好転反応

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

好転反応(こうてんはんのう)とは、治療の過程で一時的に起こる身体反応のこと。反応の程度はさまざまである。

漢方薬の知識体系で瞑眩(めんけん、めんげん)と言い、病状の改善が現れる前の一時的な悪化であり、経験上3-4日まで持続することが多い[1]。この瞑眩という言葉は18世紀の漢方医である吉益東洞により日本で広く知られるようになった[1]

東洋医学における瞑眩[編集]

漢方薬の知識体系では瞑眩と呼ばれ、21世紀初頭の漢方薬の教科書では、予期せぬ症状の悪化が起こりその後、よく改善されていく場合の最初の悪化の過程であり、経験上3-4日以内持続し、1週間のこともあるとされる[1]。1945年から2009年の間で、日本での瞑眩についての症例報告は70症例前後あり、文献以外の院内調査でも80%の人々で2-3日で生じており、教科書を裏付けていると考察された[1]

  • 発症時期 1日目(42%、うち数時間が15%) 2日目(27%) 3日目(11%) 数日(5%) 4日目(3%) 5日目(1%) 7日目(4%) 8日目(4%) 2週間後(1%) 4週間後(1%)
  • 持続 1日(33%) 2日(14%) 3日(14%) 4-6日(19%) 7日(13%) それ以上5% 症状が強く服薬中止:3症例

8日以上続いた3症例は、いずれも皮膚症状であった[1]。このように8日を超える場合は、瞑眩ではなく有害事象(副作用)の可能性も考慮される必要がある[1]。荒川和男も120症例を検討している[2]

中国の古典の『尚書』(『書経』とも、『四書五経』に含まれる)に記載があり、日本の漢方医の吉益東洞(18世紀)により日本で広く認知されるようになった[1]。薬によって瞑眩が起きなかったら、その病は治らないという意味である[1]

若薬弗瞑眩厥疾弗瘳 — 『尚書

治療過程において頻繁に起きることなので、事前に説明がされることが多い。漢方薬の厳密な定義に従うと、瞑眩が発生するのは多くある。漢方では患者の体質()を判断してから調剤を行う。

慢性的に疲労していた筋肉がほぐれ、溜まっていた老廃物が血液中に流れることなどが要因として考えられる。だるさや眠気、ほてりなどを感じるケースが多い。眠気が生じると不眠症が治ったと勘違いしてしまうことがある。他、発熱下痢発疹などに現れることもある。また、老廃物が尿として排出されるため、その色が濃くなったりする。その他にも、主訴となる症状が一過的にぶり返したかのように見える場合もある。

健康食品などのセールストークなどに流用された「好転反応」[編集]

2003年には、医療関係者や一般消費者の半数前後が好転反応という概念について聞いたことがあると回答しており、副作用を好転反応だと誤認する危険性についての認識が必要だとされた[3]。そのような症状は一時的かもしれないが、重篤な副作用であった場合にもそうした説明に従い服用を継続してしまう危険性がある[4]

2014年12月10日、消費者庁より消費者安全法第38条第1項の規定に基づき、健康被害発生後も継続利用を勧められる美容健康商品等について、利用を一旦中止するようにと注意喚起が行われた[5]

薬機法との関連[編集]

承認された医薬品以外で好転反応の説明を行うことは、薬機法における、医薬品的な効能効果の標ぼうの禁止に該当し禁止されている[6]。つまり、「疲労回復」「食欲増進」「ある病気を治す」といった効果は承認された医薬品でしか標ぼうできず、「一時的に下痢や吹き出物が出るがいずれおさまる」といった効果の証のように説明することは不適切である[6]

以下のアダパレンの添付文書のような説明は、同様の作用機序を持つ成分であっても、日本で未承認であれば説明は行えない。そのような効果が想定されているかは別として、法律上説明することはできない。

本剤の使用中に皮膚乾燥、皮膚不快感、皮膚剥脱、紅斑、そう痒症があらわれることがある。これらは治療開始2週間以内に発生することが多く、通常は軽度で一過性のものであることについて患者に説明すること。 — 「ディフェリンゲル0.1%」医薬品添付文書[7]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h 森裕紀子、早崎知幸、伊藤剛、及川哲郎、花輪壽彦「瞑眩の特徴に関する検討:過去64年間の臨床報告から」『日本東洋医学雑誌』第65巻第2号、2014年、 79-86頁、 doi:10.3937/kampomed.65.79
  2. ^ 荒川和男「瞑眩の文献的考察」『漢方と最新治療』第8巻第1号、1999年、 39-46頁。
  3. ^ 八重徹司、八重恵美子「一般用医薬品の重大な副作用と規制緩和に関する意識調査 : 消費者アンケートからの考察」『医療薬学』第30巻第8号、2004年8月10日、 553-557頁、 doi:10.5649/jjphcs.30.553
  4. ^ 和田敦、青木佳世子、笹瀬典子、ほか「入院患者における健康食品使用実態と薬局およびインターネットにおける健康食品情報提供に関する調査」『医療薬学』第29巻第2号、2003年4月10日、 237-246頁、 doi:10.5649/jjphcs.29.237
  5. ^ 健康被害発生後も継続利用を勧められる美容・健康商品等 〜「好転反応」等といわれても、健康被害が出たら利用を一旦中止しましょう!(消費者庁、2014年12月10日)
  6. ^ a b 東京都福祉保健局、東京都生活文化スポーツ局『健康食品取扱マニュアル』薬事日報社、2008年、第5版、92-97頁。ISBN 978-4-8408-1060-9
  7. ^ ディフェリンゲル0.1%(医薬品医療機器総合機構)

外部リンク[編集]