フードクレストマーク

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フードクレストマーク、またはフードマスコット( 英語 hood/bonnet ornament, radiator cap, motor mascot , car mascot)は、自動車メーカーのシンボルを立体化し、フロントグリルボンネットに装着するようにしたものである(オーナメントとも呼ばれるが、こちらは通常のエンブレムも含まれることがある)。

概要[編集]

通常、自動車のエンブレムは平面的に作られ、自動車本体に装着するため、室内からエンブレムを確認することはできない。 しかし、フードクレストマークは立体的に制作しており、自動車フロントのセンター部に装着されているため、確認することができる。

フードクレストマークは、エンブレムとしてのその自動車のシンボルとしての役割だけではない。 装着されている自動車の大半は大型の普通自動車や、ショーファードリヴンといった運転手が運転する自動車であり、こういった車はフェンダーポールなどでは車幅の感覚を掴むのが難しい車が多い(その車専属で運転する場合別として、業務上乗り換えたり、平日休日で乗り換える場合が多いため)。 その場合、フェンダーポールとフードクレストマークを併用することで、フロントの先端と左右フェンダーの感覚を掴むことが容易となり、大型乗用車の運転を比較的安全にすることが出来るようになる(フェンダーポールが着いていない車の場合、代わりにフェンダーミラーが付いている場合がある。また、フェンダーポールとフェンダーミラー、フードクレストマークをすべて装着している車もある)。また、マツダが製造する教習車においても、教習生の目安のために、現在においてもオプションで設定してある。

歴史[編集]

 20世紀初頭のクルマは、ラジエターの上に金属製の筒を付けていた。これはラジエター内の水温や水の流れを知るために取り付けられたもの。エンジンが温まっているか、冷えているか筒に触れて確認し、暖気が済んでから走り出していた。このようにラジエターキャップの筒は、エンジンの調子や状態を確認して、安全に走らせるための実用装備だったのである。このラジエターキャップの上に装飾品を取り付けたのがフードマスコットの原型。次第にフロントグリルの上に装飾を施した金属のパーツを取り付けるようになり、多くの高級車に広まった。

だが、このフードマスコットが衝突したときに歩行者やクルマを傷つけるということで、取り外したり、グリルの中に組み込むクルマが増えてきた。決定的となったのは、21世紀を前に世界中の自動車メーカーが安全性向上のために国際統一規格を設けようと団結したことである。これを受け、日本の国交相や警察庁は、2001年6月に道路運送車両法の保安基準などを改正した。国際基準となる「乗用車の外部突起(協定規則第26号)」が導入され、これ以降、新型車の多くはフードマスコットを廃している。最近はフロントグリルに組み込むクルマが多い。が、安全性を考慮して、衝撃を受けると外れたり、走行中は収納されるマスコットも登場した[1]

装着車[編集]

装着されていた、もしくは設定のある車は、高級車または第二次世界大戦前の車に多い[1]。主な装着車は以下の通り。

なお、クラウンマジェスタのフードクレストマークは、他の形式のクラウンマジェスタやクラウンに装着させて、視認性を向上させるオーナーもいる。

ロールスロイスは今から110年ほど前の20世紀初頭に、シルバーゴーストに「スピリット・オブ・エクスタシー」と名付けた女性のマスコットを付けている。これは自動車雑誌の編集者が知り合いの彫刻家に依頼したものだったが、ロールスロイスの首脳陣が気に入り、正式なマスコットとして採用するようになった[1]

また、ロールスロイスと並ぶ高級車のベントレーには「ウイングドB」と呼ばれる羽根付きのエンブレムが装備されている。これはベントレーの創始者、ウォルター・オーウェン・ベントレーの頭文字である「B」をあしらったものだ[1]

ジャガーのノーズ先端に付くフードマスコットも有名でF・ゴードン・クロスビーがデザインしている。人々から「ザ・リーピング・ジャガー」、または「リーピング・キャット」の名で親しまれ、一世を風靡した。だが、1970年代にアメリカの安全基準が厳しくなったため、ボンネット上にジャガーの顔を描いたエンブレムを張り付けるようになっている[1]

 メルセデス・ベンツもボンネットの上に「スリーポインテッドスター」を掲げた。これは陸、海、空の王者になることを願って装着されたものだ。また、マイバッハにはマイバッハ創業者のウィルヘルム・マイバッハと息子の会社名である「マイバッハ・モトーレンバウ社」の頭文字「M」をかたどったエンブレムを取り付けた[1]

しかし、近年では万が一の事故の時に歩行者を保護するという観点から可倒式になったり、さらには、フードクレストマークが廃止されただの平面的なエンブレムに変更される場合もあり、年々数は少なくなってきている(4代目日産・シーマのマイナーチェンジ等)。またメルセデス・ベンツではSクラスを除く全車(CクラスEクラスなど)、スリーポインテッドスターをフードクレストマークからフロントグリル内のエンブレムに変更した車もある(メルセデスのクーペでは以前からフロントグリル内にエンブレムが装着されており、「クーペグリル」と称される)。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f 交通タイムス社. “高級車に採用されたボンネット上のフードマスコットはなぜ消えた?” (日本語). AUTO MESSE WEB. 2021年10月17日閲覧。

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