アジサイ

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アジサイ属
MimurotojiAjisai.jpg
宇治三室戸寺のアジサイ庭園
分類APG III
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : キク類 Asterids
: ミズキ目 Cornales
: アジサイ科 Hydrangeaceae
: アジサイ属 Hydrangea
学名
Hydrangea L.
和名
アジサイ(紫陽花)
  • アジサイ節
  • クスノハアジサイ節
  • ツルアジサイ節

アジサイ(紫陽花、学名 Hydrangea)は、最も広義にはアジサイ科アジサイ属の植物の総称である[1]

あるいは狭義にはその1種 Hydrangea macrophilla[1]、あるいは最も狭義には、その変種[2][3][4]もしくはフォーム[5]のことであるが、ここでは属について述べる。

学名は「水の容器」という意味で、そのまま「ヒドランジア」あるいは「ハイドランジア」ということもある。また、英語では「ハイドレインジャ」と呼ぶ。

最も一般的に植えられている球状のアジサイはセイヨウアジサイ(ヒメアジサイ・テマリ咲きアジサイは別)であり、日本原産のガクアジサイHydrangea macrophylla)を改良した品種である。

目次

名称 [編集]

アジサイの語源ははっきりしないが、最古の和歌集『万葉集』では「味狭藍」「安治佐為」、平安時代の辞典『和名類聚抄』では「阿豆佐為」の字をあてて書かれている[6]。もっとも有力とされているのは、「藍色が集まったもの」を意味する「あづさい(集真藍)」がなまったものとする説である[6]。そのほか、「味」は評価を[注 1]、「狭藍」は花の色を示すという谷川士清の説、「集まって咲くもの」とする山本章夫の説(『万葉古今動植物正名』)、「厚咲き」が転じたものであるという貝原益軒の説がある[6]

花の色がよく変わることから、「七変化」「八仙花」とも呼ばれる[7][8]

日本語で漢字表記に用いられる「紫陽花」は唐の詩人・白居易が別の花に名付けたもので、平安時代の学者・源順がこの漢字をあてはめたことから誤って広まったといわれている[9]草冠の下に「便」を置いた字が『新撰字鏡』にはみられ、「安知佐井」のほか「止毛久佐」の字があてられている。アジサイ研究家の山本武臣は、アジサイの葉が便所で使われる地域のあることから、止毛久佐は普通トモクサと読むが、シモクサとも読むことができると指摘している[10]。また『言塵集』にはアジサイの別名として「またぶりぐさ」が挙げられている[10]

学名の Hydrangea はギリシア語の ὕδρο[注 2](水)と ανγειον[注 3](容器)に由来する[11]。果実の形によるという説もある[11]

フィリベール・コメルソンジャン=バティスト・ラマルクは、モーリシャスで栽培されていた植物を Hortensia oploides と命名し[11][12]、フランス語や英語、西ヨーロッパの言語では「ホルテンシア (hortensia)」 とも呼ばれる。これはオルタンス (Hortanse) という実在の女性の名をとったものである[12]アントワーヌ・ローラン・ド・ジュシューが著書でそのことを発表したが[11]、誰のことであるかは明らかにされていなかった。コメルソンがブーゲンビル島への航海に男装させ同行させたジャンヌ・バレという娘であるとか、オルタンス王女であるとか、当時有名であった時計や実験器具の製作者の妻、ニコール=レイヌ・ルポートの別名であるとかの説があり[13]、有力であるとされるのは[14]、コメルソンに協力したナッサウ=ジーゲン公爵家の娘であるというものである。

また、シーボルトはアジサイの一種に自分の妻「おタキさん」の名をとって Hydrangea otaksa と命名し、物議をかもしたことが知られている[15][16]

特徴 [編集]

樹高は1–2メートル。は光沢のある淡緑色で葉脈のはっきりした卵形で、周囲は鋸歯状。6月から7月に紫(赤紫から青紫)のを咲かせる。一般に花といわれている部分は装飾花で、おしべとめしべが退化しており(中性花)、花びらに見えるものは萼(がく)である。ガクアジサイでは密集した両性花の周囲にいくつかの装飾花がみられるが、セイヨウアジサイではほとんどが装飾花となっている。また、装飾花の欠如した変異もある(ガクアジサイ「三河千鳥」など)。

花の色 [編集]

花(萼)の色はアントシアニンという色素によるもので、アジサイにはその一種のデルフィニジンが含まれている。これに補助色素(助色素)とアルミニウムイオンが加わると、青色の花となる[17]

土壌のpH(酸性度)によって花の色が変わり、一般に「酸性ならば青、アルカリ性ならば赤」といわれている。これは、アルミニウムが根から吸収されやすいイオンの形になるかどうかに、pHが影響するためである。すなわち、土壌が酸性だとアルミニウムが溶け出し、吸収されて花が青色となる。逆に中性やアルカリ性であれば、アルミニウムは溶け出さず吸収されないため、花は赤色となる[18]。したがって、花を青色にしたい場合は、酸性の肥料や、アルミニウムを含むミョウバンを与えればよい[19]。同じ株でも部分によって花の色が違うのは、根から送られてくるアルミニウムの量に差があるためである[20]。花(萼)1グラムあたりに含まれるアルミニウムの量が、およそ40マイクログラム以上だと青色になると見積もられている[21]。品種によっては遺伝的な要素で花が青色にならないものもある。これは補助色素が原因であり、もともと量が少ない品種や、効果を阻害する成分を持つ品種は、アルミニウムを吸収しても青色にはなりにくい[22]

また、開花から日を経るに従って、花の色は変化する[23]。最初は含まれる葉緑素のため薄い黄緑色で、徐々に分解されていくとともにアントシアニンや補助色素が生合成され、赤や青に色づいていく[23]。さらに日が経つと有機酸が蓄積されてゆくため、青色の花も赤味を帯びるようになる[注 4]。これは花の老化によるものであり、土壌の変化とは関係なく起こる[25]

花の色が緑になることがあり、観賞用として緑の花が販売されることもある。花が緑色の品種もあるが、日本ではファイトプラズマ感染による「アジサイ葉化病」にかかったものも稀にみられる[26][27]。この病気の治療法は知られておらず、感染拡大を避けるため発病株は処分したほうがよいとされる[26]

分類と品種 [編集]

ガクアジサイ H. macrophylla

エングラーの分類体系ではユキノシタ科アジサイ属とされていたが、クロンキスト体系ではユキノシタ科の木本類をアジサイ科として分離独立させた[28][29]。アジサイ属はアジサイ節 (Sect. Hydrangea)、クスノハアジサイ節 (Sect. Cornidia)、ツルアジサイ節 (Sect. Calyptranthe) の3節に分けられる[30]。アジサイ属の野生種としては、日本には14種・1亜種・6変種がある[31]

アジサイ節 [編集]

アジサイ亜節 [編集]

アジサイ亜節 (Subsect. Macrophyllae) にはガクアジサイ、ヤマアジサイ、ハイドランゲア・スティロサの3種が含まれ、いずれもアジアにのみ自生する[32]。白色または有色の花を付ける[32]。通常、花序(花の並び方)は中央に両性花があってその周りを中性花(装飾花)が囲んだ平坦な形であるが、まれにほとんどが中性化からなる球形の花序が生じる[32][33]。両性花は種を作るが、中性花は結実しない[33]。基部から枝分かれする低木であるという点は共通するが、高さは種により異なる[32]。種子は卵形または長い楕円形で、長さは0.5–1ミリである[34]。ガクアジサイとヤマアジサイとは自然雑種ハイドランゲア・セロトフィラ H. × serratophylla を生じるが[32]、これらを人為的に交配させることによって、多くの栽培品種が作り出されている[35]。6月から8月にかけて花を咲かせる[32]

  • ガクアジサイ H. macrophylla (Thunberg) Seringe - 房総半島、三浦半島、伊豆半島、伊豆諸島、足摺岬で海岸に自生する[36][37]。このためハマアジサイとも呼ばれる[37]。高さは2メートル程度だが[36]、4メートルに達することもある[32]。花序は多数の両性花を中心として、装飾花が周りを縁取る[36]。名称の「ガク」はこのさまを額縁になぞらえたものである[37]。花序は直径12–18センチ、装飾花は直径3–6センチで色は白色・青色・淡青緑色・または淡赤紫色[36]、両性花は濃紫色である[37]。葉は厚く、大きく(長さ10–18センチ[36])、種小名 macro (大きい) pyllus (葉)の由来となっている[37]。葉の表面は濃緑色で光沢がある[36]。栽培品種に ‘花火’、‘城ヶ崎’ などがある[38]
    • アジサイ H. macrophylla var. macrophylla - 日本原産のガクアジサイの品種だが、自生しているという説もあり[39]、起源ははっきりしない[40]。他のアジサイとの区別のためホンアジサイとも呼ばれる[39]。花序はほとんど装飾花のみからなり、種子ができるのはまれであるため、挿し木や株分けで増やす[36]。花序の大きさは20–25センチ程度である[36]。古く日本から中国へ伝わったものが、18世紀にさらにヨーロッパへと持ち込まれ、多くの園芸品種が作られた[40]。日本では輸入したものがセイヨウアジサイとも呼ばれる。かつて、シーボルトはこの品種を H. otaksa と命名したが、学名としては現在では使われていない[41]
  • ヤマアジサイ H. serrata (Thunberg) Seringe - 本州では関東より西、また四国、九州などの山地に分布する[42]。千島列島、台湾、中国南部の山地にもみられる[32]。山中で沢によく見られることからサワアジサイとも呼ばれる[43]。ガクアジサイと比べ、花の色が多様性に富む[43]。花序は直径7–18センチ、装飾花は直径1.7–3センチ[42]。葉質は薄く光沢がなく、小さく(6.5–13センチ[42])、長楕円形・楕円形・円形など形はさまざまである[43]。枝は細く、樹高1メートル程度である[42]。葉にフィロズルチンの配糖体を含むものがあり、甘茶として利用される[42][44]。「甘茶(アマチャ)」は分類上特定の品種を指す名称ではない[45]。ヤマアジサイは分布域が広く、いくつかの亜種がある。
    • エゾアジサイ H. serrata subsp. yezoensis (Koidz.) Kitam. - ヤマアジサイの亜種。東北地方・北陸地方・北海道、および朝鮮南部に分布する[42][46]。高さ1–1.5メートルで[42]、北海道のものは本州のものより大きい[46]。花序は直径10–17センチ[42]、普通青色や青紫色だが白・ピンク・ほとんど赤色のものもある[44][46]。葉はヤマアジサイよりも大きく(10–17センチ)、ふちの鋸刃も鋭い[42]。花期は5月中旬から6月中旬である[47]
    • アマギアマチャ H. serrata subsp. angustata (Franch. & Savatier) Kitam. - ヤマアジサイの亜種。富士山・天城山周辺[48]、静岡市梅ヶ島、箱根[49]に自生する。花はすべて白く[48]、葉はヤマアジサイより細い[49]。生の葉は甘苦い[49]
    • ベニガク H. macrophylla f. rosalba (Van Houtte) Ohwi - 南日本の山地にみられる[48]。江戸時代から栽培されている品種である[50]。装飾花は白色だが日光に当たると赤みを帯びる[50]。葉は厚く楕円形で[49]、秋に紅葉する[48]
    • シチダンカ H. serrata cv. ‘prolifera’ - ヤマアジサイの栽培品種で、萼が星型で重なっている[51]。江戸時代から知られ、シーボルトが『フローラ・ヤポニカ』で報告していたものの発見例がなく、絶滅した「幻のアジサイ」とされていたが、1959年に六甲山で再発見された[51][52]。葉は卵形で、エゾアジサイに近い[49]
  • ハイドランゲア・スティロサ H. stylosa J. D. Hooker & Thomson - ブータンベトナム原産の種である[28]。山地にのみ生える[32]。花はガクアジサイに似るが、色は薄い[28]

タマアジサイ亜節 [編集]

タマアジサイ H. involucrata のつぼみ

タマアジサイ亜節 (Subsect. Asperae) に含まれる種はすべてアジア原産で、ネパール、中国、台湾、インドネシア、日本に分布する[53]。いずれも温暖な気候の山地に自生するが、中国やネパールには厳しい気候に耐えるものもある[53]。高さ1.5–5メートルの低木であり[53]、葉は大きく(10–23センチ[54])表面は粗く、花序は散房形で丸みを帯びる[53]。花期は6月から9月に始まる[53]

  • タマアジサイ H. involucrata Siebold - 東北地方南部、福島より南の関東地方、岐阜県までの中部地方の林地に自生する[55][56]。つぼみが球形であることから名付けられた[55]。高さ約1.5メートル程度で、葉は長さ10–21センチの楕円形で先がとがる[55]。葉や幹など全体に短毛が生えており、ざらつく[56][55]。装飾花は大きさ20–32ミリで白色、両性花は大きさ2–5ミリで紫色であり[55]、花序は直径10–15センチである[55]。つぼみの大きさは径1.5センチ、長さ1.2センチ程度で、開花に従い包んでいた(ほう)は落ちる[55]。山地で自生する場合、花は8–9月に咲くが[55]、平地で栽培しているものは6–7月ごろに咲き始める[56]。かつてタバコの代用品や混ぜものとして使われ、「ヤマタバコ」の別名がある[56][57]
  • ヤハズアジサイ H. sikokiana Maxim. - 紀伊半島、四国、九州南部の湿った山地に自生する[58][59]。葉の先が分かれ、矢羽・矢筈(やはず)に似ることから名が付けられた[58][59]。葉は幅の広い楕円形で大きく(長さ12–23センチ[58])、切れ込みがあるのが特徴である[53]。花期は7–8月で、ふちの装飾花は白く小さく[59]、花序の大きさは20–25センチである[58]。葉を傷つけるとウリのにおいがし、方言では「ウリバ」「ウリノキ」と呼ばれる[60]
  • ヒマラヤタマアジサイ H. aspera D. Don - ヒマラヤ、中国西部から中部、台湾、インドネシアに分布する、高さ4メートル以下の低木である[61][62]。葉は幅2.5–10センチ、長さ10–25センチで[61][62]、黄色みを帯びる[63]。花序は径25センチで、装飾花は少なく白色または薄紫色で大きさ2.5センチ、両性花は数が多く赤紫色である[61][62]。以下の亜種・変種がある。
    • ハイドランゲア・ストリゴサ H. aspera subsp. strigosa (Rehder) McClintock - 中国に分布し、ヒマラヤタマアジサイに似るが、葉は細長く[28]、短い毛が生える[61][62]。中国語では蜡莲绣球という。
    • ハイドランゲア・サーゲンティアナ H. aspera subsp. sargentiana (Rehder) McClintock - 中国、ネパールに分布[64]。装飾花は白からピンク色、両性花は数多く薄紫色[62]。中国語で紫彩绣球。
    • ウィロサ - 中国、ネパールに分布する[65]。花はタマアジサイに似るが、葉や装飾花は小型である[59]。分類上独立種 H. villosa Rehder とされていたが、近年ではヒマラヤタマアジサイの亜種アスペラ H. aspera subsp. asperaオートニム)にウィロサグループとして含められる[61]
    • タイワンゴトウヅル H. kawakamii Hayata - 台湾に分布[64]。花はタマアジサイに似る[66]。装飾花は白く小型だが、両性花の塊は大きい[66]。近年では分類上 H. aspera に含められる[61]。中国語では蝶萼绣球。
  • ナガバアジサイ H. longifolia Hayata - 台湾に分布する[65]。花はタマアジサイに似て、装飾花は大きく、両性花は雄しべが長い[66]。葉は細長く、先がとがる[66]。中国語では长叶绣球。
  • ハイドランゲア・ロンギペス H. longipes Franchet - 中国、ネパールに分布[53]。高さ2–2.5メートル[62]。花はタマアジサイに似るが、装飾花は小さく[28]、白色または薄紫色で、両性花も白い[62]。葉は細長く、幅3–9センチ、長さ7.5–17.5センチ程度[62]。中国語で莼兰绣球という。
  • ハイドランゲア・グラブリペス H. glabripes Rehder - 中国、ネパールに分布[53]。花はタマアジサイに似る[28]。中国語では马桑绣球。

コアジサイ亜節 [編集]

以下の種はアジサイの名を持つが、装飾花を持たない。

  • コアジサイ H. hirta
  • キダチノコガク H. angustipetala
  • カラコンテリギ H. chinensis
  • ヤクシマアジサイ H. grosseserrata
  • トカラアジサイ H. kawagoeana
  • H. lobbii
  • コガクウツギ H. luteovenosa
  • ガクウツギ H. scandens - 名にウツギとあるがアジサイの一種で、茎と葉がウツギに似ている事からこの名が付いた
  • H. umbellata
  • ヤクシマガクウツギ H. yaakusimensis

アメリカノリノキ亜節 [編集]

  • アメリカノリノキ H. arborescens
  • H. cinerra
  • カシワバアジサイ H. quercifolia - 飾り花をもたない、北米原産
  • H. radiata

ノリウツギ亜節 [編集]

また、アジサイの名を持たないが、以下の種はアジサイ属で、よく似た花をつける。

  • ノリウツギ H. paniculata
  • ヒマラヤノリウツギ H. heteromalla
  • H. xanthoneura

クスノハアジサイ節 [編集]

モノセギア亜節 [編集]

  • クスノハアジサイ H. integrifolia
  • H. peruviana
  • H. seemannii

ポリセギア亜節 [編集]

  • H. serratifolia

ツルアジサイ節 [編集]

つる植物となるものもある。

  • ツルアジサイ(ゴトウヅル) H. petiolaris
  • タイワンツルアジサイ H. petiolaris

類似の種 [編集]

  • イワガラミ Schizophragma hydrangeoides Sieb. et Zucc. - ツルアジサイに似るが、装飾花が一弁

このほか、草本でアジサイ様の花を咲かせるものにクサアジサイ (Cardiandra alternifolia Sieb. et Zucc.) がある。 分類上の位置は大きく異なるがスイカズラ科にも低木で散房花序の周辺部に装飾花をつけるものがあり、やや様子が似ている。ムシカリ (Viburnum furcatum Blume) やヤブデマリ (V. plicatum Thumb. f. tomentosum [Thumb.] Rehder) などがその代表で、ヤブデマリではアジサイと同様に装飾花だけからなる園芸品種オオデマリ (f. plicatum) があるのもよく似ている。

毒性 [編集]

アジサイには毒性があり、ウシヤギなどが摂食すると中毒を起こす。症状は過呼吸、興奮、ふらつき歩行、痙攣麻痺などを経て死亡する場合もある[要出典]。1920年にアメリカでアジサイの一種アメリカノリノキ英語版 Hydrangea arborescens によるウシとウマでの中毒について、下痢・体温上昇・呼吸数と心拍数の増加・骨格筋の強い収縮・足を突っ張って飛び上がるなどの症状が見られたが、対症療法により回復したと報告されている[67][68]。日本では2008年6月に、料理の飾りに使われたアジサイの葉を摂食した客が中毒する事故が発生し、嘔吐・めまい・顔面紅潮の症状を示した[68][69][70]。またアジサイ属のアマチャによる中毒例も報告されている[68]

アジサイの毒性物質は明らかにされていない[69]。1920年のアメリカでの報告[67]から、根から抽出されたヒドランギンという青酸配糖体(グリコシド)が中毒の原因であると考えられていたが[69][71]、1963年にこれは誤りであると報告されている[68]。すなわち、ヒドランギンとされた化合物は実際には窒素(青酸)を含まないウンベリフェロン (7-ヒドロキシクマリン)であった[72]。また2008年の日本の中毒例でも、つくばでは青酸配糖体は検出されておらず[68]、大阪では葉1グラムあたり29マイクログラムと微量であった[73]。これを受けて厚生労働省は2008年8月18日付けで「アジサイの喫食による青酸食中毒について(2008年7月1日)」の文書を廃止した[74]

2009年に京都薬科大学の吉川らは中国産のアジサイから青酸配糖体としてヒドラシアノシド類を単離したと報告したが[75]、京都産のものには含まれないなど青酸配糖体の量や種類には品種による差があると述べている[69]。一方アジサイ科ジョウザン属のジョウザンに含まれるアルカロイドの一種、フェブリフギンがアジサイにも見られることが報告されているが[76]、この化合物が中毒の原因であるかは明らかではない[69]

シーボルトとあじさいと牧野富太郎 [編集]

鎖国時代に長崎にオランダ商館員の一員として日本に渡来し、オランダ人と偽って出島に滞在し医療と博物学的研究に従事したドイツ人医師にして博物学者シーボルトは、オランダに帰還してから植物学者のツッカリニと共著で『日本植物誌』を著した際にアジサイ属 14 種を新種記載している。その中で花序全体が装飾花になる園芸品種のアジサイを Hydrangea otaksa Siebold et Zuccarini と命名している。しかしこれはすでにカール・ツンベルクによって記載されていた H. macrophylla (Thunberg) Seringe var. macrophyllaシノニム(同一種)とみなされ、植物学上有効名ではない。にもかかわらず、牧野富太郎が自著の各種植物図鑑において Hydrangea macrophylla Seringe var. otaksa Makino の学名を用い種の記載者が Seringe で変種の記載者が牧野自身であるとする事実と異なる処置を行っていることから、一部の植物学書であたかも H. otaksa が植物学的な有効名であるかのような誤解が広まってしまっている。

牧野は上記の植物学的に不可解な処置と矛盾する言動をまた、著書の中で行っている。シーボルトは自著の中で otaksa をアジサイが日本で「オタクサ」と呼ばれていると命名の由来を説明しているが、牧野は日本国内でこの呼称が確認できなかったことからシーボルトの愛妾の楠本滝(お滝さん)の名を潜ませたと推測し、美しい花に花柳界の女性の名をつけたとして強く非難している。

牧野のこの推測によって「オタクサ」の名はシーボルトとお滝さんのロマンスをイメージさせて文人作家の創作意欲を刺激し、詩歌にこの名を詠み込むことなどが盛んに行われている。

鑑賞 [編集]

自生のアジサイ(表六甲ドライブウェイ

低木で、5月から7月頃、青、紫、ピンクなどの花(装飾花)を密につけ、手毬状をなす。初夏あるいは梅雨時期の風物詩として広く親しまれ、鑑賞用に庭園や公園に植栽されてきた。また、咲き始めの頃は白っぽく、次第に色が変ってくることから「七変化」とも呼ばれる。園芸種も多い。

アジサイ名所 [編集]

全国各地にアジサイを境内に多く植えたアジサイ寺と呼ばれるような観光名所がある。公共の施設では大阪府民の森ぬかた園地神戸市立森林植物園舞鶴自然文化園に約5万株のアジサイが植えられている。三重県津市にある「伊勢温泉ゴルフクラブ内の福祉と環境を融合したあじさい園」には 2万5000平方メートルに 56 種類・7万5000株のあじさい園が2008年6月より新設された。また神戸市の裏六甲ドライブウェイおよび奥摩耶ドライブウェイ沿いには延々とアジサイが自生している。箱根登山鉄道では開花時期に合わせ夜間ライトアップされたアジサイを楽しめる特別列車が運行されている。

名所一覧 [編集]

寺院の名所は、アジサイ寺を参照

文化 [編集]

紫陽花を模した生菓子

和歌 [編集]

あじさい(紫陽花)は夏の季語

万葉集には二首のみ。

  • 言問はぬ木すら味狭藍 諸弟(もろと)らが 練の村戸(むらと)にあざむかえけり(大伴家持 巻4 773)
  • 紫陽花の八重咲く如くやつ代にを いませわが背子見つつ思はむ(しのはむ)(橘諸兄 巻20 4448)

平安後期になるとしばしば詠まれるようになった。

  • あぢさゐの 花のよひらに もる月を 影もさながら 折る身ともがな(源俊頼『散木奇歌集』)
  • 夏もなほ 心はつきぬ あぢさゐの よひらの露に 月もすみけり(藤原俊成『千五百番歌合』)
  • あぢさゐの 下葉にすだく蛍をば 四ひらの数の添ふかとぞ見る(藤原定家

文学 [編集]

  • 『あじさい』- 永井荷風 作、昭和6年(1931年)

絵画 [編集]

あじさいに燕

歌謡曲 [編集]

市町村の花・木として [編集]

アジサイは下記の市区町村の花・木として制定されている。


脚注 [編集]

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注釈 [編集]

  1. ^ 「味のある絵」「味な趣向」などの用法における味。
  2. ^ ラテン文字翻字:hydro
  3. ^ ラテン文字翻字:angeion
  4. ^ アントシアニンそのものも酸性度によって色が変化する[24]

出典 [編集]

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参考文献 [編集]

  • 山本武臣 『アジサイの話』 八坂書房〈植物と文化双書〉、1981年ISBN 978-4-89694-314-6
  • コリン・マレー 『アジサイ図鑑』 大場秀章、太田哲英(訳)、アボック、2009年ISBN 978-2-84138-309-2
  • 武田幸作 『アジサイはなぜ七色に変わるのか?』 PHP研究所、1996年ISBN 4-569-55044-4
  • 河原田邦彦、三上常夫、若林芳樹 『日本のアジサイ図鑑』 柏書房、2010年ISBN 978-4-7601-3819-7
  • 北村四郎、村田源 『原色日本植物図鑑』 保育社、1979年ISBN 4-586-30050-7

関連項目 [編集]

外部リンク [編集]