おばあちゃんの思い出
『おばあちゃんの思い出』(おばあちゃんのおもいで)は、2000年3月11日から『ドラえもん のび太の太陽王伝説』と同時上映公開(26分33秒)。てんとう虫コミックス『ドラえもん』第4巻「おばあちゃんのおもいで」を原作とするドラえもんの映画作品、および、以下のテレビアニメのリメイク版である。
2000年度第55回毎日映画コンクールアニメーション映画賞受賞作品[1]。
物語のあらすじ
のび太は、ゴミ捨て場に幼いころのお気に入りだったクマのぬいぐるみ(以下、クマちゃん)が出されているのをたまたま見つける。つぎはぎだらけのうえにボロボロのクマちゃんを持ち帰ったのび太は、幼稚園児のときに死別したのび太のおばあちゃんがぬいぐるみを繕ってくれたことを懐かしむ。
クマちゃんを手に部屋でドラえもんにおばあちゃんとの思い出を話すのび太は、ふとタイムマシンを使えばおばあちゃんに会えると思いつく。しかし、ドラえもんは「未来から来たのび太だなんて、きっとどう言ってもわかってもらえない」と良い顔をしない。
それでも会いたいのび太は、「それじゃあ姿を見るだけ」とドラえもんに約束して2人で8年前に出発するが、到着した過去では、幼いのび太が秋も終わる時期だというのにおばあちゃんに花火をねだるというわがままを言い、困らせていた。そんな幼い自分を見たのび太は、「僕はわがままばっかり言ってた」と自責の念にかられる。
見守るだけのはずののび太は、最終的におばあちゃんと対面して言葉を交わすことになる。
「せめてあの子が小学生になるまで生きていられたら…」というおばあちゃんの言葉を聞いたのび太は、意を決して黒いランドセルを背負い、「5年生になったのび太だ」と名乗って正体を明かす。ドラえもんの予想に反し、おばあちゃんは疑うことなく8年後ののび太を受け入れる。のび太は優しく懐かしいおばあちゃんのひざ元にすがり付き、感極まって号泣するのだった。
作品概要
劇場版映画だけ異なる点
- 原作漫画およびテレビアニメ版では、おばあちゃんがさらに「次はのびちゃんのお嫁さんを見たい」と言ったため、現代にとってかえしたのび太が「お願い、今すぐ結婚して」としずかにせまるというギャグ的な締めくくりで話は終わるが、劇場版ではカットされている。
- 3歳ののび太が野犬に奪われてしまったクマちゃんを5年生ののび太が取り返すシーンや、5年生ののび太がクマちゃんを抱えているのを見た3歳のスネ夫とジャイアンが、5年生ののび太がクマちゃんを奪ったと思い、「のび太のだぞ、返せ」と取り返そうとするシーンなどが新しく挿入されている。
- おばあちゃんの探し物…劇場版では町中をのび太とおばあちゃんが一緒に探す設定だが、原作、テレビアニメではおばあちゃん1人で探し歩く設定である。
- 劇場版のみママの髪型が過去と現代で大きく異なり、現代ではショートカットだったのが、過去は肩までのセミロングヘアーである。劇場版以外では、過去も現代も同じ長さの髪型である。
- 野比家の2階の窓が木製である等、一部分が1994年以前の改築する前の家と対照的となるものが数か所見られた。
- 2階、1階の窓が木製だった
- テレビがリモコン式ではなくダイヤル式だった
- 台所のドアが、小さいガラス1つで改築する前の家のドアと近かった
- 台所がシステムキッチンでなかった
その他
- キッチンに洗い終わって置かれていた茶碗に1960年から1967年にNHK総合にて放送されていた人形劇『ブーフーウー』に似た『ヒーフーミー』という3匹の豚がプリントされていたりすることから現代は1990年代らしいが、過去は1965年か1972年ぐらいで、高度経済成長期の終わり頃の雰囲気が漂っている。
他話へのつながり
原作漫画ではこの話よりも後の回「パパもあまえんぼ」で、酒に酔って夜遅く帰宅して寝込んでしまったのび助を慰めてあげようと、のび太とドラえもんが今度はのび助をタイムマシンで過去に連れて行き引き合わせる(父方の祖母であり、のび助にとっては実の母にあたる)という話があり、その回でのおばあちゃんは「この前来た5年生ののびちゃん」とのび太のことを憶えていた。一方、実母との再会を果たしたのび助は、「久しぶりにおふくろの夢を見た」と翌朝の朝食時に話している。
本作品でスネ夫の幼少期を演じた関智一は後にテレビアニメ第2作第2期においてスネ夫役を演じることになる。
声の出演
- ドラえもん - 大山のぶ代
- のび太 - 小原乃梨子
- しずか - 野村道子
- スネ夫 - 肝付兼太
- ジャイアン - たてかべ和也
- 玉子 - 千々松幸子
- のび太の祖母 - 高村章子
- 幼い頃ののび太 - 大本眞基子
- 幼い頃のしずか - 佐久間レイ
- 幼い頃のスネ夫 - 関智一
- 幼い頃のジャイアン - くじら
登場するひみつ道具
- タイムマシン
- 通り抜けフープ
スタッフ
- 原作 - 藤子・F・不二雄
- 監督・作画監督 - 渡辺歩
- 脚本 - 藤本信行
- 美術監督 - 明石聖子
- 撮影監督 - 熊谷正弘
- 録音監督 - 浦上靖夫
- 音楽 - 菊池俊輔
- 効果 - 横山正和
- 編集 - 岡安肇
- 動画チェック - 原佳寿美
- 動画チェック補佐 - 松田章子
- 色彩設計 - 吉岡美由紀
- 原画 - 尾鷲英俊、釘宮洋、矢澤範雄、鈴木大司、金子志津枝、小山知洋、鈴木満
- 動画 - 角田恵子、新井佐紀子、松浦仁美、麦沢篤、森田修輔、門田明代、森下智美、山岸昌也、江部賢、石川麻実、桂仁志、萩尾圭太、速水広一、大梶博之、川崎美穂、坂井寛幸
- 仕上 - 岩切当志子、森沢千代美、土屋裕美、谷島香、吉田美夜子、小川茂美、田島隆子、西脇好美、米井ふじの、中野かおる、小原よし子、堀奈緒、宇井俊恵、高木小百合
- 特殊効果 - 橋爪朋二
- リスマスク - マキ・プロ
- タイトル - 道川昭
- 背景 - 中村隆、柚山卓也、岡部眞由美、森尾麻紀、本多美紀、池田玲子、新井由華、越腰滝美
- 撮影 - 山田廣明、倉田佳美、木次美則、鈴木浩司、野村達哉
- 編集 - 小島俊彦、中葉由美子、村井秀明、川崎晃洋、三宅圭貴
- 録音スタジオ - APUスタジオ
- ミキサー - 内山敬章
- アシスタントミキサー - 田口信孝
- 音響演出アシスタント - 井澤基
- 音響制作デスク - 加藤知美、山口さやか
- 音響制作 - オーディオプランニングユー
- 技術協力 - 森幹生
- 現像 - 東京現像所
- 制作担当 - 松土隆二
- 制作デスク - 別紙直樹、武井健
- プロデューサー - 増子相二郎、市川芳彦、木村純一、高橋由佳、山川秀樹
- 制作協力 - 藤子プロ、ASATSU-DK
- 制作 - シンエイ動画、小学館、テレビ朝日
DVD
- 映画 おばあちゃんの思い出/21エモン 宇宙いけ! 裸足のプリンセス/ザ・ドラえもんズ ドキドキ機関車大爆走!(2011年7月20日)
テレビ放映
- 2013/12/7(土)
- 2014/3/1(土)13:30~14:00
- 2015/8/2(日) 9:30~10:00
- 2015/9/19(土) 5:30~6:00
- 2015/9/27(日) 13:30~14:00
- 2015/10/10(土) 15:20~15:50
- 2015/10/17(土) 14:00~14:30
書籍
この映画をカラーで忠実に書籍化したもので、原作のてんとう虫コミックと内容は異なる。
- てんとう虫コミックスアニメ版/映画ドラえもんおばあちゃんの思い出-109ページ(2000年8月発行、小学館、ISBN 978-4091490667)
- てんとう虫コミックスアニメ版/のび太の結婚前夜/おばあちゃんの思い出新装完全版-229ページ(2004年11月25日発行、小学館、ISBN 978-4091498717)
主題歌
- 「ハグしよう」
- 作詞・作曲:タケカワユキヒデ / 編曲:That's on Noise、ミッキー吉野 / 歌 - タケカワユキヒデ and T'sカンパニー
- タケカワと共にゴダイゴで活動したミッキー吉野が、編曲と演奏で参加している。
挿入曲
- 「おばあちゃんの思い出(組曲)」
- ドラえもん Sound Track History~菊池俊輔音楽集~(2枚組) -1枚目の23曲目に収録
その他
劇中、公園で幼いのび太が、花火を買えなかったおばあちゃんをだだをこねて追いやり、おばあちゃんが腰かける、コンクリート製のバス型の遊具と同一の物が、大谷田南公園(東京都足立区中川4丁目42番1号)に存在する。
同原作話のアニメ化
てんとう虫コミックス『ドラえもん』第4巻「おばあちゃんのおもいで」を原作とする話は本作を含めると、6回アニメ化されている。『ドラえもん』で最も多くリメイクされたアニメがこの作品である。放送時間や時期によって、下記の通り若干のストーリーの違いがある。
1973年6月10日
テレビアニメ第1作「のび太のおばあちゃんの巻」。
第11回Bパート(第22話)で放送。
1979年7月15日
テレビアニメ第2作第1期「おばあちゃんのおもいで」。
3話構成のうち前後編で2話放送。タイトルは原作同様全て平仮名。てんとう虫コミックスの元作品となる小学三年生1970年11月号掲載の作品を原作にしているため、この作品だけ唯一おばあちゃんがメガネをかけている。
DVD『TV版ドラえもん 5巻』『ドラえもん みんなが選んだ心に残るお話30「おばあちゃんのおもいで」編』に収録。
1986年1月3日
テレビアニメ第2作第1期「おばあちゃん大好き」スペシャル番組「86 お正月だよ! ドラえもん」中の1話として放送。
タイトルが「おばあちゃん大好き」と改題されているが、てんとう虫コミックス「おばあちゃんのおもいで」のあらすじ、絵柄を一番忠実に再現しているのが、この回である。
DVD『ドラえもんコレクションスペシャル特大号 冬の5』『ドラえもん みんなが選んだ心に残るお話30「おばあちゃんのおもいで」編』に収録。
2006年6月30日
テレビアニメ第2作第2期「あの名作をもう一度・・・ おばあちゃんの思い出」。スペシャル番組「ドラえもん!キャンディーなめてジーンと感動するおばあちゃんスペシャル」の中の1話として放送。
タイトルが「おばあちゃんの思い出」と漢字表記に。
3歳ののび太のわがままな依頼で、おばあちゃんが町中を奔走しさがしに行く物が、原作や他のテレビアニメ及び劇場版では全て「花火」だったが、「くまちゃんのぬいぐるみの取れた目のパーツ」に置き換えられる。
DVD『ドラえもん みんなが選んだ心に残るお話30「おばあちゃんのおもいで」編』に収録。
2015年10月10日(土) 昼0:30-午後1:15 再放送[2]。
2011年6月24日
テレビアニメ第2作第2期「おばあちゃんのおもいで」。
タイトルが原作同様、平仮名に戻される。
劇場映画版と同様、くまのぬいぐるみを動物に奪われ、のび太が取り戻す話が、原作に加えられている。映画ではその動物が野犬であったが、この回ではカラスに。
2014年3月16日 6時~再放送[3]。
脚注
関連項目
- 漫 - 原作漫画、大長編漫画等の執筆者の頭の1文字または略記号。藤=藤子不二雄。F=藤子・F・不二雄。1987年の独立前のみ「藤」と記載した(ただし『ドラえもん』は連載開始時から藤本単独作)。FP=藤子プロ。それ以外は作画者を記載。括弧付きは藤本以外が執筆した外伝、短編など。詳細は大長編ドラえもん#作品一覧(併映作品は各作品のページ)を参照。