インテークマニホールド

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インテークマニホールド: intake manifold、略称:インマニ)は内燃機関燃焼室空気を導入するための多岐管(manifold)である。

概要[編集]

インテークマニホールドは、吸入行程で燃焼室内に生ずる負圧により混合気または空気を吸い込む経路である[1]。インテークマニホールドの主要な機能は吸気を各気筒に均等に分配することであり、エンジンの燃焼効率と性能を最適化する上で重要な要素である。

予混合燃焼機関では、キャブレタースロットルバルブ、インジェクターなどがインテークマニホールドに固定されている場合が多く、これらを交換する際には取付部分の形状や口径が合うようにインテークマニホールドも同時に交換される場合がある。2ストロークガソリンエンジンの中には、それに加えてインテークチャンバーリードバルブが取り付けられているものもある。過給器付きエンジンにおいてはインテークマニホールドにサージタンクとしての機能を兼ねる場合がある。

ディーゼルエンジンのうち、シリンダーヘッドグロープラグを持たない直噴式では、冷間時の始動を助けるための、「インテークヒーター」(電気ヒーター)が備わる。

ガソリンエンジンにおいては、インテークマニホールド内に生じる負圧(バキューム)を利用してブレーキブースター排出ガス対策装置、ディストリビューター進角装置などの動力源とされる[2]

ディーゼルエンジンでもインテークマニホールド中のバタフライバルブ前後の負圧差を利用する「バキュームガバナー」や、機械式(遠心式)調速機と組み合わせた「バキュームコンバイインドガバナー」にインテークマニホールドの負圧を利用する例があるが、基本的に出力制御にスロットルバルブが不要であるため、クラッチブレーキの倍力装置用の負圧の発生をインテークマニホールドに求めず、クランクシャフトからギアまたはベルトバキュームポンプを回して負圧を作り、バキュームリザーバータンクに蓄える方式を摂る[3]。また、より大型のもの(中型トラック、中型バス以上)は負圧を利用せず、エアコンプレッサーを搭載し、その圧縮空気を用いる。

インテークマニホールドはかつては鋳鉄アルミニウム合金で製造されることがほとんどであったが、自動車用エンジンではプラスチック製も増えている。

吸気乱流[編集]

インテークマニホールドの内部はある程度表面が粗く作られている。これは吸入空気がインテークマニホールド内で層流となることを防ぐためのものであり、吸入空気の流速を速めるならば、管内を滑らかにする方が効率的である。しかし、キャブレターインジェクターがインテークマニホールド内に燃料を噴射するときには、吸入空気とマニホールド内壁の摩擦により静電気が発生する。

しかし近年では、より高い燃焼効率や燃費を実現するための様々な工夫が考案されている。

インテークマニホールドの内部構造はエンジンの体積効率を決定する重要な要素である。あまりにも極端な曲がりや内径変化などは吸気圧力損失を引き起こす原因ともなる。

ヒート・ライザー[編集]

ヒート・ライザー(: Heat Riser)とは、ターンフロー式シリンダーヘッドで主に用いられた機構で、エキゾーストマニホールドの排気熱をインテークマニホールドに伝えて、強制的に気化を促進させるための機構である。排気管と吸気管を隣接させて熱交換を行う。

供給される排気ガスはエキゾーストマニホールドに設けられたヒートライザーバルブと呼ばれるバイメタル式のバルブで流量が制御されていたが、キャブレターでパーコレーションが発生するなどの問題があった。

ヘルムホルツ共鳴[編集]

現代の自動車に採用されるインテークマニホールドでは、分岐部分に広い空間を作ったサージタンク(: surge tank)を採用する場合もあり、各シリンダーに接続される枝管の長さや内径を調整してヘルムホルツ共鳴が利用されることもある。吸入行程で燃焼室へと送り込まれる気体の速度は高く、吸気バルブが閉じられても気体には慣性が働いて、閉じたバルブに衝突する。これにより吸気ポート内の圧力は脈動的に変化し、エンジンの回転速度、すなわち吸気バルブの開閉周波数によってはヘルムホルツ共鳴が発生する。共鳴が発生するエンジンの回転速度は枝管の内径や管長に依存し、インテークマニフォールドを適切に設計して圧力が高くなる位相と吸気バルブが開くタイミングを一致させることで吸気効率を高くすることができる。一方、共鳴がほかのシリンダーの枝管に影響すると設計通りの働きを示さない場合もあることから、管の集合部にはサージタンクを設けて圧力波の共鳴を吸収する構造としている。

180度インテークマニホールド[編集]

キャブレター仕様のV型8気筒エンジンでクランク角の位相が180度異なるシリンダーの吸気脈動を分離するように設計された、二層分割型のサージタンクを持つインテークマニホールドである。一方のシリンダーからもう一方への圧力波の干渉を減少し、エンジン回転速度が中程度の領域において吸気の流れを滑らかにすることでエンジン出力がより高くなる。こうしたマニホールドは、元は2バレルや4バレルキャブレターのために設計されたが、燃料噴射方式が普及した現在、スロットルボディインジェクションにもマルチポイントインジェクションにも用いられている。

可変長式インテークマニホールド[編集]

1999年式マツダ・ロードスターのBP-4WエンジンのVLIM。4気筒のうち同時点火される2気筒分の2系統のランナー構造を有している。

電子制御技術の発展により、エンジン回転域に応じて管の長さが可変する可変長式インテークマニホールド(: Variable Length Intake Manifold, VLIM)も実用化された。異なる長さのランナーで構成され、サージタンクの出口に設けられたバルブで、長さが短く直線状に作られたセカンダリランナーへの経路をエンジン回転数に応じて閉じ、プライマリとセカンダリのランナー構造を切り換える。

多気筒エンジンの場合、同時点火されるシリンダーの数に応じてサージタンクを分けることができ、分離型サージタンクはメインの大きな空間とY字状の分岐パイプで繋がれる小さな空間とで構成され、エンジン回転数に応じて吸気の流路が切り替えられる。低速域は小さなサブプレナム室を、高速域ではメインプレナムを使用することで、パワーとトルクを回転数に応じて最適化し、燃費を改善する。

可変長式インテークマニホールドは主に下記の二つの効果を用いて吸気効率を高めている。低回転域では吸入空気の気流速度を上げるために、細いプライマリランナーを通って燃焼室内に入っていく。高回転域になり吸入負荷が増大すると、太いセカンダリランナー側を開いてより吸入空気量を増やすことができる。DOHC4バルブ以上のエンジンの場合、一部の吸気バルブを作動させない状態とすることで、さらに低回転時の気流速度を上げる場合も多い。代表的なものはトヨタのT-VISである。

吸入空気の経路を調整できるVLIMは、ヘルムホルツ共鳴を低速回転時と高速回転時の複数の回転速度域で利用することも可能である。吸入空気速度が速い時に吸入空気に与えられる圧力は、ランナー取り入れ口の空気速度の二乗に比例するため、低速回転側のプライマリランナーの径を狭くするか、より長さを長くすることによって吸入空気速度と圧力を可変させている。可変共鳴吸気システム(: Variable Resonance Induction System; VRIS)とも呼ばれる。

なおモータースポーツなどでは、純正のVLIMを取り外して大型の固定式インテークマニホールドに交換することも多い。

脚注[編集]

  1. ^ ディーゼルエンジンなどの拡散燃焼機関やガソリン直噴エンジンでは空気のみ。その他の予混合燃焼機関では混合気
  2. ^ この他、オーバードライブを含む副変速機トランスファーの切り替え、リトラクタブルヘッドランプワイパー日本のタクシーでの自動ドアの動力源としての利用例もある。スロットルバルブが全開に近づくにつれ、負圧の発生が少なくなるため、ヘッドランプやワイパーは高速走行時には動作が不確実、あるいは緩慢になり、実用上の問題が大きい。
  3. ^ 長期間エンジンを始動していない場合、真空配管系に漏れがある場合、ブレーキペダルを激しくポンピングして真空ポンプでの減圧が間に合わない場合など、タンク内の圧力が大気近くまで上がり、負圧に頼る倍力装置が働かなくなり、危険なため、それを知らせる警告ブザーが備わる。

関連項目[編集]