標準状態

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

標準状態(ひょうじゅんじょうたい)とは、物理学化学工学などの分野で、測定する平衡状態に依存する熱力学的な状態量を比較するときに基準とする状態である。標準状態をどのように設定するかは完全に人為的なものであり、理論的な裏付けはないが、歴史的には人間の自然認識に立脚する。

一般的には気体の標準状態のことを指すことが多く、圧力温度を指定することで示される。科学の分野により、また学会、国際規格団体によって、その定義は様々であり混乱が見られる。このため、日本熱測定学会は統一した値として、地球の大気の標準的な圧力である標準大気圧1 atm = 101.325 kPa)を用いるべきであると主張し啓蒙活動を展開している[1]

圧力[編集]

指定される圧力は、標準状態圧力: standard-state pressure, SSP)と呼ばれる。しばしばSSPにおける量であることを表す為に ° を付けて表され[2]、SSPそのものは p° となり、標準生成エンタルピーであれば ΔfH° と書かれる(Δf は生成反応(formation)を示す)。

SSPの設定として主なものが二種類あり、一つは、歴史的に用いられてきた、標準大気圧をSSPとする

p^\circ\equiv 1\ \text{atm}=101\ 325\ \text{Pa}

であり、もう一つは1981年にIUPACが推奨した

p^\circ\equiv 1\ \text{bar}=100\ 000\ \text{Pa}

である。

1960年の国際単位系(SI)の採択を経て、IUPACでも1969年にGreen bookを出版してSIへの転換とした[3]。その後1970年代のGreen book改訂の際に標準気圧が非SIになるとして、SSPの慣習的な1気圧(1 atm)から105パスカル(1バール、1 bar)への変更が主張され、IUPACの推奨はこの主張に沿って行われた。20年以上(2004年当時)を経過してもIUPACの推奨はしばしば無視されており、化学熱力学のデータベースに二種類の設定があることで混乱が見られる[3][4]。種々の物理定数の推奨値を発表しているCODATAはIUPACの推奨に沿って後者をSSPとしているが[5]、標準状態の設定に依存するモル体積サッカー・テトロード定数などは両方のSSPに基づく値で発表している。

IUPACによるSSPの変更の推奨は単位の変更に伴うものとして行われたが、標準状態とは(仮想的な)測定条件であり、基準とする量の選び方であって、単位の選び方ではない。物理学の理論は単位の選び方には依らないが、例えば標準生成エンタルピーは標準状態の設定に依存してその量が変化する(単位の変更による数値の変化ではない)。そもそも、105パスカル、あるいはバールは、SIに沿った一貫性のある単位ではないことに注意。

温度[編集]

基準とする温度には、SATPSTPがある。温度は右下の添え字で示される[2]

SATP
基準の温度を25セルシウス度(298.15ケルビン)とするものがSATP(標準環境温度と圧力、: standard ambient temperature and pressure)と定義される。
気体の標準状態としては、現在は主にSATPが使われる。
STP
基準の温度を0セルシウス度(273.15ケルビン)とするものがSTP(標準温度と圧力、: standard temperature and pressure)と定義される。

体積[編集]

1モル理想気体体積は、SATPでは24.8リットル、STPでは22.7リットル(1997年より前は22.4リットル)である。

体積を標準状態において測った場合、そのことを明示するために単位を m3Nノルマル立米)とすることがある[6]

脚注[編集]

[ヘルプ]
出典

参考文献[編集]

書籍
雑誌

関連項目[編集]

外部リンク[編集]