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液体酸素

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
無色ガラス容器内の液体酸素

液体酸素(えきたいさんそ)とは、液化した酸素のこと。酸素の沸点は−183℃、凝固点は−219℃である。製鉄や医療現場の酸素源やロケット酸化剤として利用され、LOX (Liquid OXygen)、LO2のように略称される。有機化合物に触れると爆発的に反応することがある。

製法と性質

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液体酸素を磁力で捕捉する実験動画(英語)

液体酸素は淡い青色を呈する液体である。重量は1141キログラム/立方メートルでありよりやや重い。常磁性を持ち、強い磁石(強い磁場)に引き寄せられる。

断熱膨張ジュール=トムソン効果)により液化した空気から分留される。液体窒素の沸点 (77K) は酸素 (90K) より低いため、液体空気から酸素を容易に濃縮できる。化学実験でしばしば用いられる、デュワー瓶に液体窒素を満たした冷却トラップを大気に開放したまま放置すると、液体酸素がたまる。液体酸素は強い酸化作用を持ち、接触した有機物を速やかに酸化する。このため液体水素ケロシンなどと組み合わせてロケットエンジンの推進剤として用いられている。またその固体である固体酸素は状況下によって非常に様々な性質に変化する。 また一部の販売されている液体酸素には合成臭気成分であるジメチルスルフィドが添加されている。もし使用者が臭気を感じれば酸素が環境に漏れ出している可能性がある。

危険性

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液体酸素は強い酸化作用、助燃性を持つ。

有機物と可燃物と混合すると非常に鋭敏な爆発物を形成することがあり、危険である。(液体酸素爆薬

着火源としては静電気の他、キャビテーションの影響も指摘されており、徹底的な静電気対策を行っても火災が発生することがある。[1]

キャビテーションは確率的に発生しないこともあり、再現性が低く検証が難しい。

対策

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可燃物と接触させないことが原則である。

静電気対策のほか、液体酸素の滴下やウォーターハンマー現象の対策を行い衝撃が加わらないようにすることも有効である。

事故事例

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2019年H-IIBロケット発射台火災事故

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2019年9月11日、発射台の断熱材と液体酸素の接触で火災発生。帯電が着火の原因と推測されたが再現には失敗。対策として、表面にアルミシートを施工することで接地と有機物の接触防止の両方を実現した。[2]

2017年液化水素ローディングシステム緊急分離時の火災

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戦略的イノベーション創造プログラムの研究「液化水素ローディングシステムの開発及びルールの整備」において、液体水素によって冷却され生じた液化空気がGFRP製弁体に接触、火災が生じる事例が複数回起きた。

火災は液体空気が衝突する表面を起点とし、特に着火源が見当たらないことからキャビテーションの可能性が浮上した。

対策として、材質をGFRPからPCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)に変更、表面を銅で被覆、さらに滴下防止のトレイを設置した。[3]

用途

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医療現場での酸素源

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病院の液体酸素タンクにタンクローリーから液体酸素を補給する光景(スコットランド、2008年)

大きな病院では従来のような酸素ボンベによる供給では無く、館内に敷設した酸素配管を通して、大きな液体酸素タンクから気化させた酸素を配給している。個別のボンベを準備せずに済み、大量購入によるコスト削減の他、ボンベの残量を気にする必要が無くなるなどの利点があるが、設備の設置、維持・管理にコストがかかる。

製鉄現場での酸素源

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転炉法が開発された当初、それは転炉の底から空気を吹き上げるというものだった。現在では上から酸素を吹きこむ方式に変わっている。融けた銑鉄に酸素を吹き込む事で不純物を焼き飛ばし、の純度を高める。製鉄所では大量の酸素が消費されるため、工場内に酸素製造設備が設置される。

ロケットの推進剤

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ロケット発射場の液体酸素タンク(ケープカナベラル空軍基地、2012年)

ロケットエンジンは原理上、大気中の酸素を燃焼酸化)に利用せず、ケロシンなどの狭義の燃料に加えて、酸素、過酸化水素四酸化二窒素硝酸といった酸化剤のうちいずれかをあらかじめロケットに積載する。このうち酸素は常温常圧状態に戻った際の性が低いこともあり、弾道ロケットの黎明期から現代に至るまで広く利用され、液体酸素の形で積載される。

液体酸素を用いた初期のロケットには以下のものがある。

V2/A4
ナチス・ドイツが開発した世界最初の弾道ミサイルであるV2ロケットは、燃料としてエタノール混合物と液体酸素を用いていた。この方式はV2/A4の設計を拡大する事でミサイルを開発していた旧ソ連のその後のミサイル・ロケットでも多く採用されている。V2は野戦機動が考慮されており、ロケット運搬車、断熱タンクを備えた液体酸素運搬車、アルコール運搬車、電源車、指揮車など約30台の支援車両によって戦場を移動し、発射地点で4 - 6時間の準備で発射することができた。
R-7
旧ソ連が開発し、配備した世界最初の大陸間弾道弾(ICBM)であるR-7(SS-6 Sapwood)は、燃料としてケロシンと液体酸素を用いたRD-108エンジンとRD-107ストラップオンブースターを備えていた。R-7は人工衛星打ち上げロケットボストークに転用され、歴史に残る輝かしい業績を上げた。その後改良を加えつつ現在もソユーズのエンジンとして運用されている。
レッドストーン
SSM-A-14/PGM-11 レッドストーンは、フォン・ブラウンアメリカで最初に作り上げたロケットで、米軍に最初に配備された弾道ミサイルとなった。A4の流れを汲むA-7エンジンは燃料として水・エタノール混合物と液体酸素を用いた。
アトラス
アメリカで最初に配備されたICBMであるSM-65/CGM-16/HGM-16 アトラスは、燃料としてケロシンと液体酸素を用いるXLR-105-5エンジンに二本のLR-101-NA7ブースターエンジンが取り付けられていた。

また現在でも、アメリカのスペースシャトルやロシアのソユーズ、日本のH-IIロケットなどに広く使われている。一般には燃料にケロシン液体水素が使われる。

爆薬

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液体酸素爆薬
液体酸素と炭素粉末を混合して作られた代用爆薬の一種で現在では使用されていない。

脚注

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  1. キャビテーション着火仮説の検証”. KAKEN. 2026年3月2日閲覧。
  2. H-IIBロケットの発射台火災はなぜ起きたのか? - MHIが調査結果を公表 | TECH+(テックプラス)”. news.mynavi.jp (2019年9月24日). 2026年3月2日閲覧。
  3. “[https://www.jst.go.jp/sip/dl/k04/end/team8-2.pdf 終 了 報 告 書 SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)課題名「エネルギーキャリア」 研究開発テーマ名「液化水素用ローディングシステム開発とルール整備」 研究題目「液化水素ローディングシステムの開発及びルールの整備」]”. 2026年3月2日閲覧。

関連項目

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