納豆菌

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納豆菌
分類
ドメ
イン
: 真正細菌 Bacteria
: フィルミクテス門
Firmicutes
: バシラス綱 Bacilli浸出液
: バシラス目 Bacillales
: バシラス科 Bacillaceae
: バシラス属 Bacillus
: 枯草菌
Bacillus subtilis
学名
Bacillus subtilis var. natto

納豆菌

納豆菌(なっとうきん、学名: Bacillus subtilis var. natto)は、枯草菌の一種である。に多く生息し、日本産の稲の藁1本に、ほぼ1000万個の納豆菌が芽胞の状態で付着している[1]

研究[編集]

納豆菌の発見[編集]

最初に研究を行ったのは、1894年の矢部規矩治[2]とされ 、桿菌1種と球菌3種を発見したが納豆菌の発見までには至っていなかった[3]。その後、1902年に須田ら[4]Bacillus subtilis属菌であるところまで解明したが須田らも発見に至らなかった。

その後、1906年に沢村真(澤村眞)が、納豆菌としてBacillus natto Sawamura を分離した[5]。更に、半澤洵が研究を重ね純粋培養法と衛生的で安定した納豆の製造方法を確立した[6]

菌産生物[編集]

代表的な産生物質は、ナットウキナーゼ[7][8]ビタミンK2[9]、アミノ酸類(ポリγ-グルタミン酸[9]

大豆煮汁廃液[10]、やおからを原料に生分解性プラスチックであるポリγ-グルタミン酸を製造する研究が進められている[11]が、商業レベルでの実用化には至っていない。

栄養素の合成[編集]

納豆菌はビタミンK2を生成する[9][12]。可食部100g中に含まれるビタミンKは、茹で大豆が7μgなのに対し、納豆は600μgである。[13]

農業分野への応用[編集]

納豆菌と同じBacillus属に属する B. subtilis[14]B. thuringiensis生物農薬としての研究が進んでいることから、食用に利用されている納豆菌が生物農薬として利用可能かどうかの研究が行われて[15]、「イチゴの灰色かび病」[15]、「キュウリ褐斑病」[16]、「ジャガイモそうか病」[17]などで有効であるとする報告が行われている。

抗菌作用[編集]

抗生物質が見出される以前は、赤痢[18]腸チフス[19]病原性大腸菌などの増殖を抑制する[5]作用があることから、腹痛や下痢の治療に用いられていた事がある[19]。この抗菌作用はジピコリン酸による 物であることが報告されている[20]

その他[編集]

納豆菌が麹米繁殖すると、スベリ麹と呼ばれるヌルヌルした納豆のようなになるので、杜氏は仕込みの時期に納豆は食さない[21][22]。また、納豆菌には虫歯の原因となるストレプトコッカス・ミュータンス歯周病の原因となる菌の働きを抑制する効果があるとの報告がある[23][24]

脚注[編集]

  1. ^ 納豆百科事典(全国納豆協同組合連合会)
  2. ^ 矢部規矩治、納豆ノ研究 東京化學會誌 Vol.15 (1894) P.196-205, doi:10.1246/nikkashi1880.15.196
  3. ^ 井上憲政、納豆並納豆菌に關する研究文献集 栄養学雑誌 Vol.4 (1944) No.3 P224-233, doi:10.5264/eiyogakuzashi.4.224
  4. ^ 須田勝三郎、米城善右衛門、納豆ノ微生物ニ付テ(臨時大會演説) 藥學雜誌 Vol.1902 (1902) No.242 P.321-326, doi:10.1248/yakushi1881.1902.242_321
  5. ^ a b 納豆菌 日本ナットキナーゼ協会
  6. ^ 堀田国元、佐々木博、近代納豆の幕開けと応用菌学 化学と生物 Vol.49 (2011) No.1 P.57-62, doi:10.1271/kagakutoseibutsu.49.57
  7. ^ 須見洋行、納豆キナーゼと線溶系 化学と生物 Vol.29 (1991) No.2 P.119-123, doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.29.119
  8. ^ 須見洋行、大杉忠則、内藤佐和 ほか、納豆菌が持つ特殊酵素「ナットウキナーゼ」: その力価と特長 日本醸造協会誌 Vol.106 (2011) No.1 p.28-32, doi:10.6013/jbrewsocjapan.106.28
  9. ^ a b c 須見洋行、浅野倫和、納豆菌の大麦発酵によるナットウキナーゼ, ビタミンK2, およびアミノ酸類の生産 日本家政学会誌 Vol.52 (2001) No.10 P.937-942, doi:10.11428/jhej1987.52.937
  10. ^ 村上恭子、白石淳、大豆煮汁廃液を用いたポリ-γ-グルタミン酸の生産 福岡女子大学人間環境学部紀要 29, 63-66, 1998-02-25, NAID 110000485989
  11. ^ 鈴木秀之、渡邉美子、「おからを原料とした納豆菌による生分解性プラスチック素材:ポリγ-グルタミン酸の製造法の開発」 大豆たん白質研究(2010) 13巻 31号
  12. ^ 納豆菌による微量生理活性物質の生産」、『愛知県産業技術研究所研究報告』第2号、2003年12月、 132-133頁、 NAID 80016376264
  13. ^ 日本食品標準成分表2015年版(七訂)について 文部科学省
  14. ^ 微生物殺虫剤(BT剤)の改良と作用メカニズム Microbes and environments. Vol.14 (1999) No.4 P.245-252, doi:10.1264/jsme2.14.245
  15. ^ a b 橋本俊祐、河村郁恵、中島雅己 ほか、納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)によるイチゴの灰色かび病に対する抑制効果 日本植物病理学会報 Vol.78 (2012) No.2 p.104-107, doi:10.3186/jjphytopath.78.104
  16. ^ 橋本俊祐・中島雅己・阿久津克己(2010a). 納豆菌(Bacillus subtilis)によるイチゴ炭疽病とキュウリ褐斑病に対する抑制効果.日植病報 76: 218.(講要)
  17. ^ 仲川晃生、井上康宏、越智直 ほか、納豆調製液によるジャガイモそうか病の種いも伝染防止効果 関東東山病害虫研究会報 Vol.2014 (2014) No.61 p.31-34, doi:10.11337/ktpps.2014.31
  18. ^ 河村一、納豆菌ノ赤痢菌ニ對スル拮抗作用ニ就テ 日本傳染病學會雜誌 Vol.10 (1935-1936) No.9 P.948-955, doi:10.11552/kansenshogakuzasshi1926.10.948
  19. ^ a b 櫻田穆、「チフス」の納豆菌療法の意義 日本傳染病學會雜誌 Vol. 11 (1936-1937) No. 7 P 755-761,doi:10.11552/kansenshogakuzasshi1926.11.755
  20. ^ 須見洋行、大杉忠則、納豆および納豆菌中の抗菌成分ジピコリン酸 日本農芸化学会誌 Vol.73 (1999) No.12 P.1289-1291, doi:10.1271/nogeikagaku1924.73.1289
  21. ^ 酒蔵と納豆
  22. ^ 納豆菌のみならず他にも様々な雑菌が酒に悪影響を与える。
  23. ^ 螺良修一 (2011), “歯周病にも効果あり (2011年 減農薬大特集 納豆菌で減農薬)--(人間の体にもいい)”, 現代農業 90 (6): 118-120 
  24. ^ 納豆粘質によるミュータンス菌抑制効果, http://www.j-tokkyo.com/2007/A23L/JP2007-117064.shtml 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]