エビデンス

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エビデンスとは、証拠・根拠、証言、形跡などを意味する英単語 "evidence" に由来する、外来の日本語。一般用語として使われることも増えてきており、多くは、以下に示す分野における学術用語業界用語としてそれぞれに異なる意味合いで使われている。

医学や健康科学[編集]

一般には、医学および保健医療の分野では、ある治療法がある病気怪我・症状に対して、科学的に効果があることを示す根拠となる検証結果・臨床結果を指す[1]。エビデンスは、医療行為において治療法を選択する際「確率的な情報」として、少しでも多くの患者にとって安全で効果のある治療方法を選ぶ際に指針として利用される。

つまり、「この患者はAという病気である確率がoo%。このAという病気をoo%でもつ患者にB治療法はXX%の確率で効果がある」として、他の治療法と比べて最も効果のある治療法を選択する際の基準選に利用される。言いかえれば、患者の治療に際して、効果の確率(効果量effect size)を知るための手段がエビデンスであり、この効果量がどの程度の確率で正しいかを知るための手段の客観的な基準がエビデンスである。高いエビデンスを求める方法として、ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究が挙げられる。ただし、生物には個体によるゆらぎがあるため、これらの一般的な確率は個々の患者の状態によって適切に修正されなければならない。

この分野において、「エビデンスがある」と言えば、一般的には「科学的根拠」という意味である[2]。「エビデンス・レベル」は、個々の修正が適切であれば、確率の「信頼度」と言い換えることができる。

IT用語[編集]

情報技術 (IT) の専門用語としては、システムの開発分野において、作成したプログラム、サブシステムが想定どおりに動く(動いた)ことを示す証拠や検証結果を指す。このエビデンスに基づいて、1763年に発表されたベイズの定理を用いてプログラム、サブシステムを改変する前に、その改変が必要なものであるかを確率的なデータに基づいて結果を推測する方法で注目されている。

一般的用法[編集]

一般的には、発言の証拠や提案の根拠を指す用語として使われる。ただ、広く普及しているというわけではない。

また、経理処理のための、証憑性を担保する請求書領収書を指す場合がある。

文化用語[編集]

世界遺産の登録審査に際しては、その学術的価値を証明する必要があり、「真正性(オーセンティシティ)」と呼ばれるが[3][リンク切れ]、その検証過程においてはエビデンスという表現がしばしば用いられる。無形文化遺産に登録された和食の提案に際しても、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)へ提出した書類では、和食の健康性について科学的見地に基づいて報告している[4][リンク切れ]

脚注[編集]

  1. ^ 健康を決める力:ヘルスリテラシーを身につける”. www.healthliteracy.jp. 2023年5月6日閲覧。
  2. ^ 「エビデンスがある」とはどういうことか?”. 看護ネット|聖路加国際大学運営. 2023年5月6日閲覧。
  3. ^ 世界遺産条約履行のための作業指針 - 文化庁文化遺産オンライン
  4. ^ 「和食」保護・継承に関するエビデンス一覧 (PDF) - 農林水産省

関連項目[編集]

外部リンク[編集]