燃料電池自動車

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燃料電池自動車(ねんりょうでんちじどうしゃ)は、搭載した燃料電池発電し、電動機動力で走る電気自動車を指す。燃料電池に水素メタノールなどを使用する。燃料電池の乗り物を総称してFCVFuel Cell Vehicle)といい[注釈 1]、燃料電池自動車がFCVとして言及される場合が多い。

分類と規格[編集]

燃料電池自動車は燃料電池と規格とにより分類され[1]、他には定置型燃料電池の用途や可搬型燃料電池の用途の規格がある。

車載用燃料電池の詳細[編集]

すべての燃料電池は一般的な電池と同様に電解質正極陰極の3つの部品で作られている[2]。燃料電池の機能は既存の蓄電池と似ているが充電の代わりに燃料を補給し、酸素は大気中から調達される[3]。水素を燃料とするものとして、固体高分子形(PEFC)ダイレクトメタノール形、リン酸形、炭酸溶融塩形固体酸化物形(SOFC)、再生型など、異なる種類の燃料電池がある[4]。車載用燃料電池には一般的に水素を80 - 90 ℃で反応させるPEFCが用いられるが、低温でも高い活性を持つ触媒の利用が求められることから白金などの希少触媒を使用する必要があり車載用燃料電池が高価なものとなってしまっている。白金の代わりにカーボンアロイを用いる技術や、白金そのものの凝集を抑えて使用量を減らす技術、トラックやバスでの利用を想定して700 - 800 ℃で反応させるSOFCの車載化などが現在検討されている。

2009年時点において、大半の自動車はガソリンを使用しており、アメリカ国内で排出される一酸化炭素の60%以上と温室効果ガスの約20%を排出している[5]。一方、燃料電池車は走行時にはCO2やNOxを出さないが、燃料の水素は自然界には存在せず、再生可能エネルギーによって生産された場合以外は水素の製造工程において汚染物質を発生する[6]。しかし電力から生産する水素の理論効率は電気自動車に比べて30%程度と低く、アメリカ議会では早い段階で水素燃料電池自動車の存在価値のなさが示唆されていた。2016年にテスラCEOイーロン・マスク氏は「水素は馬鹿電池だ」と揶揄したくらいである[7]。日産自動車でも早い段階で開発を凍結している。

水素燃料電池自動車[編集]

水素燃料を用いる燃料電池自動車は、充填した水素と酸素化学反応させて発電し、その電力で電動機を動かし走行する自動車。

2000年代から公道上での使用が始まった。乗用車で2022年現在市販されている車種は、トヨタ・MIRAI、、ヒュンダイ・ネクソの2車種である。商用車においてはトヨタ・FCバスなどバス車両として納入されている。ホンダ・クラリティ フューエル セルは2021年8月に製造中止。[8]

日本では、購入者に対して1台あたり200 - 300万円の補助金が支給される見通しである[9]。自治体では愛知県が補助金を支給することを発表している[10]

歴史[編集]

1959年Harry Ihrigによって出力15kWの水素燃料電池を備えるAllis-Chalmers製のトラクターが始めて製造された[11]

道路を走行できる最初の燃料電池自動車は、1966年昭和41年)にゼネラルモーターズによって製造されたElectrovanだった [12][13][14]。Electrovanは極低温のタンクに充填された液体水素液体酸素を使用して一充填での走行距離が240 kmで最高速度は110 km/hだった。固体高分子形燃料電池ユニオンカーバイト製で定格出力は32 kWで短時間では160 kWの出力で90 kWの三相交流電動機を駆動した。しかし当時は普及にはいたらず、開発は中断した。

日本においては1972年(昭和47年)、工業技術院大阪工業試験所、ダイハツ工業パナソニックの共同により燃料電池自動車の試験が行われた。[15]これは水素を水加ヒドラジンから得る方式で、電気自動車(軽トラック)の荷台に燃料タンクと燃料電池を載せたものだった[16]

2002年10月に本田技研工業(ホンダ)ホンダ・FCXリース販売。

2002年12月にトヨタ自動車トヨタ・FCHVを日本とアメリカで限定リース開始。

2006年11月、BMWが760Li(E66)をベースに開発され、2006年11月のロサンゼルスモーターショーでお披露目、2006年末に100台が限定生産。

2013年2月に現代自動車は、ヒュンダイ・ツーソンでライン生産を開始し、年間1000台の生産を目指すと宣言したが、2015年5月までに生産されたのは韓国国内向けや米国向けなどすべてを含めてもわずか273台、10分の1にも達しなかった[17]。1回の充填での航続距離は約415キロメートルとされている[18]。なお、2014年6月に航続距離を約426キロメートル(約265マイル)に伸ばすことを発表した[19][20]

2014年12月15日、トヨタは日本国内でセダンタイプのトヨタ・MIRAIを発売することを発表した[21]。1回約3分の充填での航続距離は約650キロメートル走行するという。事前受注は日本だけで400台を超えた。

2016年3月10日、ホンダが量産型セダン「ホンダ・クラリティ フューエル セル」を発売した[22]、1充填(3分)あたり航続距離750kmを実現している[23]。ホンダがリースしてきたFCXクラリティより高圧の70MPaの圧縮水素タンクを採用し、トヨタ・MIRAIと共通化を果しており、水素ステーションの設備の共通化の貢献する取り組みとなっている[24]

自動車メーカー各社の間で、燃料電池自動車に対する開発の技術提携の動きも盛んである。2011年9月にルノー日産自動車アライアンス(現在のルノー・日産・三菱アライアンス)とダイムラーが燃料電池自動車開発分野での共同開発に合意した[25]。なお、ルノー日産自動車アライアンスダイムラーとの提携自体は2010年4月に開始されており、提携する技術分野として2011年に燃料電池自動車分野が付け加えられたものである。

2013年1月には、ルノー・日産アライアンスとダイムラーの提携にフォードが加入して拡大した[26]

また同時期の2013年1月には、トヨタとBMWが提携[27]。同年7月にはホンダとゼネラルモーターズ(GM)が提携[28]。2019年にトヨタと北京汽車が提携している[29]

「1980 年代末頃からカナダのベンチャー企業である Ballard Power Systems 社 (Ballard 社)による自動車用 PEFC の研究が注目を浴びるようになり、Benz 社が Ballard 社に資本参加した頃から,FCV が注目を集めるようになった。2002 年 12 月に は,トヨタ自動車と本田技研工業が,内閣府をはじめとする 5 省庁に,限定的ではある が直接水素形 FCV のリース販売を行った。FCV を市販したのはこれが世界で初めてと なる。その後,2003 年 12 月には DaimlerChrysler が,2004 年 3 月には日産自動車が FCV のリース販売を開始している。」[30] デンヨー株式会社とトヨタ自動車株式会社が水素で発電する燃料電池自動車を共同開発している。2020年9月から実証運転を行っている。[31]

モータースポーツ[編集]

グリーンGT H2
グリーンGT LMPH2G

WEC(世界耐久選手権ル・マン24時間を含む)の最高クラスであるLMP1でアウディが燃料電池車を導入する計画があったが[32]、2016年に撤退したことで一度は立ち消えとなった。

アウディ撤退の年にFCVベンチャーのグリーンGTが開発した車両「H2」が、ル・マンの舞台となるサルト・サーキットで一周を走りきった。これを見たWEC運営のACO(フランス西部自動車クラブ)は、2018年にグリーンGTと共同プロジェクト「ミッションH24」を立ち上げ、2024年のル・マンへの燃料電池車クラス導入を目指し、プロトタイプレーシングカーの「LMPH2G」が製作された。このマシンはしばしデモランや、公式セッションでのテスト走行を行った[33]

2020年にはアデス製LMP3車両をベースとする「H24」が登場。[34]。2021年に、コロナ禍の影響で導入計画は2025年へと一年繰り下げられた[35]。2022年ル・マンのデモランでは、最高時速290.8km/hをマークした[36]。グリーンGT以外にも、レッドブル・アドバンスド・テクノロジーズオレカとの共同開発でH24車両を投入することを目指している[37]

ル・マン以外ではEVオフロードレースのエクストリームEが、燃料電池車版の「エクストリームH」の創設計画を明らかにした[38]

なお2022年時点では規模の大小問わずまだ燃料電池車だけのためのレースは存在せず、エコカーレースやラリーヒルクライムなどのタイムアタック系競技のフリークラスにトヨタ・MIRAIでのプライベーターの参戦が数例ある程度に留まっている[39][40]

商用車における展開[編集]

主な車種[編集]

メリットとデメリット[編集]

従来のエンジン車と比較してのメリットは、走行時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)や、大気汚染の原因となる一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)などの有害物質を排出しないゼロエミッション車である点である。ただし水素は主に化石燃料から製造しており、水素ステーションからの二酸化炭素排出はある。

電気自動車と比較してのメリットは、水素ステーションに事前連絡や予約をして水素の圧縮作業を済ませた状態からなら充填が3分程度で済む点。ただし充填一連の作業は約30分掛かる。新型MIRAIの航続距離は国際基準WLTPで約650kmだが、車体価格がより安価なテスラモデル3ロングレンジWLTPは614kmと差はなくなりつつある。

実際に水素燃料電池自動車のメリットは少なく、多くのデメリットを持っている。これこそが普及が遅い理由であり下記に理由を示す。

水素燃料電池自動車の課題[編集]

特殊技術やレアメタルが必要で車両価格が高額であり(トヨタ・MIRAIの場合、710万~860万円[41])、まだ走行車両が少ないため水素ステーションの数も少なく営業時間も短い[42]。また、水素の製造・輸送に多額のコストがかかるなど、課題は多い。

水素脆化への対策も高額な維持費の原因となっている。充填にも大量の電力を消費しており、MIRAIへの1回の充填作業だけで約30kwhの消費電力を必要とする。これはテスラモデル 3 が200km走行する時に消費する電力に相当する。プレクールという水素を80Mpaまで圧縮と同時に-40℃まで冷却する必要があるためである。[(財)エネルギー総合工学研究所2015年調べ)]。 プレクールには約30分の所要時間を必要とするため、事前連絡や予約なしでは水素充填に30分以上の時間を要してしまう。 水素ステーションは安全性を確保する上で立地やタンクの設置方法、安全装置など多数の制約があり、建設費用は現状でガソリンスタンドの約4倍のコストがかかる(ガソリンスタンドの建設費用は約1億円、水素ステーションは約4億円である)[43]。高額な水素ステーションだがその供給能力も低く1時間に2 - 3台を充填するのが限界[44]2020年からは1時間あたり5 - 6台の充填能力を有する水素ステーションも建設されたが、建設費が5億円を超えている。トレーラーでの移動式水素ステーションも存在するが、その輸送能力は水素20kg未満のものがほぼすべてで、抜本的な打開策にはなっていない。 またFCV自体の熱効率も30%前後であり[45]、近年のガソリンエンジン熱効率40%代が出てきている現状では、その優位性を見いだすことが難しくなっている。

長所[編集]

短所[編集]

  • ユーザーフレンドリーの観点から
    • 電気自動車は自宅のガレージで充電できるが、燃料電池自動車は水素ステーションまで充填しに行かなければならない。また水素ステーションは全てが赤字運用であり、民間だけの力では到底増えない試算である。
    • システムが複雑なため車上有効スペースの減少と重量の増加、さらには水素脆化の対策としてメンテナンスが多く消耗品も多い。充填ノズルは数百万円のコストに対して耐久性は低く、充填時の費用に大きく加算される。
    • 実際の水素充填作業には30分以上の所要時間が必要であり、宣伝などで使われている充填3分には予約が必要である。(そもそも予約しないと充填すらできないステーションが多い)
    • 水素充填設備にはMIRAIより大型のタンクにあらかじめ予圧予冷が必要なため、1基で1時間あたりに充填できる車両は2台から6台までである[46]
    • 水素ステーションには化石燃料電力・複雑な制御機構・専任技術者がすべて必要となり、災害時に真っ先に休業を余儀なくされる。インフラとして脆弱である。
    • 化石燃料から水素を製造、大電力で充填、さらには水素脆化による消耗品の多さから、水素は非常に高額であり、元々安価にできるポテンシャルは存在しない。実際ここ10年で水素価格は上昇している。ガソリン車よりも数倍悪い燃費を補助金と無税で誤魔化している現状が存在する。
  • エコフレンドリーの観点から
    • 自然界に水素供給源は存在しない。水素生産には天然ガス改質したものがほとんどで、化石燃料から水素を生産するとガソリン自動車と大差ない環境負荷となる。
    • 水素充填に大量の電力を消費してしまう。1回の水素充填作業で約30kWhの電力を消費してしまう。これはテスラモデル 3 が200km走行する時に消費する電力に相当する。
    • 純度99.97%以上の水素しか利用できないため、副生水素はほぼ利用できない[47]。(白金触媒の反応性維持のため)。そのため、水素以外の化合物の車載も不可能になる。アンモニアや炭化水素の分解では必ず不純物が残る。
  • 自動車技術上の観点から
    • 水素脆化により車両全体に及ぶ金属劣化に対する対策が必要。
    • 水素ステーションは全てが赤字であり、補助金目当てで建設されている。実際の数値として、2019年製造販売された水素ステーションの水素製造量5312kg/年(約600万円相当)[48]に使われた運営補助金の額は20億円である。また補助金の大義名分であるはずの再生可能エネルギーの利用はなく、依然化石燃料依存である。そもそも輸送困難な水素には技術的利点はない。
    • 白金触媒の劣化や電解質を通すためのイオン交換樹脂の劣化による性能低下があり、信頼性・耐久性に問題がある。寿命も比較的少なく、商用車に搭載する場合は特殊な対策が必要となる。(例:バスでは大型のバッテリーを搭載し燃料電池の出力一定化を図り寿命を延ばしている。)しかしこの対策が行えるのは低速巡行のバスに限る。寿命や燃費の観点から燃料電池はトラックに不向きである。
    • 実用的な水素吸蔵物質がなく水素吸蔵合金は重量あたりの充填量が少なく非常に高価。
    • 固体高分子形燃料電池 (PEFC) は低温反応のために白金を用いた触媒を不可欠とする。
      • 全世界の自動車を水素燃料電池車にすると、現存するすべての白金を使ってもまったく足りない。2010年現在の水素燃料電池車の白金使用量を10分の1以下に下げる必要がある。
      • 白金は排ガス浄化触媒としても使われているので量産すれば自動車産業自体に大きな影響が出る可能性がある。
      • 白金は高価な貴金属であるため燃料電池車が高価となる。
    • PEFCは白金触媒の反応性のために、高純度水素(純度99.97%以上)を必要とし、改質における未改質ガスやCOを除去しなければならない[49]。改質器は高価で複雑なものになり車載は困難となる。
発電効率の悪さ
水素燃料電池自動車で一般的に利用が考えられている固体高分子形燃料電池の発電効率は30%台である。この数字はコンバインドサイクルを用いない火力発電所の効率より低く、燃料電池自動車をとりまくエコシステム全体としてみれば必ずしもエネルギー効率は高くない。(最新の新型MIRAIでの試算では、最大給電量が75kWh、搭載水素重量5.6kg、水素1kgのエネルギー量39.44kWhから導き出される発電効率は33%である)
水素の調達の難しさ
水素は自然界に採集可能なものは存在せず、石炭燃焼の副産物である副生水素、褐炭天然ガス改質バイオマス、水の電気分解などによって調達されるが、CO2の発生や効率などの課題があり、とくに大きなエネルギーを費やす水の電気分解にはその実現に際し必要な条件が多い。輸入天然ガス改質が最も効率が良いが、化石燃料から水素を生産するとガソリン自動車と大差ない環境負荷となる。詳しくは「水素」の記事を参照。
水素の格納の難しさ
水素は体積エネルギー密度が低いため、トヨタホンダの車両では水素を350ないし700気圧という高圧で格納するが、この圧縮には大きなエネルギーが必要となる。水素を標準状態理想気体とみなし、かつ圧縮に伴う熱エネルギーはすべて回収でき温度変化はないものと考えても、1気圧から700気圧への圧縮には1モルあたり約15kJが必要であるから、たとえばトヨタ・MIRAIの燃料タンク122.4リットル(合計容量)分の水素を圧縮するのに要するエネルギーは16kWhにもなる。また実際の水素ステーションではプレクールによる冷却と800気圧にするMIRAIよりも大型の与圧タンクが必要となるため、消費電力はさらに多くなる。常圧から低圧で液体状となる有機ハイドライドアンモニアを始めとした水素キャリアの利用も検討されているが、精製に必要となるエネルギーや純度、触媒や分離膜の耐久性といった問題もあり実用化には至っていない。
エネルギー効率の悪さ
水の電気分解による水素製造へと投入するエネルギーに対する、製造された水素が貯蔵や輸送を経て動力となり最終的に車のタイヤへと伝わる駆動エネルギーの比は、2003年の資料によれば、圧縮水素を使用する場合は22%、液体水素の場合は17%にとどまる[50]。ただし前述のように電気分解は最もエネルギー収支比(EPR)の悪い調達方法であるが、この値は取り得る最悪値であり、調達方法次第では2~3倍に改善する。
これに対し、2013年国立環境研究所の評価によれば、従来のガソリン車の効率は13%、ガソリンハイブリッド車の効率は22%程度[51]だが、現代のガソリンのEPRは平均して300%程度であるから、ガソリン製造に投入するエネルギーに対する駆動エネルギーのおおよその比はガソリン車で40%、ガソリンハイブリッド車で66%となる。新型MIRAIは最大給電量75kWhを5.6kgの水素から発電するため、効率33%である。
また膨大なエネルギーを使用して冷却・圧縮と運搬を行うため、「Well-to-Wheel(油田から車輪)」効率(一次エネルギーの採掘から車両走行までの効率)では、燃料電池自動車は電気自動車に比べて大幅に劣る。2009年の資料によれば、再生可能エネルギーによる電力であれば、これを用いた電気分解により水素を生成し圧縮して燃料電池自動車に充填するよりも、そのまま電気自動車へと充電するほうがWell-to-Wheell効率において3倍ほど勝る[52]テスライーロン・マスクCEOは2015年に「水素ステーションに水素を移し変える際に使う電気で、我が社の電気自動車が100km走る」と語った[53]
水素はもともと、供給の不安定な再生可能エネルギーリチウムイオンよりも軽い物質で貯蔵するために注目された物質である[54]。このため水素による走行特性のメリットはなく、むしろ一般的なリチウムイオンバッテリーと比べ、逐一発電を行う水素燃料電池は出力要求に対する反応性が劣るため、走行特性でも優位とは言えず、定置型と比べて発熱の再利用が限定的であることから、バッテリーの性能(エネルギー密度、充電時間など)が向上した際には水素による燃料電池の存在価値はなくなる。

水素ステーションの整備計画[編集]

水素ステーションの整備は進んでいるものの、その計画は鈍化傾向に幾度も修正されている。

燃料電池自動車の普及促進のため、購入の際の補助金や水素ステーションなどのインフラ整備などの普及促進策が採られている。2012年には、トヨタダイムラーGMなど世界の大手自動車企業11社が水素供給システムの規格を統一することで合意した[55]

水素ステーションに対しても、2013年度より水素供給設備整備事業費補助金を経済産業省から事業者に支給することにより設置数の増加を図っている[56]。2013年夏時点での日本国内における水素ステーションの数は17ヶ所であったが、2016年3月38基、2022年5月現在、日本国内の水素ステーションは161カ所となっている[57]。日本政府は2025年度には約320基にすることを目標にしている[58]

2015年2月、トヨタ、ホンダ、日産自動車の3社が水素ステーションの整備促進に向け、共同支援に乗り出すことで合意したと発表している[59]。また同月、トヨタは水素社会の実現に向けて約5700件の燃料電池車に関する特許を無料で公開した[60]

世界最大の電気自動車市場である中国は、世界最大の燃料電池自動車市場も目指しているとされ、2017年上海市政府は50カ所に水素ステーションを整備する計画を発表している[61][62]

その他の燃料電池自動車[編集]

アルコール燃料電池自動車[編集]

アルコールを搭載し、燃料電池で発電して走る電気自動車。アルコールを直接燃料電池に供給するもの(ダイレクトメタノール燃料電池車)と、アルコール改質器を車に搭載しアルコールから水素を得て水素燃料電池に供給するもの(水素燃料電池車)がある。

長所(内燃機関自動車との比較)[編集]

  • 他の方式のアルコール燃料自動車と同じ長所
    • 火災の際は消火できる
    • アルコールは既存のガソリンスタンドで給油可能
    • 燃料価格は比較的安い
  • 燃料電池自動車と設計の共通化が図れる

短所(内燃機関自動車との比較)[編集]

アルコール改質型は最も複雑なシステムのため、許容できないほどの車上有効スペースの減少と重量の増加とコスト高になる

  • 他の方式のアルコール自動車と同じ短所
  • アルコール燃料電池自動車固有の短所
    • アルコール中の水素を利用するため燃料電池内は水素燃料電池と同様水素脆化による金属劣化の問題が発生する
    • 燃料改質器にスペースとコストをとられる
    • 改質の際、CO2と熱が発生する
    • 燃料電池が高価である
    • アルコール直接供給式燃料電池は水素燃料電池よりも寿命が短い(腐食性が原因)
  • 二次電池を併用するハイブリッド車となる複雑性
    • 総合効率の向上のため回生ブレーキ充電用の二次電池が必要とされる
    • 改質器のために、さらに大容量の寒冷地の起動用に二次電池が必須とされる

ダイレクトメタノール燃料電池車[編集]

メタノール燃料を用いてダイレクトメタノール燃料電池発電して電動機で走行する車[63]

金属燃料電池(金属空気電池)自動車[編集]

新しい材料と構造の金属空気電池を使い電動機を駆動する自動車。エンドユーザーにとっては空気電池を一次電池のように電池パックごと交換して使い、バックエンドの再生場で金属燃料と正極電解液を交換して燃料電池として再利用する。金属空気電池は燃料密度が大きく、容量が非常に大きいので、1回の交換あたり1000km以上を走行できる。金属燃料として金属リチウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛などが検討されている[64][65]

長所(内燃機関自動車との比較)[編集]

  • 電池をストックでき、ある程度停電に強い。
  • 車載用として最も適した燃料電池
    • 構造が簡単でスペースが最も小さい燃料電池である
    • 最もライフサイクルコストの安い燃料電池である
    • 航続距離が水素燃料電池や内燃機関より長い
    • 金属空気電池用の再生インフラが必要だが、水素燃料インフラより取り扱いと構築が容易である
    • 金属空気電池用の再生システムを確立すれば電池の劣化を気にする必要がない
    • 走行時にCO2NOxを出さない
  • 金属空気電池を二次電池として使う可能性もある
    • 燃料電池のフィールドでの燃料補給は困難だが、二次電池にして充電できる可能性はある

短所(内燃機関自動車との比較)[編集]

  • 電池本体の問題
    • 車載型燃料電池にできそうな金属空気電池は新しすぎて実績がない
    • 燃料電池のフィールドでの燃料補給は困難で、電池交換と再生工場が必要
    • 交換式金属電極の規格化が必要
    • 放電したあとの金属電極を精錬して再び金属電極とするために多大なエネルギーが必要となる
      • (金属を再生する必要エネルギーが大きくエネルギー収支上問題があるだけでなく、工業レベルで安価に再生する技術的な目処も立っていない状況である)
    • 燃料電池としては最もコスト安だが、既存の二次電池より安くなるか不明
  • 二次電池を併用する複雑性
    • 総合効率の向上のため回生ブレーキ充電用の二次電池が必要とされる
    • 寒冷地の起動用にも二次電池が必要とされる

貴金属フリー液体燃料電池車[編集]

貴金属を含まない燃料電池液体燃料を供給し、電動機で走行する車。

関連項目[編集]

技術・原理面

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 燃料電池式の飛行機や船舶も開発されている。これらもFCVである。

出典[編集]

  1. ^ FC Vehicle standards
  2. ^ "Basics", U.S. Department of Energy, Retrieved on: 2008-11-03.
  3. ^ "What Is a Fuel Cell?", オンライン燃料電池情報, Retrieved on: 2008-11-03.
  4. ^ "Types of Fuel Cells", U.S. Department of Energy, Retrieved on: 2008-11-03.
  5. ^ "Fuel Cells for Transportation", U.S. Department of Energy, updated September 18, 2009. Retrieved June 7, 2010
  6. ^ "Fuel Cell Vehicles", Fuel Economy, Retrieved on: 2008-11-03.
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  8. ^ ホンダ、FCV生産中止 販売低調で” (日本語). 日本経済新聞 (2021年6月15日). 2022年4月29日閲覧。
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  10. ^ 日本は燃料電池車に手厚い補助金-米中の支援を大きく上回る」。2014年7月25日、ブルームバーグ。2014年8月10日閲覧。
  11. ^ HistoryWired: A few of our favourite things”. 2009年10月23日閲覧。
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  19. ^ "WE’VE REIMAGINED THE IDEA OF AN ELECTRIC VEHICLE." 現代自動車。2014年8月10日閲覧。
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  23. ^ “【ホンダ クラリティ フューエル セル】航続距離750km、当初目標から50kmも伸長”. Response.. (2016年3月11日). http://response.jp/article/2016/03/11/271391.html 2016年4月10日閲覧。 
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参考文献[編集]

Carr. "The power and the glory: A special report on the future of energy", page 11. The Economist, 2008.

外部リンク[編集]