ユーロダンス

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ユーロダンス(Eurodance)は、1990年代初頭にできた、電子音楽のジャンルの一種である。 このジャンルの曲は、ハウスHi-NRG、イタロ・ディスコの要素を含んでいる。1990年代初頭に誕生してから今日まで、このジャンルの楽曲にはトランステクノの要素を含んだスタイルのメロディを用いるようになった。

ユーロダンスの音楽は、たくさんのメロディアスなボーカルとラップの組み合わせによる影響を受けている。切れ込むようなシンセサイザーのサウンドと、強く波打つ低音のビート、そしてメロディアスなサビがこれに加わることにより、ユーロダンスの核となるサウンドができてくる。


定義[編集]

ユーロダンスの定義は時代がたつにつれて、だんだん、ヨーロッパにおけるある種のダンス・ミュージックと結びつくようになってきた。ユーロダンスの最盛期である1990年代後半、このジャンルはユーロ・ハウスやユーロ・エナジーとも呼ばれていたが、ヨーロッパではダンス・フロアもしくはただ単にダンスと呼ばれていた[1]

広い意味でのユーロダンスという言葉を用いる者もいるが[2] 、狭義のユーロダンスは1990年代にできたNRGをベースとした音楽で、このような音楽にはボーカルのソロまたはボーカルとラップのデュエットが用いられており、カスケーダといった後期のヨーロッパのダンス・ミュージックをさすこともある[3]。 ユーロダンスは、ヨーロッパのある地域で制作されるナイトクラブ向けの音楽ではあるが、ラジオやテレビの音楽番組でも流せる程の商業的なサウンドも含んでいる。

特徴[編集]

多くのユーロダンスの音楽は、シンセサイザーのリフ、サンプリングされたコーラスつきの女性ボーカル、男声によるラップ、サンプリングされた音源、そして強いビートで構成されている。 ボーカル ユーロダンスの曲は、明るくてスピードが速く、愛と平和や踊り、パーティ、自己表現、複雑な感情からの解放といったことを歌詞のテーマとしていることが多い。 1990年代のユーロダンスは、ソロボーカルのみもしくは、ラップとボーカルの掛け合いが多かった。 多くの楽曲ではラップとボーカルのテーマがよく用いられた。

組み合わせの例

ラップの一例

著名なボーカル

ユーロダンスの歌はアーティストの国籍問わず英語で歌われることがほとんどだが、英語とアーティストの母国語との混合という例もある。

パーカッション[編集]

ユーロダンスでは、パーカッションやリズムが強調されやすい。パーカッションにはキック・バスドラムを用い、4分の4拍子を基調にしたリズムはさまざまである。パーカッションはシンセサイザーで鳴らされるが、そのサウンドはラップで言うビートボックスではなくダンスミュージックのビートである。テンポは135BPM前後が多いが100から150まで曲によりさまざまである[4]

メロディ[編集]

ユーロダンスの楽曲はメロディを重視していることが多い。女性ボーカルの多用や、シンセサイザーによる高速アルペジオはしばしば用いられる。これがHi-NRGとの違いである。シンセサイザーでピアノや手回しオルガンの音色を出すことも多いが、Cartouche『Touch the Sky』のようにカリオペといったほかの音色が出されることもある。 短く繰り返しの利いたリフが用いられる一方で、ファン・ファクトリーの『Close To You 』などではシンセサイザーの力技で占められたこともある。

歴史[編集]

ユーロダンスは、初期のハウス・ラップ・NRGの変種といった、複数のスタイルのダンスミュージックの混合である。


Hi-NRGとイタロ[編集]

メインストリームからディスコ・ブームが去ってから、Hi-NRGはアメリカ合衆国のアンダーグラウンド・シーンで生まれた。1980年代後半にはストック・エイトキン・ウォーターマンといったイギリスのレコードプロデューサーと関連付けられ、1990年代前半ごろには、マスターボーイといったバンドがHi-NRGのユーラシア大陸版を生み出していった。

ユーロダンスはBPMの速さや女性ボーカルの多用など、Hi-NRGから強く影響を受けている。マスターボーイからの影響はドクター・アルバンのIt's My Life や、 Haddawayの What Is Love なといったデュエットのないユーロダンスの楽曲に見られた。 Hi-NRGはディスコが技術面で進化したものであるからして、ユーロダンスはユーロディスコが技術面で進化したものであるとも考えることができる。 イタロ・ディスコ及びその後期の発展形であるユーロビートは、ユーロダンスのサブジャンルとみなされることもあるが、ユーロダンスというよりはむしろHi-NRGの欧州版にあたる『スペース・ディスコ』に影響を受けている。 イタロはユーロダンスの誕生に影響を与えた存在ではあるが、アレクシア、カペラ、CO.RO.、ダブル・ユーといったイタリアのユーロダンスアーティストはオペラのような女性ボーカルを用いる傾向がある。また、エッフェル65といった後期のユーロダンスのアーティストは、行進曲のようなリズムを取り入れた。

なお、ユーロビートという言葉は日本でよくつかわれ、『Dance Dance Revolution』といった音楽ゲームで使われたり、ストリートカーレースを題材としたアニメ『頭文字D』でサウンドトラックとして用いられた。

ハウス[編集]

同じくアメリカ合衆国のアンダーグラウンドシーンで生まれたハウスは1980年代にアシッド・ハウスレイブ・テクノとともに欧州にやってきた。1990年代前半にはベルギーで発生したニュービートの人気上昇に伴い、ハウスはベルギーやオランダの文化と結びつくようになった。 のちにユーロダンスと呼ばれる音楽の要素を持つ初期のハウスの曲もあった。たとえば、ブラックボックスが1990年にリリースしたStrike It Up や1992年にSnap! がリリースしたRhythm is a Dancer にはいずれも独特のデュエットが用いられており、ラゾーラが1991年にリリースしたEverybody's Free (To Feel Good) には、特徴的なシンセサイザーのリフが入っていた。 もっとも、ヨーロッパのハウスミュージックすべてがユーロダンスに吸収されたわけではない。2000年代前半までには、ベニー・ベナッシが2003年にリリースした Satisfaction のように、ハードなシンセサウンドをゆっくりとしたテンポに乗せるハウス・ミュージックもあった。

ラップ/ヒップホップ[編集]

ラップのパートはユーロダンスにおいて際立ったものでもある。このような音楽でつかわれるラップにギャングスタ・ラップ的なテーマはなく、スクラッチ音を出すターンテーブルや重低音の利いたベースラインもない。ただ、ヒップホップのサンプリングのネタ元になっている、ファンクのノリに似たところがある。 ユーロダンスはヨーロッパにおけるラップの人気を上げてきた。1982年にファルコがリリースした Einzelhaftなどでもラップの要素はあったが、スナップの"The Power"に次ぐテクノトロニックの "Pump Up the Jam"がヒットした際アメリカ合衆国のラップファンは、より広いジャンルを受け入れた。ハウスミュージックとラップの組み合わせはヒップハウスまたはハウスラップとも呼ばれる。

ヨーロッパにて[編集]

オリジナルのユーロダンスの例としてはカスケーダ、リアル・マッコイ、アルカザール、 カペラ, Infernal,アレクシア、2 アンリミテッド、バッド・ボーイズ・ブルー, Captain Hollywood Project, Centory, コロナ、 Culture Beat, DJボボ、ドクター・アルバン、 イー・タイプ、ファン・ファクトリー、アイスMC、インペリオ、インドラ、La Bouche, 2 Brothers On The 4th Floor, Le Click, Maxx,First Baseなどがある。これらのバンドは女性コーラスと男性ラップのコンボを主としており、これがデュオ・リバイバルにつながっている。それぞれのグループのサウンド・人格・イメージ、ボーカルは個性的である。

ソロアーティストにはアンバーやコロナがいる。ラゾーラはマイケル・ジャクソンの1994年にヨーロッパで行われたデンジャラス・ツアーのサポートに回ったことがある。アンバーはユーロダンス史上初めて、プロデューサーの力を借りずに一人でレコード会社と契約した人物である。

アメリカ合衆国での反応[編集]

1993年から1998年までの間、Rhythmic Top 40, Top 40 Mainstream 、Billboard Hot 100にユーロダンスの楽曲がチャートインすることがあったが、それらの楽曲はラップやハウスの要素が強く、そのためヒップハウス・プロジェクトであるスナップ!は、最初のころアメリカ合衆国でよくヒットした。

NRGの要素の強いアーティストの楽曲は、特別なミックス・ショウでよく流され、アメリカ合衆国でユーロダンスの楽曲を聞くためにクラブへ行く必要があった。 クラブDJの人気とともに、ユーロダンスの人気も上がったが、ラジオでは1980年代から90年代のディスコの要素を含んだ曲を流していた。1900年代後半になると、エッフェル65の『ブルー(ダ・バ・ビー)』やアクアの『バービー・ガール』といった曲が大ヒットした。 インターヒットレコードが1995年から1998年までに出したDMA Dance: Eurodanceといったコンピレーションアルバムやダンス・ミュージック・オーソリティといった雑誌なども[5] 、アメリカやカナダにおけるユーロダンスの人気を上げたもののひとつである[6]

2000年代[編集]

ユーロダンスはいつもテクノの影響を受けていたため、原則的にテクノとは商業面で似たところがある。2000年ごろから、ユーロダンスの影響を受けたトランスがはやり始め、テクノ人気は低くなっていった。2006年ごろまでには、トランスの人気は少しずつ落ちてきている一方で、ユーロダンスの人気が再び高まってきた。ユーロダンス再興の背景には、ファイル共有サイトやオンライン・ネットワークサイトといった、音楽や動画を楽しめるウェブサイトの存在があった。これを第2次ユーロダンスブームと取ることもできるが、2000年代のユーロダンスには異なる点を持つこともある。

アルカザール、Milk Inc., Merzedes Club, Infernal、スペシャルD, Groove Coverage、カスケーダ、サンタマリア、シルバー、Danijay、コロニア、ケイト・ライアン、Gabry Ponte, アシュリー・ジェイド、DJアリゲーター、ジェシー、マーク・アシュリー、カイリー・ミノーグとその妹ダニー・ミノーグといったミュージシャンやグループは、そのような時代を象徴するアーティストであり、米国本土でシングルやアルバムをヒットさせている。また、クラシックのユーロダンスの演奏・リリースを行っているアーティストに、スウェーデンのアレックスがいる。彼は、90年代に人気のあった楽器を用いて当時のユーロダンスを再現しており、今でもクラシック・ユーロダンスを聞き続けているファンから支持を集めている。

主なアーティスト[編集]

代表的なバンドにはオランダのトゥウェンティ・フォー・セブン、イタリアのエッフェル65,スウェーデンのアルカザール、デンマークのInfernalなどがあげられる。 近年では、ベースハンターカスケーダが含まれることもある。

分類[編集]

1990年代半ばごろから、ユーロダンスはいくつかのジャンルに分かれてきた。

  • クラシック(1990年代):女性ボーカルと男性ラップの掛け合いが特徴的。濃厚でち密な楽曲が多く、後期のユーロダンスよりテンポが遅いものが多い。アレンジや演奏者のレベル、シンセサイザーやベースの規制が、1990年代半ばから終わりにかけて親しまれ、当時からのファンから強い支持を得ている。
  • バブルガム・ダンス:バブルガム・ポップをデンマークでユーロダンス風にアレンジしたもの。楽器の使い方は上記のクラシック・ユーロダンスと似ているが、歌詞の内容は典型的なディスコ楽曲よりも皮肉じみたユーモアがこもっており、コンピュータゲームや漫画・アニメ、童話のモチーフ(例:ミー&マイの『Magic Love』)、ダブル・ミーニングについて歌っている楽曲が多い。コーラスやラッパーと歌手のデュエットの使用はあるが、クラシックのユーロダンスのようにアメリカ合衆国のラッパーを用いない場合が多い。ハッピーハードコアにはバブルガム・ダンスのハードコアテクノ版がある。
  • ユーロ・トランス:クラシック・ユーロダンスよりも、ボーカルの構成やメロディの点において制約が少ないジャンル。ヴォーカルにエコーがかかるなどしてはっきりしなくなったり、ヴァース/コーラスの法則を無視した繰り返しが行われたりすることがある。また、これに加えて、シンセサイザーが幽玄な響きのあるコード進行でメロディーラインを奏でたり、重低音の利いたパーカッションが入ることがある。

関連項目[編集]

  • ユーロビート
  • トランス (音楽)
  • シンセポップ:1980年代に登場。ほかの電子音楽ジャンルとは違い、男声シンガーがよく用いられる。未来的なシンセの音色がロック・ミュージックに似たサウンドに乗っているのが特徴。1990年代前半、メインストリームでの人気が落ちたが、完全にすたれたわけではなく、2000年代初頭に人気が再び上がった。
  • ユーロポップダンス・ポップのサブジャンル。クラシック・ユーロダンスやトランスの要素をもってはいるが、類似性は低く、コーラスとヴァースの立て方も広く知られたものである。キャッチーで中毒性のあるメロディ・シンセ・ベースが特徴。

脚注[編集]


外部リンク[編集]