貴金属フリー液体燃料電池車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ダイハツ FC商CASE、2011年
ダイハツ FC凸DECK、2013年

貴金属フリー液体燃料電池車(ききんぞくフリーえきたいねんりょうでんちしゃ、: Precious Metal-free Liquid-feed Fuel Cell Vehicle)とは、貴金属を含まない燃料電池液体燃料を供給し、電動機走行する[注釈 1]のことを言う[1][参考文献 1][参考文献 2]。また、貴金属フリー燃料電池車(ききんぞくフリーねんりょうでんちしゃ、: Precious-metals Free Fuel Cell Vehicle[参考文献 3]DHFCV (Direct Hydrazine hydrate Fuel Cell Vehicle) [参考文献 4]とも言う。

概説[編集]

常温常圧液体燃料[参考文献 1][参考文献 5]空気[注釈 2]を、搭載した燃料電池に供給し、電気化学反応により直接電子を取り出して発電[参考文献 6]した電力電動機に供給し、発生した回転力駆動輪に伝達して、路面との反作用により走行する[注釈 1]のことで[2]、燃料電池は液体燃料を気化させて、水蒸気改質して用いる必要がなく、液体の状態で発電することができる[参考文献 1]反応時の燃料電池内はアルカリ性雰囲気となり、耐触性に優れた白金貴金属)を使う必要がない[3]。また、液体燃料を用いるため、燃料タンクもコンパクトな搭載が可能である[参考文献 1]。燃料電池を搭載するシステムには、発電機も含まれる[参考文献 7]水加ヒドラジン[4] (hydrazine hydrate : N2H4・H2O) を液体燃料とする場合、反応後は (H2O) と窒素ガス (N2) を排出し、二酸化炭素 (CO2) 等を排出しない[参考文献 1]。用いられる液体燃料は、取り扱いが簡便である[参考文献 1]。また、既存インフラ[注釈 3][6]の流用が可能と考えられている[注釈 4][参考文献 6]

歴史[編集]

1932年(昭和7年)、ケンブリッジ大学 (University of Cambridge)フランシス・トーマス・ベーコン (Francis Thomas Bacon , 1904~1992年) がアルカリ形燃料電池の研究を開始[注釈 5]し、1959年(昭和34年)に5キロワット発電実証実験に成功した[参考文献 10]。その後、Allis-Chalmers社が、出力15キロワットに改良したアルカリ形燃料電池を搭載した農業用トラクターを開発した[注釈 6][参考文献 10]

1967年(昭和42年)、後にグラーツ工科大学 (Graz University of Technology) の教授となるKarl Kordeschは、水加ヒドラジン[4]燃料に用いるアルカリ形燃料電池を搭載するNiCd電池とのハイブリッドモーターサイクルを開発した[参考文献 3]

1972年(昭和47年)に産業技術総合研究所(当時は、工業技術院 大阪工業技術試験所)が水加ヒドラジンを用い、空気酸化剤として5.2kWの電力を発生させ、軽自動車タイプのアルカリ形燃料電池車(車体には、「ヒドラジン空気燃料電池車」[7]と表記)を実際に走行させた記録がある[参考文献 3]。このプロジェクトは、パナソニックに並んでダイハツ工業も協力している[参考文献 3]

2007年(平成19年)、産業技術総合研究所ダイハツ工業は、CO2排出ゼロ、省資源、低コストが可能な貴金属を全く使わない燃料電池に関する新たな基礎技術を開発した[8][3][参考文献 8]

2008年(平成20年)のG8北海道洞爺湖サミットにおいて、「環境ショウケース」の中で技術展示が行われた[参考文献 1]。今後の実用化には、これまで水素形で蓄えられた技術のみならず、水素形では選択から漏れた技術も吸収することが期待される[注釈 7][参考文献 1]

2009年(平成21年)の第41回東京モーターショーでは、貴金属フリー液体燃料電池は、液体燃料を用いるため取り扱いが容易で、燃料タンクもコンパクトな搭載が可能という技術展示が行われた[参考文献 1]。また、駆動系のモックアップモデルカー[参考文献 11][参考文献 10]が参考出品された[10][参考文献 1]

2011年(平成23年)の第42回東京モーターショーでは、資源問題を解消した低コストな燃料電池スタックを搭載した「FC商CASE」が参考出品された[11]。また、「FC商CASE」は、ガルウイングを持つ[参考文献 3]

2012年(平成24年)の第20回インドネシア国際モーターショーでも、「FC商CASE」が参考出品された[12]

2013年(平成25年)の第43回東京モーターショーにおいて、床下にコンパクトな燃料電池を搭載した「FC凸DECK(エフシー・デコ・デッキ)[注釈 8]」が参考出品された[13]。また、住宅向け「FC-Dock 20C(出力2キロワット)」やキャンプ等の屋外での利用「FC-Dock 05C(出力500ワット)」を想定した発電機も参考出品された[参考文献 7]。この発電機は、外部電力なしで起動できる自立型である[14]

2015年(平成27年)の第44回東京モーターショーにおいて、液体燃料を運べるカートリッジ容器を用いて、体験型ジオラマの展示が行われた[参考文献 10]

2018年(平成30年)、燃料及び酸素バリア性等を追求した新規のアニオン交換膜の研究開発において、発電時間が1000時間を超えた[参考文献 9](詳細は、「新規アニオン交換膜材料開発」節を参照)。

想定される液体燃料[編集]

Sample of hydrazine hydrate

「FC商CASE」は、水加ヒドラジン[4][15]燃料にしていたが、「FC凸DECK(エフシー・デコ・デッキ)」は、ジアミノウレア[注釈 9] (Diaminourea : CH6N4O) も液体燃料に想定している[参考文献 7]。100%濃度水加ヒドラジン[注釈 10]における引火点は、常圧下で75℃であり、濃度を60%以下に希釈すると沸点においても引火しない[17][参考文献 4]

水加ヒドラジンは、水素ガス空気中の窒素ガスからアンモニア (NH3) を合成し、更に酸化させることで得られる[参考文献 8]。日本国内では、2万2千トンが流通している[参考文献 8]。また、プラスチック製、ポリエチレン製、アルミニウム製、ステンレス鋼製の容器を用いて輸送される[19]。用途には、半導体部品の酸化皮膜洗浄剤[参考文献 10]、農薬、発泡剤、重合触媒、医薬品の製造における原料、ボイラー水における腐食防止剤や、金属メッキの還元剤等がある[20]。また、自動車安全装置エアバッグ等のガス発生剤の原料としても使われる[参考文献 12]

水加ヒドラジンは、土壌中において、粘土表面上で分解[18][21]活性汚泥中の微生物によって生分解される[18][22]

水加ヒドラジンが人体に与える発がんリスクは、国際がん研究機関(こくさいがんけんきゅうきかん、: IARC[23] : International Agency for Research on Cancer)から発行されている報告書[24]によると、ガソリン[25]と同等の「グループ2B[注釈 11][27]」に分類される[注釈 12][参考文献 4]。また、がん発生率調査では、水加ヒドラジンを製造する工場で働く従業員を調査対象とした場合、一般人と同等であることが確認されている[参考文献 4][参考文献 14][24][29][27]。また、同様の調査対象において、水加ヒドラジンの曝露に関連する健康への影響は検出されていない[参考文献 15]

一方、ジアミノウレア[注釈 9] (Diaminourea : CH6N4O) は、水加ヒドラジンより取り扱いがずっと楽であるが、出力は水加ヒドラジンに及ばない[参考文献 7]。当面、2種類の液体燃料は並行して開発が進められる[参考文献 7]

燃料のエネルギー密度とCO2排出量の比較[編集]

電子貯蔵・輸送するエネルギー密度の高い方から並べると

ガソリンメタノール水加ヒドラジン[4]液体水素 > 70MPa(700気圧)の水素ガスLiイオン電池

の順となる[参考文献 1]ガソリンメタノールは、エネルギー密度は高いが二酸化炭素 (CO2) を排出し、ガソリンの方がメタノールよりも二酸化炭素 (CO2) の排出量が多い[参考文献 1]。一方、水加ヒドラジン水素(液化・高圧)は、二酸化炭素 (CO2) を排出しない[参考文献 1]

液体燃料の選定[編集]

液体燃料の選定要件を以下に示す[参考文献 10]
発電によりCO2を生成しない[参考文献 10]
● 高いエネルギー(熱量)を有する[参考文献 10]
エネルギー効率(仕事率)が高い[参考文献 10]

自動車用燃料の比較
項目 ガソリン 水素 (70MPa) 水加ヒドラジン
引火点(℃) マイナス21以下 75
消防法 危険物 第1石油類 第3石油類 (>80%)
毒物劇物取締法 対象物ではない 劇物 (>30%)
急性毒性 LD
50[mg/kg]
14600 129
がん原生 グループ2B グループ2B
CO2排出
[g/ML]
68 0 0
エネルギー密度
[kW・h/L]
9.5 1.8 3.2
理論起電力[V]
/発電効率[%]
1.23/83 1.56/99

[参考文献 10][25][28]

国際がん研究機関 (IARC) による分類[参考文献 10]。「グループ2B」は、コーヒーと同じ分類である[26]

水加ヒドラジンは、これらの要件に合致している[参考文献 10]水加ヒドラジン濃度80%以上)は、常温では引火しない[参考文献 10]。また、引火した場合、爆発することなくアルコールランプ程度の緩やかな炎が発生するが、で速やかに消火できる[参考文献 10]

航続距離[編集]

水加ヒドラジンエネルギー密度は、水素 (70MPa) の約2倍、ガソリンの約1/3である[参考文献 10]エネルギー効率[注釈 13]は、現在[注釈 14]ガソリン車で約20%、貴金属フリー液体燃料電池車で60%程度である[参考文献 10]水加ヒドラジン燃料とした貴金属フリー液体燃料電池車は、ガソリン車とほぼ同じ航続距離を実現できると考えられている[参考文献 10]

燃料供給システム[編集]

水加ヒドラジン[4] (N2H4・H2O) を水加ヒドラジンステーション[注釈 3]から燃料タンクへ燃料供給する場合は、予め燃料タンク内にカルボニル基 (>C=O) を組み込んだ状のポリマーを充填し、燃料供給の際に、カルボニル基 (>C=O) と反応脱水縮合され、ポリマーと結びつくことで、ヒドラゾン (>C=N2H2) という状態で固体化され安全な状態で貯蔵される[5][参考文献 8]。また、燃料タンクから燃料電池へ燃料供給する場合は、ヒドラゾン (>C=N2H2) に温水を流通させることで加水分解反応により、再液体化して再び元のカルボニル基 (>C=O) と液体水加ヒドラジン (N2H4・H2O) に戻る[5][参考文献 8]

「FC凸DECK(エフシー・デコ・デッキ)」は、ボトルに入れた液体燃料を交換する方式を採る[参考文献 7]。「FC-Dock 05C(出力500ワット)」は、容量1.2リットルカートリッジを4本搭載する[参考文献 7]

オートモーティブ貴金属フリー液体燃料電池システム[編集]

貴金属フリー液体燃料電池(ききんぞくフリーえきたいねんりょうでんち、: PMfLFC : Precious Metal-free Liquid-feed Fuel Cell[参考文献 5][30][11][12][13][31][参考文献 2]は、発電反応が生じる膜電極接合体(まくでんきょくせつごうたい、: MEA : Membrane Electrode Assembly[注釈 15][32]燃料空気を均一に供給するガス拡散層(ガスかくさんそう、: GDL : Gas Diffusion Layer[注釈 16][33]、燃料・空気の分離・流路となるセパレータ[注釈 17][35]で構成される[参考文献 10]ガス拡散層は、カーボン繊維を用いたペーパーフェルト材が多く用いられる[参考文献 10]。また、セパレータは、金属またはカーボンで作製される[参考文献 10]電極触媒アノード(燃料極)がNi系、カソード(空気極)がFe系であり、イオン交換膜グラフト重合[注釈 18]アニオン交換膜である[参考文献 7]炭素を含まない常温常圧水加ヒドラジン[4] (N2H4・H2O) を燃料とし、酸化剤空気[注釈 2]を使用すると、発電によって発生するのは窒素ガス (N2) と (H2O) のみとなる[参考文献 1]反応は、カソードには空気を50℃で、アノードには水加ヒドラジンを50℃で供給し、セル温度を80℃に設定して行われる[参考文献 5][参考文献 4][参考文献 3][参考文献 1]。また、この燃料電池は、液体燃料から電気化学反応により直接電子を取り出す直接ヒドラジン型燃料電池(ちょくせつヒドラジンがたねんりょうでんち、: DHFC : Direct Hydrazine Fuel Cell)とも言う[参考文献 6]。理論的には、化学エネルギーを全て電気エネルギーに変換できる[参考文献 6]出力密度は、0.5W/cm2である[36]

電気化学反応式[編集]

〈全体の反応[参考文献 6]

反応は、イオン交換膜内を負電荷を持つ水酸化物イオンアニオン、OH-イオン)が移動することにより実現される[参考文献 1]。また、アルカリ性雰囲気となり、アノードカソードとも耐触性に優れた白金貴金属)を必要としない[参考文献 1]

アノード反応[参考文献 6]

カソードの反応[参考文献 6]

イオン交換膜[編集]

イオン交換膜[注釈 19]の基本構造は、スチレンポリマーを主骨格とした構造であり、親水性が高く、イオン伝導率が高いという特徴を有しているが、含水によって膨潤する[参考文献 6][参考文献 10]。また、燃料イオン交換膜を透過するクロスオーバー現象やシャント電流と呼ばれる液相を介する漏電等の課題がある[参考文献 1][参考文献 3]。イオン交換膜は、燃料電池を搭載する自動車用途としては耐久性が不足しているため、分子構造の弱点の解析及び合成を行い、膜の耐久性の向上を図る[参考文献 6]

新規アニオン交換膜材料開発[編集]

イオン交換膜には、高いイオン伝導度、燃料及び酸素バリア性、化学的安定性が求められる[参考文献 9]。新規アニオン交換膜の分子構造は、化学的安定性及び形状安定性に優れた骨格部分とイオン伝導を担うイオン交換基部分から成る[参考文献 9]。燃料極にNi-Zn触媒、空気極にFePhen触媒[注釈 20]水加ヒドラジン燃料とし、セル温度を80℃に設定した場合、出力密度は、0.5W/cm2[注釈 21]である[参考文献 9]。また、耐久性は、1000時間を超える発電が可能である[参考文献 9]。まだ実用化に十分なレベルとは言えないため、性能の支配要因や劣化のメカニズムを解明し、耐久性の向上を図る[参考文献 9]

電極触媒[編集]

アノード[注釈 22]触媒には、Ni-La触媒とNi-Zn触媒が検討されている[参考文献 4]。これらの電極触媒の最大出力密度は、Ni触媒より高い[参考文献 4]。また、カソード[注釈 22]触媒には、窒素に配位させたキレート構造の鉄キレート電極触媒である硝酸鉄とアミノアンチピリン等を混合焼成して作製したFeAAPyr触媒[注釈 23]と、酢酸鉄とフェナントロリン等を混合・焼成して作製したFePhen触媒[注釈 20]が検討されている[参考文献 5]。同条件において、FeAAPyr触媒は白金触媒よりも高活性を示した[参考文献 5]発電前後における成分変化の解析を行うことで耐久性の向上を図る[参考文献 5]

研究開発プロジェクト[編集]

貴金属フリー液体燃料電池の研究開発は、「CAFE (Creation of Anionic Fuel-cell for the Earth) プロジェクト」と称し、産業技術総合研究所日本原子力研究開発機構、複数の国内外の大学、インターリンク大塚化学北興化学工業ダイハツ工業、米国のガス技術研究所 (GTI) 等が行っている[参考文献 1]。また、この研究開発は、科学技術振興機構による先端的低炭素化技術開発及び戦略的創造研究推進事業の支援を受けている[参考文献 4]

インフラ整備[編集]

水加ヒドラジン[4]を用いた液体燃料は、水素電子キャリアとして化学反応により水素を液体化学物質に変化させることにより、インフラを簡便な形にできる[参考文献 1]

また、既存インフラ(日本全国の約40,000箇所[6][参考文献 1])の流用が可能と考えられている[注釈 4][参考文献 6]

また、水加ヒドラジンは気体と比べてエネルギー密度が高く、貯蔵・運搬・取り扱いが容易であることから、灯油のように各家庭に配達できるように、ユーザーが直接燃料に触れることなく安全に使用できる容器の開発も行われている[参考文献 10]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ a b 主に、自動車ハイブリッドモーターサイクルのこと(「歴史」節を参照)。道路交通法上は、「」には、「自動車」、「原動機付自転車」、「軽車両自転車荷車リヤカーそり牛馬等)」が含まれ、「自動車」には、「大型自動車」、「普通自動車」、「大型特殊自動車」、「小型特殊自動車」、「自動二輪車」が含まれる。「軽自動車」は、「軽車両」ではなく、「自動車」に含まれる。
  2. ^ a b 厳密には、空気に含まれる酸素 (O2) による反応(「電気化学反応式」節を参照)。
  3. ^ a b 液体燃料 (CleaN2 Fuel[参考文献 2]) としての水加ヒドラジンを取り扱う、自動車等の給油所のこと[5][参考文献 8]
  4. ^ a b ダイハツ工業が2018年1月に発表した論文には、「既存のガソリンインフラをほぼそのまま利用できる可能性がある。」と記載されている[参考文献 9]
  5. ^ 燃料電池原理は、1800年頃にイギリス化学者であるデービー卿 (Sir Humphry Davy、1778~1829年) が発見したとされている[参考文献 10][参考文献 1][参考文献 3]
  6. ^ 世界初の燃料電池に搭載された燃料電池は、アルカリ形燃料電池である[参考文献 10]
  7. ^ ダイハツ工業は、トヨタ製のFCスタックを使用した高圧水素タイプのFCV試作車「MOVE FCV-K-Ⅱ」を2001年の第37回東京モーターショーに参考出品し、2004年6月に大阪府庁へ公用車として20万円/月でリース販売している[9]
  8. ^ ●全長×全幅×全高:3,395×1,475×1,985mm ●ホイールベース:2,445mm ●乗車定員:2名 ●燃料電池システム:貴金属フリー液体燃料電池 (PMfLFC,35キロワット)  ●タイヤサイズ:165/55 R15[参考文献 2]
  9. ^ a b 厳密には、を加えてOH-イオンが移動できるようにして用いる(「電気化学反応式」節を参照)。
  10. ^ 「100%濃度水加ヒドラジン」とは、ヒドラジンを重量当り64% (N2H4分子量が32.04、1モル当り32.04グラム、N2H4・H2Oの分子量が50.06、1モル当り50.06グラム、32.04÷50.06=0.64[4]) 含むようにで予め希釈し、化学反応させたものを指す[16]常温常圧において、ヒドラジン水加ヒドラジン液体の状態である[17][18]。また、両者はで無限に希釈できる[17]。水加ヒドラジンは、液体の状態ではヒドラジンと明らかに異なった物質である[参考文献 12][17]。「80%濃度の水加ヒドラジン」は、ヒドラジンを重量当り51.2% (0.64×80%=51.2%) 含む[4]
  11. ^ コーヒーと同じ分類[26]
  12. ^ 日本国内では、日本産業衛生学会ヒドラジン水加ヒドラジンを第2群B[参考文献 13]に分類している[28][参考文献 12]。この勧告は、IARCの報告書を基に作成されている[参考文献 13]
  13. ^ 燃料が持つエネルギーに対する自動車走行するために使用するエネルギーの比率[参考文献 10]
  14. ^ この論文は、2016年11月に発表されている[参考文献 10]
  15. ^ 白金を使わない2枚の電極イオン交換膜を挟んだ部分のこと[3][参考文献 1][参考文献 10]
  16. ^ 膜電極接合体セパレータとの間に配置される部分のこと[参考文献 10]
  17. ^ 「...|セパレータ|【】|セパレータ|【】|セパレータ|...、【】=(ガス拡散層膜電極接合体|ガス拡散層)」のようにガス拡散層の外側に配置され、水加ヒドラジン空気の供給と反応後の水・窒素ガスの排出を行う部分のこと[参考文献 10][34]。隣の「【】」とを電気的に直列接続すると同時に、その「【】」への水加ヒドラジンと隣の「【】」への空気を、分離したままの状態を保ちながら各々の「【】」へ供給(及び反応後の水・窒素ガスを排出)する役割を持つ[参考文献 10][34]
  18. ^ 量子ビーム(電子線ガンマ線)を用いたグラフト重合架橋法による[参考文献 1][参考文献 3]
  19. ^ H+イオンが移動するイオン交換膜をプロトン交換膜(Proton Exchange Membrane)と言い、OH-イオンが移動するイオン交換膜をアニオン交換膜(Anion Exchange Membrane)と言う[参考文献 16]
  20. ^ a b FePhen」の「Phen」とは、フェナントロリン (Phenanthroline) のこと[参考文献 5]
  21. ^ 酸化剤酸素空気では0.3W/cm2である[参考文献 9]
  22. ^ a b アノード電極(Anode electrode[参考文献 1])は「燃料極」、カソード電極(Cathode electrode[参考文献 1])は「空気極」とも言う[参考文献 10][参考文献 9]
  23. ^ FeAAPyr」の「AAPyr」とは、アミノアンチピリン (Aminoantipyrine) のこと[参考文献 5]

出典[編集]

  1. ^ DAIHATSU <第5次>ダイハツ環境取組みプラン2011~2015年度 p. 20「第5次環境取組みプラン2011~2015 年度 次世代車の開発」節” (PDF). DAIHATSU. 2020年1月2日閲覧。
  2. ^ 水素・燃料電池実証プロジェクト (JHFC) FCVのしくみ(「水素」を「液体燃料」に読み替える)”. JARI. 2018年9月9日閲覧。
  3. ^ a b c DAIHATSU (2007) CO2排出ゼロ、省資源、低コストが可能な貴金属を全く使わない燃料電池の基礎技術を新開発 技術詳細資料〔別紙〕「1.白金を使用しない電極触媒」節” (PDF). DAIHATSU. 2018年9月9日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i SHOWA 安全データシート (SDS) 水加ヒドラジン 「3.組成、成分情報」節” (PDF). SHOWA. 2018年9月9日閲覧。
  5. ^ a b c DAIHATSU (2007) CO2排出ゼロ、省資源、低コストが可能な貴金属を全く使わない燃料電池の基礎技術を新開発 技術詳細資料〔別紙〕「3.燃料(水加ヒドラジン)の固体化・再液体化」節” (PDF). DAIHATSU. 2018年9月9日閲覧。
  6. ^ a b 水素・燃料電池実証プロジェクト (JHFC) 燃料電池システム等実証研究 第2期報告書 p. 210 表2.1-1” (PDF). JARI. 2018年9月9日閲覧。
  7. ^ 「ヒドラジン空気燃料電池車」(1972年(昭和47年)、工業技術院 大阪工業技術試験所)”. AIST. 2018年9月9日閲覧。
  8. ^ 日本自動車研究所(JARI)平成20年度 燃料電池自動車に関する調査報告書 p. 153” (PDF). JARI. 2018年9月9日閲覧。
  9. ^ 日本自動車研究所(JARI)平成20年度 燃料電池自動車に関する調査報告書 pp. 153,163.” (PDF). JARI. 2018年9月9日閲覧。
  10. ^ JHFC水素・燃料電池実証プロジェクト「ダイハツ工業株式会社」節”. JARI. 2018年9月9日閲覧。
  11. ^ a b ダイハツ、東京モーターショーに「D-X」「PICO」などを出展 pp. 2 f. 「3.FC 商 CASE」節” (PDF). DAIHATSU. 2020年1月2日閲覧。
  12. ^ a b ダイハツ、第20回インドネシア国際モーターショーに「UFC」「AYLA」などを出展 pp. 1 f.” (PDF). DAIHATSU. 2018年9月9日閲覧。
  13. ^ a b ダイハツ、東京モーターショーに「KOPEN」「DECA DECA」などを出展 pp. 1 f.” (PDF). DAIHATSU. 2018年9月9日閲覧。
  14. ^ ダイハツ、東京モーターショーに「KOPEN」「DECA DECA」などを出展 p. 3” (PDF). DAIHATSU. 2018年9月9日閲覧。
  15. ^ SHOWA 安全データシート (SDS) 水加ヒドラジン 「9.物理的及び化学的性質」節” (PDF). SHOWA. 2018年9月9日閲覧。
  16. ^ Environmental Health Criteria Vol. 68 Sec. 2.2 (Physical and Chemical Properties) (1987)”. IPCS. 2018年9月9日閲覧。
  17. ^ a b c d Environmental Health Criteria Vol. 68 Sec. 2.3 (Analytical Methods Table 1) (1987)”. IPCS. 2018年9月9日閲覧。
  18. ^ a b c Environmental Health Criteria Vol. 68 Sec. 1 (SUMMARY) (1987)”. IPCS. 2018年9月9日閲覧。
  19. ^ Environmental Health Criteria Vol. 68 Sec. 3.2.2 (Methods of transport) (1987)”. IPCS. 2018年9月9日閲覧。
  20. ^ Environmental Health Criteria Vol. 68 Sec. 3.3 (Use Pattern) (1987)”. IPCS. 2018年9月9日閲覧。
  21. ^ Environmental Health Criteria Vol. 68 Sec. 4.2 (Abiotic Degradation) (1987)”. IPCS. 2018年9月9日閲覧。
  22. ^ Environmental Health Criteria Vol. 68 Sec. 4.3 (Biodegradation) (1987)”. IPCS. 2018年9月9日閲覧。
  23. ^ IARCのメインメニュー”. IARC. 2018年9月9日閲覧。
  24. ^ a b IARC Monographs on the Evaluation of the Carcinogenic Risk of Chemicals to Humans Suppl. 4 pp. 136-138. (1982)” (PDF). IARC. 2018年9月9日閲覧。
  25. ^ a b ENEOS 安全データシート ENEOSレギュラーガソリン 「11.有害性情報」節” (PDF). ENEOS. 2019年10月10日閲覧。
  26. ^ a b IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans INTERNAL REPORT 14/002 p. 18 (2014) IARC” (PDF). IARC. 2018年9月9日閲覧。
  27. ^ a b IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans Vol. 71 p. 1006 (1999)” (PDF). IARC. 2018年9月9日閲覧。
  28. ^ a b SHOWA 安全データシート (SDS) 水加ヒドラジン 「11.有害性情報」節” (PDF). SHOWA. 2018年9月9日閲覧。
  29. ^ IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans Vol. 71 pp. 992 f. (1999)” (PDF). IARC. 2018年9月9日閲覧。
  30. ^ 日本原子力研究開発機構 (JAEA) 貴金属フリー液体燃料電池における水分子とOH-イオンの拡散および電解質膜の微細構造の解析” (PDF). JAEA. 2018年9月9日閲覧。
  31. ^ DAIHATSU <第6次>ダイハツ環境取組みプラン2016~2020年度 p. 1” (PDF). DAIHATSU. 2019年10月10日閲覧。
  32. ^ 日本自動車研究所(JARI)平成20年度 燃料電池自動車に関する調査報告書 pp. 221-223.” (PDF). JARI. 2018年9月9日閲覧。
  33. ^ 日本自動車研究所(JARI)平成20年度 燃料電池自動車に関する調査報告書 pp. 219 f.” (PDF). JARI. 2018年9月9日閲覧。
  34. ^ a b 日本自動車研究所(JARI)平成20年度 燃料電池自動車に関する調査報告書 pp. 219-228.” (PDF). JARI. 2018年9月9日閲覧。
  35. ^ 日本自動車研究所(JARI)平成20年度 燃料電池自動車に関する調査報告書 pp. 223-228.” (PDF). JARI. 2018年9月9日閲覧。
  36. ^ DAIHATSU (2007) CO2排出ゼロ、省資源、低コストが可能な貴金属を全く使わない燃料電池の基礎技術を新開発 技術詳細資料〔別紙〕「2.高出力」節” (PDF). DAIHATSU. 2018年9月9日閲覧。

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 田中・朝澤・山口・藤村「液体燃料を用いる貴金属フリー燃料電池車」『水素エネルギーシステム』第36巻第2号、水素エネルギー協会 (HESS)、2011年、pp. 5-11.、ISSN 1341-6995 
  2. ^ a b c d ダイハツ工業「FC凸DECK」『The 43rd TOKYO MOTOR SHOW 2013 (PAMPHLET)』、ダイハツ工業、2013年、pp. 9-10.。 
  3. ^ a b c d e f g h i 田中・山崎「水加ヒドラジンをエネルギーキャリアとする貴金属フリー燃料電池車」『日本エネルギー学会編』第93巻第5号、日本エネルギー学会、2014年、pp. 414-421.、ISSN 0916-8753 
  4. ^ a b c d e f g h 坂本・朝澤・田中「水加ヒドラジンを燃料とするアニオン形燃料電池自動車の開発」『触媒』第57巻第1号、触媒学会、2015年、pp. 27-32.、ISSN 0559-8958 
  5. ^ a b c d e f g h 岸・坂本・朝澤・田中・松村・田村・西畑・セロフ・アタナソフ「Ptフリー液体燃料電池の電極触媒開発」『自動車技術会論文集』第46巻第2号、自動車技術会、2015年、pp. 361-366.、ISSN 0287-8321 
  6. ^ a b c d e f g h i j 猪谷・山口・田中・吉村・前川「液体燃料電池用アニオン交換形電解質膜の開発」『膜 (MEMBRANE)』第38巻第3号、日本膜学会、2013年、pp. 126-130.、ISSN 0385-1036 
  7. ^ a b c d e f g h 日経BP社『4-4 東京モーターショー2013』日経BP社、2014年、pp. 318-320.頁。ISBN 978-4-8222-7521-1 
  8. ^ a b c d e f 朝澤・山田・田中・谷口・小黒「ヒドラジンを燃料とする自動車用燃料電池の開発」『燃料電池』第7巻第3号、燃料電池開発情報センター、2008年、pp. 125-127.、ISSN 1346-6623 
  9. ^ a b c d e f g h i 朝澤浩一郎「アニオン交換膜を用いた貴金属フリー液体燃料電池の開発とその可能性」『Material stage/技術情報協会編』第17巻第10号、技術情報協会、2018年、pp. 20-22.、ISSN 1346-3926 
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae 山口・朝澤・田中「貴金属フリー液体燃料電池のメカニズム」『新電気』第70巻第11号、オーム社、2016年、pp. 29-35.、ISSN 0386-5487 
  11. ^ 田中・朝澤・山口・藤村「液体燃料を用いる貴金属フリー燃料電池車」『水素エネルギーシステム』第36巻第2号、水素エネルギー協会 (HESS)、2011年、p. 10「図9」、ISSN 1341-6995 
  12. ^ a b c 日本産業衛生学会「産衛学会勧告理由提案書 許容濃度等の勧告 (1998)」『産業衛生学雑誌』第40巻第4号、日本産業衛生学会、1998年、p. 174、ISSN 1341-0725 
  13. ^ a b 日本産業衛生学会「産衛学会勧告理由提案書 許容濃度等の勧告 (1998)」『産業衛生学雑誌』第40巻第4号、日本産業衛生学会、1998年、p. 136、ISSN 1341-0725 
  14. ^ 日本産業衛生学会「産衛学会勧告理由提案書 許容濃度等の勧告 (1998)」『産業衛生学雑誌』第40巻第4号、日本産業衛生学会、1998年、p. 176、ISSN 1341-0725 
  15. ^ 日本産業衛生学会「産衛学会勧告理由提案書 許容濃度等の勧告 (1998)」『産業衛生学雑誌』第40巻第4号、日本産業衛生学会、1998年、pp. A67 f.、ISSN 1341-0725 
  16. ^ 田中・朝澤・山口・藤村「液体燃料を用いる貴金属フリー燃料電池車」『水素エネルギーシステム』第36巻第2号、水素エネルギー協会 (HESS)、2011年、p. 8、ISSN 1341-6995 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]