診されやすいものとして[[統合失調症]]、[[スキゾイドパーソナリティ障害]]、[[統合失調型パーソナリティ障害]]、[[強迫性パーソナリティ障害]]、[[注意欠陥・多動性障害|ADHD]]、[[ナルコレプシー]]、[[びっくり病]]が挙げられている<ref>{{Cite book|和書|editor=適正診断・治療を追求する有志たち|year=2010|month=5|title=精神科セカンドオピニオン2―発達障害への気づきが診断と治療を変える|publisher=シーニュ|isbn=978-4990301422}}</ref>。 |
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== 管理 == |
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=== 治療薬 === |
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2015年現在、治療薬や症状を緩和する薬として、正式に承認されている薬は存在しない。 うつ病や不安障害といった二次障害を含めた症状を軽減する薬として、抗うつ薬、抗精神病薬、気分安定薬などを処方する場合がある。 |
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研究段階としては、[[オキシトシン]]を投与が効果があるという研究があるが、まだ臨床では認められていない<ref>{{cite news|url=http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG01H1Q_R01C14A1CR8000/|title=自閉症障害治療、ホルモンを投与 東大など臨床研究|date=2014-11-01|newspaper=[[日本経済新聞]]|accessdate=2016-05-08}}</ref>。双極性障害に処方される非常に使い方の難しい薬(最適治療量と中毒量が近い)ではあるが、炭酸リチウムには認知を改善する(自分を客観的に見られるようになる)作用があり、人格障害でもアスペルガー症候群でも作用するという。また、自閉症と同様の治療として[[漢方薬]]での治療<ref>{{cite book|和書|title=自閉症は漢方でよくなる!(健康ライブラリ)|author=飯田 誠|date=2010-10-21|publisher=講談社|isbn=978-4062596558}}</ref>や、鍼治療による治療<ref>{{cite journal|和書|title=発達障害での小児はり効果を検討 ADHDの薬剤投与で個性抹殺の懸念も 日本小児はり学会特別講演会|journal=ナラティブメディカ|year=2015|month=5|page=45-48|publisher=ナラティブ出版}}</ref>もある。[[アフリカ睡眠病]]の治療薬として開発された、スラミンなども自閉症向けに研究されている<ref>{{cite news|url=http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140617102457.htm|title=Single dose of century-old drug approved for sleeping sickness reverses autism-like symptoms in mice|date=2014-06-17|newspaper=ScienceDaily|accessdate=2016-05-08}}</ref>。 |
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== アスペルガー症候群の援助 == |
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アスペルガー症候群は、特定の分野については驚異的なまでの集中力と知識を持ち、「[[場の空気|空気を読む]]」行為が苦手、細かい部分にこだわる、感情表現が困難といった特徴を持つ。新聞のスポーツ欄にある野球選手の打率を毎日覚えてしまうなどの驚異的な記憶力を示すこともあるが<ref>あの人はなぜ相手の気持ちがわからないのか もしかしてアスペルガー症候群!? PHP文庫 [[加藤進昌]]著 [[PHP研究所]] 2011年 978-4-569-67490-2</ref>「電話をかけながらメモが取れない」「券売機で切符が買えない」など一般人が出来る普通の行為ができない障害を持つこともある。コミュニケーションの特異性(空気を読むことが出来ない、会話が一方通行になりがち、あいまいな指示が理解できない、白黒はっきりつけたがる、一般人の持つ常識が備わっていない)、同時並行に複数の業務をこなすことができない、急な変更にうまく対応できない、細部に注意が集中し全体像把握が苦手等のためである。以上の性質からアスペルガー症候群を持つ成人は、接客やチームワークを必要とする仕事には元来向いていない。アメリカの大部分の調査結果によると、アスペルガー症候群の成人の75-80%はフルタイムの仕事に就いていない<ref>{{Cite news|title=Tackling the Unemployment Crisis for Adults with Asperger Syndrome |url= http://asperger-employment.org/wp-content/uploads/2011/04/ASTEP-Article-ASN-Fall-2011-1.pdf |newspaper=AUTISM SPECTRUM NEWS|author=Marcia Scheiner|year=2011|accessdate=2015-04-15}}{{en icon}}</ref>。 |
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アスペルガー症候群の人は、現代社会に対し、非常に適応しにくい困難さをかかえている。あちこちで衝突が起こり、[[引きこもり]]になっていることも少なくない。自分自身に強いコンプレックスを抱え、二次障害で[[うつ病]]を発病したり、自殺志願を持つ人も決して少なくない。そういうアスペルガー症候群の人に援助をする必要が急がれている。発達障害者支援センターなどをはじめ、少しでもアスペルガー症候群の人が社会で暮らしやすいよう、[[地域活動支援センター]]や[[デイケア]]などの設備を整える必要が早急に問われている。最も必要なことがこの障害を理解し、受け入れる環境的素地を作り上げることである。 |
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[[2012年]]現在、関連書籍が多数発売されたり、主に[[日本放送協会|NHK]]でアスペルガー症候群についての番組や特集が組まれることが増え、社会認知はある程度は進んだと言える。しかしながら、身体障害や[[ダウン症候群]]など、目に見える障害ではなく、またアスペルガー症候群の人と実際に話してみても、障害を持っている人間とはわからない場合も多く、外見もごくごく普通であることがほとんどなので、自らカミングアウトしない限り、「変わり者」程度の認識しか持たれないケースが多く、これが障害を抱える本人にとっての苦痛になっている。他人とのコミュニケーション能力の障害ゆえ、対人関係での衝突や確執が多く生まれることがあり、これもまた障害を持つ本人に苦痛を与える大きな要因となっている。相手が理解をしてくれない限り「変な奴」と見られ、いじめの対象になったり、周りから嫌われたり、仕事上の足手まといのような存在に思われることもあり、非常に難しい障害であると言える。また、場合によっては本人が、障害そのものに大変なコンプレックスを抱いていることもある。それ故に定型発達者と同じように、無理矢理外に出ようとすることもある。 |
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当然ながらこれは、自分自身を肉体的・精神的に追い詰めることでもあるため、場合によっては、それがうつ病などの二次障害を発症する原因になってしまう可能性もある。 |
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大きな問題は、この障害に対する福祉制度がまだ未熟であることにある。[[2005年]]に[[発達障害者支援法]]が制定され、[[障害者自立支援法]]に発達障害も範疇に入ることが[[2010年代]]に入って決められた。また、アスペルガー症候群の人も[[精神障害者保健福祉手帳]]を持てることにはなっているが(自治体の裁量で持てない場合もある。発行基準は一元化されていない)、働くことや他人との関わりに困難を抱えている人は多い。ただ、行政の側でも発達障害を持つ人を雇った企業へ助成金を支給するなどの取り組みは行なわれている。しかし、働く意欲のあるアスペルガー症候群の人が、対人関係や精神衛生上の問題をクリアした上で就労できる時代にはまだなっていない。 |
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アスペルガー症候群を持つ人に対する支援の成否は人によって異なる。例えば、「この人にはこう支援して人生がうまくいくようになった」というケースがあった場合でも、それが他のアスペルガーの人に当てはまるとは限らない。人によってどういったところにハンデがあるかは千差万別だからである<ref>[http://www.sankei.com/region/news/140712/rgn1407120071-n1.html 発達障害児、地域でサポート 集団行動通じて社会性育成 静岡]産経新聞 2014年7月12日</ref>。「障害」だからと一律に皆を福祉で養おうとすると、働く意欲や、労働の中での他者との良好な人間関係や、収入など、実りある人生の可能性を奪ってしまう場合も有り得る。発達障害を抱えながらも、周囲のサポートを得て一般企業で働いている人たちは多い<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/osaka/feature/CO004339/20140407-OYTAT50048.html 発達障害児の母、かの子さんへ (下)]読売新聞 2014年4月7日</ref>。しかし、働きたいのに働けない人、またつまずくのが怖くて社会に出られない人も多くいる。その人その人に合ったきめ細やかな対応、社会の中での居場所の確保が求められている<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20131228-OYT8T00355.html 発達障害を支える (5)働く体験通じ「適職」知る]読売新聞 2014年1月4日</ref>。 |
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アスペルガ-症候群が苦手とされる職業は、接客業、とっさの対応が大切な業務、様々な作業を担当する事務、コミュニケーションが大事な仕事、などの、人の心を理解し、器用で効率よく場の空気を読んで、想像力を働かせ、臨機応変な対応をする業務が苦手とされる。<ref>{{cite news|url=http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=95380|title=第32回「心に残る医療」体験記コンクール [一般の部・読売新聞社賞] 発達障害と向き合って|work=ヨミドクター|publisher=[[読売新聞]]|date=2014-03-28|accessdate=2016-05-08}}</ref>。 |
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ICD-10 にの F80 から F89,F90 から F98 に 当たる発達障害が精神障害の一部として制度上併記され、市町村の保健所などで、専門医による診断書を提出の上で、症状や他の発達障害・疾患との合併など総合的な状態を熟慮し精神保健福祉手帳が交付されるケースが近年増加してきたが、保健所で所定の書式による診断書の提出で、障害者サービス受給者証、もしくは自立支援医療受給者証の交付も行われており、これにより一般的な障害者福祉サービス(家事援助、行動援護など)を受けることが出来る。障害者福祉サービスには就労移行支援の利用も含まれ、就労移行支援訓練所を利用することにより原則2年間まで職業訓練を受けることができる。利用に当たっては、障害者サービス受給者証、自立支援医療受給者証、精神保健福祉手帳のいずれかが必要である。 |
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また、金銭面の管理が極めて難しく、社会生活に支障をきたしている場合、 判断能力が十分でない人が地域で自立した生活を送るための日常生活自立支援事業における、各地の社会福祉協議会が行う援助事業サービスに「権利擁護」があり、利用者はそれぞれ、以下の必要な援助を受けるための契約を協議会と結ぶ。福祉サービスの利用援助、苦情解決制度の利用援助、住宅改造、住居の貸借、日常生活上の消費契約や住民票の届出ほか行政手続に関する援助など、日常的なお金の管理(預金の払い戻し・解約・預け入れなど)金銭管理などの権利擁護の制度を使用するケースもある。これらの福祉サービスは、他の発達障害においても診断の上で関係機関に申請し、認定されれば利用できるのは同様である。 |
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== 疫学 == |
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アスペルガー症候群は性別との相関関係があり、4倍程度男性に多い<ref name="kato200801">{{Cite|和書|title=社会問題から見た心の病:「アスペルガー障害」|author=加藤進昌|date=2008-01|url= http://www.asas.or.jp/jsnp/pdf/topics/12_200801.pdf |format=PDF|publisher=日本神経精神薬理学会|accessdate=2015-04-15}}</ref>。アスペルガー症候群の者は全人口の1%程度とされるが<ref name="kato200801"/>、男性の1.6%、女性の0.4%はアスペルガー症候群と言う計算になる。知的障害を伴わない自閉症である高機能[[自閉症]]とアスペルガー症候群には強い遺伝的な要素がある<ref>榊原洋一 『ササッとわかる アスペルガー症候群との接し方』 講談社、2009年、16頁。</ref>。G.R.テロングとJ.T.ダイアーは高機能自閉症の人がいる家族の3分の2が、一等親血縁者か二等親血縁者にアスペルガー症候群の者がいる事を発見した<ref>{{Cite web|url= http://www.autism.com/trans_ja_grandin |title=天才とは普通でないことかもしれない。アスペルガー、高機能自閉症の学生への教育|author=テンプル・グランディン|date=2001-11|publisher=AUTISM RESEARCH INSTITUTE|accessdate=2015-04-15}}</ref>。 |
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Sarah Cassidyらによる、[[英国]]の患者を対象とした臨床コホート研究による報告によると、アスペルガー症候群を持つ成人では、一般成人の9倍以上の[[自殺]]リスクがあり、社会的孤立や排除、[[失業]]等で二次的うつ病の危険因子を生ずることが多く、自殺リスクを低減するための適切なサポートが必要であると言う<ref>{{Cite web|author=紫音裕|title=成人期アスペルガー症候群で高い自殺リスク-ランセット誌 |url= http://www.qlifepro.com/news/20140724/suicide-risk-in-adults-with-aspergers-syndrome.html |date=2014-07-24|publisher=QLifePro|work=医療NEWS|accessdate=2015-04-15}}</ref>。 |
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== アスペルガー症候群と文化 == |
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=== アスペルガー症候群を「障害」とすることについての議論 === |
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[[精神医学]]において頻用される[[アメリカ精神医学会]]の診断基準 ([[DSM-IV-TR]])では'''アスペルガー障害'''と呼ぶが、アスペルガーを「障害」や「症候群」として取り扱うことへの反論は根強く、[[DSM-5]]ではアスペルガー症候群の名称をなくし[[自閉症スペクトラム]](autism spectrum disorder)に統一された。 |
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主にアメリカの学会などで、アスペルガー症候群そのものは障害ではなく、治療すべき対象ではないという議論がある<ref>{{cite web|url=http://www.informaworld.com/smpp/content~db=all?content=10.1080/09687590701659618|title='Surplus suffering': differences between organizational understandings of Asperger's syndrome and those people who claim the 'disorder'|publisher=[[テイラーアンドフランシス|Taylor & Francis Group]]|accessdate=2016-05-08}}</ref>。また、そもそもアスペルガー症候群を「シンドローム」(症候群)であるとか、「ディスオーダー」(障害)とすべきでないという主張もある<ref>{{cite web|url=http://www.scielo.br/scielo.php?script=sci_arttext&pid=S1516-44462006000500002&lng=en&nrm=iso&tlng=en|title=Autism and Asperger syndrome: an overview|publisher=[[:en:SciELO|Scientific Electronic Library Online]]|accessdate=2016-05-08}}</ref>。 |
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=== アスペルガー症候群の著名人 === |
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自閉症スペクトラムの診断基準の一部を満たす著名人は多く、研究者や偉人に対する「変わり者の天才」というステレオタイプの形成を助けてきた。ただし、アスペルガー症候群のような高機能な自閉症の存在が知られるのはここ数十年、特に一般に認知されてきたのは1980年代以降であるため、その多くは残された記録から見た専門家による推測であり、正式な診断ではない。疑いがあるが、診断されなかった者たちについて残された記録をもって推測することの是非について論争が絶えない。 |
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; アスペルガー症候群等の診断を受けている事を公表している著名人(ただしADHDや学習障害も含まれる) |
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'''学者''' |
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* [[テンプル・グランディン]]<ref>「火星の人類学者」 オリバー・サックス著</ref> |
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* [[リチャード・ボーチャーズ]]<ref>{{cite web|author=Lane, Megan|title=What Asperger's syndrome has done for us|publisher=BBC.co.uk|url=http://news.bbc.co.uk/1/hi/magazine/3766697.stm|date=2004年6月2日|accessdate=2007-11-08}}</ref> |
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* [[バーノン・スミス]]<ref>{{cite web|title=Mild autism has 'selective advantages'|publisher=MSNBC|url=http://www.msnbc.msn.com/id/7030731/|author=Herera, Sue|date=2005年2月25日|accessdate=2007-11-08}}</ref> |
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* [[樋口康彦]]<ref>[[#「準」ひきこ森―人はなぜ孤立してしまうのか?|「準」ひきこ森―人はなぜ孤立してしまうのか?、pp.42]]</ref> |
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''' 音楽家 ''' |
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* [[スーザン・ボイル]]<ref>{{Cite news|url= http://news.yahoo.co.jp/pickup/6099914 |date=2013-12-08|title=S・ボイルさん、アスペルガー告白=英国の「奇跡の歌姫|author=時事通信|newspaper=[[Yahoo!ニュース]]|accessdate=2015-04-15}}</ref> |
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* [[クレイグ・ニコルズ]]<ref>{{cite web|url=http://www.barks.jp/news/?id=1000003844|title=ヴァインズのクレイグ、自閉症の一種と診断|work=BARKS |accessdate=2016-01-01}}</ref> |
|||
* [[レディホーク (音楽家)|レディホーク]]<ref>{{cite news|author=Lester, Paul|title=Asperger's, allergies and aubergines|publisher=guardian.co.uk|url=http://www.guardian.co.uk/music/2008/sep/11/popandrock|date=2008-09-11|accessdate=2008-09-17 | location=London}}</ref> |
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* [[コートニー・ラブ]]<ref>{{Cite web|title=Celebrities and Autism|url= http://autismhasmychild.com/celebrities-and-autism/ |publisher=Autism Has My Child |accessdate=2015-04-15}}{{en icon}}</ref> |
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* [[南雲玲生]]<ref>{{cite web|url=http://djnagureo.exblog.jp/8304958/|title=高機能広汎性発達障害(アスペルガー症候群・高機能自閉症) : ナグレオブログ 非効率なLifeHacker|date=2008-06-05|publisher=[[南雲玲生]]|accessdate=2016-05-08}}</ref> |
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* [[金田ゆうじ]]<ref>「そだちの科学」(日本評論社)2011年10月号</ref> |
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* [[堀川ひとみ]]<ref>[[NHK総合テレビジョン|NHK総合テレビ]]『[[首都圏ネットワーク]]』2011年10月6日</ref> |
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''' 映画監督、俳優 ''' |
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* [[スティーヴン・スピルバーグ]]<ref>{{cite web|url=http://www.cinematoday.jp/page/N0046319|title=スピルバーグ、学習障害を告白 診断は5年前…子ども時代は理解がなく、イジメも|accessdate=2016-04-01|work=シネマトゥデイ}}</ref><ref>{{cite web|url=http://www.smh.com.au/news/Health/A-syndrome-for-success/2005/06/09/1118123948555.html|title=A syndrome for success|publisher= |accessdate=2005-06-19}}</ref> |
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* [[パディ・コンシダイン]]<ref>[http://www.telegraph.co.uk/health/8440800/Knowing-I-have-Aspergers-is-a-relief.html The Telegrafh 電子版 2011年4月9日 “ Knowing I have Asperger's is a relief ”『アスペルガーだと知ることは救いだ』]</ref> |
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* [[ダリル・ハンナ]]<ref name="autismhasmychild.com">{{cite web|url=http://autismhasmychild.com/celebrities-and-autism/|title=Celebrities and Autism|work=Autism Has My Child|accessdate=2016-05-08}}</ref> |
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* [[ダン・エイクロイド]]<ref name="autismhasmychild.com"/> |
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''' 作家 ''' |
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* [[市川拓司]]<ref>[http://www.nhk.or.jp/heart-net/fnet/info/1111/111124.html NHK「福祉ネットワーク」2011年11月24日 Diversity 発達障害(2)-私の“取扱説明書”-]</ref> |
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* [[ニキ・リンコ|ニキ リンコ]]<ref>{{Cite book|和書|author= 岡野高明、ニキリンコ|year= 2002|title= 教えて私の「脳みそ」のかたち大人になって自分のADHD、アスペルガー障害に気づく|publisher = [[花風社]]|isbn= 978-4-907725-48-8}}</ref> |
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* [[ダニエル・タメット]]<ref>{{cite news|author=Johnson, Richard|date=February 12, 2005|title=A genius explains|url=http://www.guardian.co.uk/weekend/story/0,,1409903,00.html|publisher=The Guardian|accessdate=2007-11-08 | location=London}}</ref> |
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* [[泉流星]]<ref>「ザ!世界仰天ニュース 脳の不思議スペシャルパート7」2009年7月22日放送分より</ref> |
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''' プログラマー、ハッカー ''' |
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* [[エイドリアン・ラモ]]<ref>{{Cite web|title=Ex-Hacker Adrian Lamo Institutionalized for Asperger’s|publisher=[[WIRED (雑誌)|Wired]]|date=May 20, 2010|url=http://www.wired.com/threatlevel/2010/05/lamo/| accessdate=May 23, 2010}}</ref> |
|||
* [[ブラム・コーエン]]<ref>{{cite news|title=Torrential Reign|date=November 14, 2005|publisher=[[フォーチュン (雑誌)|Fortune]]|first=Daniel|last=Roth|pages=91–96|url=http://money.cnn.com/magazines/fortune/fortune_archive/2005/10/31/8359146/index.htm|accessdate=November 6, 2006}}</ref> |
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''' 画家、漫画家 ''' |
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* [[スティーヴン・ウィルシャー]]<ref>{{Cite book|和書|author= テンプル・グランディン|year= 1997|title= 自閉症の才能開発|publisher = [[学習研究社]]|isbn= 9784054007796}}</ref> |
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* [[沖田×華]]<ref>{{Cite book|和書|author= 沖田×華|title= 毎日やらかしてます。〜アスペルガーで漫画家で〜|publisher = [[ぶんか社]]|isbn= 978-4821143382}}</ref> |
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''' タレント ''' |
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* [[倉持由香]]<ref>「[http://www.cyzo.com/2008/04/post_518.html 炎上上等!? お騒がせブログアイドル・倉持結香の本音に迫る]」 [http://www.cyzo.com/ 日刊サイゾー]、2008年4月28日。</ref> |
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=== アスペルガー症候群の特徴を題材にした作品 === |
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アスペルガー症候群の特徴を題材にした作品の表記であって、単に作中にアスペルガー症候群の人物が登場するだけの作品は記載しない。 |
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; [[モーツァルトとクジラ]] |
|||
: アスペルガー症候群である主人公と、自閉症を持つ女性との恋愛を描いた映画。 |
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; [[ストーカー (2002年の映画)|ストーカー]] |
|||
: 写真屋で働く主人公が、好意を持った一人の客にストーカー行為をしていくうちに、その女性の夫が浮気をしている現場の写真を入手してしまい暴走していく映画。 |
|||
: 主人公の性格を描く際に、アスペルガー症候群の特徴が基にされた。 |
|||
; [[音符と昆布]] |
|||
: 味覚障害を患いながらもフードコーディネーターとして働く主人公の前に突然現れた、アスペルガー症候群の姉との姉妹愛を描いた映画。 |
|||
; [[メアリー & マックス]] |
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: いじめられっ子の孤独な少女と、アスペルガー症候群である孤独なおじさんの、20年間にわたる文通の物語。 |
|||
; [[ウルトラ I LOVE YOU!]] |
|||
: 主人公が見合いで出会った男性に一目惚れをし、それ以降、本人や周りの迷惑を考えずにストーカー行為をしていく映画。 |
|||
: 主人公がアスペルガー症候群である設定でストーリーが作られた。 |
|||
; [[恋する宇宙]] |
|||
: 天体に関して人並み以上に詳しいアスペルガー症候群の主人公と、童話作家を目指す女性との、切ない恋愛を描いた映画。 |
|||
; [[マイネーム・イズ・ハーン]] |
|||
: アスペルガー症候群の主人公が、信仰する宗教の違う女性と結婚するも、それが原因で子供は差別を受けて命を落としてしまう。絶望し妻に責められた主人公が旅に出る物語。 |
|||
; [[ソーシャル・ネットワーク (映画)|ソーシャル・ネットワーク]] |
|||
: [[ハーバード大学]]在学中に[[Facebook]]を創設した、天才[[マーク・ザッカーバーグ]]の物語。 |
|||
: なお、ザッカーバーグ本人は自身がアスペルガー症候群であると公表していない。映画は、彼がアスペルガー症候群であるという前提で監督が制作した。 |
|||
; [[ものすごくうるさくて、ありえないほど近い]] |
|||
: [[アメリカ同時多発テロ事件]]で父親を失った少年が、対人関係に問題をもつアスペルガー症候群の疑いを持ちながらも、知らない人との交流を重ねていく上で立ち直っていく物語。 |
|||
; [[シンプル・シモン]] |
|||
: 物理とSFが大好きで、気に入らないことがあるとすぐドラム缶にこもってしまうアスペルガー症候群の主人公が、唯一の理解者である兄の恋愛をぶち壊してしまい、新たな兄の彼女を作るまでの話。 |
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=== スティグマ === |
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{{Seealso|精神疾患#スティグマ}} |
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[[2001年]]5月に[[ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント (日本)]]が[[ビデオスルー]]で「アスペルガー 死の団欒」と名づけて発売する予定だった外国映画(原題は「''Absence of the Good''」、1999年のアメリカ映画)が、抗議を受けて発売中止となった。原題にはアスペルガーという単語は使われておらず(直訳しても「良心の不在」程度にしかならない)、登場人物にもアスペルガー症候群らしい人物は存在しないと考えられる<ref>{{Cite web |date=2001-4-18|url=http://shibuya.cool.ne.jp/pic0608/keyaki/2001/04/11.html |title=発売中止に関するお詫び |work= 新着情報 |publisher=LD親の会「けやき」 |accessdate=2013-5-5 |archiveurl=http://web.archive.org/web/20090415172832/http://shibuya.cool.ne.jp/pic0608/keyaki/2001/04/11.html |archivedate=2009-4-15}}</ref>。 |
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また、[[2008年]]頃から相次いで医師によるアスペルガー症候群の解説書が刊行されていることについて、医師たちの執筆動機の一つには、あたかもアスペルガー症候群の人物が犯罪を起こしやすいかのような解釈への対処がある。この背景には、一部の少年事件の加害者がアスペルガー症候群だと報道されたことが挙げられる。<!--しかし、「本来、アスペルガー症候群の人たちは、理解できる規律をよく守り、犯罪とは対極にある」とされている<ref> 大人のアスペルガー症候群 佐々木正美・梅永雄二著 講談社刊 </ref>。-->しかし、アスペルガー症候群の人物が犯罪を起こしやすいというデータは確認されておらず、[[鑑別所]]や[[少年院]]の中の該当者は2%程度とされている。また、犯罪を起こしたケースについても、対人コミュニケーションスキルの不足から、当人が世の中の仕組みをよく理解できていないことによって軽微な犯罪が引き起こされてしまったケースがほとんどである<ref>{{Cite book|和書|author=加藤進昌 |title=ササッとわかる「大人のアスペルガー症候群」との接し方 |year=2009 |publisher=[[講談社]] |isbn=978-4062847223 |page= }}</ref>。 |
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=== アスペルガー症候群を持つとされる犯罪者 === |
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{{Notice|[[ノート:広汎性発達障害#「疾患との関係性が思案された事件」について|広汎性発達障害のノート]]に、この節に関係する提案があります。ご意見をお寄せ下さい。|section=1}} |
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アスペルガー症候群を含む精神障害者の犯罪率は健常者の3分の1と極めて低い。ただ、定型発達者と同様に、多くの事例の中には、後述のような特異なケースも存在する。一部のアスペルガー症候群の人が、一部の健常者と同様に、反社会的な行動をとることがあると考える人々もいるが、充分な検証はなされておらず、アスペルガー症候群が事件を誘発した背景の一つなのか、周辺事情に過ぎないのか、判断はきわめて難しい。また、心身の成長と共に、前述の症状が消えて行くケースも見られる。 |
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アスペルガー症候群が初めに大きく取り上げられたのは、2000年(平成12年)の[[豊川市主婦殺人事件]]である。「人を殺してみたかった」という供述は社会を震撼させた。[[昭和大学]]教授の[[加藤進昌]]は「近年は調書漏洩事件を含め、アスペルガーの診断がやや安易に乱発されている。ただし、アスペルガー障害が犯罪に直結するというような理解は誤りであり、いくつかの動機が理解しがたい「突き抜けた」犯罪で、その障害特性との関連が注目されるという意味である。」と指摘している。<ref>[http://www.asas.or.jp/jsnp/pdf/topics/12_200801.pdf 社会問題から見た心の病「アスペルガー障害」]、2015年7月11日閲覧。</ref>。 |
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以下に挙げるものは、主に社会に大きな影響を与えた凶悪事件である。 |
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* 2000年5月1日 [[豊川市主婦殺人事件]]<ref>「人を殺してみたかった」著 藤井 誠二([[双葉社]])より</ref> |
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*: 精神鑑定がなされ、1回目の鑑定では「分裂病質人格障害か分裂気質者」と出されたが、「犯行時はアスペルガー症候群が原因の心神耗弱状態であった」と出された2回目の鑑定を認定し、2000年12月26日に[[名古屋家庭裁判所]]は医療少年院送付の保護処分が決定した。2回目の鑑定医師団には[[児童精神医学]]の専門医が鑑定団の一人として加わっていた。アスペルガー症候群は先天性の発達障害であり、知能と言語能力に問題のない自閉症の一種である。対人関係の構築に困難があるため、二次的な障害として社会生活に対する不適応がみられることがある。 |
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*: この事件は、[[文部省]](当時)に広い範囲における[[自閉症#高機能自閉症|高機能自閉症]]児に対する早期の教育支援が必要であることを認識させ、後に[[特別支援教育]]として制度化されることになった。 |
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* 2003年7月1日 [[長崎男児誘拐殺人事件]]<ref>西日本新聞2003年9月20日朝刊。北海道新聞2006年10月19日夕刊。</ref> |
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*: 加害者の補導後、加害者がアスペルガー症候群との診断を受けたことから、西日本新聞は、「加害少年は自閉症」と1面トップで報道した。これに対し、[[日本自閉症協会]]は、「自閉症に対する偏見を助長しかねない」「自閉症と事件に因果関係はない」と抗議声明を発表。特に全国にあるアスペルガー症候群の子をもつ保護者の会の反発は強く、各報道機関に「アスペルガーという名称を使用しないでほしい」と要望する出来事まで起きた。一方、アスペルガー症候群への理解を深めるための本が出版されたり、「自分はアスペルガー症候群」と名乗る人が出たりして、社会的な関心が広まったという側面もある。 |
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* 2011年7月25日 [[平野区市営住宅殺人事件]]<ref>{{cite news|url=http://www.j-cast.com/2012/07/31141344.html?p=all|title=全文表示 - 発達障害者に求刑超え異例判決 「社会秩序のため」に賛否分かれる : J-CASTニュース|work=J-CASTニュース}}</ref> |
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*: 大阪地裁は「アスペルガー症候群の影響を考慮すべきでない」「可能な限り刑務所に服役させることで社会秩序維持に役立つ」とし、検察側の求刑懲役16年に対して懲役20年の判決を言い渡した。これに対し一部の障害者団体は「無理解、偏見に基づく判決だ」と非難している。その後、2013年2月26日に[[大阪高等裁判所|大阪高裁]](松尾昭一裁判長)で開かれた控訴審では一審判決を破棄し、懲役14年を言い渡した。裁判長は「一審は(発達)障害の影響を正当に評価しておらず、不当に重い」と指摘した<ref>{{cite news|url=http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG26040_W3A220C1CR8000/|title=2審は求刑下回る懲役14年 発達障害の殺人で大阪高裁|date=2013-02-26|newspaper=[[日本経済新聞]]|accessdate=2016-05-08}}</ref>。 |
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[[佐世保小6女児同級生殺害事件]]<ref>草薙厚子『追跡!「佐世保小六女児同級生殺害事件」』、講談社</ref>、[[宇治学習塾小6女児殺害事件]]の犯人もアスペルガー症候群を持っていたとされる。 |
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海外の例では、有名な[[ハッカー]]である[[ゲイリー・マッキノン]]<ref>{{cite web|url=http://www.bbc.com/news/uk-19946902|title=Profile: Gary McKinnon|publisher=BBC News|date=2012-12-14|accessdate=2016-05-08}}</ref>、[[サンディフック小学校銃乱射事件]]の犯人である[[:en:Sandy Hook Elementary School shooting|Adam Lanza]]<ref>{{cite web|url=http://www.washingtonpost.com/news/morning-mix/wp/2014/05/21/study-finds-significant-portion-of-mass-murderers-and-serial-killers-had-neurological-disorders-including-autism/|title=Study: ‘Significant’ statistical link between mass murder and autism, brain injury|author=Terrence McCoy |accessdate=2016-04-01|work=Washington Post}}</ref>、[[サンタバーバラ乱射事件]]の犯人である[[:en:2014 Isla Vista killings|Elliot Rodger]]<ref>{{cite news|url=http://theconversation.com/aspergers-is-an-unlikely-cause-for-california-killers-violence-27194|title=Asperger’s is an unlikely cause for California killer’s violence|author=Elizabeth Laugeson|date=2014-05-26 |work=The Conversation}}</ref>などはアスペルガー症候群を持っていたとされる。 |
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== 歴史 == |
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{{Seealso|精神保健の歴史}} |
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[[1944年]]に[[ハンス・アスペルガー]]は「小児期の自閉的精神病質」という題で4例の子どもについての論文を発表した。前年の[[1943年]]には[[アメリカ]]の[[精神科医]][[レオ・カナー]]が早期乳幼児自閉症に関する論文を発表し、カナーの論文がその後、長く英語圏で影響を持つようになり、アスペルガーの論文は顧みられることが少なかった。[[日本]]ではアスペルガーの論文は比較的早く紹介されたが、[[イギリス]]や[[アメリカ]]の影響が強くなり、忘れられがちとなった。 |
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英語圏では[[1981年]]にイギリスの児童精神科医の[[ローナ・ウィング]]というがアスペルガーの業績を再評価したことがきっかけとなり、広く知られるようになった。ウィングは多数例から、自閉症とは診断されていなくても、[[社会性]]、[[コミュニケーション]]、[[想像力]]の3つの面で同時に障害をもつ子どもたちがいることに気づいた。当時は、自閉症の診断は[[言語]]による意思疎通が限定されており、対人的関心が非常に乏しい子どもに対してのみ行われ、言葉による意思疎通が可能か、一方的でも対人的関心がある場合は自閉症とは診断されなかった。ウィングは三つ巴の障害を持ちながら自閉症と診断されない子どもたちの一部が、アスペルガーの報告した症例に似ていることからアスペルガー症候群の診断名が適切であると考えた。 |
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[[1981年]]以降は、世界的にも注目されるにいたり、国際的な診断基準である[[ICD-10]]や[[アメリカ精神医学会]]の診断基準([[DSM-IV]])にもその概念が採用された。 |
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* [[1944年]] - [[オーストリア]]の[[小児科学|小児科]]医[[ハンス・アスペルガー]](Hans Asperger)によって「自閉的精神病質」と初めて報告されたが、[[第二次世界大戦]]のため、その論文は戦勝国側では注目されていなかった。 |
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* [[1981年]] - イギリスの医師[[ローナ・ウィング]](Lorna Wing)がアスペルガー症候群の発見を紹介<ref name="lw">Wing, Lorna. [http://www.mugsy.org/wing2.htm Asperger syndrome: a clinical account.]</ref>。 |
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* [[1989年]] - 社団法人日本自閉症協会設立 |
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** [[1990年代]]になり世界中で徐々に知られるようになった。しかし、日本ではドイツ精神医学の影響が強かったことから、ローナ・ウィングの紹介以前に知られていた<ref>{{Cite web |url=http://www.autism.jp/asp_index.html |title=アスペルガー症候群を知っていますか? |publisher=東京都自閉症協会 |date= |accessdate=2013-5-5}}</ref>。 |
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* [[1992年]] - [[世界保健機関]] (WHO) の「[[疾病及び関連保健問題の国際統計分類]]」に診断基準が初めて掲載される (ICD-10)。 |
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* [[1994年]] - [[アメリカ精神医学会]]の「[[精神障害の診断と統計マニュアル]]」に診断基準が初めて掲載される (DSM-IV)。 |
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* [[2000年]] - [[豊川市主婦殺人事件]]。文部省(当時)に広い範囲における高機能自閉症児に対する早期の教育支援が必要であることを認識させた。 |
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* [[2003年]] - [[長崎男児誘拐殺人事件]]。出版などを通じて社会的な関心が広まった。 |
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* [[2005年]] - [[発達障害者支援法]]施行 |
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* [[2005年]] - [[心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律]](医療観察法)施行 |
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* [[2006年]] - [[障害者自立支援法]]施行 |
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* [[2013年]][[4月]] - [[アメリカ精神医学会]]の「[[精神障害の診断と統計マニュアル]]」から、アスペルガー症候群の分類が消える見通しが発表された<ref name="DSMV" />。 |
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* 2013年4月、障害者自立支援法改正により、[[障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律]]([[障害者総合支援法]])となる。 |
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== 脚注 == |
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{{脚注ヘルプ}} |
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{{Refbegin}}{{Reflist|2}}{{Refend}} |
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== 参考文献 == |
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* {{Cite |和書|title=自閉症スペクトラム入門 脳・心理から教育・治療までの最新知識 |date=2011-08 |author=[[サイモン・バロン=コーエン]] |isbn=978-4805835234 |ref=harv}} |
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* {{Cite book|和書|author=宮尾益知|title=大人のアスペルガー症候群|publisher=日東書院|year=2010|month=6|isbn=9784528019034|ref=harv}} - 宮尾は発達行動小児学科、小児精神神経学、神経生理学の専門家。発達障害研究の第一人者の一人とされる。 |
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{{参照方法|date=2013年5月|section=1}} |
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* {{Cite book|和書|author=アミー・クライン 編|editor=小川真弓 訳|title=総説アスペルガー症候群|publisher=[[明石書店]]|year=2008|month=5|isbn=978-4-7503-2779-2|ref={{Sfnref|アミー・クライン編|2008}} }} |
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* {{Cite book|和書|author=今村志穗 原作、[[ごとう和]] 画|title=晴れときどきアスペルガー|publisher=[[講談社]]|year=2009|month=2|isbn=978-4-06-375655-5}} - アスペルガー症候群と診断された家族をもつ著者の体験を元にしたコミック |
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* [[戸部けいこ]]、『[[光とともに…]]』1巻〜15巻、[[秋田書店]]、主人公の息子が自閉症児であるが、後半にアスペルガー症候群と診断されている大人が出てくる。この作品を描く時、作者が徹底した取材をもとに描いたコミックであると、各巻の最後の第三者のコラムに書いてある。 |
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* {{Cite book|和書|author=[[杉山登志郎]]|title=発達障害のいま|series=講談社現代新書|year=2011|month=7|isbn=978-4-06-288116-6|ref=harv}} |
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== 関連項目 == |
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* [[:en:History of Asperger syndrome|アスペルガー症候群の歴史(英語)]] |
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* [[:en:Autism and working memory|自閉症とワーキングメモリー(英語)]] |
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* [[カサンドラ症候群]] |
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* [[特別支援教育]] |
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* [[学習障害]] |
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* [[注意欠陥・多動性障害]] |
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* [[発達検査]] |
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== 外部リンク == |
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* [http://www.autism.jp/asp_index.html アスペルガー症候群を知っていますか?](NPO法人 東京都自閉症協会) |
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* [http://www.autism.or.jp/relation05/siencenter.htm 発達障害者支援センター一覧](社団法人 日本自閉症協会) |
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* [http://www.rehab.go.jp/ddis/ 発達障害情報・支援センター](国立障害者リハビリテーションセンター) |
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* {{脳科学辞典|アスペルガー症候群}} |
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* [http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/ency/article/001549.htm Medical Encyclopedia (英語)] |
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* [http://www.mayoclinic.com/invoke.cfm?id=DS00551 Mayo clinic.com (英語)] |
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* {{Mpedia|英語版記事名=Asperger_Syndrome|英語版タイトル=Asperger Syndrome}} |
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{{広汎性発達障害}} |
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{{精神と行動の障害}} |
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{{デフォルトソート:あすへるかあしようこうくん}} |
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[[Category:広汎性発達障害]] |
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[[Category:精神医学的診断]] |
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[[Category:児童青年期精神障害]] |
2017年2月25日 (土) 00:07時点における版
アスペルガー症候群 | |
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アスペルガー症候群の人たちは特異的な興味を持つ。上の少年は分子構造に魅惑を感じている。 | |
概要 | |
診療科 | 精神医学 |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | F84.5 |
ICD-9-CM | 299.80 |
OMIM | 608638 |
DiseasesDB | 31268 |
MedlinePlus | 001549 |
eMedicine | ped/147 |
Patient UK | アスペルガー症候群 |
アスペルガー症候群(アスペルガーしょうこうぐん、Asperger Syndrome, AS)、アスペルガー障害(Asperger disorder、AD)とは、知的障害を伴わないものの、興味・コミュニケーションについて特異性が認められる、ヒトの発達における障害である[1][2][3]。オーストリアの小児科医のハンス・アスペルガーにちなんでつけられた診断名である[4][5]。
特定の分野への強いこだわりを示し、運動機能の軽度な障害が見られたりすることもある。しかし、古典的自閉症に見られるような知的障害および言語障害はない[4][3]。世界保健機関、アメリカ合衆国、日本国などにおける公的な文書では、(古典的)自閉症とは区別して取り扱われる。
その原因は不明である[1]。アスペルガー症候群を持つ成人が周りに大きな影響を与えることが有る。例えばカサンドラ症候群というのは、アスペルガー症候群の夫(パートナー)と情緒的な相互関係が築けないために妻に生じる、身体的・精神的症状である。レオ・カナー自身が自閉症児の両親の離婚率の低さに言及もしている。[6]
効果が示されたと広く支持される治療法はない。放っておくとうつ病や強迫性障害といった二次障害になることがあるとの指摘もある[7]。日本では、アスペルガー症候群、自閉症、学習障害、ADHDといった発達障害の子供に対して個々のニーズに合わせて支援するシステムが出来ており、特別支援教育(特別支援学級)がある[8]。
分類
第一にICD-10とDSM-5では、分類体系が一致していないことに留意すべきである[4]。世界保健機関(WHO)は現在のICD-10において、広汎性発達障害(PDD)のひとつであり、自閉スペクトラム症(ASD)の一種であると分類している[4]。
一方でアメリカ精神医学会は、神経発達症のひとつであり連続モデルであるとしている[4]。そのためDSM-5改定においてはASの診断名が削除され、代わりに自閉スペクトラム症の深刻度にて記載するようになった[4][10]。ASは自閉スペクトラム症の一つの型であるとされる[4]。
また、高機能自閉症(HFA, 知的障害のない自閉症)とASが、どの程度重複しているかは不明である[11][12] 。
特徴
特徴としては以下が挙げられる。
社会的コミュニケーションの困難
アスペルガーの人は、多くの非アスペルガーの人と同様か、またはそれ以上に強く感情の反応をするが、何に対して反応するかは常に違う。彼らが苦手なものは「他人の情緒を理解すること」である。
例として、教師がアスペルガーをもつ子供に(宿題を忘れたことを問いただす意味で)「犬があなたの宿題を食べちゃったの?」と尋ねると、その子は押し黙ってしまう。この時、教師に自分は犬を飼っておらず、普通犬は紙を食べないことを説明する必要があるのかどうかを考え、教師の表情や声のトーンから暗に意味していることを理解できないのである。教師がこの子は宿題のことをうやむやにしようとしている、反抗的である、と考えたりしてしまう場合もある。
上記の例のように、アスペルガーをもつ子供は、言われたことを額面どおり真に受けることが多い。成長の上で問題となるのは、親や教師が励ますつもりで「テストの点数など、さほど大事ではない」等、きれい事ばかり言ったり、反対に「テストで点数を取れなければ、何も買いあたえない」等、現実的なことばかり言い聞かせること、つまり極端な教育をすることである。結果的に持つべき水準からかけ離れた観念を持って行動してしまう危険性がある。
彼らは、“大人の発言には掛け値がある”という疑いを持ちにくく、持ったとしても、はたして掛け値がどのくらいなのかを慮ることが困難であるため、発言者の願望を載せて物事を大げさに表現すると狙った効果は効き過ぎることになる。
アスペルガー症候群の人間は、それ以外の人々がモラトリアムを経由して獲得できると言われる「自我同一性」の獲得が困難とされる[13]。自分が過去から連綿と続いている存在であるという認識を持つことが出来ず[13]、中庸の考えを持たない為、極端で観念的な思考に走りやすい傾向がある[14]。被害妄想、対人恐怖などを起こすこともあり[15]、統合失調症と誤解されるような病的な精神状態になってしまうこともある[15]。精神に混乱をきたし、自分の世界に引きこもる、その混乱を周囲に対する怒りに置き換える、などの傾向を見せる[15]。
非自閉症の人(NT:neurotypical, 典型的な精神の人)は、他者の仕草や雰囲気から多くの情報を集め、相手の感情や認知の状態を読み取ることができる。この能力が自閉症の人には欠けており、他者の心を読むことが難しい(心の理論の欠如)。 そのような、仕草や状況を読み取れない人は他人が微笑むようすを見ることはできても、その微笑みがなにを意味しているかが理解できない。多くの場合、彼らにとって「行間を読む」ことは、困難ないし不可能である。最悪の場合、対人コミュニケーションにおいて、表情を読みとることができない。つまり、人が口に出して言葉で言わなければ意図していることが何かを理解できないのである。しかし、彼らはボディーランゲージなどを通して相手に伝えることは可能である。とはいえ、この種の能力差は、健常者から深刻な障害をかかえるケースにまでわたってスペクトラム状(連続体)に分布している。したがって、アスペルガー症候群に分類されるケースにおいても、表情や他人の意図を読み取ることに不自由のない人もいる。また、彼らはしばしばアイコンタクトが困難である。ほとんどアイコンタクトをせず、それをドギマギするものだと感じる場合が多い。その一方で、他人にとって不快に感じるくらいに、じっとその人の目を見つめてしまうようなタイプもいる。アイコンタクトなどにおいて、相手から発せられるメッセージを理解しようと努力しても、この障害のために相手の心を解読しそこねることが多い。例えば、初対面の人に挨拶をする際に、社会的に受け入れられている通常の手順で自己紹介をするのではなく、自分の関心のある分野について一人で長々と話し続けることもある。
他人に自分の主張を否定されることに強く嫌悪感を覚えるという人もいる。このことは学校などで学習上の大きな障害となる。例えば、教師が生徒にいきなり答えさせ、生徒:「これは○○だと思います」、先生:「 違うよね、これは××だよ」というように、否定して答えやヒントを教えるような方法は、アスペルガーの人には相当な苦痛やストレスとなる。しかし、多くの成人は、忍耐力のなさと動機の欠如などを克服し、新しい活動や新しい人に会うことに対する耐性を発達させている。
これらのことは子供時代や、大人になってからも多くの問題をもたらす。アスペルガーの子供はしばしば学校でのいじめの対象になりやすいとの指摘がある。理由として彼ら独特の振るまいや言葉使い、興味対象、身なり、そして彼らの非言語的メッセージを受け取る能力の低さを持っていることが主な原因とされる。彼らに対し、前述の言動やアスペルガー症候群という病気自体が理解できず、アスペルガー症候群患者に対する嫌悪感を持つ人が多いとされている。このため教育の場である学校において、今後はサポート体制の確立や自立の支援、他の子供への理解を深めさせる、といった総合的な支援策が必要になるという指摘がある。
「アスペルガー症候群」という一つのカテゴリーであっても、人によって障害の度合いは千差万別である。例えば、学校の友達とうまく話せたり、話をうまくまとめられるなど、至って軽度な場合もある。また、上手く話せず、それでもよい友達に巡り会えたから必死で耐えているというように、自閉度が中度–重度なこともある。この障害は、カナータイプの自閉症などと違い、一見「定型発達者」に見えるために、周りからのサポートが遅れがちになったりすることが問題となっている。
狭い興味と反復行動
アスペルガー症候群は、興味の対象に対して、きわめて強い、偏執的ともいえる水準での集中を伴うことがある。例えば、1950年代のプロレスや、アフリカ独裁政権の国歌、マッチ棒で模型をつくることなど、社会一般の興味や流行にかかわらず、独自的な興味を抱くケースが見られる。しかし、これらの対象への興味は、一般的な子供も持つものである。両者の違いは、その異常なまでの興味の強さにある。アスペルガー児は興味対象に関する大量の情報を記憶することがある。
また一般的に、順序だったもの、規則的なものはアスペルガーの人を魅了する。これらへの興味が物質的あるいは社会的に有用な仕事と結びついた場合、実り豊かな人生を送る可能性もある。例えば、コンピューターに強い興味を持って取りつかれた子供は、大きくなって卓越したプログラマーになるかもしれない。それらと逆に、予測不可能なもの、不合理なものはアスペルガーの人が避ける対象となる。突然のアクシデントや、論理的に話し合いのできない感情的な人間なども、その例である。
彼らの関心は生涯にわたることもあるが、いつしか突然変わる場合もある。どちらの場合でも、ある時点では通常1~2個の対象に強い関心を持っている。これらの興味を追求する過程で、彼らはしばしば非常に洗練された知性、ほとんど頑固偏屈とも言える集中力、一見些細に見える事実に対する膨大な(時に、写真を見ているかのような詳細さでの)記憶力などを示す。ハンス・アスペルガーは、彼の幼い患者を『小さな教授』と呼んでいた。その13歳の患者は、自分の興味を持つ分野に網羅的かつ微細な、大学教授のような知識を持っていたからである。
臨床家の中には、アスペルガーの人がこれらの特徴を有することに全面的には賛成しない者もいる。たとえばWing と Gillberg はアスペルガーの人が持つ知識はしばしば理解に根付いた知識よりも表層だけの知識の方が多い場合がある、と主張している。しかし、このような限定はGillbergの診断基準を用いる場合であっても、診断とは無関係である。
アスペルガーの児童および成人は、自分の興味のない分野に対しての忍耐力が弱い場合が多い。学生時代、「とても優秀な劣等生」と認識された人も多い。これは、自分の興味のある分野に関しては他人に比べてはるかに優秀であることが誰の目にも明らかなのに、毎日の宿題にはやる気を見せないからである(時に、「興味のある分野であってもやる気を見せなかった」という報告もあるが、それは他人が同じ分野だと思うものが本人にとっては異なる分野だからだと思われる。例えば、数学に興味があるが答えが巻末に載っている受験数学を自分で解くことに興味が相対的に変化し、日本語の旧字体に興味はあるが国語の擬古文の読解問題には興味が持てない、など)。ノートやテスト用紙に文字を手書きすることを、快く思う子供、またそうでない子供もいる。一方、学業において他人に勝つことに興味を持ったために優秀な成績を取る人もおり、これは診断の困難さを増す。
感覚
アスペルガーの人は他の様々な感覚、発達、あるいは生理的異常を示すこともある。その子供時代に細かな運動能力に遅れをみせることが多い。特徴的なゆらゆら歩きや小刻みな歩き方をし、腕を不自然に振りながら歩くかもしれない。手をぶらぶら振るなど(常同行動)、衝動的な指、手、腕の動きもしばしば認められ、チック症を併発している場合も多い。
アスペルガーの人は感覚的に多くの負荷がかかっていることがある。音、匂いに敏感だったり、あるいは接触されることを好まなかったりする。例えば、突然大きい声でまくしたてられたり、頭を触られたり、髪を触られるのを好まない人もいる。音に神経質過ぎて不眠を訴える人も多い。これが子供の場合、教室の騒音が彼らに耐えられないものである場合等、学校での問題をさらに複雑にすることもある。 別の行動の特徴として、やまびこのように、言葉やその一部を繰り返す反響言語(エコラリア)と呼ばれる症状を示す場合がある。
宮尾益知はアスペルガー症候群の感覚面での特徴として、「ちょっとした態度や言葉で著しく傷つき、それがトラウマとなりやすい」「幻覚や妄想じみたこだわりを見せる傾向がある」「過去のトラウマから、第三者にとってはちょっとしたことでもフラッシュバックを起こして大騒ぎをする」「大変まじめで、それゆえに壊れやすい」という見解を出している[16]。
併発しうる疾患
睡眠障害
近年では、アスペルガー症候群を含む発達障害と睡眠障害との関連性が発見されてきた。睡眠障害といっても、ナルコレプシーや睡眠時無呼吸症候群などの先天的な障害ではなく、睡眠相後退症候群や非24時間睡眠覚醒症候群などの概日リズム睡眠障害、不眠症、過眠症などの後天的な障害のことである。毎日の睡眠は、脳を整理・形成する働きを持っており、脳の働きや思考メカニズムが定型発達者とは異なるアスペルガー症候群の場合、睡眠障害は非常に起こしやすい二次障害である。睡眠障害は、一度なるとどんどん悪化してしまう傾向があり、難治性であるために、睡眠障害を起こさないように就寝や起床の時間を規則正しく生活することが重要であるとともに、症状が見られた場合は早急に治療をすることが必要である。睡眠外来で診てもらう時は、アスペルガーなどの発達障害をもっていることを申告することが望ましいだろう。
なお、日本で唯一「子どもの睡眠と発達医療センター」を設置している兵庫県立リハビリテーション中央病院の三池輝久医師は、「幼児期の睡眠こそが、潜在している発達障害の発症を左右させる原因である。」との、全く逆の展開も発表している。
精神疾患
一部のアスペルガー症候群の人は、その特異性から他者とコミュニケーションがうまくいかずに、頻繁にイライラしたり落胆することが多い。このような状況が長年に渡って続くことにより、二次障害としてうつ病などの精神障害を引き起こすことが確認されている。
このような二次障害を予防するためには、アスペルガー症候群に定型発達者と同じコミュニケーション方法を望んだり、興味の対象を無理に広げさせたりしないことが重要である。アスペルガー症候群の人はほとんどの場合が、自分の行動が自分の意思によるものだということを強く認識している場合が多く、それを否定されると多大なストレスが伸し掛ることが多いのである。
身体的な疾患
原因
出生前の要因
- 抗うつ薬、特にSSRIを妊娠中に使用することは、母体のうつ病を考慮しても、子供が自閉症スペクトラムになるリスクを増大させる[17]。
- バルプロ酸ナトリウムを妊娠中に使用することは、母体のてんかんを考慮しても、子孫が自閉症や自閉症スペクトラムになるリスクを増加させる[18][19][20][21][22][23]。
ミクログリア仮説
生理学的特徴
2012年の京都大学の神経化学研究チームの発表によると、アスペルガー症候群の者は対人相互作用などに強く関係する上側頭溝・紡錘状回・扁桃体・内側前頭前野・下前頭回などの脳全体に占める割合が、通常人と比べ相対的に低いことがわかった[24]。
診断
鑑別疾患として、社交不安症、強迫症、スキゾイドパーソナリティ障害が挙げられる[4]。
他の精神疾患と誤診される可能性があるとの意見や報道がある[25]。誤診されやすいものとして統合失調症、スキゾイドパーソナリティ障害、統合失調型パーソナリティ障害、強迫性パーソナリティ障害、ADHD、ナルコレプシー、びっくり病が挙げられている[26]。
管理
治療薬
2015年現在、治療薬や症状を緩和する薬として、正式に承認されている薬は存在しない。 うつ病や不安障害といった二次障害を含めた症状を軽減する薬として、抗うつ薬、抗精神病薬、気分安定薬などを処方する場合がある。
研究段階としては、オキシトシンを投与が効果があるという研究があるが、まだ臨床では認められていない[27]。双極性障害に処方される非常に使い方の難しい薬(最適治療量と中毒量が近い)ではあるが、炭酸リチウムには認知を改善する(自分を客観的に見られるようになる)作用があり、人格障害でもアスペルガー症候群でも作用するという。また、自閉症と同様の治療として漢方薬での治療[28]や、鍼治療による治療[29]もある。アフリカ睡眠病の治療薬として開発された、スラミンなども自閉症向けに研究されている[30]。
アスペルガー症候群の援助
アスペルガー症候群は、特定の分野については驚異的なまでの集中力と知識を持ち、「空気を読む」行為が苦手、細かい部分にこだわる、感情表現が困難といった特徴を持つ。新聞のスポーツ欄にある野球選手の打率を毎日覚えてしまうなどの驚異的な記憶力を示すこともあるが[31]「電話をかけながらメモが取れない」「券売機で切符が買えない」など一般人が出来る普通の行為ができない障害を持つこともある。コミュニケーションの特異性(空気を読むことが出来ない、会話が一方通行になりがち、あいまいな指示が理解できない、白黒はっきりつけたがる、一般人の持つ常識が備わっていない)、同時並行に複数の業務をこなすことができない、急な変更にうまく対応できない、細部に注意が集中し全体像把握が苦手等のためである。以上の性質からアスペルガー症候群を持つ成人は、接客やチームワークを必要とする仕事には元来向いていない。アメリカの大部分の調査結果によると、アスペルガー症候群の成人の75-80%はフルタイムの仕事に就いていない[32]。
アスペルガー症候群の人は、現代社会に対し、非常に適応しにくい困難さをかかえている。あちこちで衝突が起こり、引きこもりになっていることも少なくない。自分自身に強いコンプレックスを抱え、二次障害でうつ病を発病したり、自殺志願を持つ人も決して少なくない。そういうアスペルガー症候群の人に援助をする必要が急がれている。発達障害者支援センターなどをはじめ、少しでもアスペルガー症候群の人が社会で暮らしやすいよう、地域活動支援センターやデイケアなどの設備を整える必要が早急に問われている。最も必要なことがこの障害を理解し、受け入れる環境的素地を作り上げることである。
2012年現在、関連書籍が多数発売されたり、主にNHKでアスペルガー症候群についての番組や特集が組まれることが増え、社会認知はある程度は進んだと言える。しかしながら、身体障害やダウン症候群など、目に見える障害ではなく、またアスペルガー症候群の人と実際に話してみても、障害を持っている人間とはわからない場合も多く、外見もごくごく普通であることがほとんどなので、自らカミングアウトしない限り、「変わり者」程度の認識しか持たれないケースが多く、これが障害を抱える本人にとっての苦痛になっている。他人とのコミュニケーション能力の障害ゆえ、対人関係での衝突や確執が多く生まれることがあり、これもまた障害を持つ本人に苦痛を与える大きな要因となっている。相手が理解をしてくれない限り「変な奴」と見られ、いじめの対象になったり、周りから嫌われたり、仕事上の足手まといのような存在に思われることもあり、非常に難しい障害であると言える。また、場合によっては本人が、障害そのものに大変なコンプレックスを抱いていることもある。それ故に定型発達者と同じように、無理矢理外に出ようとすることもある。 当然ながらこれは、自分自身を肉体的・精神的に追い詰めることでもあるため、場合によっては、それがうつ病などの二次障害を発症する原因になってしまう可能性もある。
大きな問題は、この障害に対する福祉制度がまだ未熟であることにある。2005年に発達障害者支援法が制定され、障害者自立支援法に発達障害も範疇に入ることが2010年代に入って決められた。また、アスペルガー症候群の人も精神障害者保健福祉手帳を持てることにはなっているが(自治体の裁量で持てない場合もある。発行基準は一元化されていない)、働くことや他人との関わりに困難を抱えている人は多い。ただ、行政の側でも発達障害を持つ人を雇った企業へ助成金を支給するなどの取り組みは行なわれている。しかし、働く意欲のあるアスペルガー症候群の人が、対人関係や精神衛生上の問題をクリアした上で就労できる時代にはまだなっていない。
アスペルガー症候群を持つ人に対する支援の成否は人によって異なる。例えば、「この人にはこう支援して人生がうまくいくようになった」というケースがあった場合でも、それが他のアスペルガーの人に当てはまるとは限らない。人によってどういったところにハンデがあるかは千差万別だからである[33]。「障害」だからと一律に皆を福祉で養おうとすると、働く意欲や、労働の中での他者との良好な人間関係や、収入など、実りある人生の可能性を奪ってしまう場合も有り得る。発達障害を抱えながらも、周囲のサポートを得て一般企業で働いている人たちは多い[34]。しかし、働きたいのに働けない人、またつまずくのが怖くて社会に出られない人も多くいる。その人その人に合ったきめ細やかな対応、社会の中での居場所の確保が求められている[35]。
アスペルガ-症候群が苦手とされる職業は、接客業、とっさの対応が大切な業務、様々な作業を担当する事務、コミュニケーションが大事な仕事、などの、人の心を理解し、器用で効率よく場の空気を読んで、想像力を働かせ、臨機応変な対応をする業務が苦手とされる。[36]。
ICD-10 にの F80 から F89,F90 から F98 に 当たる発達障害が精神障害の一部として制度上併記され、市町村の保健所などで、専門医による診断書を提出の上で、症状や他の発達障害・疾患との合併など総合的な状態を熟慮し精神保健福祉手帳が交付されるケースが近年増加してきたが、保健所で所定の書式による診断書の提出で、障害者サービス受給者証、もしくは自立支援医療受給者証の交付も行われており、これにより一般的な障害者福祉サービス(家事援助、行動援護など)を受けることが出来る。障害者福祉サービスには就労移行支援の利用も含まれ、就労移行支援訓練所を利用することにより原則2年間まで職業訓練を受けることができる。利用に当たっては、障害者サービス受給者証、自立支援医療受給者証、精神保健福祉手帳のいずれかが必要である。
また、金銭面の管理が極めて難しく、社会生活に支障をきたしている場合、 判断能力が十分でない人が地域で自立した生活を送るための日常生活自立支援事業における、各地の社会福祉協議会が行う援助事業サービスに「権利擁護」があり、利用者はそれぞれ、以下の必要な援助を受けるための契約を協議会と結ぶ。福祉サービスの利用援助、苦情解決制度の利用援助、住宅改造、住居の貸借、日常生活上の消費契約や住民票の届出ほか行政手続に関する援助など、日常的なお金の管理(預金の払い戻し・解約・預け入れなど)金銭管理などの権利擁護の制度を使用するケースもある。これらの福祉サービスは、他の発達障害においても診断の上で関係機関に申請し、認定されれば利用できるのは同様である。
疫学
アスペルガー症候群は性別との相関関係があり、4倍程度男性に多い[37]。アスペルガー症候群の者は全人口の1%程度とされるが[37]、男性の1.6%、女性の0.4%はアスペルガー症候群と言う計算になる。知的障害を伴わない自閉症である高機能自閉症とアスペルガー症候群には強い遺伝的な要素がある[38]。G.R.テロングとJ.T.ダイアーは高機能自閉症の人がいる家族の3分の2が、一等親血縁者か二等親血縁者にアスペルガー症候群の者がいる事を発見した[39]。
Sarah Cassidyらによる、英国の患者を対象とした臨床コホート研究による報告によると、アスペルガー症候群を持つ成人では、一般成人の9倍以上の自殺リスクがあり、社会的孤立や排除、失業等で二次的うつ病の危険因子を生ずることが多く、自殺リスクを低減するための適切なサポートが必要であると言う[40]。
アスペルガー症候群と文化
アスペルガー症候群を「障害」とすることについての議論
精神医学において頻用されるアメリカ精神医学会の診断基準 (DSM-IV-TR)ではアスペルガー障害と呼ぶが、アスペルガーを「障害」や「症候群」として取り扱うことへの反論は根強く、DSM-5ではアスペルガー症候群の名称をなくし自閉症スペクトラム(autism spectrum disorder)に統一された。
主にアメリカの学会などで、アスペルガー症候群そのものは障害ではなく、治療すべき対象ではないという議論がある[41]。また、そもそもアスペルガー症候群を「シンドローム」(症候群)であるとか、「ディスオーダー」(障害)とすべきでないという主張もある[42]。
アスペルガー症候群の著名人
自閉症スペクトラムの診断基準の一部を満たす著名人は多く、研究者や偉人に対する「変わり者の天才」というステレオタイプの形成を助けてきた。ただし、アスペルガー症候群のような高機能な自閉症の存在が知られるのはここ数十年、特に一般に認知されてきたのは1980年代以降であるため、その多くは残された記録から見た専門家による推測であり、正式な診断ではない。疑いがあるが、診断されなかった者たちについて残された記録をもって推測することの是非について論争が絶えない。
- アスペルガー症候群等の診断を受けている事を公表している著名人(ただしADHDや学習障害も含まれる)
学者
音楽家
映画監督、俳優
作家
プログラマー、ハッカー
画家、漫画家
タレント
アスペルガー症候群の特徴を題材にした作品
アスペルガー症候群の特徴を題材にした作品の表記であって、単に作中にアスペルガー症候群の人物が登場するだけの作品は記載しない。
- モーツァルトとクジラ
- アスペルガー症候群である主人公と、自閉症を持つ女性との恋愛を描いた映画。
- ストーカー
- 写真屋で働く主人公が、好意を持った一人の客にストーカー行為をしていくうちに、その女性の夫が浮気をしている現場の写真を入手してしまい暴走していく映画。
- 主人公の性格を描く際に、アスペルガー症候群の特徴が基にされた。
- 音符と昆布
- 味覚障害を患いながらもフードコーディネーターとして働く主人公の前に突然現れた、アスペルガー症候群の姉との姉妹愛を描いた映画。
- メアリー & マックス
- いじめられっ子の孤独な少女と、アスペルガー症候群である孤独なおじさんの、20年間にわたる文通の物語。
- ウルトラ I LOVE YOU!
- 主人公が見合いで出会った男性に一目惚れをし、それ以降、本人や周りの迷惑を考えずにストーカー行為をしていく映画。
- 主人公がアスペルガー症候群である設定でストーリーが作られた。
- 恋する宇宙
- 天体に関して人並み以上に詳しいアスペルガー症候群の主人公と、童話作家を目指す女性との、切ない恋愛を描いた映画。
- マイネーム・イズ・ハーン
- アスペルガー症候群の主人公が、信仰する宗教の違う女性と結婚するも、それが原因で子供は差別を受けて命を落としてしまう。絶望し妻に責められた主人公が旅に出る物語。
- ソーシャル・ネットワーク
- ハーバード大学在学中にFacebookを創設した、天才マーク・ザッカーバーグの物語。
- なお、ザッカーバーグ本人は自身がアスペルガー症候群であると公表していない。映画は、彼がアスペルガー症候群であるという前提で監督が制作した。
- ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
- アメリカ同時多発テロ事件で父親を失った少年が、対人関係に問題をもつアスペルガー症候群の疑いを持ちながらも、知らない人との交流を重ねていく上で立ち直っていく物語。
- シンプル・シモン
- 物理とSFが大好きで、気に入らないことがあるとすぐドラム缶にこもってしまうアスペルガー症候群の主人公が、唯一の理解者である兄の恋愛をぶち壊してしまい、新たな兄の彼女を作るまでの話。
スティグマ
2001年5月にソニー・ピクチャーズ エンタテインメント (日本)がビデオスルーで「アスペルガー 死の団欒」と名づけて発売する予定だった外国映画(原題は「Absence of the Good」、1999年のアメリカ映画)が、抗議を受けて発売中止となった。原題にはアスペルガーという単語は使われておらず(直訳しても「良心の不在」程度にしかならない)、登場人物にもアスペルガー症候群らしい人物は存在しないと考えられる[67]。
また、2008年頃から相次いで医師によるアスペルガー症候群の解説書が刊行されていることについて、医師たちの執筆動機の一つには、あたかもアスペルガー症候群の人物が犯罪を起こしやすいかのような解釈への対処がある。この背景には、一部の少年事件の加害者がアスペルガー症候群だと報道されたことが挙げられる。しかし、アスペルガー症候群の人物が犯罪を起こしやすいというデータは確認されておらず、鑑別所や少年院の中の該当者は2%程度とされている。また、犯罪を起こしたケースについても、対人コミュニケーションスキルの不足から、当人が世の中の仕組みをよく理解できていないことによって軽微な犯罪が引き起こされてしまったケースがほとんどである[68]。
アスペルガー症候群を持つとされる犯罪者
広汎性発達障害のノートに、この節に関係する提案があります。ご意見をお寄せ下さい。 |
アスペルガー症候群を含む精神障害者の犯罪率は健常者の3分の1と極めて低い。ただ、定型発達者と同様に、多くの事例の中には、後述のような特異なケースも存在する。一部のアスペルガー症候群の人が、一部の健常者と同様に、反社会的な行動をとることがあると考える人々もいるが、充分な検証はなされておらず、アスペルガー症候群が事件を誘発した背景の一つなのか、周辺事情に過ぎないのか、判断はきわめて難しい。また、心身の成長と共に、前述の症状が消えて行くケースも見られる。
アスペルガー症候群が初めに大きく取り上げられたのは、2000年(平成12年)の豊川市主婦殺人事件である。「人を殺してみたかった」という供述は社会を震撼させた。昭和大学教授の加藤進昌は「近年は調書漏洩事件を含め、アスペルガーの診断がやや安易に乱発されている。ただし、アスペルガー障害が犯罪に直結するというような理解は誤りであり、いくつかの動機が理解しがたい「突き抜けた」犯罪で、その障害特性との関連が注目されるという意味である。」と指摘している。[69]。
以下に挙げるものは、主に社会に大きな影響を与えた凶悪事件である。
- 2000年5月1日 豊川市主婦殺人事件[70]
- 精神鑑定がなされ、1回目の鑑定では「分裂病質人格障害か分裂気質者」と出されたが、「犯行時はアスペルガー症候群が原因の心神耗弱状態であった」と出された2回目の鑑定を認定し、2000年12月26日に名古屋家庭裁判所は医療少年院送付の保護処分が決定した。2回目の鑑定医師団には児童精神医学の専門医が鑑定団の一人として加わっていた。アスペルガー症候群は先天性の発達障害であり、知能と言語能力に問題のない自閉症の一種である。対人関係の構築に困難があるため、二次的な障害として社会生活に対する不適応がみられることがある。
- この事件は、文部省(当時)に広い範囲における高機能自閉症児に対する早期の教育支援が必要であることを認識させ、後に特別支援教育として制度化されることになった。
- 2003年7月1日 長崎男児誘拐殺人事件[71]
- 加害者の補導後、加害者がアスペルガー症候群との診断を受けたことから、西日本新聞は、「加害少年は自閉症」と1面トップで報道した。これに対し、日本自閉症協会は、「自閉症に対する偏見を助長しかねない」「自閉症と事件に因果関係はない」と抗議声明を発表。特に全国にあるアスペルガー症候群の子をもつ保護者の会の反発は強く、各報道機関に「アスペルガーという名称を使用しないでほしい」と要望する出来事まで起きた。一方、アスペルガー症候群への理解を深めるための本が出版されたり、「自分はアスペルガー症候群」と名乗る人が出たりして、社会的な関心が広まったという側面もある。
- 2011年7月25日 平野区市営住宅殺人事件[72]
佐世保小6女児同級生殺害事件[74]、宇治学習塾小6女児殺害事件の犯人もアスペルガー症候群を持っていたとされる。
海外の例では、有名なハッカーであるゲイリー・マッキノン[75]、サンディフック小学校銃乱射事件の犯人であるAdam Lanza[76]、サンタバーバラ乱射事件の犯人であるElliot Rodger[77]などはアスペルガー症候群を持っていたとされる。
歴史
1944年にハンス・アスペルガーは「小児期の自閉的精神病質」という題で4例の子どもについての論文を発表した。前年の1943年にはアメリカの精神科医レオ・カナーが早期乳幼児自閉症に関する論文を発表し、カナーの論文がその後、長く英語圏で影響を持つようになり、アスペルガーの論文は顧みられることが少なかった。日本ではアスペルガーの論文は比較的早く紹介されたが、イギリスやアメリカの影響が強くなり、忘れられがちとなった。
英語圏では1981年にイギリスの児童精神科医のローナ・ウィングというがアスペルガーの業績を再評価したことがきっかけとなり、広く知られるようになった。ウィングは多数例から、自閉症とは診断されていなくても、社会性、コミュニケーション、想像力の3つの面で同時に障害をもつ子どもたちがいることに気づいた。当時は、自閉症の診断は言語による意思疎通が限定されており、対人的関心が非常に乏しい子どもに対してのみ行われ、言葉による意思疎通が可能か、一方的でも対人的関心がある場合は自閉症とは診断されなかった。ウィングは三つ巴の障害を持ちながら自閉症と診断されない子どもたちの一部が、アスペルガーの報告した症例に似ていることからアスペルガー症候群の診断名が適切であると考えた。
1981年以降は、世界的にも注目されるにいたり、国際的な診断基準であるICD-10やアメリカ精神医学会の診断基準(DSM-IV)にもその概念が採用された。
- 1944年 - オーストリアの小児科医ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)によって「自閉的精神病質」と初めて報告されたが、第二次世界大戦のため、その論文は戦勝国側では注目されていなかった。
- 1981年 - イギリスの医師ローナ・ウィング(Lorna Wing)がアスペルガー症候群の発見を紹介[78]。
- 1989年 - 社団法人日本自閉症協会設立
- 1992年 - 世界保健機関 (WHO) の「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」に診断基準が初めて掲載される (ICD-10)。
- 1994年 - アメリカ精神医学会の「精神障害の診断と統計マニュアル」に診断基準が初めて掲載される (DSM-IV)。
- 2000年 - 豊川市主婦殺人事件。文部省(当時)に広い範囲における高機能自閉症児に対する早期の教育支援が必要であることを認識させた。
- 2003年 - 長崎男児誘拐殺人事件。出版などを通じて社会的な関心が広まった。
- 2005年 - 発達障害者支援法施行
- 2005年 - 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)施行
- 2006年 - 障害者自立支援法施行
- 2013年4月 - アメリカ精神医学会の「精神障害の診断と統計マニュアル」から、アスペルガー症候群の分類が消える見通しが発表された[10]。
- 2013年4月、障害者自立支援法改正により、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)となる。
脚注
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- ^ テンプル・グランディン『自閉症の才能開発』学習研究社、1997年。ISBN 9784054007796。
- ^ 沖田×華『毎日やらかしてます。〜アスペルガーで漫画家で〜』ぶんか社。ISBN 978-4821143382。
- ^ 「炎上上等!? お騒がせブログアイドル・倉持結香の本音に迫る」 日刊サイゾー、2008年4月28日。
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- ^ “全文表示 - 発達障害者に求刑超え異例判決 「社会秩序のため」に賛否分かれる : J-CASTニュース”. J-CASTニュース
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- ^ Elizabeth Laugeson (2014年5月26日). “Asperger’s is an unlikely cause for California killer’s violence”. The Conversation
- ^ Wing, Lorna. Asperger syndrome: a clinical account.
- ^ “アスペルガー症候群を知っていますか?”. 東京都自閉症協会. 2013年5月5日閲覧。
参考文献
- サイモン・バロン=コーエン『自閉症スペクトラム入門 脳・心理から教育・治療までの最新知識』2011年8月。ISBN 978-4805835234。
- 宮尾益知『大人のアスペルガー症候群』日東書院、2010年6月。ISBN 9784528019034。 - 宮尾は発達行動小児学科、小児精神神経学、神経生理学の専門家。発達障害研究の第一人者の一人とされる。
- アミー・クライン 編 著、小川真弓 訳 編『総説アスペルガー症候群』明石書店、2008年5月。ISBN 978-4-7503-2779-2。
- 今村志穗 原作、ごとう和 画『晴れときどきアスペルガー』講談社、2009年2月。ISBN 978-4-06-375655-5。 - アスペルガー症候群と診断された家族をもつ著者の体験を元にしたコミック
- 戸部けいこ、『光とともに…』1巻〜15巻、秋田書店、主人公の息子が自閉症児であるが、後半にアスペルガー症候群と診断されている大人が出てくる。この作品を描く時、作者が徹底した取材をもとに描いたコミックであると、各巻の最後の第三者のコラムに書いてある。
- 杉山登志郎『発達障害のいま』〈講談社現代新書〉2011年7月。ISBN 978-4-06-288116-6。
関連項目
外部リンク
- アスペルガー症候群を知っていますか?(NPO法人 東京都自閉症協会)
- 発達障害者支援センター一覧(社団法人 日本自閉症協会)
- 発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)
- アスペルガー症候群 - 脳科学辞典
- Medical Encyclopedia (英語)
- Mayo clinic.com (英語)
- Asperger Syndrome - ウェイバックマシン(2012年10月12日アーカイブ分) Medpedia「アスペルガー症候群」の項目。