ペンタン
ペンタン | |
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一般情報 | |
IUPAC名 | Pentane |
分子式 | C5H12 |
示性式 | CH3(CH2)3CH3 |
分子量 | 72.15 |
組成式 | C5H12 |
形状 | 無色の液体 |
CAS登録番号 | 109-66-0 |
SMILES | CCCCC |
性質 | |
密度と相 | 0.62638 (20 ℃) g/cm3, 液体 |
水への溶解度 | 0.03 (g/100 mL) (20 ℃)[1] |
融点 | −131 °C |
沸点 | 36.07 °C |
屈折率 | 1.35768 (20 ℃) |
ペンタン(pentane)とは、炭素数5つの直鎖状のアルカンである。天然ガスや石油エーテル、ガソリン等に含まれている。
名称[編集]
ペンタンも含めて、直鎖状のアルカンをノルマルアルカンと総称する[2]。ペンタンには分枝した構造異性体が2つ、つまり、イソペンタンとネオペンタンが存在し、構造異性体を含めた総称として、俗に「ペンタン」と呼ぶ場合もある。そこで、これらと区別する際に、n-ペンタン(ノルマルペンタン)と呼ぶ場合がある。
しかしながら、IUPAC命名法でペンタンと言えば、直鎖状のn-ペンタンを指す。なお、構造異性体であるイソペンタンをIUPAC名で言えば2-メチルブタンであり、ネオペンタンをIUPAC名で言えば2,2-ジメチルプロパンと、きちんと区別できる。その上に、IUPAC名は化合物の構造を言い表している。
よって本稿では、これ以降、IUPAC名に従って記載する。
物理化学的性質[編集]
常圧でのペンタンの沸点は36 ℃であり[3]したがって、常温・常圧でペンタンは液体として存在する。常圧での沸点が常温を上回る、最短の炭素鎖の直鎖状アルカンが、ペンタンである[3][4][注釈 1]。なお、液体であっても色は無い。また、ペンタンの揮発性は比較的高く、揮発してきたペンタンを、ヒトの嗅覚は感知できる。
アルカンであるため、水には溶解し難いものの、20 ℃の水100 mLに、ペンタンは0.03 gだけ溶解する[1]。
アルカンは一般に可燃物であり、酸素と化合して燃焼し、水と二酸化炭素に変化する。この反応は発熱反応であるため、アルカンの燃焼反応は、アルカンと酸素が供給され続ける限り、外部からエネルギーを与えずとも、勝手に持続し得る[5]。ペンタンもまた可燃物であるだけでなく、さらに、揮発性が高く、引火点が-49 ℃と引火し易いため、その取り扱いには注意が必要である。
日本では消防法に定める第4類危険物の特殊引火物に該当し、法規制されている。
利用[編集]
ペンタンには多くの利用法が知られており、以下に、その例の一部を記載する。
発泡剤[編集]
熱媒体[編集]
安価な低沸点の流体として、地熱発電の1種であるバイナリー発電に於いて、蒸気タービンを回すための媒体として用いる場合がある。水より低温でも沸騰して蒸気になるため、水では沸騰しない低い温度の熱源を利用できるためである。
要するに、比較的低い温度の熱源に、液化したペンタンを曝して沸騰させて気体にし、液体から気体になった際に体積が急激に膨張した圧力で、蒸気タービンを回し、その回転を利用して発電機を駆動するのである。なお、蒸気タービンを回した後は、何らかの方法で再びペンタンを液体に戻して、ペンタンは循環させて使用する[注釈 2]。
九州電力の八丁原発電所には日本国内初のバイナリー発電施設があり、2006年からペンタンを利用したバイナリー発電を実施している。
有機溶媒[編集]
室温で液体として存在する直鎖状アルカンの中では、ペンタンが最も揮発性が高いため、実験室では蒸発させ易い溶媒として利用される場合がある。液相クロマトグラフィーの溶媒としても使われる場合がある。
ペンタンは多くの非極性溶媒(有機塩素化合物、芳香族、エーテルなど)と自由に混和する。しかし、ペンタンは非極性で官能基が無いため、非極性でアルキル鎖に富んだ化合物しか溶かせない。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 参考までに、1気圧において、融点が25 ℃を上回る最短の炭素鎖の直鎖状アルカンは、オクタデカンである。つまり、オクタデカンよりも炭素鎖の長い直鎖状アルカンは、常温常圧で固体として存在する。逆に、本文から論理的に自明なように、ブタンよりも炭素鎖の短い直鎖状アルカンは、常温常圧で気体として存在する。
- ^ 熱媒体として使い方が行われ得るのは、ペンタンだけではない事を、念のために断っておく。例えば、アルカンであれば、プロパンが冷凍庫での熱媒体として用いられる場合がある。また、蒸気タービンを回す熱媒体としては、他に、アンモニアなども利用され得る。
出典[編集]
- ^ a b Harold Hart(著)、秋葉 欣哉・奥 彬(訳)『ハート基礎有機化学(改訂版)』 p.216 培風館 1994年3月20日発行 ISBN 4-563-04532-2
- ^ Harold Hart(著)、秋葉 欣哉・奥 彬(訳)『ハート基礎有機化学(改訂版)』 p.40、p.42 培風館 1994年3月20日発行 ISBN 4-563-04532-2
- ^ a b Harold Hart(著)、秋葉 欣哉・奥 彬(訳)『ハート基礎有機化学(改訂版)』 p.50 培風館 1994年3月20日発行 ISBN 4-563-04532-2
- ^ T.W.Graham Solomons、Craig B. Fryhle 著、花房 昭静、池田 正澄、上西 潤一 監訳 『ソロモンの新有機化学 (上巻) (第7版)』 p.149 廣川書店 2002年10月5日発行 ISBN 4-567-23500-2
- ^ Harold Hart(著)、秋葉 欣哉・奥 彬(訳)『ハート基礎有機化学(改訂版)』 p.58、p.59 培風館 1994年3月20日発行 ISBN 4-563-04532-2
外部リンク[編集]
- 国際化学物質安全性カード n-ペンタン (ICSC:0534) 日本語版(国立医薬品食品衛生研究所による), 英語版
- モデルMSDS n-ペンタン(中央労働災害防止協会)
C4: ブタン |
直鎖アルカン | C6: ヘキサン |