いすゞ・エルガミオ

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いすゞ・エルガミオ
9m ワンステップ

KeioBusHigashi L10052.jpg
KeioBusHigashi L10052 rear.jpg
KK-LR333J1 京王バス東

エルガミオ(ERGA Mio)は、ジェイ・バスが製造し、いすゞ自動車が販売している路線用中型バス。開発はいす自動車が行っているが、いすゞ自動車と日野自動車のバス製造事業統合により、現在は日野・レインボーIIとの統合車種となっている。

エルガミオの車名の由来は次の通り。エルガとはラテン語で「~に向かって」と言う意味を持ち、新たな時代に向かって走り始めた路線バスをイメージして名付け[1]、ミオとは英語のminiとフランス語のmiocheの造語で、大型に対して一回り小さいことを示す[1]

概要[編集]

登場時[編集]

大型路線バス・エルガ
エルガミオと部品が共通化されている。

1999年6月23日日本の長期規制(平成10年排出ガス規制)に合わせジャーニーK(LR)をフルモデルチェンジして発売された。外観の変更点としては、全体的に四角く、コーナーに丸みを帯びたボディーとなったほか、視認性向上のためにヘッドランプが変更され、ジャーニーKの横置きから縦置き4灯式(左右2段ずつ)になった[2]。翌年にフルモデルチェンジされた大型路線バスエルガも同様のデザインであるが、これは部品共通化に伴うコスト削減を視野に入れたものである。

フルモデルチェンジと同時にラインナップに変更が加えられた。床形状やホイールベースとしては、「ノンステップバス」・「CNGノンステップバス」・コミュニティーバスへの対応を前提とした「7m級ワンステップバス」(ホイールベース (WB) 3.4m)が追加された一方、ツーステップバスは観光用・自家用が別の車種「ガーラミオ」になったため、路線用車両がオプション設定されるのみとなった(2004年8月で消滅)。

これらのラインナップの変化により、床形状はノンステップ・ワンステップ・ツーステップ(路線仕様)の3種類、ホイールベースは4.4m(J尺)・3.75m(F尺)・3.4m(E尺)の3種類となった。なお、ノンステップバスに関しては、その当時はいろいろな構造の車両が入り乱れていたが、エルガミオは中扉以降を段上げする構造をとっている。

サスペンションにも変更が加えられ、乗り心地が良くニーリングによって停留所で車高を調整して乗降が楽に出来る、エアサスペンションが標準仕様化された。それまで、ジャーニーK時代にはエアサスペンションはノンステップ車のみの採用であったが、モデルチェンジを機にワンステップ車にも採用が拡大された。これにより、リーフサスペンション車はオプション設定とされた(2002年に廃止)。

環境の面では、アイドリングストップ装置を国内の中型路線バスで初めて採用した。トランスミッションはディーゼルエンジン車はワンステップバス・ノンステップバスともにマニュアル車(ACT車)とオートマチック車(AT車)がある。CNG車に関しては5速MT車であったが、PDG-LR系からは5速AT車となっている。

2004年頃から日本のバス車両メーカー間でのOEM供給が進み、2010年西日本車体工業の解散と日産ディーゼル(現UDトラックス)のバス部門撤退により、日産とOEM供給提携が行われていた三菱ふそうトラック・バスが独自に中型車(エアロミディ)製造を復活させるまでの約1年間は、国内バスメーカーで製造される唯一の中型バスモデルであった。また、エアロミディ製造再開後も、ワンステップ以上の中型バス車両においては、エルガミオによる事実上の市場独占状態が続いている。

登場後からの大きな変更点[編集]

日野へ供給されるレインボーII
ほぼ同一の車種である。

登場後は一転して、ラインナップの減少やコスト削減を目的とした仕様の統一が目立つ。2001年に全長7m級・WB3.4mのワンステップバスが早くも生産中止となったほか、2002年にはメーカー標準仕様・「ERGA-VP」の設定によりリーフサスペンション車が、2004年にはWB3.8m(F尺)車が、2005年8月にはツーステップバスがそれぞれ生産中止となった。これらによりラインナップが整理され、WB4.4m(J尺)のノンステップバス・ワンステップバス・CNGノンステップバスのみになり、現在に至る。

なお「ERGA-VP」は、どの事業者でも使いやすい仕様にし、部品を共通化してコスト削減を図る取り組みで、現在に至るまで採用されている。名前のように、大型路線バス・エルガでも同様の施策が施されている。

その一方、いすゞ自動車と日野自動車のバス製造事業統合に伴い、製造会社がいすゞバス製造からいすゞ・日野合同資本のジェイ・バスへと移り、現在は一部の例外を除きジェイ・バス宇都宮事業所(旧いすゞバス製造)にて製造が行われている。また、いすゞ・日野間では車種の統合が行われ、エルガミオは日野に「レインボーII」として供給されている。初期(PA-KR系)はいすゞから日野へのOEMという扱いだったが、PDG-KR系からは統合車種という位置づけになっている。

シリーズの変遷[編集]

この節では、排出ガス規制ごとに車種の変遷を説明する。また、CNG車と7mワンステップバスは別記する。

初代[編集]

KK-LR系[編集]

エルガミオ ノンステップ
TachikawaBus J359.jpgTachikawaBus J359 rear.jpg
KK-LR233J1改 立川バス

1999年6月23日に発売開始された、平成10年排出ガス規制(長期規制)適合車。登場時にはワンステップバス・ツーステップバス(オプション設定/主に初代ガーラミオで展開)のみであったが、8月にノンステップバスを発売。 エンジンは6HH1型 (225PS) を搭載している。変速機は直結5速マニュアルシフト(ACT)が標準設定、5速ATもオプション設定されていた。

ラインナップはディーゼル車がWB4.4m(J尺)、3.75m(F尺)がエアサス、リーフサス双方で発売されたほか、後述のエアサス7mバス(E尺)も発売された。

なお、前述のようにWB3.4mのE尺は2001年に、リーフサスペンション車は2002年に、WB3.8mのF尺は2004年に生産中止になった。また、ツーステップバスもこのモデルで終了となった。

詳しい型式ラインナップは以下のとおり。

  WB3.8m WB4.4m
エアサスワンステップ
エアサスツーステップ
KK-LR233F1 KK-LR233J1
リーフサスワンステップ
リーフサスツーステップ
KK-LR333F1 KK-LR333J1
エアサスノンステップ KK-LR233F1改 KK-LR233J1改


PA-LR234J1[編集]

エルガミオ ノンステップ
PA-LR234J1 IZUHAKONE-27411 front.jpgPA-LR234J1 IZUHAKONE-27411 rear.jpg
PA-LR234J1 伊豆箱根バス

2004年8月24日に発売開始された、平成15年・16年排出ガス規制(新短期規制)適合車。エンジンは6HK1-TCN型 (177kW/240PS) を搭載し、超低PM排出認定車(☆☆☆適合)として認定を受けた。変速機は、OD6速マニュアルシフト(ACT)を標準とし、OD5速ATがオプション扱いとされた。 またノンステップバスに関しては、国土交通省が推進する「標準仕様ノンステップバス」に適合し、前扉から中扉までのみがノンステップのエルガtype-A同様の構造となった。

相次ぐ生産中止により、ラインナップはWB4.4m(J尺)・エアサスのノンステップバス・ワンステップバス・CNGノンステップバスのみに整理され、後述のPDG-LR234J2以降もほぼ同様のラインナップとなっている。

なお前述のように、いすゞ自動車と日野自動車のバス事業統合により、ワンステップバスとCNGノンステップバスは、日野自動車へ「レインボーII」としてOEM供給された(型式はいずれもPA-KR234J1改)。エルガミオとは外観がほぼ同一であり、判別は極めて困難である。ノンステップバスに関しては日野側にも同じサイズの車種(日野レインボーHR)があり、OEM供給が行われなかった。

型式は以下のとおり。

WB4.4m
ノンステップ PA-LR234J1
ワンステップ PA-LR234J1改


PDG-LR234J2[編集]

エルガミオ ノンステップ
PDG-LR234J2 Kanachu Ya0107 front.jpgPDG-LR234J2 Kanachu Ya0107 rear.jpg
PDG-LR234J2 神奈川中央交通

2007年8月7日に発売開始された、平成17年排出ガス規制(新長期規制)適合車。基準に対してPM10%減を達成している。エンジンは前述のPA-LR234J1と同じく6HK1-TCN型 (177kW/240PS) を搭載。変速機は、OD6速マニュアルシフト(ACT)を標準とし、OD5速AT(アイシン精機[3])がオプション扱いとされた。

ヘッドライトが2灯式になったレインボーII(左:PDG-KR234J2)。エルガミオ(右:PDG-LR234J2)との識別が容易になった。(西東京バス) ヘッドライトが2灯式になったレインボーII(左:PDG-KR234J2)。エルガミオ(右:PDG-LR234J2)との識別が容易になった。(西東京バス)
ヘッドライトが2灯式になったレインボーII(左:PDG-KR234J2)。エルガミオ(右:PDG-LR234J2)との識別が容易になった。(西東京バス
エルガミオの運転席 エルガミオの室内
エルガミオの運転席
エルガミオの室内

この代から、いすゞ・エルガミオと日野・レインボーIIは統合車種という位置づけになり、新たにノンステップバスが日野に供給されることになった一方、CNG車の供給が中止となった。これに伴い日野・レインボーHRの同サイズの車種の製造が中止になり、二社で重複していたラインナップが整理された。
なお、レインボーII(型式:PDG-KR234J2)側は、この代からヘッドライトがブルーリボンIIと同様に角形2灯化されたことで、外観上においてエルガミオとの識別が容易になった。

型式はノンステップ・ワンステップ共にPDG-LR234J2である。


SKG-/SDG-LR290J1[編集]

エルガミオ ノンステップ
KeihinKyukoBus C1254.jpgKeihinKyukoBus C1254 rear.jpg
SKG-LR290J1 京浜急行バス

約2ケ月の空白期間を経て、2011年(平成23年)11月21日に発売された[4]平成22年排出ガス規制(ポスト新長期排出ガス規制)適合車[4]。引き続き、日野自動車にも統合車種「レインボーII」(型式:SKG-またはSDG-KR290J1)として供給される。

本型式・(SDG-LR290J1)では、搭載エンジンを直列4気筒の4HK1-TCH型 (177kW/240PS) としてダウンサイジングを追求することにより、軽量化と環境性能を両立させた[4]ほか、ABSが全車に標準装備とされた[4]。 また、ノンステップ車の座席配置には中扉から後方の2人掛け座席の大半を1人掛けとして、立席スペースを拡大させた「ラッシュ型」が新たに設定された。

2012年(平成24年)7月2日からは、新ワンマンバス構造要件(中扉開時の動力伝達カット装置を標準装備、など)の適合や、MT車に限り新型のアイドリングストップ&スタートシステム (ISS) を装備して平成27年重量車燃費基準に適合させたマイナーチェンジ車、SKG-LR290J1が追加発売される[5]

型式は以下の通りで、ノンステップ・ワンステップで共通。MT車は型式が2つ記載されているが、上段が発売当初の平成27年重量車燃費基準未適合車とISS未搭載車、下段がマイナーチェンジに伴う同基準適合車の型式である。

WB4.4m
MT車 SDG-LR290J1
SKG-LR290J1
AT車 SDG-LR290J1


エルガミオ"7mBUS"[編集]

エルガミオ"7mBUS"
Keiseibus-irisloop-20061015.jpgKeiseibus-irisloop-rear-20061015.jpg
KK-LR233E1 京成バス

全長7m級のワンステップバスは、1996年日産ディーゼル・RNが登場し、1998年には三菱ふそう・エアロミディMJ路線仕様にワンステップバスを追加、いすゞにおいてもエルガミオシリーズの一員として、ジャーニーQ路線仕様の生産中止以来、久々にこのサイズの路線仕様が復活した。

エンジンは、8.2ℓの6HH1-S型 (225PS) を最後部に直立横置きで搭載し、アングルドライブを採用するのは前述の2車種と共通だが、クラス初の4バッグエアサスペンション(大型トラック・ギガマックスと共通)をリアに採用し、ニーリング機構を標準装備した。ステップ段差はバリアフリー住宅と同等の20cm等間隔に設定され、車椅子利用者のためのスロープ板も装着できた。ホイールベースは3.4mで、型式はKK-LR233E1。2001年に生産中止となった。

2代目[編集]

SKG-LR290J2[編集]

エルガミオ
Miyako-bus-2620.jpgMiyakoh-bus-2620r.jpg
SKG-LR290J2 ミヤコーバス

2016年4月5日に17年ぶりにフルモデルチェンジし、発売[6][7]。搭載エンジンは2ステージターボ付き直列4気筒の4HK1-TCN(154kw/210ps)にすることによって、平成27年度燃費基準を達成するとともに、ポスト新長期排出ガス規制に適合。前年8月にデビューした新型エルガ(QKG/QRG-LV290N1/Q1)と同様にAMT(自動クラッチマニュアルトランスミッション)を採用した。ちなみにこちらはエルガと違い、トルコン式ATの設定はない。

6月24日、一畑バスに第1号車が導入された。その後も山交バス立川バスを皮切りに各地への導入が進んでいる。

2KG-LR290J3(現行車種)[編集]

2017年8月29日に発売予定。排ガス後処理装置に尿素SCRシステムの採用により、平成28年排出ガス規制(ポスト新長期排出ガス規制適合)適合車。エンジンはVGRシングルターボ付き4HK1-TCS(154kw/210ps)を搭載。シフトレバーの位置と形状変更により、足元スペースが拡大されてる。ヘッドランプは長期間使用可能なLED前照灯標準化し、HID前照灯をオプション扱いとした。

エルガミオCNG[編集]

排気ガス規制によってエンジンは異なっている。CNGタンクは屋根上に3本搭載され航続可能距離は約200kmとされている。

本節ではCNGバスについて特記することとし、ベース車(ディーゼル車)との共通仕様についてはベース車節を参照のこと。

KK-LR系[編集]

同年10月にCNGノンステップバスが発売された。エンジンは6HA1型140kw(190PS)を搭載している。 5速MTのみの設定。また、ノンステップバスはエアサスだがワンステップ・ツーステップはリーフサスのみ。

  WB3.8m WB4.4m
エアサスノンステップ KK-LR233F1改 KK-LR233J1改
リーフサスワンステップ
リーフサスツーステップ
KK-LR333F1改 KK-LR333J1改

PA-LR234J1改[編集]

2004年8月24日に発売開始された。駆動系の大きな変更はない。 ノンステップWB4.4mのみの設定になり型式はPA-LR234J1改となった。

PDG-LR234J2改(現行車種)[編集]

2007年11月30日に発売が開始された。エンジンは6HK1型をベースにCNG用に新開発した6HF1-TCNエンジン(162kW/220PS)を搭載、5速AT車となっている。この車種からMPI(マルチポイントインジェクションシステム)を搭載、またPMをほとんど排出せず、国土交通省の測定では、PMが検出されなかった[8]。 型式はPDG-LR234J2改となった。

西日本車体工業架装車[編集]

ほとんどの車両が純正であり、いすゞバス製造もしくはジェイ・バスで製造された純正ボディーを架装しているが、一部西日本車体工業で架装した車両が存在する。これらは西日本車体工業を好む一部の事業者に納入されている。ジェイ・バスに製造が移されてからしばらくはいすゞ自動車側が製造を認めなかったが、2006年ごろから製造が再開され、西日本車体工業が解散する2010年まで製造された。

これらの車種のうち、2003年以降の一覧は西日本車体工業#2003年4月以降に日産ディーゼル以外にボディ架装を行った例を参照のこと。

教習車[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ a b “いすゞ 中型バスをフルモデルチェンジ” (プレスリリース), いすゞ自動車, (1999年6月23日), http://www.isuzu.co.jp/press/backnumber/1999/gala.html 2012年9月11日閲覧。 
  2. ^ 縦置き4灯式は1980年代にもハイデッカーIV型観光バスで採用していたことがある。
  3. ^ 大阪市交通局情報誌「大阪トラフィック・ログ」のバスの車種解説より
  4. ^ a b c d “いすゞ 中型路線バス『エルガミオ』をポスト新長期排出ガス規制に適合させ発売” (プレスリリース), いすゞ自動車, (2011年11月21日), http://www.isuzu.co.jp/press/2011/11_21erg.html 2011年11月22日閲覧。 
  5. ^ “いすゞ、バスシリーズを改良し発売” (プレスリリース), いすゞ自動車, (2012年6月15日), http://www.isuzu.co.jp/press/2012/6_15bus.html 2011年6月15日閲覧。 
  6. ^ “いすゞ、中型路線バス「エルガミオ」をフルモデルチェンジ” (プレスリリース), いすゞ自動車, (2016年4月5日), http://www.isuzu.co.jp/press/2016/4_5erga.html 2016年4月5日閲覧。 
  7. ^ “いすゞ「エルガミオ」モデルチェンジ - 広い室内と高いバリアフリー性実現”. マイナビニュース. (2016年4月5日). http://news.mynavi.jp/news/2016/04/05/366/ 2016年4月5日閲覧。 
  8. ^ 国土交通省自動車交通局・認定低減性能向上改造自動車の低排出ガス車認定型式一覧表(PDF)

参考文献[編集]

  • ぽると出版 「年鑑バスラマ 2006 → 2007」
  • ぽると出版 「年鑑バスラマ 2007 → 2008」

関連項目[編集]

外部リンク[編集]