隅落
隅落(すみおとし)は、柔道の投げ技の手技16本の一つ。講道館、国際柔道連盟における正式名称。別名空気投(くうきなげ)。IJF略号SOT。
解説
巧みに引き出されて来た相手(右組み相四つなら右足を踏み出してきた相手)を自分も逆側に踏み込み(大外刈を掛けるときのように)、後ろ隅(右組み相四つなら右足かかとに崩し)に投げ落とす技。三船久蔵十段が七段であった39歳の時に考え出した技で、当初、空気投げと呼ばれたが、嘉納治五郎師範が「隅落」と名づけた。七段の47歳の時、第一回全日本柔道選手権大会で、関西の佐村嘉一郎七段(当時)と対戦し、隅落で一本をとり、隅落の発案から7年掛りで完成させた。
三船久蔵十段は、「相手に触れずに倒す方法はないか、いや、ない。では相手に触れた瞬間に倒す方法はないか、いや、ない。では相手に腰や足を触れず、手だけを触れた状態で投げる方法はないか亅という着想からこの隅落としを発案したといわれる。
非常に素早い巧みな動作によって相手を崩し、柔道衣を持った手以外、相手に触れずに投げる技。相手の斜め後方へ突き飛ばすように相手を投げる。
相撲でいえば、呼び戻しがこれに近い。一反呼び込んで(引き出して)相手の後方へ倒すのである。
この二つの名前の他に、バケツの中の水をまく動作に似ていることからバケツ投げ(バケツなげ)と呼ばれたこともあったが、「それはちょっとひどい」との言葉を三船久蔵十段は残している。
補足
なお、空気投げには隅落である「三船流空気投げ」と浮落の一種である「石黒流空気投げ」の2種類がある。
実践例
シドニーオリンピック男子60 kg以下級決勝で野村忠宏が鄭富競(韓国)に対して開始14秒で隅落を決めている。
これは野村が不利な体勢からやや強引に内股を仕掛け、それを鄭が内股すかしで反撃しようとしたが、野村の技の崩しや勢いが強くそのまま鄭が投げられてしまったという形ではあったが、決まり手として隅落が採用された。
合気道の隅落し
合気道にも隅落しという技が存在する。柔道技とは想定の間合いが異なるので技法としてもやや異なる。合気道の隅落しは相手の斜め後方に投げる場合が殆んどである。合気会などの他、柔道と関連の深い合気道競技では特に「乱取基本の形十七本」のうちの一本に制定されている。