秘密情報部

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秘密情報部
Secret Intelligence Service
SIS
組織の概要
設立年月日 1909年 シークレット・サービス・ビューローとして
管轄 英国政府
本部所在地 イギリスの旗 イギリス ロンドン ヴォクソール
北緯51度29分14秒 西経0度7分28秒 / 北緯51.48722度 西経0.12444度 / 51.48722; -0.12444座標: 北緯51度29分14秒 西経0度7分28秒 / 北緯51.48722度 西経0.12444度 / 51.48722; -0.12444
人員 2500人
監督大臣 ウィリアム・ヘイグ外務英連邦大臣
行政官 ジョン・ソワーズ(長官)
上位組織 外務英連邦省
ウェブサイト

秘密情報部(ひみつじょうほうぶ、Secret Intelligence ServiceSIS)は、イギリス情報機関の1つ。国外の政治、経済及びその他秘密情報の収集、海外におけるエージェントを用いた情報工作を任務としている[1][2]。外務省に属し外務副大臣の指揮下にある。

名称[編集]

第一次世界大戦以前にはイギリスの情報収集活動は、複数の官庁が個別に組織を設け活動していた。第一次世界大戦が勃発すると全情報を一元的に管理することになり、陸軍省陸軍情報総局(Directorate of Military Intelligence (DMI)) の元で各組織との連絡を担当する課の名称としてそれぞれのMilitary Intelligenceの種類に応じて組織名に番号が割り振られた。第一次世界大戦中のSISはMI1(c)と呼称されていたが、1930年代後半にMI6の名称が割り当てられた。他の組織には、MI1(暗号暗号解読、後に他の部署と統合され政府暗号学校に)、MI2(中東極東スカンジナビアアメリカソ連中央アメリカ南アメリカ)、MI3(東欧、バルト海沿岸諸国即ちリトアニアラトビアエストニア)、MI4(地図作成)、MI5(防諜)などがある。第二次世界大戦中にMI5との連携が強化される過程でMI6の名称は広く用いられるようになった[1]。SISでは既にMI6の名称を公式には利用していないが、一般に認知されているため公式サイト等では用いられている。

日本政府は、日本語の名称として秘密情報部を用いている[3]

組織[編集]

ヴォクソール橋からテムズ川越しに見たSIS本部ビル

国家の情報機関であるため詳細は不明な点が多いが、本部の下に「地域課」と「連絡課」が存在し、地域課で現地情報に通じた人材を育成保有して情報収集等を行い、連絡課が本部との連絡役となる。人員は2,500名で約3億ポンドの予算だとされる。

組織としては外務および英連邦省の管轄であるが、外務大臣だけでなく首相と内閣府内の合同情報委員会(JIC) へも報告が行なわれ、これらの指揮を受ける関係にある[2]

歴史[編集]

1909年3月にアスキス首相は、国家特務機関を再編することを帝国国防委員会に勧告した。首相の勧告に基づいて帝国国防委員会外国部附属秘密勤務局(Foreign Section of the Secret Service Bureau)が10月1日に創設された。設立時の責任者にはバーノン・ケル大佐とマンスフィールド・スミス=カミング海軍大佐が任命された。後に秘密勤務局外国課長も務めたスミス=カミングはサインとしてイニシャルのCのみを用いたため、これ以後のSISの長官はみな同じようにCのサインを利用するようになった

第二次世界大戦下の1942年11月19日に、MI6部長スチュワート・ミンギス大佐の主導でフレッシュマン作戦を敢行し、ドイツの原子爆弾開発を阻止しようとするも失敗に終わった[4]

第二次世界大戦中の1940年にMI6によって設立されたイギリス安全保障調整局 (British Security Coordination) は、対ドイツ諜報活動、イギリス連邦諸国におけるイギリス支援のための世論形成など、様々な工作を行ったとされる。長官はウィリアム・スティーヴンスン (William Stephenson) で、イアン・フレミングはその部下であった[5]

1995年に本部がランベスから、現在のヴォクソールに移動。新庁舎は警備体制が強化されており、盗聴爆発物に対する防御が施されている。テリー・ファレル設計による、古代メソポタミアジッグラトを想起させる外観は「テムズ川のバビロン」とも呼ばれている。

2000年9月20日にリアルIRA対戦車ロケット弾をビルの8階に撃ち込んだが、損害は軽微であった。

2006年4月27日に国際テロの高まりを受けた人員増強の必要性から多様な人材を確保するため、1909年の創設以来初めて新聞広告で工作員の募集を開始した。また、独自のウェブサイトを立ち上げた。近年ではMI6、MI5などの諜報機関が公式ウェブサイトで新人採用まで行っている。2005年の応募資格は、父母どちらかが英国人であること、21歳以上で過去10年間に5年以上イギリスに住んでいた英国民である事が最低条件である。

2013年、フランスマリ共和国内で実施した軍事作戦(セルヴァル作戦)を支援[6]

関係機関[編集]

SISに協力する機関には、国防省に属する国防情報参謀部(DIS) や、内務省の下に置かれる保安局(SS、MI5)がある。SISは国内組織としては、軍事情報を主に扱うDISや国内防諜情報を主に扱うSS (MI5) と協力し[2]、国外でも西側各国の情報機関と協力して任務を実行している。

またこれら2組織や、同じ外務省に属する政府通信本部(GCHQ)、内務省の下に置かれる国家犯罪捜査局 (National Criminal Intelligence Service, NCIS) とともにJICを構成している。職員の出向などの人事交流も行われている[7]

歴代長官[編集]

名前 英語名 就任 退任
01 マンスフィールド・スミス=カミング Mansfield Smith-Cumming 1909年 1923年
02 ヒュー・シンクレア Hugh Sinclair 1923年 1939年
03 スチュワート・メンジーズ Stewart Menzies 1939年 1952年
04 ジョン・シンクレア John Sinclair 1953年 1956年
05 ディック・ホワイト Dick White 1956年 1968年
06 ジョン・レニー John Ogilvy Rennie 1968年 1973年
07 モーリス・オールドフィールド Maurice Oldfield 1973年 1978年
08 ディック・フランクス Dick Franks 1979年 1982年
09 コリン・フィギュアス Colin Figures 1982年 1985年
10 クリストファー・カーウェン Christopher Curwen 1985年 1989年
11 コリン・マコール Colin McColl 1989年 1994年
12 デービッド・スペディング David Spedding 1994年 1999年
13 リチャード・ディアラブ Richard Dearlove 1999年 2004年
14 ジョン・スカーレット John Scarlett 2004年 2009年
15 ジョン・ソワーズ John Sawers 2009年 現職

著名な職員[編集]

古くからイギリスはMI6等諜報機関の存在を否定していたが、007の原作者である、イアン・フレミングは元MI6の諜報員であることを公表しており、現役時代の経験を生かした物語としてジェームズ・ボンドを産み落としている。

2010年9月21日にはクイーンズ大学(アイルランド・ベルファスト)教授で歴史学者のキース・ジェフリーが初めてMI6の歴史をまとめた「The Secret History of MI6」が公式に発売され、かつて作家のサマセット・モームグレアム・グリーンアーサー・ランサムなどが所属していたことなどが公式に明らかにされた[8]

関連機関[編集]

フィクション[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b SIS or MI6?”. Secret Intelligence Service. 2013年12月27日閲覧。
  2. ^ a b c 小谷賢編 『世界のインテリジェンス』 PHP研究所 2007年12月10日第1版第1刷発行 ISBN 9784569696379
  3. ^ (参考)外国の主な情報・団体規制機関の所属組織等 - 首相官邸
  4. ^ 白石光『ミリタリー選書 29 第二次大戦の特殊作戦』イカロス出版 (2008/12/5)pp.59–65
  5. ^ 関連文献 スティーヴンスン、ウエスト、ハイド、Mahl
  6. ^ “英特殊部隊、マリ入りか”. 時事ドットコム (時事通信社). (2013年1月23日). http://www.jiji.com/jc/zc?k=201301/2013012301014 2013年2月2日閲覧。 
  7. ^ “MI6職員のカバン詰め変死事件、「事故死」と英警察”. AFP (フランス通信社). (2013年11月14日). http://www.afpbb.com/articles/-/3003288?ctm_campaign=txt_topics 2013年11月15日閲覧。 
  8. ^ “MI6が正史出版、モームら有名作家もスパイの一員” (日本語). AFPBB News (フランス通信社). (2010年9月22日). http://www.afpbb.com/article/politics/2758737/6220305 2010年9月22日閲覧。  もっとも、グリーンやモームのスパイ小説は本人の体験に基づくものである事が分かっている

参考文献[編集]

外部リンク[編集]