007 美しき獲物たち

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
007 美しき獲物たち
007 A View to a Kill
監督 ジョン・グレン
脚本 リチャード・メイボーム
マイケル・G・ウィルソン
原作 イアン・フレミング
製作 マイケル・G・ウィルソン
アルバート・R・ブロッコリ
出演者 ロジャー・ムーア
タニア・ロバーツ
クリストファー・ウォーケン
グレース・ジョーンズ
音楽 ジョン・バリー
主題歌 「A View to a Kill」
デュラン・デュラン
撮影 アラン・ヒューム
編集 ピーター・デイヴィス
製作会社 イーオン・プロダクションズ
配給 メトロ・ゴールドウィン・メイヤー/UA Entertainment Co.
公開 イギリスの旗 1985年6月13日
日本の旗 1985年7月6日
上映時間 131分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 イギリスの旗 イギリス
言語 英語
製作費 $30,000,000[1]
興行収入 世界の旗 $152,400,000 [1]
日本の旗 12億円
(1985年度洋画配給収入5位)[2]
前作 007 オクトパシー
次作 007 リビング・デイライツ
テンプレートを表示

007 美しき獲物たち』(ダブルオーセブン うつくしきえものたち、原題:A View to a Kill )は、1985年公開、ジョン・グレン監督のスパイアクション映画『007』シリーズ第14作。原作小説はイアン・フレミングの短編『バラと拳銃』(From a View to a Kill )である。ロジャー・ムーアジェームズ・ボンドを演じた最後の作品である。

概要[編集]

ショーン・コネリーの降板後、1970年代、1980年代にわたって新しいファンを獲得して大衆文化の旗手を守り続けたムーア・ボンド最後の作品。ムーアボンドの集大成となるべく製作された。『ユア・アイズ・オンリー』『オクトパシー』に続き、スタントアクションを大幅に取り入れつつ、ムーアの持ち味であるユーモア性を融合させた。スキー&スノーボード、カーチェイス、騎馬上での格闘、飛行船を追っての空中スタント、ゴールデンゲートブリッジの欄干上での格闘などスリリングな見所多数の大作。

ストーリー[編集]

ソ連国内でアメリカ製の半導体チップを持ち出した003が雪原で遭難。遺体から半導体チップを回収したボンドはソ連軍に追われるが、スキー&スノーボードで振り切って任務を果たす。

003の死体から発見されたのはマイクロチップ。このチップは従来のものと違い、核爆発で発生する強力な磁気にも対抗できるものだった。製造元のゾリン産業が怪しいとにらんだ英国情報部はボンドにゾリンの内偵を命じる。そこでボンドはチップの製造元であるゾリン社を調査する。

社長のマックス・ゾリンが所有する常勝の競走馬を調査するうちに、その馬からはマイクロチップに制御されたステロイド供給装置が見つかる。ゾリンを追ってサンフランシスコに潜入したボンドは彼がシリコンバレーを壊滅させ、マイクロチップ市場を独占しようとしていることを知る。

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

興行成績[編集]

1984年6月27日にパインウッド・スタジオの007ステージが全焼するというトラブルの中、製作費3000万ドルをかけて作られた作品ではあるが、世界中で1億5240万ドルの興行収入をあげる大ヒット作となり、有終の美を飾った。アメリカにおいても5030万ドルという1985年全米第10位の興行収入をあげた。1985年の映画の世界興行成績で第5位[3]。日本では1985年度の外国映画の配給収入で第5位[2][4]

キャラクター、キャストなど[編集]

  • ムーアは撮影時57歳であり、現在においてもボンドを最高齢で演じた俳優である。このため、ほとんどのアクションシーンにスタントマンを使用していた。ちなみにショーン・コネリーが1983年に『ネバーセイ・ネバーアゲイン』に出演した時は52歳だった。ムーアは、タニヤ・ロバーツの母親の方が自分よりも若いことを知って降板の決意をしたという。
  • ロイス・マクスウェルがマニーペニーを演じた最後の映画でもある。本人が「もう限界」と降板を希望したため、そのはなむけとして、マニーペニーが華やかな衣装をまといアスコット競馬場に出かけるシーンが書き足されたという。また、彼女はアルバート・ブロッコリに「Mに昇進させてもらえないかしら?」と冗談で言った所、真顔で「う〜ん。Mに女性は無理があるよ」と答えたという。
  • ゾーリン役のクリストファー・ウォーケンは、ボンド映画の悪役としては初のアカデミー賞受賞歴のある俳優である。本人がボンド映画の大ファンということが配役決定の理由の一つ。前作でも悪役にフランスの名優ルイ・ジュールダンを起用していたが、脇役には大物ではなく地味でもひと味ある俳優をというシリーズの伝統を完全に破る、異例のキャステイングとなった。
  • ゾーリン役は、当初デヴィッド・ボウイが考えられていたほか、テレンス・スタンプイアン・マクダーミドが候補になっていた。
  • 脇役で『ロッキー4/炎の友情』のドルフ・ラングレンが出演している。
  • メイデイ役のグレイス・ジョーンズは役とは正反対に怖がりで、炭鉱内の洪水のシーン撮影時は絶えず悲鳴を上げていた。
  • タニア・ロバーツは、ボンドガールを演じるにあたって、黒髪だった髪を金髪に染めた。
  • 黄金銃を持つ男』と前作『オクトパシー』でボンドガールとなったモード・アダムスが本作の撮影現場を訪ね、フィッシャーマンズワーフの群集の中の一人としてエキストラ出演した。

秘密兵器[編集]

  • 流氷型潜水艦。流氷に偽装。出入口のハッチの内側には、ユニオンジャックが描かれている。シベリアからの脱出に使用。
  • Qが出てくるシーンとラストの場面で監視マシン「スヌーパー」が登場する。
  • シェーバー型盗聴器探知機。フィリップスとのタイアップ。同社のノレルコ(Norelco)ブランド製品が使用されている。
  • 偏光サングラス。窓ガラスの反射を除去して室内を見通す。
  • クレジットカード。窓の隙間に挟んで自動的に開錠。
  • ルイ・ヴィトンの小切手ホルダー。小切手をスキャン。残された痕跡から前に書かれた文字を浮かび上がらせ、転写する。
  • 指輪型カメラ。白黒写真を撮影。

主題歌[編集]

  • それまでの007シリーズとは趣を変更し、当時人気絶頂期だったデュラン・デュランが起用され、同タイトル曲は大ヒットとなった。イギリスの「ミュージック・ウィーク」誌では、最高位2位、アメリカの「ビルボード」誌では、最高位1位と007史上最高のヒット主題歌となった。また、ジョン・バリーが担当した同サウンドトラック・アルバムは、最高位38位と久々にトップ40位以内に入った。
  • 主題歌「A View to a Kill」は、これまでのボンド映画の音楽のほぼすべてを担当してきたベテランのジョン・バリーと、1980年代のロックシーンを一世風靡したデュラン・デュランコラボレーションによる。そのため従来のボンド主題歌とは一風趣が異なり、ユーロロックニューロマンティックの要素を取り入れたポップ調になっている。

その他[編集]

フィッシャーマンズワーフ
サンフランシスコ市庁舎
  • 原題 “A View to a Kill” はそれ自体では意味をなさない。これは原作小説のタイトルが “From a View to a Kill” だったのを、映画化にあたって語呂が悪いと頭の From を取ってしまったため。ところが困ったのは、007シリーズでは「台詞の中で映画のタイトルを必ず一度は誰かが言う」という伝統があること。そこで飛行船に乗ったゾーリンとメイデイがサンフランシスコ湾を一望のもとに見下ろすシーンで、メイデイが「What a view!(なんて素晴らしい眺めなんだ)」とつぶやくと、横からゾーリンが不気味に「To a kill...(殺戮のね…)」とフォローするという、苦心の脚本になっている。
  • オープニングのシベリアにおけるアクション・シーンは、実際はアイスランドと、スイスのピッツ・バリュ氷河で撮影された。
  • 壊れたスノーモービルのスキーを、ボンドがスノーボード代わりに利用するシーンがある。当時、スノーボードはスノーサーフィンと呼ばれ、一般にはポピュラーではなかった。BGMにギデアパークのカバーしたザ・ビーチ・ボーイズの『カリフォルニア・ガールズ』が流され、劇場では笑いが湧き起こった。スキー・アクションを監督したのは、『女王陛下の007』、『私を愛したスパイ』、『ユア・アイズ・オンリー』のスキー・シーンにも携わったウィリー・ボグナー(Jr.)。
  • ボンドはオーベルジン探偵とエッフェル塔展望台のレストランで会食するが、エッフェル塔展望台には実際に「ジュール・ヴェルヌ」というレストランがある。エッフェル塔からパラシュートでダイビングしたメイデイを、ボンドはルノー11のタクシーを奪い追跡する。メイデイは、アンヴァリッド橋を過ぎたあたりでバトー・ムッシュ(セーヌ川クルーズ船)に降下。追いついたボンドは、アレクサンドル3世橋の上から、この船に飛び降りる。
  • ゾーリンのシャトーは、シャンティイ城で撮影。
  • 劇中に出てくるロンバース・ランディングはユニバーサル・スタジオ・ジャパンサンフランシスコ・エリア(バックドラフトのアトラクションの入り口付近)で再現されている。2008年10月13日まではレストランとして営業していた。
  • ボンドとチベット卿の乗るロールス・ロイス・シルバークラウドⅡは、プロデューサー、ブロッコリの車が使われた。
  • ゾーリンの飛行船は、イギリスのエアシップ・インダストリー製、スカイシップ6000。終盤に登場する小型飛行船は、同じくスカイシップ500。この飛行船は、映画の中では短時間で膨らむようになっていたが、実際は完全に膨らむまでに24時間を必要とする。
  • サンフランシスコに着いたボンドは、CIAのチャック・リーとフィッシャーマンズワーフで落ち合う。
  • ゾーリンの採油所は、サンフランシスコ近郊リッチモンドのシェブロン社の施設で撮影。後の消防車のカーチェイスで、ボンドはシェブロンのガソリンスタンドの看板を破壊した。
  • ボンドとKGBスパイのポーラ・イワノヴァが入ったのは、「ニッポン・リラクゼーション・スパ」。隣は「レストラン都」。
  • ステイシーの屋敷は、オークランド近郊のダンスミュイール邸で撮影。
  • サンフランシスコの女性市長ダイアン・ファインスタインが大のロジャー・ムーアファンだったため、実際の庁舎を火災のシーン撮影に使用する事を快く承諾した。公共の建物の中でのアクションシーンはシリーズでも非常に珍しい。
  • クライマックスの廃坑は、サンフランシスコ・ベイエリアのサンラファエル近郊にあるバソールト鉱山と、イギリスのアンバーリー・チョーク・ピッツ博物館(現アンバーリー・ワーキング博物館)で撮影。
  • 私を愛したスパイ』より続いてきたセイコーとのタイアップは、本作で終了。今回は、特殊機能を備えた腕時計は登場しない。使用機種は「7A28-7020」、「H558-5000」[5]
  • シャンパンのボランジェ、カルティエとタイアップ。
  • 1985年7月27日、リドリー・スコット監督『レジェンド 光と闇の伝説』の撮影中、パインウッド・スタジオの007ステージが火災のため焼失。再建を待ったため、廃坑内の大セットの製作と撮影が大幅に遅れた。
  • ゾーリンの野望とは、シリコンバレーを壊滅させ半導体の世界市場を独占することであった。しかし、本作公開の1985年、現実世界では半導体の世界シェアの約51%を日本系企業が占めていた。しかも、供給過剰のためこの年から世界的な半導体不況が続いた。
  • ボンドはゾーリンの陰謀を阻止した功績で、外国人で初めてレーニン勲章を授与される(受け取ったのか辞退したのかは不明)。これはシリーズ最長の12年間、7作連続登板したムーアへの敬意を表したもの。ソ連の半導体研究は、シリコンバレーに頼っているからという落ち。
  • 本作に登場するスポーツカーは2台。1台は、ゾーリンの厩舎でボンドのロールスロイスを駐車した隣にポルシェ928が駐車しており、その後のシーンでエンジン音を残して去っていく背景が使われている。ささやかながら唯一ポルシェがボンド・カーとして登場したシーンである。もう1台は、ボンドがソ連の女性エージェントとコンタクトした際に女性エージェントが乗っていたシボレー・コルベットC4である。
  • 2010年4月、WOWOWハイビジョン画質にて完全放映された。

日本語吹き替え[編集]

役名 俳優 テレビ版 DVD新録版
ジェームズ・ボンド ロジャー・ムーア 広川太一郎
ステイシー タニア・ロバーツ 勝生真沙子 八十川真由野
マックス・ゾリン クリストファー・ウォーケン 野沢那智 山路和弘
メイデイ グレース・ジョーンズ 山田栄子 小柳洋子
ティベット卿 パトリック・マクニー 川久保潔 楠見尚己
スカーピン パトリック・ボーショー 有本欽隆 安井邦彦
ゴゴール ウォルター・ゴテル 加藤精三 島香裕
ポーラ フィオナ・フラートン 弘中くみ子 安藤みどり
ジェニー アリソン・ドゥーディー 小林優子 北西純子
M ロバート・ブラウン 藤本譲 中博史
Q デスモンド・リュウェリン 北村弘一 白熊寛嗣
マネーペニー ロイス・マクスウェル 片岡富枝 泉裕子
モルトナー博士 ウィロビー・グレイ 大木民夫 井上文彦
コンリー マニング・レッドウッド 池田勝 松井範雄
グレイ国防大臣 ジェフリー・キーン 峰恵研
警察署長 ジョー・フラッド 緒方賢一 楠見尚己
チャック・リー デビッド・イップ 小室正幸
W・G・ハウ ダニエル・ベンザリ 吉水慶
オーベルジン ジャン・ルージュリー 石森達幸
クロトコフ ボグダン・コミノフスキー 田原アルノ
タクシー運転手 ルシエン・ジェローム 稲葉実
ゾリンの客 アンソニー・チン 秋元羊介
プロデューサー - 上田正人、翻訳 - 岩佐幸子、演出 - 伊達康将、制作 - 東北新社・TBS
  • DVD新録版 - 2006年11月22日発売 DVD アルティメット・コレクション
翻訳 - 谷津真理

参照[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b A View to a Kill” (英語). The Numbers. 2009年6月21日閲覧。
  2. ^ a b 興行成績一覧”. キネマ旬報. 2009年6月21日閲覧。
  3. ^ Movie list by worldwide gross” (英語). WorldwideBoxoffice.com. 2009年6月21日閲覧。
  4. ^ 日本映画産業統計”. 日本映画製作者連盟. 2009年6月22日閲覧。
  5. ^ ボンドウォッチプロジェクト

外部リンク[編集]