マイルドハイブリッド
マイルドハイブリッド(英語: Mild hybrid)とはハイブリッドカーの一形式。通常の乗用車に搭載されている発電機(オルタネーター)を強化して、内燃機関(エンジン)の補助モーターとしても利用できるようにしたものである。
電動機(モーター)のみで自走可能なハイブリッドシステム(フルハイブリッド)とはシステムが異なる。
概要[編集]
モーターを主力にエンジンを補助とするフルハイブリッド(ストロングハイブリッド)[注 1]とは異なり、マイルドハイブリッドはエンジンを主力にモーターを補助とするのを目的としている。日本で開発が進められたものは、減速エネルギー回生システム(スズキの「エネチャージ」やマツダの「i-ELOOP」など)で蓄えられたエネルギーを、車内の電装品向けのみならず駆動用に用いようとする試みに端を発したもので、内燃機関が不得意とする低速時や加速時のサポートに限定して用いることで、低コストでの導入が可能となる[1]。
スズキは「S-エネチャージ」の名称で実用化、後に「スズキマイルドハイブリッド」の名称で広く導入している。基本的には電動機のみでの自走は不可能だが、ワゴンR(6代目)及びその派生車種では、減速して車速が約13km/h以下となり、アクセルもブレーキも踏まない時や、アイドリングストップ後の停車からの発進時に、最長10秒間モーターでのクリープ走行が可能となっている。
一方、マツダは2019年をめどにマイルドハイブリッド車の発売を計画していると報じられ、同年以降SKYACTIV-Xを搭載している車種(後述)が発売されている[注 2]。
ヨーロッパにおいては、通常の車両用電源で用いられる定格電圧を12Vから48Vに高電圧化(LV148)することで電装品の出力を高め、オルタネーターでの駆動補助を可能にする「48Vマイルドハイブリッド」という規格が提唱されている[4]。メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲン(アウディ)、BMWなどが積極的に採用しており、ボッシュが2019年にも日本向けに供給を開始すると報じられている[5]。
ハイブリッド車との比較[編集]
長所[編集]
短所[編集]
- 基本的にモーターのみで走行できない
- 排気ガスの削減や燃費節約の効果が限定的
主な車種[編集]
- ☆印は過去に販売されていた車種
- ◎印はフルハイブリッド仕様(e-POWER含む)も併売される車種
日本車[編集]
- トヨタ・クラウン(11代目)☆
- トヨタ・クラウンセダン(6代目)☆
- スズキ・ソリオ(4代目)/ソリオバンディット(2代目)◎
- スズキ・シアズ
- スズキ・イグニス
- スズキ・スイフト(4代目)◎
- スズキ・ワゴンR(6代目)/ワゴンRスティングレー(4代目)
- マツダ・フレア(2代目)
- スズキ・ツイン☆
- スズキ・スペーシア/スペーシアカスタム(2代目)/スペーシアギア
- スズキ・クロスビー
- スズキ・ハスラー(2代目)
- マツダ・フレアクロスオーバー(2代目)
- 三菱・eKクロス
- 三菱・eKスペース(2代目)
- 日野・ブルーリボンHIMR/ブルーリボンシティHIMR/ブルーリボンシティハイブリッド☆
- 日野・セレガHIMR/セレガR HIMR/セレガRハイブリッド/セレガハイブリッド☆
- スマートシンプルハイブリッド(S-HYBRID)の名称で販売
- 日産・セレナ(4代目・5代目)◎
- スズキ・ランディ(2代目・3代目)
- 日産・デイズハイウェイスター(2代目)
- 日産・ルークス(3代目)/ルークスハイウェイスター(3代目)
- S-エネチャージ(S-eNe CHARGE)の名称で販売
- スズキ・ワゴンR(5代目)/ワゴンRスティングレー(3代目)☆
- スズキ・ハスラー(初代)☆
- マツダ・フレアクロスオーバー(初代)☆
- スズキ・スペーシア(初代)/スペーシアカスタム(初代)/スペーシアカスタムZ☆
- e-BOXERの名称で販売
- スバル・フォレスター(5代目)
- スバル・XV(3代目)
- スバル・インプレッサ(5代目、ただしスポーツ(ハッチバック)のみ設定)
- M hybrid(SKYACTIV-X)の名称で販売
日本車以外[編集]
以下は、全て一部のモデルにマイルドハイブリッドを搭載。ベルト・オルタネーター・スターター (BAS) を採用したモデルについては当該項目を参照。
- シボレー・シルバラード
- メルセデス・ベンツ・Sクラス (S400 HYBRID)
- BMW・7シリーズ (ActiveHybrid 7)
- プジョー・308 (1.6L e-HDi)
- ビュイック・ラクロス
- ビュイック・リーガル
- フェラーリ・ラ フェラーリ
- シボレー・マリブ
- シボレー・インパラ
- アウディ・A8
脚注[編集]
注記[編集]
- ^ 駆動方法により、エンジンを発電にのみ用いて電動機のみで駆動する「シリーズ方式」、エンジン駆動と電動機駆動を併用する「パラレル方式」、エンジンのエネルギーを発電用と駆動用に分離した上で電動機と併用する「スプリット方式」に分類される。トヨタ・ハイブリッド・システム (THS) はスプリット方式。
- ^ マツダは後にトヨタ自動車と業務提携し、トヨタ・ハイブリッド・システム (THS) を「SKYACTIV-HYBRID」として導入している。なお、マツダは2019年にも次世代エンジン「SKYACTIV-X」と組み合わせたマイルドハイブリッドシステムを導入するとの報道がなされた[2][3]。
出典[編集]
- ^ “スズキとマツダ、マイルドHVに懸ける理由”. 東洋経済オンライン (2014年3月12日). 2018年1月3日閲覧。
- ^ “マツダ、簡易型ハイブリッド車発売へ…19年”. 読売新聞. (2018年2月16日) 2018年2月16日閲覧。
- ^ 桃田健史 (2017年9月7日). “マツダSKYACTIV-X、マイルドHEV向けを示唆”. 日経XTECH 2018年2月16日閲覧。
- ^ 栗城剛・市川信 (2017年4月7日). “48Vハイブリッドシステムのメリット”. 日経テクノロジーオンライン. 日経BP. 2018年1月3日閲覧。
- ^ “「欧州標準」の48Vハイブリッドシステムを日本の自動車メーカーが採用!? 独ボッシュがメーカーに供給”. cliccar. (2017年6月13日) 2018年1月3日閲覧。
関連項目[編集]
- ハイブリッドカー
- 電気自動車
- 燃料電池
- 低公害車
- プラグインハイブリッドカー
- HY-KERSシステム
- e-4WD
- 運動エネルギー回生システム
- Honda IMAシステム - システム的にマイルド・ハイブリッドと類似するが、モーターのみでの駆動も可能
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