ミスター・ムーンライト

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ミスター・ムーンライト
ドクター・フィールグッド&ジ・インターンズ英語版楽曲
英語名Mr. Moonlight
リリースアメリカ合衆国の旗 1962年[1]
規格7インチシングル
A面ドクター・フィールグッド
ジャンルR&B
時間2分32秒
レーベル
作詞者ロイ・リー・ジョンソン英語版
作曲者ロイ・リー・ジョンソン

ミスター・ムーンライト」(Mister MoonlightMr. Moonlight)は、ロイ・リー・ジョンソン英語版によって作詞作曲された楽曲である。1962年にドクター・フィールグッド&ジ・インターンズ英語版によって録音され、シングル盤『ドクター・フィールグッド』のB面曲として発売された。後にビートルズホリーズらによってカバー・バージョンが発表されている。

オリジナル・バージョン[編集]

「ミスター・ムーンライト」は、アトランタのバンド、ドクター・フィールグッド&ジ・インターズによる録音が初出となる[2][3]ブルース・ピアニストのピアノ・レッド英語版は、ドクター・フィールグッド(Dr. Feelgood[注釈 1]という名義を使用してバンドを率いた。

本作はオーケー・レコードからシングル盤『ドクター・フィールグッド』のB面曲として発売された[5]。その後、イギリスでもコロムビア・レコードから発売された[4]

ビートルズによるカバー[編集]

ミスター・ムーンライト
ビートルズシングル
初出アルバム『ビートルズ・フォー・セール
B面 ホワット・ユー・アー・ドゥーイング
リリース
録音
ジャンル カリプソ[8]
時間
レーベル 日本の旗 オデオン / 東芝音楽工業
作詞・作曲 ロイ・リー・ジョンソン英語版
プロデュース ジョージ・マーティン
ビートルズ シングル 日本 年表
  • ミスター・ムーンライト
  • (1965年)
ビートルズ・フォー・セール 収録曲
アイル・フォロー・ザ・サン
(A-5)
ミスター・ムーンライト
(A-6)
カンサス・シティ/ヘイ・ヘイ・ヘイ・ヘイ
(A-7)
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ビートルズによるカバー・バージョンは、イギリスでは1964年にパーロフォンから発売されたアルバム『ビートルズ・フォー・セール』、アメリカでは同年にキャピトル・レコードから発売されたアルバム『Beatles '65』に収録された。リード・ボーカルジョン・レノンで、ポール・マッカートニージョージ・ハリスンハーモニー・ボーカルを歌った[8]

背景[編集]

ビートルズは、デビュー前のライブで「ミスター・ムーンライト」を演奏していた。ビートルズがレパートリーに加えた時期について見解が分かれており、音楽学者のウォルター・エヴェレット英語版は「1961年後半もしくは1962年初頭」と見ている[9]。ビートルズの歴史家であるマーク・ルイソン英語版は、ビートルズが本作が収録されたレコードを発見したのが「1962年半ば」で[10]、1962年8月のセットリストには本作が含まれているが、それ以前の1961年春や1962年2月1日の公演のセットリストに含まれていないと述べている[11]ニール・アスピノールは、「『ミスター・ムーンライト』は、観客に緊張感がただよった瞬間があるから素晴らしかった。曲が発表されると、だれもがジョンがあの「MISTER! Moonlight」っていう声で始めなければいけないことを知っていたんだ。前奏はなくて、彼は何もないところから正しく演奏しなければいけなかった」と回想している[12]。ライブではたびたびオープニング・ナンバーとして演奏されていた[12]

レコーディング[編集]

ビートルズは、1964年8月14日のセッションで初めて「ミスター・ムーンライト」のレコーディングを行った[6][7][注釈 2]。同日のセッションでは4テイク録音された[13]。この時点ではハモンドオルガンパーカッションは含まれておらず、レノンとハリスンのギターの演奏が主体となっていた[14]。1964年のイギリスツアーの休暇中である10月18日に、再びレコーディングが行われた[7]。テイク7でマッカートニーのハモンドオルガンが追加され、テイク8が「最高」であると見なされた[15]

レコーディングには4トラック・レコーダーが使用され、トラック1にはリンゴ・スターのパーカッション[注釈 3]とマッカートニーのベース、トラック2にはハリスンのアフリカンドラムとマッカートニーのハモンドオルガン、トラック3にはレノンのボーカルとマッカートニーとハリスンのハーモニー・ボーカル、トラック4にはカントリー・ジェントルマンで演奏したパートが録音された[16]。プロデューサーのジョージ・マーティンエンジニアノーマン・スミスは、10月27日にテイク4と8を使用してモノラル・ミックスを作成。その後、11月4日にマイク・ストーン英語版を加えた3人でステレオ・ミックスを作成[17]

リリース・評価[編集]

「ミスター・ムーンライト」は、1964年12月4日にイギリスで発売された『ビートルズ・フォー・セール』と、1964年12月15日にアメリカで発売された『Beatles '65』に収録された[8]。アメリカの全国チャートでは最高位68位を記録した[18]。日本では「ホワット・ユー・アー・ドゥーイング」をB面に収録したシングル盤としても発売され、1966年の日本武道館公演のドキュメンタリー番組で使用された[19]

1977年に発売された非公式ライブ・アルバム『デビュー! ビートルズ・ライヴ'62』には、1962年12月のスター・クラブ公演でのライブ音源が収録されている[20][21]。1995年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー1』には、テイク1と4を組み合わせた音源が収録された[6]

エヴェレットは、著書『The Beatles as Musicians』の中で、本作について「ビートルズで最も人気のない楽曲の1つ」と書いている[16]。マーク・ルイソンは「ほとんどの人が、後にLP『ビートルズ・フォー・セール』となるものの中で最も嫌っている曲」とし、「あとから考えると、『リーヴ・マイ・キトゥン・アローン』のほうがアルバムに収録するのにふさわしかったかもしれない」と付け加えている[14]。エヴェレットは、この2曲を比較して「8月14日に試された2曲のカバーは、1つはレノンが最も刺激を受けたカバーであり、もう1つはそうではないものだった。残念ながら、前者にあたる『リーヴ・マイ・キトゥン・アローン』は、ビートルズの活動期に発売されることはなかった…」と書いている[16]

エヴェレットは、「レノンの「きたない太い声」によるア・カペラのオープニングについて「期待できる」とする一方で[16]、その音色はすぐに形容しがたいほど陰気なものへと変わってしまうと評している[22]。音楽評論家のイアン・マクドナルド英語版は、本作について「大ざっぱな準カリプソ」と説明し、「この曲はジョークで録音されたものではないか」という考えを示している[8]

クレジット[編集]

※出典[8](特記を除く)

その他のアーティストによるカバー[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「ドクター・フィールグッド」は、ヘロインもしくは薬物を違法に処方する医者を意味する俗語[4]
  2. ^ 同日には「アイム・ア・ルーザー」と「リーヴ・マイ・キトゥン・アローン」のレコーディングも行われた[13]
  3. ^ a b レコーディング時にスターが使用したパーカッションについて見解が分かれており、ウォルター・エヴェレットは「コンガ」とし[16]イアン・マクドナルド英語版は「『ワーズ・オブ・ラヴ』で使用したとされる梱包用ケース」と推測している[8]

出典[編集]

  1. ^ Guesdon & Margotin 2014, p. 211.
  2. ^ Lewisohn 2013a, p. 654, ...oddly named American band Dr. Feelgood and the Interns.
  3. ^ Lewisohn 2013b, p. 1243n, ......they were from Atlanta, Georgia...
  4. ^ a b Lewisohn 2013b, p. 1243n.
  5. ^ Goggin, Martin (2005). “The Story of 'Mr Moonlight', Roy Lee Johnson”. Juke Blues (59): 16-23. 
  6. ^ a b c Everett 1999, p. 293.
  7. ^ a b c Humphries & Dogget 2010, p. 61.
  8. ^ a b c d e f MacDonald 2005, p. 127.
  9. ^ Everett 2001, p. 115.
  10. ^ Lewisohn 2013a, pp. 653–654.
  11. ^ Lewisohn 2013b, p. 1276.
  12. ^ a b Lewisohn 2013a, p. 654.
  13. ^ a b Lewisohn 1990, p. 48.
  14. ^ a b Lewisohn 1988, p. 48.
  15. ^ Lewisohn 1988, p. 50.
  16. ^ a b c d e f Everett 2001, p. 257.
  17. ^ Lewisohn 1988, p. 52.
  18. ^ Everett 2001, p. 210.
  19. ^ 宮永正隆『ビートルズ来日学 1966年、4人と出会った日本人の証言』DU BOOKS、2016年、67頁。ISBN 4-9075-8384-2 
  20. ^ Everett 2001, p. 138.
  21. ^ Womack 2016, p. 354.
  22. ^ Everett 2001, p. 258.
  23. ^ Unterberger, Richie. Stay with the Hollies - The Hollies | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年11月27日閲覧。
  24. ^ つんく / A HARD DAY'S NIGHT〜つんくが完コピーやっちゃったヤァ!ヤァ!ヤァ!VOL.1”. CDJournal. 音楽出版社. 2020年11月27日閲覧。
  25. ^ Legacy of Hospitality - Dan Sartain | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年11月27日閲覧。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]