007 黄金銃を持つ男
『007 黄金銃を持つ男』(ダブルオーセブン おうごんじゅうをもつおとこ、The Man with the Golden Gun)は、イアン・フレミングの最後の『007』長編小説(早川書房版の題名は『黄金の銃をもつ男』)。また1974年公開、ガイ・ハミルトン監督のスパイアクション映画。『007』シリーズ映画化第9作。
目次 |
小説 [編集]
イアン・フレミングの小説『007』シリーズ長編第12作(単行本としては13冊め)。1965年、ジョナサン・ケープより出版された。日本でも同年に『007号/黄金の銃を持つ男』のタイトルで早川書房から井上一夫訳によりハヤカワ・ポケット・ミステリで発売された。イアン・フレミングは本作の校正中に死去したため、彼の遺作となった。
注意:以降の記述には007 黄金銃を持つ男 (小説)に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。
あらすじ [編集]
日本で消息を絶ち殉職したと思われていたジェームズ・ボンドがロンドンに現れ、上司Mを暗殺しようとした。一時記憶を失っていたボンドは、ウラジオストクに渡航して捕らわれ、KGBによって洗脳されていたのだ。治療を受け回復したボンドに、Mは成功すれば汚名返上、失敗すれば名誉ある死という困難な任務を与えた。それは殺し屋フランシスコ・スカラマンガの活動に終止符を打つことで、ボンドはスカラマンガの本拠地ジャマイカに飛んだ。首尾よくスカラマンガの用心棒に雇われたボンドだったが、正体が露見しスカラマンガと対決に及ぶ。
出版 [編集]
- イアン・フレミング 『黄金の銃を持つ男』 井上一夫訳、早川書房、1980年9月30日。
- Fleming, Ian (2009-4-23) (英語). The Man with the Golden Gun. Penguin. ISBN 9780141045085.
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映画 [編集]
| 007 黄金銃を持つ男 | |
|---|---|
| 007 The Man with the Golden Gun | |
| 監督 | ガイ・ハミルトン |
| 脚本 | リチャード・メイボーム トム・マンキーウィッツ |
| 原作 | イアン・フレミング |
| 製作 | ハリー・サルツマン アルバート・R・ブロッコリ |
| 出演者 | ロジャー・ムーア クリストファー・リー ブリット・エクランド モード・アダムス |
| 音楽 | ジョン・バリー |
| 撮影 | テッド・ムーア オズワルド・モリス |
| 編集 | レイ・パウルトン ジョン・シャーリー |
| 配給 | ユナイテッド・アーティスツ |
| 公開 | |
| 上映時間 | 124分 |
| 製作国 | |
| 言語 | 英語 |
| 製作費 | $7,000,000[1] |
| 興行収入 | (1975年度洋画配給収入4位)[2] |
| 前作 | 007 死ぬのは奴らだ |
| 次作 | 007 私を愛したスパイ |
ストーリー [編集]
イギリス秘密情報部にボンドの番号007が刻まれた黄金の銃弾が届く。それは「黄金銃を持つ男」の異名を持つ素顔が分からない殺し屋フランシスコ・スカラマンガからの抹殺予告の様に見えた。自ら調査に乗り出したボンドはスカラマンガの銃から発射された黄金弾からマカオへ向かい、そこでスカラマンガの美しい愛人、アンドレア・アンダースと出会う。そのうち彼が別の作戦で探していた太陽光エネルギ変換装置「ソレックス・アジテーター」もスカラマンガが所有していることが判明。ソレックスを手に入れたボンドはそれを助手のメアリー・グッドナイトに預けるが、彼女はスカラマンガにさらわれてしまう。グッドナイトを追ってボンドは南シナ海の孤島へ向かう。
スタッフ [編集]
- 監督 - ガイ・ハミルトン
- 製作 - ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ
- 脚本 - リチャード・メイボーム、トム・マンキーウィッツ
- 撮影 - テッド・ムーア、オズワルド・モリス
- 編集 - レイ・パウルトン、ジョン・シャーリー
- 主題歌 - ルル
- プロダクション・デザイン - ピーター・マートン
- 特殊効果 - ジョン・ステアズ
- 視覚効果 - デレク・メディングス
- メインタイトル・デザイン - モーリス・ビンダー
キャスト [編集]
- ジェームズ・ボンド - ロジャー・ムーア
- メアリー・グッドナイト - ブリット・エクランド
- フランシスコ・スカラマンガ - クリストファー・リー
- アンドレア・アンダース - モード・アダムス
- ペッパー保安官 - クリフトン・ジェームズ
- ニック・ナック - エルヴェ・ヴィルシェーズ
- ハイ・ファット - リチャード・ルー
- M - バーナード・リー
- Q - デスモンド・リュウェリン
- マネーペニー - ロイス・マクスウェル
注意:以降の記述には007 黄金銃を持つ男 (映画)に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。
キャラクター、キャストなど [編集]
- スカラマンガの役は、当初ジャック・パランスに依頼したが、断られた。
- その後スカラマンガ役に決まったクリストファー・リーは、原作者イアン・フレミングの従兄弟である。ドラキュラ役者として有名だが、フレミングは彼をイメージして『007 ドクター・ノオ』を書いたと語っている。謀略の黒幕であると同時にボンドと互角のアクションも自らこなし、どこか哀愁を誘う経歴の持ち主でもあるという、シリーズ通じても希有な名悪役である。
- 部下でありながら、彼の遺産を虎視眈々と狙うニック・ナックとスカラマンガの関係にも独特のものがある。
- ペッパー保安官は『007 死ぬのは奴らだ』に続き脇役で登場している。
- グッドナイトは原作ではボンドの有能な秘書であり、諸事情から工作員としても活動していた。歴代ボンドガール中でも一、二を争うドジぶりは、完全に映画オリジナルのもの。
- 原作では、ボンドの盟友であるCIAのフェリックス・ライターも登場。ライターは、長編第2作『死ぬのは奴らだ』で負傷した後、ピンカートン探偵社に転職するが、長編第9作『007 サンダーボール作戦』でCIAに復帰。本作でも、ピンカートン探偵社に在籍したままCIAの職務についている。
- 映画ではライターは登場せず、代わりにスーン=テック・オー演ずるヒップ中尉がボンドに協力する。オーは韓国系アメリカ人俳優で、出演依頼が来たとき、洗濯屋の役ならやらないと言ったという(かつては、欧米の映画に登場する東洋人は、そのような役が多かった)。後に『ファイナル・カウントダウン』で、日本人パイロットを演じている。
秘密兵器など [編集]
- ボンドカーとして、タイアップ契約したアメリカン・モーターズ(AMC)のホーネット・ハッチバックが使用されたが、ボンドがディーラーのショールームから盗み出した一般車両なので、特殊装備は一切装備されていない。
- スカラマンガの車も同じAMCのマタドール・キャッシーニ・クーペだが、こちらは倉庫に隠してあるジェット・エンジン付きの翼を装着し、飛行することが可能(後の場面で、Qも同じような車を開発中だと述べている)。
- 映画の中でスカラマンガを追うホーネットが360度回転で運河を飛び越える場面は、米国コーネル大学航空研究所のコンピューターで二ヶ月かけ計算されて行われたもの(壊れた橋の微妙な傾き具合、車のスピードなど)。車そのものも、10,000ドルをかけて21の公認特許を取得した改造が施された[3]。本番では数台のカメラが同時に回される中、カースタントマンのローレン・ウィラードによるジャンプが見事1回で成功し、歓声に包まれた。
- このジャンプは、スタントマンのW・J・ミリガン・Jr.が、ヒューストンのアストロドームで行った「アストロ・スパイラル」という360度回転ジャンプが元になっており、ミリガン自身もスタントの監修を行った。
- ボンドは前作「死ぬのは奴らだ」に続き、ロレックスの腕時計サブマリナーを着用しているが、本作では特殊機能は使われていない[4]。
- スカラマンガの黄金銃は、ダンヒルの万年筆(バレル)、コリブリのライター(薬室)、シガレットケース(グリップ)、カフスボタン(トリガー)、しかも全て金色のそれを組み立てて作られる単発銃で、金の弾丸で標的を殺す。なお、撮影に使用された黄金銃は、2008年に保管されていたロンドン北部のエルストリー・スタジオから盗み出された[5][6]。
- ボンドはQに作らせた偽の乳首を胸に貼り付けて、スカラマンガになりすます。スカラマンガには第三の乳首(副乳)があるため。
- Qの研究室では、黄金の弾丸の成分分析を行うが、その後ろでカメラ型の火器の実験が行われていた。三脚に固定して発射し、レンガの壁に穴を開ける。
主題歌 [編集]
イギリスの女性シンガー、ルルが起用された。同タイトル曲は、イギリスの「ミュージック・ウィーク」誌では、最高位3位を獲得し、前作以上のヒットとなったが、アメリカではチャート入りを果たせなかった。また、同サウンドトラック・アルバムもチャート入りを果たせなかった。
その他 [編集]
- 原作では(小説での)前作『007は二度死ぬ』で行方不明になっていたボンドが帰国し、Mの暗殺未遂を起こす。実はソビエト連邦に捕らわれ洗脳されていたためで、洗脳を解かれたボンドは復帰後の任務として、Mにスカラマンガ暗殺を命令される筋立てになっている。
- 原作では本作で、Mの本名(フルネーム)が海軍提督サー・マイルズ・メッサヴィであることが、初めて明らかにされた(MのイニシャルがM.M.で、ファーストネームがマイルズであることは、小説第3作『007 ムーンレイカー』で明らかにされていた)。
- 原作の舞台はジャマイカであるが、映画では前作『007 死ぬのは奴らだ』のロケ地に使われていたため変更された。序盤の舞台となるベイルートも検討されたが、撮るべきものが何もないとの理由で、香港・マカオ・タイがロケ地に選ばれた。
- スカラマンガのアジトのロケは、タイ、プーケット近くのパン・ナ・ベイにあるカオ・ピンガー島で行われた。以後、観光地となり、ジェームズ・ボンド島と呼ばれている[7]。
- ボンドが張り込んだマカオのカジノは、カジノ・マカオ・パレス(ザ・フローティング・カジノ)。
- スカラマンガの情婦アンドレアを尾行するボンドは、香港・マカオ・ハイドロフォイル・カンパニーの水中翼船に乗り、香港へ向かう。
- 香港でアンドレアが泊まったホテルは、ザ・ペニンシュラ香港で、名物である緑色のロールス・ロイス・リムジンも登場。
- ヒップ大尉とソレックス・アジテイターの開発者ギブソンが会っていたのは、九龍の尖沙咀(チムサアチョイ)にあったボトムズ・アップ・クラブである[8]。劇中では香港島にある設定になっていたが、2004年に閉店[9]すると、実際に香港島の灣仔(ワンチャイ)に移転して再オープンした。本作映像の看板には「最高級トップレスクラブ 日本人大歓迎」と書かれている。
- 香港の英国情報部の秘密事務所は、クイーン・エリザベス号の中にあるという設定。同船は、退役後ビクトリア・ハーバーで大学校舎への改造中の1972年1月9日に火災を起こし、残骸と化していた。本作撮影後の1975年、撤去されスクラップとなった。
- ハイ・ファットのバンコクにあるという設定の邸宅は、実際は香港新界にある龍圃花園(ドラゴン・ガーデン)[10]で撮影された。
- ボンドとグッドナイトが食事したのは、オリエンタル・ホテル・バンコク。
- ボンドが連れ込まれた道場は、タイ、サムットプラカーン県のテーマ・パーク、ムアン・ボーラン(古代都市公園)[11][12]。
- 運河のボートチェイス・シーンは、サムットプラカーン県クロンダンで撮影。
- ボンドやヒップ大尉が使用するトランシーバーはソニー製。香港でボンドが見るショーウィンドーの中のテレビも、ソニー製品である。
- ボンドはスカラマンガのアジトで1964年のドン・ペリニヨンを出され、1962年もののほうがいいと述べる。
- ミラーハウスでの対決シーンは、入念な打ち合わせの末に撮影されたが、それでも撮影スタッフの姿が映ってしまっているカットがある。
- 本作に登場するソレックス・アジテイターは、太陽エネルギーの利用によりエネルギー危機解決の切り札になるという設定。本作公開前年の1973年より、第1次オイルショックが起こっていた。
- 本作公開当時は、前年に公開された『燃えよドラゴン』が大ヒットし、カンフー・ブームの最中であった。ボンドはハイ・ファット邸で相撲取りに襲われ、道場に連れ込まれて空手アクションを繰り広げる。
- クイーン・エリザベス号は、斜めに傾いた船内のセットが作られた。本作の2年前には、映画『ポセイドン・アドベンチャー』が公開され、上下逆さまになった客船から脱出する人々を描いて大ヒットしている。
- 本作のさいとう・たかを劇画版では、『死ぬのは奴らだ』、『サンダーボール作戦』、『女王陛下の007』まで(劇画版での)敵の首領だったミスター・ビッグに代わって、スカラマンガがボンド最後の敵として登場する。
- 原作でボンド暗殺を指令するKGBのセミチャストニーは実在の人物である。
- 本作は1974年の映画の世界興行成績で第4位[13]、日本では1975年度の外国映画配給収入で第4位[2]であった。
- 本作を最後に、プロデューサーの一人であるハリー・サルツマンがシリーズから手を引いた。
日本語吹き替え [編集]
| 役名 | 俳優 | テレビ版 | DVD新録版 |
|---|---|---|---|
| ボンド | ロジャー・ムーア | 広川太一郎 | |
| グッドナイト | ブリット・エクランド | 滝沢久美子 | 佐藤あかり |
| スカラマンガ | クリストファー・リー | 千葉耕市 | 佐々木梅治 |
| アンドレア | モード・アダムス | 吉田理保子 | 亀井芳子 |
| M | バーナード・リー | 今西正男 | 藤本譲 |
| マネーペニー | ロイス・マクスウェル | 花形恵子 | 泉裕子 |
| Q | デスモンド・リュウェリン | 田中康郎 | 白熊寛嗣 |
| ペッパー保安官 | クリフトン・ジェームズ | 滝口順平 | 宝亀克寿 |
| ニック・ナック | エルヴェ・ヴィルシェーズ | 辻村真人 | 宮澤正 |
| ハイ・ファット | リチャード・ルー | 藤本譲 | 伊藤和晃 |
| ヒップ | スーン=テック・オー | 小島敏彦 | 多田野曜平 |
| ラザー | マーン・メイトランド | 伊井篤史 | |
| コルソープ | ジェームズ・コシンズ | 村松康雄 | |
| サイダ | カルメン・ デュ・ソートイ | 榊原良子 | |
| チュー・ミー | フランソワーズ・テリー | 吉川なが子 | |
| ロドニー | マーク・ローレンス | 笹岡繁蔵 | |
| フレージャー | ジェラルド・ジェームズ | 長堀芳夫 | |
| 大尉 | マイケル・オズボーン | 広瀬正志 | |
| ペッパー夫人 | いわかね栄 | ||
| 中国軍将校 | 島香裕 | ||
| 物売りの少年 | 菊池英博 | ||
| ワインウェイター | 谷口孝司 | ||
- テレビ版 - 初回放送1982年4月5日(月)、TBS『月曜ロードショー』※キングレコードから発売の特別版DVDに収録。
- DVD新録版 - 2006年11月22日発売 DVD アルティメット・コレクション
- 翻訳 - 佐藤一公
参照 [編集]
- ^ a b “The Man with the Golden Gun” (英語). The Numbers. 2009年6月16日閲覧。
- ^ a b “興行成績一覧”. キネマ旬報. 2009年6月16日閲覧。
- ^ 『007 黄金銃を持つ男 劇場版パンフレット』 東宝株式会社事業部、1974年12月14日。
- ^ ボンドウォッチプロジェクト
- ^ “007映画『黄金の銃を持つ男』の黄金銃が盗難”. AFPBB News. (2008年10月13日) 2008年10月16日閲覧。
- ^ “Golden gone: James Bond assassin's golden gun is stolen” (英語). Mail Online. (2008年10月11日) 2009年6月15日閲覧。
- ^ “パンガー : ジェームズ・ボンド島”. タイ国政府観光庁. 2009年8月18日閲覧。
- ^ Fitzpatrick, Liam (2004年8月2日). “Night School” (英語). TIME 2009年8月18日閲覧。
- ^ AFP (2004年3月22日). “Hong Kong's most famous strip club Bottoms Up to close” (英語). MyWire 2009年8月18日閲覧。
- ^ Dragon Garden (英語)
- ^ The Ancient City (英語)
- ^ “サムットプラカーン : ムアン・ボーラン(古代都市公園)”. タイ国政府観光庁. 2009年8月18日閲覧。
- ^ “Movie list by worldwide gross” (英語). WorldwideBoxoffice.com. 2009年6月16日閲覧。
関連項目 [編集]
- アメリカン・モーターズ(AMC)
- ワルサーPPK
- 007号/世界を行く
外部リンク [編集]
- 007 黄金銃を持つ男 - allcinema
- 007 黄金銃を持つ男 - KINENOTE
- 007 The Man with the Golden Gun - AllMovie(英語)
- 007 The Man with the Golden Gun - インターネット・ムービー・データベース(英語)
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