パーキングブレーキ

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パーキングブレーキレバー(ポルシェ・997

パーキングブレーキ: parking brake)とは、

  1. 機械の動作や移動をとめるための手動式の制動機構。または、その機構で止める行為。
  2. 自動車ブレーキ機構のひとつ。駐車ブレーキとも表記される。また、運転席の横にあるものは和製英語サイドブレーキとも呼ばれる。英語では、通常のブレーキが効かない場合に非常用として使われるためエマージェンシーブレーキ [1]とも、また手で操作する物はハンドブレーキ[2]とも呼ばれる。

いずれも止めるための仕組みは摩擦ブレーキで、多くの場合、動作はてこねじカムなどによって倍力される。操作力の伝達は、軽量から中量程度の自動車ではロッドケーブル鉄道車両では歯車チェーンによる機械式となっており、重量自動車(大型車・特大車)のホイールパーク式[3]では拘束にばね、緩解に圧縮空気を用いている。

自動車用[編集]

操作方法[編集]

ブレーキ警告灯
パーキングブレーキ使用中やブレーキフルードの液面低下時に点灯する
パーキングブレーキレバーの操作。ブレーキをかけるときはレバーを引き上げ、解除するときはレバー先端のボタンを押して下ろす。
一番左端にあるペダルが脚踏み式のパーキングブレーキ(日産・オッティAT車仕様)
電子制御パーキングブレーキ採用車種のパーキングブレーキスイッチ(ホンダ・ヴェゼルハイブリッド)

自動車のパーキングブレーキは、従来は床のブレーキレバーを手で上に引き上げたり、ダッシュボード付近から手前に引っ張り出したりしていたことから、「ハンドブレーキ」「サイドブレーキ」と呼ばれていた。しかし、足踏み式(解除については手元のレバーを操作するハンドリリース式とペダルを再度踏みこむフットリリース式がある)や、押しボタンスイッチで作動させる電気式パーキングブレーキを採用する流れがあり[4]、「ハンド」「サイド」ともに実情にそぐわなくなってきたことから、カタログの表記などでは「パーキングブレーキ」あるいは「駐車ブレーキ」という呼称に統一されている。

パーキングブレーキは駐車時のみならず、フットブレーキの故障などで車を停止できなくなったときの非常用ブレーキとしても制動手段として使用される。方法は、ギヤを低い方にチェンジし、エンジンブレーキを作用させる。次に、パーキングブレーキを少しずつ引いていき、摩擦により制動をかけていく。

氷点下では長時間の駐車の際に、ブレーキ周りやワイヤー被覆内の水分が凍結し、ブレーキ解除が不可能になる恐れがあるため、パーキングブレーキを使わないことが推奨されている(オートマチックトランスミッションではP位置にレバーをセットし、マニュアルトランスミッションではエンジン停止後、平地・下り坂では後退位置の「R」、上り坂では「1速」にセットする(その後、輪止めを車輪にかませることが推奨される)が、電子式についてはワイヤーを介さないため、その必要はない[5]

また、差動装置リミテッド・スリップ・デフ英語版(LSD)が装着されていない車体(オープンデフ)の場合、パーキングブレーキの掛かる車輪と駆動輪が一致している構造の場合に限り[6]、何らかの原因で片輪が空転する事で接地している車輪へのトルクが伝達されなくなり、結果として駆動輪にトラクション英語版が掛からなくなった際に、坂道発進の要領でパーキングブレーキを半分ほど掛けながら発進の操作を行う、または空転中に断続的にパーキングブレーキを引くなどにより、空転している片輪をパーキングブレーキで強制的に止める事で、瞬間的ではあるがLSDやデフロックと同様の差動制限効果を擬似的に発生させる事が出来る。パーキングブレーキを用いた差動制限は、オープンデフの四輪駆動車オフロード走行を行う場合や、FR車が雪道でスタックした場合に用いられる事の多い走行技術で[7]2010年代以降の車両に採用例が増えてきているトラクションコントロールシステムの一種である「ブレーキLSD」は、この走行技術を応用して車輪の空転をセンサーで検知し、その車輪のみにフットブレーキを掛ける事でLSDと同様の効果を発揮させるものである。

構造[編集]

パーキングブレーキ機構は、ほとんどの場合は後輪に備えられ[8]、一般的にはワイヤーケーブルで作動させるものが多い。

1970年代末から4輪ディスクブレーキが採用され始め、ワイヤー駆動でリアキャリパーを作動させるパーキングブレーキが存在したが、このタイプは自己倍力作用が無く、制動を維持する力(拘束力)が小さいため[9]、ほどなくハブ内部にパーキングブレーキ用の小型のドラムブレーキを内蔵したインナードラム式(ドラムインディスク)に取って代わられた。

後輪がドラムブレーキの場合は自己倍力作用による拘束力が強く、リアブレーキとパーキングブレーキを一つのハブに収められるため、車両総重量の大きい大型トラックバスを始め、大衆車軽自動車などで広く用いられている。

ライトトレーラーでは、車体に設置したワイヤーやチェーンをホイールに引っかける簡易な方式のパーキングブレーキも、近年認められるようになった。

センターブレーキ[編集]

大型車のセンターブレーキ式パーキングブレーキとギアボックス(日野・RB10用)

中期ブレーキ規制対応以前に製作された大型車や、一部の四輪駆動車ではプロペラシャフト(推進軸)を拘束する「センターブレーキ」が採用されていた。これは通常トランスミッションの直後に設置されており、ファイナルドライブギア減速比に応じて拘束力がさらに強まる長所があるが、ディファレンシャルギアの作用によって反対側も回転してしまい、車両が転動する危険もあるため、特に摩擦係数の低い雪道や凍結路面での駐車や、片輪のみのジャッキアップには適していない。これらの道での転動は、他の方式に比べて起きやすいといえる。そのため、中期ブレーキ規制に対応した大型車輌の場合、次節の「ホイールパーク式」パーキングブレーキが主流となっている。

ホイールパーク式(エアブレーキ)[編集]

大型車のホイールパーク式パーキングブレーキレバー(中央 : 三菱ふそう・エアロスター用)

大型車のほとんどは基礎ブレーキがエアブレーキで、そのためのエアコンプレッサーを持っており、2000年前後に発売された車種以降はパーキングブレーキの動作にも圧縮空気を用いている。圧縮空気でパーキングブレーキ用のブレーキチャンバ(通常はブレーキチャンバが二重系になっており、主ブレーキ用の空気室とは別にパーキング用の空気室がある)を加圧することにより、パーキング状態が解除されるもので、シフトレバーや運転席の横に短い操作レバーがあり、一般的にレバーを上げると拘束(駐車状態)、下げると緩解(走行状態)となる[10](マキシ式と呼称される場合もある)[11]

オートバイ用[編集]

オートバイにおいては、斜面に駐車してサイドスタンドを立てた際に車体がずり下がり転倒する恐れがあるため、また坂道における停車時に手あるいは足をブレーキから離しても車両が動かぬよう、装備している場合がある。ワイヤー式ドラムブレーキを装備する車種[12]において、また油圧式ブレーキを装備する車種において、機械的にブレーキレバーを固定する簡易なパーキングブレーキ機構を備えるものが存在している。また、ビッグスクーターにおいては、乗降時の安全性を確保するなどの目的で、過去に見られたブレーキレバーロック機構とは異なる専用の「パーキングブレーキノブ」などの装置を備えた車種が見られる。

脚注[編集]

  1. ^ : emergency brake
  2. ^ : hand brake
  3. ^ プロペラシャフトにパーキングブレーキが無く、車輪に装備されている通常のホイールブレーキを兼用する方式。
  4. ^ 電動式は欧州高級車などから普及が始まった。日本車における初採用はレクサス・LSであり、その後いくつかの日本車にも採用されている。
  5. ^ 初代レンジローバーのパーキングブレーキはプロペラシャフトと同軸のセンターブレーキであるが、その動作にはワイヤーに代えてロッドを用いており、ある程度の凍結であればパーキングブレーキレバーを押し込むことで解除できるようになっている。
  6. ^ 例えば後輪のみにパーキングブレーキが掛かる構造のFF車や、後述のセンターブレーキ車などでは使用出来ない。
  7. ^ 雪道の運転 快適なスノードライブの為に
  8. ^ 小型から中型のトラック、バスや四輪駆動車ではプロベラシャフト前端に専用ブレーキドラムを持つ「センターブレーキ」も多い。乗用車で前輪にパーキングブレーキを備えた車種としては、スバル・レオーネが挙げられる。これには、対米輸出に際し、「駐車ブレーキは駆動輪に設けること」とされたアメリカのいくつかの州法に適合させる目的があった。
  9. ^ それ以外にも、ワイヤーディスク機構は構造上スライド式キャリパーにしか内蔵できず、ブレーキキャリパーのマルチピストン化にも対応できなかったため、1990年代までには廃れた。
  10. ^ バスの場合、インパネ側にレバーがある場合があり、その場合は上げて走行、下げて駐車となる。
  11. ^ 大型セミトレーラトラクタの場合は、パーキングブレーキとは別にトレーラ側にだけブレーキを掛けるレバーがあり、それを「ハンドブレーキ」と呼ぶ場合があるが、駐車ブレーキのことではない。
  12. ^ ホンダ・CT110ホンダ・リードなど

関連項目[編集]