ドゥーワップ

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ドゥーワップ (doo-wop) はポピュラー音楽における合唱のスタイルの一種。ドゥワップドゥー・ワップドゥ・ワップとも表記される。1950年代半ばから1960年代初頭のアメリカ合衆国で隆盛し、数多くのコーラス・グループが生まれた[1]フランク・ザッパルー・リードジョージ・クリントン、鈴木雅之、山下達郎らは、熱心なドゥーワップ・ファンとして知られている。

概要[編集]

ドゥーワップの特徴は、メロディー(主旋律)以外は「ドゥーワッ」「シュビドゥビ」「ドゥビドゥワ」といった意味を持たない発音でのリズミカルな歌い方(スキャット)にあり、それが「ドゥーワップ」の名の由来となった。

グループの構成は3人から6人。ステージやレコードでは通常は簡素な楽器の伴奏がつく。メンバーそれぞれの担当パートはほぼ決まっており、主旋律を歌うリード・ボーカル、和音(ハーモニー)の中高音部を担当するテナー、中低音部を担当するバリトン、低音部を担当するベースに大きく分けられる。人数が少ないグループや楽器の伴奏がつくのを前提としたグループではバリトンやベースがいないこともある。テナーとバリトンは和音だけでなく対旋律(カウンター)や主旋律に対する掛け声(コール・アンド・レスポンス)で曲を盛り上げる役割を担う。ベースは楽器のベースの音とフレーズを模して「ボン」「ドゥン」というような歌い方をすることもある。

ポピュラー音楽のコーラス・グループの一部もドゥーワップの歌唱スタイルを取る場合があるが、ドゥーワップという言葉は「1950年代の黒人音楽の一ジャンル」という限定されたイメージが強いため、通常はそのジャンルとスタイルを指す以外の使い方はしない。なおア・カペラは楽器の伴奏がない合唱全般を意味する言葉であり、無伴奏のドゥーワップを特にア・カペラと呼んで区別することがある。

歴史[編集]

ドゥーワップのルーツはアメリカの黒人アフリカ系アメリカ人奴隷労働歌に遡り、黒人教会で聖歌隊が歌うゴスペルによって基本的な形式が作られた。やがてゴスペルを基礎にジャズのメロディー、和声、歌詞、伴奏が取り入れられたものが商業音楽として1930年代に出現する。これが初期のドゥーワップで、ミルズ・ブラザーズ、インク・スポッツなどが代表的グループとされる。当時はメロディーを聴かせるための甘くゆったりとした曲が主流だった。

戦後になり、ドゥーワップのコーラスは技術的・経済的にハードルの高い楽器の習得を必要としないことから、都市の黒人の少年たちの間で広がり始め(いわゆるストリート文化)、1950年代半ばからは一大ブームを迎える。職業作家の手によらないシンプルなラブソングが増え、新たにテンポの速いリズムを強調したドゥーワップ・アップテンポの曲や、コミカルでユーモラスな曲も出てくるようになり、ロックンロールとともに若者文化の流行を担った。

アーティストの多くは黒人のグループで、一部に白人のグループや白人・黒人混合のグループもいた。残されたレコードも玉石混交である。商業音楽としての可能性を見出されると、音楽性をより大衆向けに変えて成功したグループも現れた。「オンリー・ユー」で知られるプラターズや、「ラストダンスは私に」などがヒットしたドリフターズは、ポップなグループと見られている。これらよりもファイブ・サテンズ、ザ・ムーングロウズオリオールズ[2]などの方が、正統的なドゥーワップ・グループである。ブームは数年で冷めたものの、ドゥーワップは1960年代モータウンに代表されるソウルミュージックの隆盛の大きな原動力となった。

ドゥーワップの歌唱スタイルはその後のソウル/R&Bだけでなくロックポップスにも大きな影響を与えた。日本のムード歌謡のコーラスの少数に、ドゥーワップの影響が見られることもある。

特に重要なグループ[編集]

  • ザ・ムーングロウズ[3]
  • ファイブ・サテンズ
  • スパニエルズ
  • ペンギンズ
  • ハープ・トーンズ
  • ジャイブ・ファイブ
  • ハート・ビーツ
  • シェップ&ライムライツ

ホワイト・ドゥーワップ[編集]

  • クレスツ
  • スカイ・ライナーズ
  • デュプリーズ
  • ダイヤモンズ

日本のドゥーワップ[編集]

  • キングトーンズ (和製ドゥーワップのオリジナルとも呼ばれ、日本にドゥーワップを広めたグループ)
  • シャネルズ (キングトーンズの後継者的グループ)

関連項目[編集]

脚注[編集]

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出典[編集]

  • 『リズム&ブルースの死』:著者:ネルソン・ジョージ(早川書房)
  • The Top 1000 Doo-Wop Songs:著者:Anthony Gribin
  • Appen, Ralf von / Frei-Hauenschild, Markus (2015). "AABA, Refrain, Chorus, Bridge, Prechorus — Song Forms and their Historical Development". In: Samples. Online Publikationen der Gesellschaft für Popularmusikforschung/German Society for Popular Music Studies e.V. Ed. by Ralf von Appen, André Doehring and Thomas Phleps. Vol. 13, p. 43-48, 61-63.
  • Baptista, Todd R (1996). Group Harmony: Behind the Rhythm and Blues. New Bedford, Massachusetts: TRB Enterprises. ISBN 0-9631722-5-5.
  • Baptista, Todd R (2000). Group Harmony: Echoes of the Rhythm and Blues Era. New Bedford, Massachusetts: TRB Enterprises. ISBN 0-9706852-0-3.
  • Cummings, Tony (1975). The Sound of Philadelphia. London: Eyre Methuen.
  • Engel, Ed (1977). White and Still All Right. Scarsdale, New York: Crackerjack Press.


外部リンク[編集]