ナットウキナーゼ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search
枯草菌 Bacillus subtilis natto のナットウキナーゼの結晶構造。PDB 4dww[1]

ナットウキナーゼ(nattokinase)は、日本食納豆に含有される酵素タンパク質の一種である。須見洋行により発見、命名された[2]。納豆は、日本において古くから食べられてきた大豆を原料とする発酵食品であり、ナットウキナーゼは、枯草菌の一種である納豆菌により大豆を発酵させる過程で産生される。納豆に限らず、大豆製品は各種の酵素を含むが、ナットウキナーゼを生み出すのは納豆のみである。

ナットウキナーゼという名称は、納豆菌 (natto-kin) に酵素を表わす接尾辞 -aseをつけたものであり、キナーゼ(kinase、リン酸化酵素)ではなく、サブチリシンファミリーのセリンプロテアーゼである。

研究と注意点[編集]

国立循環器病研究センターでは、納豆菌が発酵過程でビタミンKを生成するため、ワーファリンなどの抗凝固薬を処方されている循環器系患者の納豆摂取を厳禁としている[3]。さらに、アスピリンを服用している場合は脳内出血リスクを増加させる可能性もある[4]

なお、血栓溶解作用や血液サラサラ効果があるとする者もいるが、納豆を経口摂取した場合について病理的に有効な研究報告はない。特に心疾患の予防については科学的に証明されていないので、代替医療としては避けるべきである[5][6]。しかし、規模は小さいものの凝固線溶系パラメータ改善を報告する論文もある。[7]

ナットウキナーゼと同様に血栓溶解作用があるウロキナーゼは「急性心筋梗塞における冠動脈血栓の溶解」の効用で医薬品として承認されており、静脈内に投与される[8]

ナットウキナーゼはプロテイナーゼKサブチリシンの一種Carlsbergと共に、アルツハイマーに関わる有害なアミロイドフィブリル(繊維)の分解活性を有するという報告がある[9]

安全性[編集]

無毒性量

NOAEL参考値 : ラット、経口、90日 1000mg/kg 体重/日[10]

脚注[編集]

  1. ^ Yanagisawa, Y.; Chatake, T.; Chiba-Kamoshida, K.; Naito, S.; Ohsugi, T.; Sumi, H.; Yasuda, I.; Morimoto, Y. (2010). “Purification, crystallization and preliminary X-ray diffraction experiment of nattokinase from Bacillus subtilis natto”. Acta Crystallographica Section F 66 (12): 1670–1673. doi:10.1107/S1744309110043137. PMC 2998380. PMID 21139221. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=2998380. 
  2. ^ Sumi, H.; Hamada, H.; Tsushima, H.; Mihara, H.; Muraki, H. (1987). “A novel fibrinolytic enzyme (nattokinase) in the vegetable cheese Natto; a typical and popular soybean food in the Japanese diet”. Experientia 43 (10): 1110–1111. doi:10.1007/BF01956052. PMID 3478223. 
  3. ^ 佐久間聖仁 (2010年1月1日). “循環器病あれこれ > 78 肺塞栓症”. 国立循環器病研究センター循環器病情報サービス. 2018年3月13日閲覧。
  4. ^ Chang YY, Liu JS, Lai SL, Wu HS, Lan MY (2008). “Cerebellar hemorrhage provoked by combined use of nattokinase and aspirin in a patient with cerebral microbleeds”. Intern. Med. 47 (5): 467–9. PMID 18310985. 
  5. ^ Cho L (April 2007). “Ask the doctor: I have read good news about nattokinaze and would like to use it to keep my blood thin. Is it a good substitute for aspirin?”. Heart Advis 10 (4): 8. PMID 17500089. "Not very much is known about nattokinaze... there is not enough information from human studies to know for sure what it can do or to recommend it for people with cardiovascular disease. Aspirin should be your first choice." 
  6. ^ ちなみに、血栓溶解効果を示す酵素タンパク質の一種「ウロキナーゼ」の場合、静脈注射でなければ血栓溶解効果がない。これは、経口摂取すると体内に吸収されるまでに、胃液のペプシンや小腸の膜消化(小腸粘膜上皮細胞1個あたりに約600本密生する微絨毛の膜消化酵素による分解)によって酵素タンパク質(アミノ酸のつながり)が切断され、トリペプチド (アミノ酸が3個結合したもの)やジペプチド (アミノ酸が2個結合したもの)あるいはアミノ酸単体にまで分解されて酵素としての特性を失うからである。もちろん、ナットウキナーゼも酵素タンパク質なので、経口摂取した場合には、アミノ酸やジペプチド、トリペプチドにまで分解され、ナットウキナーゼとしての活性を失う。(当然だが、人体にナットウキナーゼを再構築する機能はないし、血中に血栓溶解効果が出現することもない)つまり、ナットウキナーゼや、そのサプリメントを経口摂取しても、血栓溶解効果は無いと考えられる。
  7. ^ “A single-dose of oral nattokinase potentiates thrombolysis and anti-coagulation profiles”. Scientific reports. (2015). doi:10.1038/srep11601. PMC PMC4479826. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=PMC4479826. 
  8. ^ 医療用医薬品 : ウロキナーゼ注「フジ」”. KEGG (2014年4月). 2018年3月13日閲覧。
  9. ^ Hsu, Ruei-Lin; Lee, Kung-Ta; Wang, Jung-Hao; Lee, Lily Y.-L.; Chen, Rita P.-Y. (2009). “Amyloid-Degrading Ability of Nattokinase from Bacillus subtilis natto”. J. Agr. Food Chem. 57 (2): 503–508. doi:10.1021/jf803072r. PMID 19117402. 
  10. ^ “Toxicological assessment of nattokinase derived from Bacillus subtilis var. natto”. Food and chemical toxicology 88. doi:10.1016/j.fct.2015.12.025. PMID 26740078. 

外部リンク[編集]