佐世保小6女児同級生殺害事件

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佐世保小6女児同級生殺害事件
Okubo es Sasebo 2011.JPG
佐世保市立大久保小学校(2011年撮影)
場所 日本の旗 日本 長崎県佐世保市東大久保町9-10
佐世保市立大久保小学校
日付 2004年(平成16年)6月1日
午後0時30分前後
攻撃手段 首への斬りつけ
攻撃側人数 1人
武器 カッターナイフ
死亡者 小学6年生の女児(12才)
犯人 小学6年生の女児(11才)
動機 同級生同士の人間関係のもつれ(諸説あり)
対処 加害女児を補導児童自立支援施設に送致
少年審判 長崎家庭裁判所佐世保支部
影響
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佐世保小6女児同級生殺害事件(させぼ しょうろくじょじ どうきゅうせい さつがいじけん)とは、2004年6月1日午後、長崎県佐世保市市立大久保小学校で、6年生の女子児童が同級生の女児にカッターナイフで切り付けられて死亡した事件。小学生の女子児童による殺人事件でかつ学校が舞台であり、世間に大きな衝撃と波紋を広げた。

被害者の死因は、首をカッターナイフで切られたことによる多量出血だった。文部科学省ではこの事件を長崎県佐世保市女子児童殺害事件として、これについての談話を発表している[3]

事件の経過[編集]

犯行を行った加害女児と被害者は、互いにコミュニティーサイト(カフェスタ)の提供するウェブサイトを運営し、パソコンチャットや、電子掲示板で書き込みをする仲だった[4]

当日、加害女児は午前中の授業が終わった後、被害者を学習ルームに呼び出し、そこでカーテンを閉めて床に座らせ、手で目を隠し背後から首と左手を切りつけた。被害者の首の傷は深さ約10センチ(普通の大人の首の太さは直径で13 - 15cmぐらい)、長さ約10センチになり、左手の甲には、骨が見えるほど深い傷があったという[5]

加害女児が前夜に見たテレビドラマ『ホステス探偵危機一髪6』にカッターナイフで人を殺害する場面があり、女児自身「これを参考に殺人を計画した」と後に供述した[6]ことから、その後、各テレビ局が殺人ドラマの放送を自粛する事態にもなった。

また、被害者家族、学校関係者、惨状を目の当たりにして心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負った救急隊員に、惨事ストレスやサバイバーズ・ギルトの兆候が見られる状態になった[7]

インターネットに端を発していることや、当局の情報よりもインターネット上の情報が先行した点で、IT化した現代社会を象徴する事件とされる[8]

事件の背景[編集]

加害女児はもともと日常では無口な少女で、事件後に両親と面会した際にも母親が静かに涙を流していたのに対し、少女は何も言わなかったという。しかし犯行前夜には父親に「この本、読みたい?」と聞かれ微笑んで「うん」と言ったというエピソードや父親の話から、草薙厚子のいう父親から少女への虐待の事実はなかったものとみられる[9]

加害女児は事件よりかなり以前から、ホラー小説『ボイス』と小説『バトル・ロワイアル』のファンだった。事件を起こす4カ月前には『バトル・ロワイヤル』の小説を同級生に貸し出しており、また大石圭の『呪怨』にも興味を示し、父親に買ってもらいたいという発言をしていた。やがて、それらのホラー小説などの影響は、加害女児の現実における行動にも現れるようになっていった[10]

被害女児とは仲が良く、ウェブサイトや他の子を交えた交換日記での付き合いもあった[11]

2人は共に地域のミニバスケットボールクラブに所属していたが、小学5年生の終わり頃に加害女児は受験勉強を理由にミニバスケットボールクラブを引退している(学校では加害女児はコンピューター研究部に、被害女児は映画研究クラブにそれぞれ所属していた)。この引退が加害女児にとっての「居場所」を奪い、孤立を深める原因の1つになったとされる。このころから女児はインターネットを唯一安心して自己を表現できる「居場所」にしたとされる[12]

加害女児の成績は中の上で[13]、おとなしい普通の女子児童であったが、5年生の終わり頃から精神的に不安定になっていったと周囲の人々は語っている[14]。人と話すときに人の目を見なくなり、目を泳がせて落ち着かない素振りを見せることがしばしばあり、また些細なことで逆上し、罵詈雑言を吐いたり、カッターナイフを振り上げるようなこともあった[15]。男子児童への追いかけや蹴り、倒すなどの暴力を振るっていた[16]が、担任は特に深刻に捉えてはいなかった。また同級生に対して、他の児童とともに集団いじめを行ったりすることもあった[17]。6年に入ってから暴力的な言行が増えていったという加害女児だが、担当の教師からの評判は「遅刻も少なく、授業中も率先して手をあげて質問する積極的な生徒」というものであった[18]。この時期の1月にウェブサイトを開き、『バトル・ロワイヤル』の同人小説を発表している。学校で将来志望を小説家か漫画家と書いたことがあるという彼女は続編を予定していて、それは6年生のクラスと同じ人数の38人が殺し合いをするストーリーで、各キャラクターモデルや名が同級生に似ているといい、被害女児と同姓の登場人物も描かれており、物語の中で殺害されているという[19]

5月下旬頃、遊びで被害女児が加害女児をおんぶしたとき、加害女児に「重い」と言い、加害女児は腹を立て「失礼しちゃうわ」と言った。実際には加害女児はほっそりしていて、とても太っているとは言えず、加害女児は冗談を深刻に受け止めてしまったとみられる[20]。その後、被害女児は自分のウェブサイトに「言い方がぶりっ子だ」と書いた。それを見た加害女児は、何らかの方法で入手した被害女児のパスワードを使ってその記述を削除した。しかしその後、再び同様の書き込みをされ、加害女児は被害女児に殺意を抱いた。被害女児は自分の掲示板が不正に書き換えられたことについて

チッマタカヨ。

なんでアバターが無くなったりHPがもとにもどっちゃってるケド、ドーセアノ人がやっているんだろぅ。フフ。 アノ人もこりないねぇ。 (゜∀゜)ケケケ

荒らしにアッタんダ。マァ大体ダレがやってるかヮわかるケド。

心当たりがあるならでてくればイイし。 ほっとけばいいや。ネ。 ミンナもこういう荒らしについて意見チョーダイv じゃまた今度更新しようカナ。

と書いた。それを受けて加害女児は、被害女児のネット上のアバターを消去した[19]

ほかにも、被害女児を含めた同級生達と手書きの合作ノートを作っていたが、ここでも同時期に他の子とトラブルがあり、事件のわずか前に被害女児を通じて退会を求められていたという[21]

加害女児は事件後、収容先の自立支援施設で発達障害(広汎性発達障害・アスペルガー症候群)と診断されている[22]

家庭裁判所の審判[編集]

(外部リンク)佐世保市立大久保小学校 児童殺傷事件調査報告書- 長崎県教育委員会
2004年9月15日長崎家庭裁判所は、3か月におよぶ、少年事件では異例の精神鑑定を踏まえて、加害女児に対して最長で2年間までの行動の自由を制限する措置を認めた上で、国立の児童自立支援施設である国立きぬ川学院栃木県さくら市)への送致を決定した[23]。精神鑑定によれば、加害女児は情緒面で同世代に比べて著しい遅れがあるが、障害とみなすべきものではなかったとされる。

加害女児の人格的特性(家裁審判決定要旨)
  • 対人的なことに注意が向きづらい特性
  • 物事を断片的に捉える傾向
  • 抽象的なものを言語化することの不器用さ
  • 聴覚的な情報よりも視覚的な情報の方が処理しやすい
これらの特性は軽度であり、何らかの障害と診断される程度には至らない。
佐世保市立大久保小学校 児童殺傷事件調査報告書- 長崎県教育委員会

政治家による発言[編集]

2004年6月4日、当時の内閣府特命担当大臣(防災)井上喜一が、本事件について「元気な女性が多くなってきたということですかな」などの発言を行った[24]。この発言を受けて、当時の財務大臣谷垣禎一が、6月5日岡山市で行った講演で、「弁護するわけではないが、私の若い頃は、放火は女性の犯罪。もちろん男もあるが、どちらかというと女の犯罪。カッターナイフで切るのは原則的に大人の男の犯罪」と述べ[25]、共に不適切な発言として批判された[26]6月10日、井上は発言を撤回した[27]

その後[編集]

国立きぬ川学院送致後の女児は、問題を起こすことも反抗的態度を見せることもなかったという[28]。2005年(平成17年)3月に、女児は施設内の分校[注釈 1]で卒業式を迎えた(学籍は大久保小学校のままであったから、大久保小学校卒業の扱い)[29]。入所初期の頃は女児に集団生活をさせず、専用棟で矯正教育や精神科医臨床心理士による各種心理検査が行われるのみであったが、徐々に集団生活に移行していった。2005年4月には、女児にとって初の団体行事となる「羽黒山登山遠足」に参加した[30]
施設を訪れた両親との面会では、女児は冷静な態度を見せたという。世間話などはするものの、両親が帰った後は何事もなかったかのように過ごし、ホームシックにすらならなかったという[31]。一方で、面会中に姉から優しい言葉をかけられたとき、女児は笑顔を見せたという。女児は2008年春、施設内の中学校を卒業して、児童自立支援施設を退所した。“長崎・佐世保 小6女児同級生殺害事件とは”. 西日本新聞. (2019年1月28日). https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/482609/ 2019年3月12日閲覧。 
大久保小学校では、事件のあった6月1日を「命を見つめる日」と定め、毎年、事件を教訓に道徳教育をしている。佐世保市立大久保小学校ホームページ”. 2019年3月12日閲覧。
事件当時、被害女児の父親(当時は毎日新聞佐世保支局長)の直属の部下であった川名壮志(毎日新聞記者)は、被害女児の兄の言葉を引用して『謝るなら、いつでもおいで 佐世保小六女児同級生殺害事件』(新潮文庫・集英社)というタイトルの書籍を著している[32]

類似事件[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ さくら市立氏家中学校うの花分教室

出典[編集]

  1. ^ 小学生の校内暴力、昨年度1600件 児童間が半数超す(朝日新聞)”. 2019年3月31日閲覧。
  2. ^ 小6女児が同級生にカッターの刃を押しあてる 佐賀市(朝日新聞)”. 2019年3月31日閲覧。
  3. ^ “長崎県佐世保市女子児童殺害事件について【文部科学大臣談話】”. 文部科学省. (2004年6月4日). http://www.mext.go.jp/b_menu/soshiki/daijin/04060401.htm 2019年3月12日閲覧。 
  4. ^ 川名壮志(2014)『謝るなら、いつでもおいで』東京:集英社
  5. ^ 草薙・51P
  6. ^ 草薙・76P
  7. ^ “妹の死「やっと言葉に」 佐世保・小6同級生殺害事件”. 西日本新聞. (2014年4月29日). オリジナルの2014年4月28日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140428225928/http://www.nishinippon.co.jp/nnp/nagasaki/article/85176 
  8. ^ 追跡!「佐世保小六女児同級生殺害事件」(草薙厚子)・106P
  9. ^ 川名壮志(2014)『謝るなら、いつでもおいで』東京:集英社
  10. ^ 草薙・66P
  11. ^ 川名壮志(2014)『謝るなら、いつでもおいで』東京:集英社
  12. ^ “佐世保市立大久保小学校 児童殺傷事件調査報告書”. 長崎県教育委員会. (2004年12月9日) 
  13. ^ 追跡!「佐世保小六女児同級生殺害事件」(草薙厚子)・179P
  14. ^ 草薙・64P
  15. ^ 草薙・64-65P
  16. ^ 追跡!「佐世保小六女児同級生殺害事件」(草薙厚子)・177P
  17. ^ 草薙・73P
  18. ^ 草薙・74P
  19. ^ a b 『11歳の衝動―佐世保同級生殺害事件』他
  20. ^ 追跡!「佐世保小六女児同級生殺害事件」(草薙厚子)・193P
  21. ^ 川名壮志(2014)『謝るなら、いつでもおいで』東京:集英社
  22. ^ 川名壮志(2014)『謝るなら、いつでもおいで』東京:集英社
  23. ^ “長崎家裁決定詳報 小6女児事件”. オリジナルの2013年10月23日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131023061334/http://www.47news.jp/CN/200409/CN2004091501004484.html 
  24. ^ “「女性が元気になった」 小6女児死亡で井上氏”. 共同通信. (2004年6月4日). オリジナルの2013年10月23日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131023060115/http://www.47news.jp/CN/200406/CN2004060401000764.html 2013年10月22日閲覧。 
  25. ^ “放火は女・ナイフは男…講演会で財務相”. 読売新聞. (2004年6月5日) 
  26. ^ “相次ぐ閣僚の不適切発言に政府内から困惑の声”. 読売新聞. (2004年6月5日) 
  27. ^ “井上氏がようやく発言撤回 「誤解招き遺憾」”. 共同通信. (2004年6月10日). オリジナルの2013年10月23日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131023055534/http://www.47news.jp/CN/200406/CN2004061001002571.html 2013年10月22日閲覧。 
  28. ^ 追跡!「佐世保小六女児同級生殺害事件」(草薙厚子)・156P
  29. ^ 追跡!「佐世保小六女児同級生殺害事件」(草薙厚子)・155P
  30. ^ 追跡!「佐世保小六女児同級生殺害事件」(草薙厚子)・155P
  31. ^ 追跡!「佐世保小六女児同級生殺害事件」(草薙厚子)・108P
  32. ^ [https://web.archive.org/web/20190312063330/https://dot.asahi.com/ent/publication/reviews/2014041700033.html “《話題の新刊 (週刊朝日)》 謝るなら、いつでもおいで”]. AERA dot.. (2014年4月17日). https://web.archive.org/web/20190312063330/https://dot.asahi.com/ent/publication/reviews/2014041700033.html 2019年3月12日閲覧。 

参考文献[編集]

  • 草薙厚子 『大人たちはなぜ、子どもの殺意に気づかなかったか?』 イースト・プレス ISBN 978-4-7816-0504-3
  • 川名壮志『謝るなら、いつでもおいで』東京:集英社 ISBN 978-4-0878-1550-4
  • 草薙厚子 追跡!「佐世保小六女児同級生殺害事件」

関連項目[編集]

外部リンク[編集]