ハードコアテクノ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

ハードコアテクノ: hardcore techno)は1990年代初期から半ばにかけ、オランダロッテルダムアメリカニューヨークオーストラリアニューキャッスルなどで同時発生的に出現した電子音楽のスタイルである。

ベルギーのニュービート英語版[注釈 1]を源流とし、高いBPM[1](160–200 BPM。時にはそれ以上)と、主張の強いビート、大胆かつリズミカルなサンプリングが特徴。1980年代末ごろに機能が充実したPCM音源サンプラーが相次いで登場し、その機材群が活用されている。

ハードコアと略されるが、米国ロシアにあるエモーショナル・ハードコア: emotional hardcore)あるいはハードコア・パンク: hardcore punk)と混同されることもある。

歴史[編集]

メスカリナム・ユナイテッド: Mescalinum United)が1990年に作曲したWe Have Arrivedが、世界初のハードコアテクノであると考えられることが多い[2][3]

作曲の手法[編集]

現在、ハードコアテクノをはじめとする電子音楽はパソコンミュージックシーケンサーを用いて作成されることが一般的であるが、以前はMODトラッカーにより作成されていたものも多かった。

その手法は、用意された素材や既存の音楽、時にはアンダーグラウンドなカルチャーからのサンプリングや、シンセサイザーによる音作りとその演奏、ディストーションなどによるそれらの加工など様々である。ハードコアテクノのアーティスト達は、時に従来の音楽文化を度外視する前衛的なジャンルのひとつとして、コンピュータの持つ幅広い可能性を活用し、それぞれが形にとらわれない独自の作曲手法を考案し続けている。

ハードコアテクノの種類[編集]

今日においてもハードコアテクノは進化し続け、様々な派生ジャンルが出現している。

主なサブジャンル[4]:

オールドスクール英語版: old school、oldskool
ハードコアテクノ黎明期にあった1990年代初期の曲・ジャンルを指す言葉として知られている。このころのBPMは160未満のものが多い。
けたたましいピアノロールと跳ねるようなベースライン、ブレイクビーツとチープな女性ボーカルの多用など、いわゆる「レイヴ」に通ずる特徴を持つ。
日本国内ではジュリテク、デステクノなどの名称で流通した。
アーリーレイヴ: early rave
アムステルダム中心の音楽シーンへのカウンターとして生まれたとされるガバの原型。歪んだバスドラムと下品でイリーガルなサンプリングが特徴。「オールドスクール」や「ガバ」と呼称されることもある。
国内ではロッテルダムテクノの名で広く知られている。
ガバ: gabber、gabba
160 BPM以上の高速なハードコアテクノ。
音数が変化しストイックになった曲もあれば、従来の路線を継承し高速化したものも存在する。
今日におけるハードコアテクノの基盤ともいえるジャンルである。
主なアーティストはネオファイト英語版オマー・サンタナ英語版ザ・スタンド・ガイズイタリア語版など。
ハッピーハードコア: happy hardcore
オールドスクールレイブにおけるジャングル寄りの流派が、ガバの音楽性を吸収することで独自に成長を遂げ誕生したジャンル。
高速なテンポにメロディアスなシンセリフが大きな特徴。
主なアーティストはBriskHixxynanobiiスコット・ブラウンなど。国内ではURAKENP*Lightなど。
トランスコア: trancecore
トランスのテンポを単純にタイムストレッチし高速化してプレイしたことから発生したスタイル。
やがてハッピーハードコアを中心に他の様々なジャンルの要素を吸収し、トランスの持つメロディアスさとハードコアを両立したひとつのジャンルとして確立した。
シーンの変化に伴いフリーフォーム、UKハードコアにそれぞれ吸収されており、近今ではトランスコアという通り名が使われることは少ない。
フリーフォーム: freeform hardcore[注釈 2]
元々はハードトランス、ハードエナジーから派生したジャンルであり、トランスコアの一種として広く知られていた。
特徴的かつ伝統的なアシッド・ラインに加え、しばしばトランスらしいローリングベースやSupersawも用いられる。
ムーブメントに逆らった独自の形態をとる傾向があり、その中でも大きく分けてハッピーハードコア、UKハードコア的解釈である「UK系」と、
ハードトランス、ハードエナジー的解釈である「FIN系」という2つの派閥が存在する。
主なアーティストはケビン・エナジーDJ Sharkey英語版Alek Száhalaフィンランド語版カーボン・ベースドフィンランド語版など。
UKハードコア: UK hardcore
ハッピーハードコア・フリーフォームハードコアを経て形成されたジャンル。
曲調は多岐にわたり、ハードトランス、トランスコアの正統進化系とも言えるようなものから、2010年代ではブロステップドラムステップなどに影響を受け、ベースラインや変則リズムなどを前面に押し出した個性的なものまで存在する。
主なアーティストはフレイカス・アンド・ダーウィン英語版ガマー英語版Orbit 1など。国内では、SHOKO FUJIKAWADJ ShimamuraDJ Noriken源屋GettySrav3RTatsunoshinなど。
スピードコア: speedcore
超高速で打ち鳴らされるガバキックが特徴。ハードコアテクノの中でも人を選ぶジャンルである。
類似ジャンルに、約200–300 BPMで制作されるテラーコアスプリッターコアエクストラトーンと呼ばれる1000 BPMに至るものまで存在する。
スピードコアの主なアーティストはNoisekickSRBDelta 9Komprexなど。国内では、m1dyt+pazoliteKobaryoなど。
ニュースタイルガバ: nustyle gabba
ビートが高速化しすぎたガバ、スピードコアシーンへのカウンターとして発生したハードコアテクノ。
ダンス・ミュージックとしての実用性を重視し、とにかくキックのアタック感、重量感が強調される。
そのため、160–170程度のBPMで音数は非常に少なくまとめられており、代わりにブレイクは映画音楽のようなオーケストラなどを用いて壮大なものに仕上げられているトラックも多い。
より洗練されたガバキックを用いる最近のトラックは、メインストリームハードコア英語版: mainstream hardcore)と呼ばれる。
主なアーティストはアート・オブ・ファイターズイタリア語版アンガーフィスト英語版Dirty Bastardsなど。国内では、DJ MyosukeRoughSketchNoizenecioなど。
ブレイクコア: breakcore
ハードコアテクノをブロークンビーツドリルンベースIDM的に解釈したアプローチの音楽。
細かく分解・再構築された複雑なリズムで鳴らされる激しく歪んだブレイクビーツが大きな特徴。
イリーガルなサンプリングのスタイルなどはガバ、アーリーレイヴからの直系である。ヴェネチアン・スネアズスクエアプッシャーThe DJ Producerなどが有名。
インダストリアルハードコア: industrial hardcore
ガバキック・ハイハット・スネア成分に特化したハードコア。
無機質で重厚な曲が多いのが特徴。
主なアーティストはDJIPEIgneon SystemI:GorLowrollerDeathmachineなど。
フレンチコア: frenchcore
ベースと一体化した特徴的なキックを用いる、ガバともUKハードコアともつかない独特なジャンル。
ストイックな方向へ変貌を遂げた、ハードテック/トライブ (Hardtek/Tribecore) という派生ジャンルも存在する。
主なアーティストはDr. Peacock英語版セファオランダ語版THE SPEED FREAKPattern Jザ・シッケスト・スクワッドフランス語版など。国内では、USAODustvoxxDJ C-TYPEなど。
ハードテック: hardtek
ハードテックとは、1980年代後期から1990年代初期においてフランスを中心としたヨーロッパフリー・パーティーを含むレイブ (音楽)\レイブ文化の波を発祥とするテクノ音楽の一つである。
一般的には180–200 BPMのバスドラムの反復の四つ打ちビートの上に、ベースラインやメロディが乗るスタイルである。ハウス、トランス、ブレイクビーツ、ジャングル、ドラムンベースダブステップ、ハッピーハードコア、UKハードコア、ガバ、アシッド・テクノヒップホップトラップレゲエファンクソウルミュージックカートゥーン音楽ロックメタルなど、多岐にわたる音楽ジャンルのエッセンスを取り込み、又はサンプリングを切り貼りし使用している。 数多くの音楽的な要素が含まれている為、1つの視点よりハードテックのサウンドを表現することが困難である。
主なアーティストはFant4stik、Billx、Mat Weasel、フロキシーテックポーランド語版、Guigooなど。国内ではTanukichiUSAO、Dustvoxx、Loctekなど。
アップテンポハードコア: uptempo hardcore[5]
メインストリームハードコアの派生ジャンル。180–240 BPM近辺で制作される。
ガバキックとスクリーチ、MC・声ネタで構成されることが多い。フレンチコアやテラーコアの要素が取り込まれることもある。
主なアーティストはパーティーレイザーオランダ語版F.NoizeHardbouncerSystem OverloadNSD、Hatredなど。
ハードスタイル: hardstyle
ハードダンスから派生したジャンルであるが、国内ではしばしばその親和性の高さからハードコアテクノの近縁ジャンルとして捉えられることもある。
特徴として、140–150強程度のBPM、リバースベースを組み合わせたキックや、ガバとはまた異なる様相の歪んだキックなどが挙げられる。
ガバから派生した類似ジャンルにジャンプスタイル英語版: jumpstyle)が存在する。しばしば混同されるが別物である。
主なアーティストはアトモスフィアーズ英語版クーン英語版フロントライナーオランダ語版ヘッドハンターズ英語版ザトックスイタリア語版など。国内ではCaZUSAOMassive New Krewanubasu-anubasuSrezcatYuta Imaiなど。
クロスブリード: crossbreed[6]
メインストリームハードコアとドラムンベースを融合させたようなジャンル。ガバキックが強調されたモノと、ダークステップ英語版ニューロファンク英語版寄りのモノに大別される。
特徴としてクランギングスネア(: clanging snare(スカルスネアと呼ばれることも)やリース・ベース英語版(うねりのあるベース)、ガバキックなどが挙げられる。オーケストラが取り入れられることもあり、アーティストによって曲の雰囲気はガラリと変わる。
主なアーティストはジ・アウトサイド・エージェンシー英語版HallucinatorThe Satanなど。国内ではQuarkViral Programなど。

Jコア[編集]

1990年代から2000年代にかけて、日本国内においてアニメテレビサブカルチャーのアイテムから無許可でサンプリングして制作される、「ナードコア」と呼ばれるハードコアシーンの流行があった。当時の音源が日本国外に流出し、海外で「J-core(Jコア)」と呼ばれた。

今日ではナードコアに限らず、「ハッピーハードコア、UKハードコア、ガバ、スピードコアなどをベースとしつつも、(海外の)メインストリームとは異なる日本人的センスでプレイされるハードコアテクノ」をJコアと呼ぶ傾向が強い。Jコアのアーティストは国内に限らず存在し、既存のハードコアテクノとは違うひとつのサブジャンルとして確立しつつある[7]

主なプロデューサー・DJ[編集]

主なレーベル[編集]

ハードコア全般

UKハードコア系

  • Hardcore Underground
  • ONESEVENTY
  • Together We Rise

ガバ系

  • Audiogenic
  • Darkside Unleashed
  • Drop Bass
  • Enzyme Records
  • footworxx
  • H2OH
  • Industrial Strength Records
  • Japanese Stream Hardcore
  • Masters of Hardcore
  • Megarave Records
  • Partyraiser Records
  • PRSPCTrecordings
  • The Third Movement
  • This Is Terror
  • Traxtorm Records
  • YellowStripeRecs

ハードスタイル系

  • Dirty workz
  • Fusion Records
  • Scantraxx Records

ブレイクコア系

  • Cock Rock Disco
  • DANCE CORPS
  • LapFox Trax
  • otherman records
  • Peace Off

ハードテック系

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ハードコアテクノとそのサブジャンル(現時点ではレイヴミュージックとして知られている)の直接の前兆となったジャンルとされる。
  2. ^ 英語版ウィキペディアの記事「Hardcore (electronic dance music genre)」も参照のこと。

出典[編集]

  1. ^ Psychedelic Freestyle” (英語). www.a-wave.com. システム7. 2019年5月16日閲覧。
  2. ^ Dr Venkman (2004年7月). “Lenny Dee” (フランス語). Signal Zero. 2016年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月16日閲覧。
  3. ^ Dronnzz (2005年6月). “The Rapist” (フランス語). Signal Zero. 2016年7月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月16日閲覧。
  4. ^ Ishkur's Guide to Electronic Music
  5. ^ HARDGATE BLOG - 【インタビュー】F. Noize
  6. ^ HARDGATE BLOG - CrossbreedについてLowrollerTV - Clanging Snares Tutorial
  7. ^ 自分語り633 J-CORE文化大革命 "虐殺完了"”. DJ TECHNORCH and 九十九音夢. 2021年7月28日閲覧。
  8. ^ Exode मूल फ्रेंच”. Myspace. 2021年7月28日閲覧。
  9. ^ hardtek.jp”. hardtek.jp. 2021年7月28日閲覧。
  10. ^ Undergroundtekno”. Undergroundtekno. 2021年7月28日閲覧。