天然ガス自動車

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天然ガス自動車(てんねんガスじどうしゃ、英語: natural gas car)は、天然ガス燃料とするエンジンを搭載した自動車で、天然ガス式輸送機器[1]の一種。通常燃料は圧縮された天然ガスであることからCNG[2]自動車とも呼ばれる。液化天然ガス(LNG)を使用したLNG車も一部普及が始まっている。

概要[編集]

2016年時点、世界全体では2230万台の天然ガス自動車があり、なかでも天然ガス資源が豊富に産出・供給できる地域ではステーションおよび自動車が普及する傾向にあり、イラン中華人民共和国パキスタンアルゼンチンインドタイ王国などでは一国あたり数千箇所のステーションのインフラを持つ[3]

海外のステーションでは天然ガスのカロリー量を調整するため、液体窒素、液化炭酸ガスなどの産業用ガスを付加することで希釈する場合がある。 タイ王国の石油・ガス最大手PTTなどは、国内500箇所のステーションの一部に液化貯槽を持ち再ガス化した炭酸ガスを注入している[4]

タイラヨン県の天然ガスステーション内のタンク

歴史[編集]

天然ガス自動車の特徴[編集]

エコステーション(東邦ガス

ディーゼルエンジンを搭載した自動車より排気ガス中の有害物質(黒煙NOxSOxなど)が大幅に少ないということから、環境対策として自動車燃料に使われ広まりつつある。しかし、圧縮天然ガス利用の場合は燃料が気体であるため、貯蔵性・運搬性に劣るのが弱点である。天然ガス自動車のエンジンはディーゼルエンジンベース(バス・トラックに搭載)、ガソリンエンジンベース(バンなどに搭載)の双方がある。

ディーゼル車と比較した天然ガス自動車の排出量の比較は以下の通り[5]

  • 窒素酸化物…60~70%低減
  • 二酸化炭素…20~30%低減
  • 硫黄酸化物…100%低減
  • 黒煙…100%低減
  • (参考)バス車両の室内騒音量…5~6%低減
  • (参考)バス車両の価格…1台2,407万円(ディーゼル車は1,415万円)
  • (参考)バス車両の燃費…1kmあたり41円(ディーゼル車は1kmあたり17円)

天然ガスは発熱量あたりのCO2排出量が化石燃料の中で最も低く温暖化対策としても重要視されている。

圧縮天然ガス自動車においては、燃料が気体である事から液体燃料よりも重量は軽く、燃料タンクを樹脂製にすることでタンク自体の軽量化も行なうことが可能である[6]。このことから、床下機器の配置に工夫を要するバス車両の低床化(特にノンステップバス)においては、圧縮天然ガスバスの場合は燃料タンクを屋根上に搭載し、床下から燃料タンクを廃することで解決が容易という利点がある。

コストの問題[編集]

天然ガス供給・車両のいずれも初期導入のコストが大きく、ガススタンド(LPGのスタンドとは異なる)の拡大と、ベース車両の1.5から2倍程度にもなる車両本体価格の低減が普及の為の課題となっている。これは、将来的に排出ガス中の有害物質が天然ガス自動車に遜色ないレベルのディーゼルエンジンが開発された場合、導入側にとってはその時期の天然ガス自動車だけが特殊な車両としての位置づけとなってしまい、投資額に見合わないものになってしまう可能性があるためである。

現実に、オランダの商用車メーカーDAFでは、1980年頃に同国政府からの補助金を得た上で、当時のディーゼルエンジンより排出ガス中の有害物質が大幅に少ないエンジンを開発した。オランダ政府も圧縮天然ガスバス普及のために補助金交付の制度を制定したが、当時少数台数の導入しかされなかったという。これは初期導入・維持コスト・走行距離などにおいて、ディーゼルエンジンが優れていたためであるとみられている[7]

シンガポールでは2000年代に導入の試みが見られたが、ガソリンと比較して天然ガスの燃料価格の魅力が出せなかったこと、ステーションのインフラ整備が十分でなかったことなどから、同国政府からの補助金も途絶えた。

しかし、米国におけるシェールガスの開発などによる燃料価格の下落などもあり今後も一定の伸びが予想されている。

次世代自動車としての位置づけ[編集]

世界での普及台数は2010年3月末現在で1320万台とみられ、前年比で約200万台増と大きく伸びている。

日本では、トヨタ・プリウスや、日野・ブルーリボンシティハイブリッドといった、特別なエネルギー供給設備を必要としないハイブリッドカーの普及が進んでいることもあり、CNG仕様車は次第に廃止される傾向が目立っている。日本での普及台数は、2011年3月末現在で40429台となっている。年々台数は増えているものの規模自体はまだまだ小さく、スタンド数に関しては伸び悩んでいる。

シェールガスの登場により天然ガス自動車の普及が進むとする予測もある。しかし、シェールガスの精製分離過程で水素エネルギーを取り出すことができることも分かっており、燃料電池車が次世代自動車として普及するとみる予測もある[8]

天然ガス仕様車がある車種[編集]

クラウンセダンCNG
ADバンCNG(さいたま市
CNGバス(富士急山梨バス
CNGノンステップバス(東京都交通局
CNGボンネットバス(神戸市交通局
トヨタ自動車
日産自動車
UDトラックス(旧 日産ディーゼル)
本田技研工業
三菱自動車工業
三菱ふそうトラック・バス
ダイハツ工業
SUBARU(旧 富士重工業)
いすゞ自動車
日野自動車
スズキ
マツダ
トヨタL&F(豊田自動織機)
  • トヨタフォークリフト
三菱ロジスネクスト
  • 三菱エンジンフォークリフト
  • TCMフォークリフト
コマツユーティリティ
  • コマツフォークリフト
住友ナコ フォークリフト
  • 住友フォークリフト
関東機械センター

天然ガス自動車化改造[編集]

既存の自動車を改造(レトロフィット)によって天然ガス自動車に転換することもできる。ガソリン車の場合はガソリンエンジンが構造上ほぼ同じである火花点火内燃機関であるためタンクの増設もしくは交換、燃料供給装置の変更、点火時期の調整程度で改造可能である。一方、ディーゼル車はディーゼルエンジンが構造上異なる圧縮着火内燃機関であるため着火機構の変更(圧縮着火→火花点火)、圧縮比の変更、点火プラグ新設、燃焼室形状の変更が必要になってくる。それによりシリンダーヘッドピストンコンロッドなどを新たに設計し直し、事実上シリンダーブロックのみを利用するような形態となる。

石油系燃料に比べ炭素含有量が少ないため、どちらのエンジンからの改造でもバルブ周りの材質を変更し、耐摩耗性を確保する必要がある[9]

同じガス燃料を用いることからメーカーによっては新造するLPG自動車とコンポーネントを共有している車種もある。燃料に関する特性に合わせ調整を行いタンクを換装もしくは流用すれば、LPG自動車とは相互に転換することが理論上可能である。 なお、改造による変化などについては、ガソリン車改造LPG車及びディーゼル車改造LPG車も参考にされたい。

株式会社フラットフィールド では、既存の自動車の天然ガス自動車化を行っている。新車の直接注文は不可。ディーラ経由で新車購入時にCNG車への改造を同社に依頼する。なお、現在使用中のディーゼルエンジン車を改造する場合には、直接の依頼も可能。

以下は、同社にて過去に新車の改造実績のある車種リスト。既にメーカにて販売中止となっている車種も含まれている。

その他の天然ガス自動車[編集]

一般的には天然ガスを往復式内燃機関で燃焼する事によって走行するが、マイクロガスタービンで発電したり改質して燃料電池で発電したりする燃料電池自動車も開発が進められる[要出典]。また、1970年に1014.513 km/hの速度記録を樹立したブルー・フレームは、液化天然ガスを燃料とするロケットエンジンで推進していた。

ミャンマーカンボジアなどでは、日本や韓国などの中古車(自家用車、トラック、バス等)を一般的なガソリン仕様や軽油仕様から天然ガスに交換している。そのためこのグループも天然ガス自動車と同じ扱いとなる。

関連項目[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ : natural gas vehicle、略称:NGV
  2. ^ : compressed natural gas
  3. ^ http://www.gas.or.jp/ngvj/spread/world_spread.html
  4. ^ http://www.dcs-digital.com/setweb/downloads/2558q2/20150917_scn.pdf
  5. ^ 富士急行「エバーグリーンシャトル」パンフレット(1995年)
  6. ^ CNG燃料容器(タンク)の構造 (HONDA)
  7. ^ バスラマ・インターナショナル97号「CNGとディーゼル、どちらがクリーン?」による。
  8. ^ 中原圭介『シェール革命後の世界勢力図』ダイヤモンド社、2013年、224頁~
  9. ^ ガス燃料エンジン用バルブシート材の開発 - 本田技研工業 > 論文サイト(更新日不明/2017年4月7日閲覧)