オイルクーラー

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1979年式ヤマハ・XS650に増設されたロックハート社製空冷オイルクーラー

オイルクーラー (: Oil-Cooler) は潤滑油や、油圧機器の作動油を冷却する装置である。

潤滑油の冷却[編集]

エンジンギヤボックスなどの潤滑油は高温となるため、再循環の前に冷却するためのオイルクーラーを設置する場合があり、自動車オートバイにも採用例が見られる。水冷エンジンにおいては主冷却装置たるラジエーターの冷却を補助する装置であるが、空冷エンジンではシリンダーの冷却フィン以上にオイルクーラーが冷却面で重要な位置付けを占めるモデルも存在する。メーカーによっては大型のオイルクーラーを装備した空冷エンジンを「油冷エンジン」と称する場合もある。車種によってはオイルクーラーに冷却用ファンを備えることもある。冷却用ファンは気体の特性から、押し込み式に較べ、吸引式が効率に優れる。[要出典]この場合も確実に吸引できるようシュラウド(覆い)が併用される場合がある。シュラウド後端からファンが顔を出すあたりに効率の良い範囲がある。[要出典]

構造[編集]

空冷式水冷式があり、製などのフィン付きの細管を多数並べた構造をしている。細管内部に潤滑油を満たし、同じく潤滑油を満たしたエンジンのオイルジャケットと接続して潤滑油を循環することにより、エンジンの冷却を行う。

オイルクーラーの構造は空冷式の場合、ラジエーターと同様に「チューブ」と「フィン」で構成された「コア」とその両側の「タンク」からなる。コアの取り付け方向によって、「縦流れ」と「横流れ」とがあり、効率が良いのは縦流れであるが、コアの設置角度が垂直ではない場合や配管の都合、エンジンの寿命を縮めるオーバークールを防ぐ目的の場合は横流れとする場合がある。ラジエーターは多くの場合取入口がコア上部、排出口がコア下部に分けて配置されているが、オイルクーラーは殆どがコアの上または下に取入口と排出口が併設されている。[1]

オイルクーラーはラジエーター同様にエンジンを冷やすためにあるが、エンジン起動初期は早くエンジンを温める必要があるためオイルクーラーがあると逆に問題がある。そのため、オイルクーラーの中には冷却経路中やクーラー本体内部にサーモスタットが組み込まれたものがあり、こうしたタイプのものは油温が低い場合はオイルクーラーでの冷却を行わないようにしている。純正装着品のサーモスタットは開弁温度が100度前後と高温で作動する物が多い為、アフターパーツでは70度から80度前後のローテンプサーモスタットを用意して純正オイルクーラーの冷却効率改善を図る場合がある。

サーキットで使用する場合にはサーモスタットを取り去ってしまう事もあるが、街乗りではオーバークールによる潤滑不良を招く恐れがあるので、余り推奨はされていない。

水冷式オイルクーラー[編集]

オイルクーラーには水冷式の物も存在する。これは空冷式と同様の構造を持ったクーラーコアをウォータージャケットで覆ったもので、自動車の場合はラジエーターで冷却されたクーラントをウォータージャケットに流し込み、オイルの熱を放散させる。

水冷式は空冷式に比べ熱効率に優れる為、同じ放熱量比で空冷式より小型化が出来るメリットがある。また、クーラントの温度以上に冷却がされないため、多くの場合サーモスタットは不要であり、油温を一定に保つウォーマーとしての効果も期待できる。

水冷式オイルクーラーには、オイルフィルター取り付け部の根本に冷却水を導入して冷却するタイプのものと、ラジエーターコア内部にオイル経路を設けて冷却を行うタイプがあり、前者はエンジンオイルクーラー、後者は後述のATFクーラーに利用される事が多い。

社外品においてはクーラーコアを独立式としたものが存在する。こうした水冷式オイルクーラーはより大容量のウォータージャケットを有したり、より軽量化できるアルミニウムボディを持ったものが存在する。

クルーザーなどの小型船舶においては、クーラントの代わりに船外の海水や淡水を導入してより高い放熱効果を狙う場合もある。

材質[編集]

コア、タンクとも、真鍮が用いられており、定置型の産業機械建設機械などでは製のものも見られる。社外品においてはアルミニウムを用いた物も存在する。

チューニングカーとオイルクーラー[編集]

チューニングに従いエンジンの出力が上がると、どうしても発熱量が大きくなるために高性能のラジエターと同時にオイルクーラーも高性能の物が必要になる。しかし取り付けサイズは車のレイアウトによって制約されてしまうため、フィンピッチを小さくして表面積を大きくしたり、コアの厚みを増やしフィン面積を大きくする方向で強化していく事が多い。しかしラジエーター同様にコア厚を2倍に上げても性能は20%程しか良くならない、またコア厚を上げると空気抵抗が増え、圧力損失も多くなってしまい、思う以上に通過風量が増えない。また、インタークーラーの吸気をエンジンフード上面から行うと、エンジンルームの内圧が上がり、前面からの流入量も減少するため、エンジンルームの排気を優先すべきである事は、ラジエーターの強化の場合と共通している。

そして次に考えられるのは冷却方式の変更である。空冷式と水冷式にはそれぞれ一長一短があり

空冷式
冷却力大、自己放熱性弱、要求スペース大、効率の良い冷却の為には設置場所と導風法に工夫が必要。オーバークールを防ぐにはサーモスタットが必要。
水冷式
冷却力小、自己放熱性強、要求スペース小、サーモスタットが不要。設置場所の制約が余り無い。過剰に油温が上がった場合水温にも影響を与える。
  • 冷却力:(風が良く当たっている状態の)放熱性が高い
  • 自己放熱性:(風があまり当たっていない状態の)放熱性が高い

となっている。

常に走行風が確保でき、なおかつ導風方法などを工夫できる余地があるのであれば、空冷オイルクーラーの方が良いとは言えるのだが、街乗りが多い車では渋滞に遭遇する確率も高くなる。そうなると自己放熱性が低い空冷式では冷却風の導入が止まると同時に一気に油温が上昇してしまう。しかし水冷式では最大冷却力をラジエーターに依存する形となる為、そのような状況に陥ってもある程度は対応が出来る。

そのため現在の自動車メーカーはファミリーカーでは水冷式、スポーティカーなら空冷式を選択して純正装着する場合が多い。

オイルクーラーを後付けする場合の注意点[編集]

元々オイルクーラーを装備していない車種にオイルクーラーを設置する場合には、オイルポンプの流量を考慮して形式や配管経路を選定する必要がある。オイルポンプの流量がオイルクーラーの圧力損失に対して低すぎる場合には、油圧が大きく低下してエンジン内部の潤滑不良を発生させてしまい、設置が却って逆効果となる場合もあるので注意が必要である。

また、オイルクーラーの設置する向きにも注意が必要である。元々オイルクーラーを装備していない車種はオイルポンプの流量にそれほど余裕がない為、横流れ式のコアの流入口を下向きにして取り付けるとコア内部に噛んだエアが抜けなくなる恐れがある他、全てのコアにオイルが回りきらず規定の冷却効率が発揮できない原因にもなる。これを防ぐ為には横流れ式コアの場合はコアの取入口・排出口を上向きにして取り付けるか、コアを横に倒してラジエーターと同様に下側の流入口を取入れ側(ロワー)、上側の流入口を排出側(アッパー)とする配置を行う事が望ましい。

季節によってはオーバークールを防ぐ為、サーモスタットの設置やクーラーコアの一部をテープなどで覆う措置を採る事も検討するべきである。

オートマチックトランスミッションフルードクーラー[編集]

オートマチックトランスミッションフルード (ATF) は、過酷な使用状況になると高熱となり、変速ショックの増大や湿式多板クラッチの滑りなどの要因となる為、高性能車のオートマチックトランスミッションにはATFクーラーが設けられる事がある。

ATFクーラーにも空冷式と水冷式が存在しており、前者の場合はクーラー配管にサーモスタットを設ける事が一般的である。後者の場合はラジエーターコア内にフルードを導入して冷却を行う形式が一般的である。

パワーステアリングフルードクーラー[編集]

パワーステアリングフルード(PSF) も、過酷な使用状況になると高熱となり、オイルポンプやギアボックスの潤滑に支障をきたす恐れがある為、多くの車の油圧式パワーステアリングにはPSFクーラーが設けられている。

PSFクーラーはエンジンオイルやATFほどの冷却効率が要求されない為、殆どの場合空冷式である。その構造も、エンジンオイルクーラーのような多層式コアを持ったものではなく、長い金属パイプの経路をラジエーターの前などに這わせて走行風による冷却を行うものが多数を占めている。

脚注[編集]

  1. ^ 純正装着されている空冷式オイルクーラーの場合、一般的にはコアの上側に取入口と排出口を配置し、エンジン停止後もクーラーコア内に一定量のオイルを滞留させる事でオイル経路へのエア噛みを最小限に防ぐ構造を採っている。その為、オイル交換の際にオイル粘度を大幅に変更する場合には、オイルクーラーを取り外してコア内のオイルを排出する措置が必要となる場合もある。オイルがコア内に一定量残留する関係上、オイルクーラー装着車へのフラッシングオイルの使用は推奨されない事が殆どである。

関連項目[編集]