天然ガス自動車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。誤字ばすたぁ (会話 | 投稿記録) による 2012年4月30日 (月) 01:32個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎概説)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

天然ガス自動車(てんねんガスじどうしゃ、英語: natural gas car)は、天然ガス燃料とするエンジンを搭載した自動車で、天然ガス式輸送機器(Natural Gas Vehicle、略称:NGV)の一種。CNG(compressed natural gas)自動車とも呼ばれる。

概説

エコステーション(東邦ガス

ディーゼルエンジンを搭載した自動車より排気ガス中の有害物質(黒煙NOxSOxなど)が大幅に少ないということから、環境対策として自動車燃料に使われ広まりつつある。しかし、圧縮天然ガス利用の場合は燃料が気体であるため、貯蔵性・運搬性に劣るのが弱点である。天然ガス自動車のエンジンはディーゼルエンジンベース(バス・トラックに搭載)、ガソリンエンジンベース(バンなどに搭載)の双方がある。

ディーゼル車と比較した天然ガス自動車の排出量の比較は以下の通り[1]

  • 窒素酸化物…60~70%低減
  • 二酸化炭素…20~30%低減
  • 硫黄酸化物…100%低減
  • 黒煙…100%低減
  • (参考)バス車両の室内騒音量…5~6%低減
  • (参考)バス車両の価格…1台2,407万円(ディーゼル車は1,415万円)
  • (参考)バス車両の燃費…1kmあたり41円(ディーゼル車は1kmあたり17円)

天然ガスは発熱量あたりのCO2排出量が化石燃料の中で最も低く温暖化対策としても重要視されている。

一方で天然ガス供給・車両のいずれも初期導入のコストが大きく、ガススタンド(LPGのスタンドとは異なる)の拡大とベース車両の1.5から2倍程度にもなる車両本体価格の低減が普及の為の課題となっている。これは、将来排出ガス中の有害物質が天然ガス自動車に遜色ないレベルのディーゼルエンジンが開発された場合、導入側にとってはその時期の天然ガス自動車だけが特殊な車両としての位置づけとなってしまい、投資額に見合わないものになってしまう可能性があるためである。

現実に、オランダの商用車メーカーDAFでは、1980年頃に政府からの補助金を得た上で、当時のディーゼルエンジンより排出ガス中の有害物質が大幅に少ないエンジンを開発した。オランダ政府も圧縮天然ガスバス普及のために補助金交付の制度を制定したが、少数台数の導入しかされなかったという。これは初期導入・維持コスト・走行距離などにおいて、ディーゼルエンジンが優れていたためであるとみられている[2]

その一方、圧縮天然ガス自動車においては、燃料が気体である事から液体燃料よりも重量は軽く、燃料タンクを樹脂製にすることでタンク自体の軽量化も行なうことが可能である。このことから、床下機器の配置に工夫を要するバス車両の低床化(特にノンステップバス)においては、圧縮天然ガスバスの場合は燃料タンクを屋根上に搭載し、床下から燃料タンクを廃することで解決が容易という利点がある。

しかし、トヨタ・プリウスや、日野・ブルーリボンシティハイブリッドといった、特別な設備を必要としないハイブリッドカーの普及が進んでいることもあり、CNG仕様車は次第に廃止される傾向が目立っている。

日本での普及台数は2011年3月末現在で40429台となっている。年々台数は増えているものの規模自体はまだまだ小さく、スタンド数に関しては伸び悩んでいる。 世界での普及台数は2010年3月末現在で1320万台とみられ、前年比で約200万台増と大きく伸びている。シェールガスの開発などもあり、今後も一定の伸びが予想されている。

天然ガス仕様車がある車種

クラウンセダンCNG
ADバンCNG(さいたま市
CNGバス(富士急山梨バス
CNGノンステップバス(東京都交通局
CNGボンネットバス(神戸市交通局
いすゞ・エルフ佐川急便仕様)

トヨタ自動車

日産自動車

UDトラックス(旧:日産ディーゼル)

本田技研工業

三菱自動車工業

三菱ふそうトラック・バス

ダイハツ工業

富士重工業

いすゞ自動車

日野自動車

スズキ

マツダ

トヨタL&F(豊田自動織機)

  • トヨタフォークリフト

三菱重工業

  • 三菱フォークリフト

コマツユーティリティ

  • コマツフォークリフト

住友ナコ マテリアル ハンドリング

  • 住友フォークリフト

TCM

  • TCMフォークリフト

関東機械センター

フラットフィールド

新車の直接注文は不可。ディーラ経由で新車購入時にCNG車への改造を同社に依頼する。なお、現在使用中のディーゼルエンジン車を改造する場合には、直接の依頼も可能。

以下は、同社にて過去に新車の改造実績のある車種リスト。既にメーカにて販売中止となっている車種も含まれている。

その他の天然ガス自動車

1970年10月23日に1014.513 km/hの世界記録を樹立したブルー・フレーム

一般的には天然ガスを往復式内燃機関で燃焼する事によって走行するが、マイクロガスタービンで発電したり改質して燃料電池で発電したりする燃料電池自動車も開発が進められる。また、1970年10月23日に1014.513 km/hの世界記録を樹立したブルー・フレーム液化天然ガスを燃料としていた。

  • ミャンマーカンボジアなどでは日本や韓国などの中古車(自家用車、トラック、バス(観光or貸切バス、路線バス、送迎バスetc)の燃料を一般的なガソリンから天然ガスに交換している。そのためこのグループも天然ガス自動車と同じ扱いとなる。

関連項目

脚注

  1. ^ 富士急行「エバーグリーンシャトル」パンフレット(1995年)
  2. ^ バスラマ・インターナショナル97号「CNGとディーゼル、どちらがクリーン?」による。