デトックス

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デトックス(detox)は、体内に溜まった有害な毒物を排出させることである[1]。この呼び名はdetoxification(解毒、げどく)の短縮形である[1]。体内から毒素や老廃物を取り除くことである。

薬物中毒では解毒剤が使われる[2]薬物依存症では薬物を身体から抜いていく治療を解毒(detoxification)と呼ぶ[3]。生活上、体内に人体に悪影響を及ぼす化学物質重金属合成化合物、有害な薬物)が蓄積されるとされ、これを排出させようと様々に言われているが、英国国民保健サービス(NHS)は2009にその必要はないと広報した[1]

医療[編集]

薬物中毒に陥った際は、原因物質を特定して解毒剤が使われる[2]活性炭アトロピンナロキソン、蛇の抗毒素、キレート剤、アセチルシステイン[4]などその毒に対応したもの使われる。

アルコール依存症薬物依存症の際に、身体から薬物を減少させる治療を解毒(detoxification)と呼ぶ[3]。この場合、離脱症状の管理も必要とされる。

人体では通常、肝臓が解毒を行っている[5]肝性脳症肝機能が低下した場合に起こることがある意識障害で、通常肝臓で解毒されているアンモニアなどが脳に回ることで起こる。

カネミ油症の患者での研究では、ラットでは食物繊維はダイオキシン類を吸着して排泄させることで、排泄速度を2~4倍に高めダイオキシン類の健康への影響を減少できる可能性があるとされ、人間ではコレスチラミンと米ぬかを併用して排泄速量が増加し、断食療法の効果も認められている[6]

健康法分野[編集]

ラットでの実験では、クロロフィルと食物繊維は食品からのダイオキシンの吸収を抑制した[7]

方法[編集]

広報[編集]

英国の国民保健サービス(NHS)は2009年に、一部の製品は軽い利尿剤だとした[8][1]。テストするのは簡単であり、通常より早く毒が抜けているかを血液検査すればいいが、そうした研究はあまりない[1]。デトックスは必要ないとコメントした[1]。また、英国の博士号取得者や大学院生300人以上でつくるVoice of Young Scienceが行った調査によると、依存症や中毒症状などに対する医療行為以外で、デトックスと書かれた15製品の効果は、ほとんど「無意味」なものだったとコメントされている(研究実験はない)[9][10][11]。肌用ジェル、シャンプー、体用ブラシ、ビタミン剤、スムージー、水といったものが含まれた。

問題点[編集]

分別ある食生活や生活環境、軽い運動や休養など(上記の方法に記されたものは、大半がこの範囲でしかない)健康的に生活していれば、人体は副腎機能の正常化を条件に肝臓腎臓をはじめとした体にとって有害な物質を取り除く機構を備えている。なお、確かに有害な重金属やダイオキシン類は体内に蓄積され、出産を除いて大量に自然排出される機会はほとんど無いが、それは人体に密接に結びついているためであり、仮にそれらを短期間に大量排出する方法があったとしても、身体には大きな負担を伴う危険性も考えうる。また、例えばグルタチオンは脂溶水銀と結合し安定物質となって細胞内から排出させる等の汎的な解毒性を有するものの、これは万能ではなく、あくまで特定の物質に対して微量の排出を促す限定的な効能しか示さない。

科学的根拠に乏しい、いわゆる疑似科学を用いたものも存在する。こうした効果を提唱した製品を販売する業者はもとより、同様に根拠の無い効果を提唱するエステティックサロンなども、景品表示法に違反する可能性が高いものもある。

  • 全ての重金属合成化合物などが有害であるとする偏見も多いが、例として取り上げられることのある水銀カドミウムが日常的に摂取され続けることはほとんどなく、またモリブデン亜鉛といった一部の重金属ミネラルを構成する大切な栄養素である。今日では食塩料理酒クエン酸重曹といった調味料添加物サプリメントワクチンを含む医薬品にも合成化合物が用いられているケースは珍しくなく、適切に摂取している限りにおいて、合成化合物であることを理由にこれらによる健康被害が発生する危険性は特定物質アレルギーや生産時の事故を除いては生理学的見地からは低いものとみなすべきである。
  • 食品添加物については、実際には動物実験によって得られた毒性値の数百から数千分の1の量が利用されている。これを微小であるとする意見もあれば、食品として摂取するには充分に問題のある量であるとする意見もある。

事例[編集]

  • 足裏から重金属などの毒素を排出する効果を提唱するフットバス製品が存在し、これを使用すると容器内の水の色が変化する。業者の説明ではこれは体内の毒素が水に溶け出したために生じたものとされるが、実際には水中の電極に使用されている金属が電気分解により変化し、水酸化鉄(サビ)が水に溶け出した結果である。[12]
  • イギリスでは、体内の毒素を出すために栄養士の指示のもと毎日約2リットルの水を飲んだ女性がナトリウム欠乏症となり、脳に回復不能な損傷を負ったという事例がある。[13]
  • ベラルーシのグループが「アップルペクチンには放射性セシウムの排出を促進する作用がある[14]」との論文を出しサプリメントを販売していたが、それに対してフランスの放射線防護・原子力安全研究所が信頼性を疑う報告書を出した。[15]また、フランスのグループがラットを用いてセシウム137の排出効果を「プルシアンブルー投与 ・ アップルペクチン投与 ・ 何も与えない」3グループで比較した結果、アップルペクチンの排出効果は、何も与えないグループと同等で効果が無かった。[16][17]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f 'Detox' tincture Q&ANHS(2009年3月11日)
  2. ^ a b 岡田芳明「薬物中毒の治療:特に体内からの除去促進」、『臨床化学』第31巻第2号、2002年、 113-118頁、 doi:10.14921/jscc1971b.31.2_113NAID 130003357361
  3. ^ a b 成瀬暢也「精神作用物質使用障害の入院治療 : 「薬物渇望期」の対応法を中心に」 (pdf) 、『精神神經學雜誌』第112巻第7号、2010年7月25日、 665-671頁、 NAID 10028059133
  4. ^ 友田吉則、福本真理子「解毒薬 活性炭」、『The Japanese journal of clinical toxicology』第31巻第1号、2018年、 41-46頁。 藤田基、鶴田良介「解毒薬 アトロピン」、『The Japanese journal of clinical toxicology』第30巻第4号、2017年、 391-394頁。 岡崎敬之介、峯村純子「解毒薬 ナロキソン塩酸塩」、『The Japanese journal of clinical toxicology』第30巻第3号、2017年、 261-266頁。 堺淳「解毒薬 ヘビの抗毒素」、『The Japanese journal of clinical toxicology』第30巻第1号、2017年、 41-45頁。 髙野博徳、遠藤容子、黒木由美子「解毒薬 キレート剤」、『The Japanese journal of clinical toxicology』第29巻第3号、2016年、 259-263頁。 福本真理子「解毒薬(1)N-アセチルシステイン」、『The Japanese journal of clinical toxicology』第26巻第2号、2013年、 129-133頁。
  5. ^ 田中稔「肝臓と化学 体の化学工場」、『化学と教育』第65巻第8号、2017年、 404-405頁、 doi:10.20665/kakyoshi.65.8_404NAID 130006328390
  6. ^ 小栗一太、赤峰昭文、古江増隆 「第9章」『油症研究 30年の歩み九州大学出版会、2000年6月。ISBN 4-87378-642-8。序文、268-269、282、288、298-302頁。(英訳 YUSHO
  7. ^ 森田邦正、飛石和大「ダイオキシン類の排泄促進に関する研究」『福岡県保健環境研究所年報』 第28号 平成12年度(2000)、2001年12月。56頁。
  8. ^ Behind the Headlines–ニュースの見出しの背景にある科学–Food Watch Japan(2009年11月25日)
  9. ^ 「デトックス」製品は無意味?英科学者団体が指摘 AFP通信(2009年1月6日)
  10. ^ Scientists dismiss 'detox myth' BBC News(2009年1月5日)
  11. ^ Debunking detox Sense about Science(2009年1月)
  12. ^ 足裏から毒素”はニセ科学!? [リンク切れ] 毎日放送 VOICE (2007年3月9日)
  13. ^ ダイエットのため1日2リットルの水飲み脳を損傷 [リンク切れ] 新華通信社 (2008年7月25日)
  14. ^ Reducing the 137Cs-load in the organism of "Chernobyl" children with apple-pectin.2004年
  15. ^ Cesium-137 : pectin's potential remedial role is an open question IRSN 2005年
  16. ^ 「健康食品で解毒」を信じてはいけないFOOCOM.NET(2011年7月9日)
  17. ^ Comparison of Prussian blue and apple-pectin efficacy on 137Cs decorporation in rats.2006年

関連項目[編集]