エアロパーツ

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レース車両には数多くのエアロパーツが装着される GT-R GT500の例

エアロパーツ (aero parts) とは、自動車の部品の一種。空気力学的な抵抗揚力の低減、操縦・走行安定性の向上、エンジンブレーキの冷却効果増大、車体の汚れ防止などを目的とする。車体外部に取り付けるものが多く、空力特性よりもデザイン性が優先される場合もある。エアロ空力的付加物などとも呼ばれる。

種類と効果[編集]

以下に挙げるものの他にも、車種や目的に応じて様々なエアロパーツがある。

フロントスポイラー[編集]

エアダムとも呼ばれ、主に、車体下面への空気の流入を抑制し、揚力を低減する部品。離対気流等、車体進行方向前方から気流を最も受けるパーツである。フロントバンパーと一体式になったものは「フロントバンパースポイラー」と呼び、フロントバンパー下部に装着するものを「フロントアンダースポイラー」「フロントハーフスポイラー」「リップスポイラー」「チンスポイラー」などと呼ぶ。

一般車両に取り付けたフロントスポイラーにウインカーなど重要保安部品がついていた場合はオーバーハング規定が採用され、 その最低部が最低地上高となる場合が多いが、何も着いていなかったりリップスポイラーなどの場合は、その規定が当てはまらないため最低地上高の対象外となる。

フロントスポイラー、サイドスカート、リアスポイラーの3つを合わせてフルエアロと呼ぶ場合がある。


サイドスポイラー[編集]

サイドスカート、サイドステップ、サイドシルプロテクター(主に日産純正部品)とも呼ばれる。両サイドに装着し、車体横に流れ込む風を効率よく後部に受け流す。

リアアンダースポイラー[編集]

リアハーフとも呼ばれる。リアバンパーの形状を最適化し、後方にできる渦の発生を抑え、スムーズに気流を受け流す。リアバンパーと一体式になったものは「リアバンパースポイラー」と呼び、リアバンパー下部に装着するものを「リアハーフスポイラー」「リアスカート」などと呼ぶ。

リアウイングスポイラー[編集]

リアウイングスポイラーを装着したスカイライン

リアウイングスポイラーは車体後方上部に装着し、後方にできる渦の発生を抑え、スムーズに気流を受け流す整風効果を持つ。さらにリアウィングはダウンフォースにより主に後輪のグリップ力を増大させる効果が期待できる。

後部ガラス上端部にスポイラーを設けるのが最も整風効果が高いとされているが、デザイン的にトランクリッドの縁に設けられることが多い。主にスポーツ系の車両に装備されるものだが、小型のものはセダン系にも装着されることがある。ブレーキランプの一つ、ハイマウントストップランプを内蔵することもある。

空力的な効果は、車体上部の気流がボディ後端に添って下向きに吹き降ろすことで揚力が発生するのを防ぐことである。同時に車体下面の気流を加速するため車体後方に発生する渦は小さくなる。

スバル・インプレッサに装備される通称「本棚ウィング」

しかし実際に効果を発揮するにはリアスポイラーまできれいに気流を導く必要があり、流線形のスポーツカーならば高速時において標準装着のスポイラーで効果を体感できると言われているが、セダンタイプの場合はスポイラーの形状をリッドより極端に突出するかフラップ状に整形しないと十分な効果を発揮しない。

R32型GT-Rに標準の大型Rスポイラーにおいてさえもトランクからの高さが不足しており、大型化に見合う程のダウンフォースを発生しなかったためトランクリッド端にフラップを追加したというエピソードがある。これはR32登場当世に高性能を誇示する大型のRスポイラーの高さが認知される限界の高さだったためである。

大型リアウイングを装着する場合は構造変更申請が必要となる場合もあるが、スポーツカーラグジュアリーカー等のオーナーの中には、そうと知らずに装着している者も多く、度々話題になる。メーカー純正のリアスポイラーには構造変更申請が不要な物が多い。社外品でも翼端板をr5以上のものにし鋭利な角をなくしてから全幅の片側16.5センチ以内に装着する、翼端板を大きくし車体との間が2センチ未満とする等、合法化する手段はある。メーカーによっては車種専用に取り付け幅を設定し車検対応品として売り出しているものもある。

テールゲートスポイラー[編集]

テールゲートスポイラーを装着したシビック

ルーフウイングとも呼ばれる。ハッチバック車の後部ガラス上端部にスポイラーを設けるものである。ハイマウントストップランプを内蔵することもある。ハッチバック車の後部は窓ガラスで占めらているが、整風効果により降雨時の後方視界の確保に効果的に作用する。

リヤディフューザー[編集]

車体下部を通る風をバンパー下部から効率良く抜くことにより、地面効果の作用を強め底面を負圧にして、リアタイヤ付近に大きなダウンフォースを発生するパーツである。ディフューザーの効果を十分に発生させるためには底面全体をフラットなカバーで覆う必要がある。レースカーでは非常に重要なパーツで様々な工夫が見られる箇所であるが、市販車程度の車高とアンダーカバーが無い状態では十分な地面効果は働かず、ドレスアップパーツに過ぎないものが多いが、車体下部の整流は空気抵抗の削減と風切り音低減に効果がある。

エアロガーニッシュ[編集]

グリルガーニッシュとも呼ばれる。グリル部に装着し、エンジンルーム内に進入する気流と受け流す気流を調整する。一定の冷却効果を狙ったものもある。

エアロガーニッシュは一見してドレスアップの目的のみに装着されると考えられる場合が多いが、実際にはサイドスポイラーより気流の影響を受けるエアロパーツとして知られ、各メーカーでは度重なる風洞実験を繰り返しながら設計される。ラジエターがフロントグリル後部に設置されているタイプの自動車においては、開口部の大きさに重きが置かれ、アンダーグリル部にラジエターが装着された自動車は、ボンネット上部に風を受け流すパーツとして、その角度に重きが置かれて設計される場合が多い。


カナード[編集]

スラストスポイラーとも呼ばれる。競技用車両のフロントノーズ部の前面から側面にかけてのR部に装着し、圧力の高い車体前部から側方に加速された気流を側方及び上方へ押しやり、車体側面に計算された縦渦を発生させる空力デバイスである。ボディ横の乱流を抑制して直進安定性を増やす効果がある。またホイールハウス内に溜まった空気が吸い出されダウンフォースを発生させる。

Audi R8 LMSに付けられたカナードとスプリッター

間違えやすいがカナード自体が受け止めるダウンフォースはそれほど大きくなく、その後ろの空気を最適化させることによりダウンフォース及び大きな直進安定性を得ている。他にブレーキの放熱にも大きな効果があり、ホイールの回転から気流を離すなどの効果がある。 カナードはフロントの左右に飛び出した羽のような形状なので人を傷つける恐れがあることから、 公道で使用するには5R以上の丸みをつけたり、縁に5R以上のゴムモールなどを巻くなどの処置をする必要がある。

スプリッター[編集]

フロントフロアを水平に延長させる形でバンパー下に取り付け、ボディ下面に向かう気流を受け止める板状の空力パーツ。 フロントバンパー前方は高速走行中に非常に高い正圧が発生する部分であるが、 この正圧と路面近くの圧力の差によりスプリッターは下向きに強く押さえつけられるため、高速走行中に大きなダウンフォースを発生させる。

エアロミラー[編集]

純正のドアミラーは形状的に風切り音を誘発しやすいことから、主に風切り音を防止するための空力的なデザインがされているミラーのことである。 交換する場合は、可倒式か脱落式でなければ公道で使用することはできない。

タイヤディフレクター[編集]

馬蹄型のタイヤディフレクターを採用したマツダ・アテンザ。車両下部の前輪前方部分にディフレクターが確認できる

タイヤスパッツ、タイヤストレーキなどメーカーにより呼び方は異なる。回転体であるタイヤに気流が当たった場合、回転により生じた乱気流により気流が撹乱され、それが大きな空気抵抗及び操縦安定性が不安定になる要因となる。 それらを改善するため、タイヤに当たる空気を抑制する目的でタイヤ前方またはタイヤ前方のやや車体縦中央よりの床下にタイヤに対し直角方向に装着される整流板。これは汎用品や社外品で販売されることはほとんど無く、純正で装着されていることが多いパーツである。 ほとんどのものは板状だが、中には型にすることにより整流板自体の空気抵抗の低減とブレーキ冷却性を高めたものを用いるメーカーも存在する。

GTウイング[編集]

GTウイングを参照

一般用エアロパーツとレース用エアロパーツ[編集]

通常、車体の空力設計が高いレベルの車両は通常に走行する際にさほどエアロパーツは必要は無いが、車両の揚力や乱気流、不要な熱を生じる箇所に適切に用いればより効果を発揮する。 アウディ・TTが超高速域での事故多発を受けリコール扱いでウイングが追加された例があるが、これもダウンフォースを増やすことが目的ではなく、空気の流速を部分的に落とし揚力を減らすのが主たる目的である。 車両全体の気流の1/3は車体下を通過するが、車体下の整流は排気管やサスペンション、駆動系などが配置されている都合上、車両形状デザインのみでの整流は制約があるため、燃費向上を目的とした空気抵抗低減のためメーカー純正でもアンダーカバーやタイヤディフレクター等のパーツで整流が行われる例が増えている。 一般車に比較してレースカーに装着されるエアロパーツの大半は、積極的にダウンフォースを得る事とドラッグ(空力的な走行抵抗)の低減に重きを置いて設計される。

エアロパーツの効果は低速域でも存在するが、サスペンションや駆動系の機械抵抗などの空力以外の要素の方が影響が強く、数値などには表れにくい。しかし速度が上がるほど速度の2乗に比例して空力がおよぼす影響の比率が高くなる。空力設計が確立されていなかった古い時代ではエアロパーツは150km/hを超えないと効果が無いと言われていたが、正しく設計されたエアロパーツであれば25km/h程度で効果が発生し始め、60km/hぐらいの速度では効果も体感できる。

GTレースカーのように車高を落として低重心化した上で、高速走行のために、より大きなダウンフォースも得る必要がある車両には、車両底部を平坦にし(フラットボトム化)、フェンダーや、ボンネットにとどまらず統一した空力設計をする必要がある。全体の空力を考えないまま一般自動車車高調等で低重心化すると高速走行時に離対気流が発生して揚力を発生したり、後方にできる空気の渦等を適切に処理できなくなり、狙いとは逆にドラッグを大きくして操縦性に悪影響を及ぼすこともある。

保安面[編集]

一般的にフロントスポイラーやリアバンパースポイラー等を装着すると空力効果があるように見えるが、ドラッグの低減と効率的な開口を重視したものが目的に適っていると言える。 保安上空力的に実効的なパーツは技術的に難しいためにドレスアップ性主眼が置かれ優れている製品が多い。対してレース用の車両は乗員の保護が考慮されているので規則で許される限りの空力設計が可能である。

ドレスアップ目的のエアロパーツ[編集]

近年ではセダンミニバンステーションワゴンなどを中心に、ファッション性を重視したドレスアップパーツとしてのエアロパーツが人気である。これらの大半は空力性能の向上を目的としてはおらず、レース用のエアロパーツをモチーフにしたものが多いものの、主にスタイリングの変化を楽しんだり、オーナーの個性を演出するといったファッションパーツである。現在、乗用車向けに販売されているエアロパーツの中で、風洞実験等で空力効果を実証して開発された商品は限りなく少数である。これは風洞設備の使用料が高額であり、中小企業が多いとされるパーツメーカーらが容易に使用できないことが大きく関係している。このような状況から、エアロパーツと呼ばれながらも空力効果の立証されていない物が大半を占めており、ほとんどのエアロパーツが機能パーツではなくファッションパーツ寄りとなっているのが現状である。

トラック用のエアロパーツ[編集]

スーパーグレートのフルエアロ仕様

トラックにもエアロパーツが設定されている。トラックの場合はキャブ(運転台)よりも高さや幅のある荷台への空気抵抗を軽減する目的で装着されるため、主にバンボディを架装し、高速道路を走る機会が多い宅配便や企業間物流の路線トラック、冷凍車・保冷車、引っ越し業者などに見られる。スピードリミッターの装着が義務づけられているため最高速度は90km/hだが、乗用車よりも投影面積が大きい分、空気抵抗の軽減は燃費節約の効果をもたらす。参考までに三菱ふそう・スーパーグレートの場合、バンボディを架装した場合の空気抗力係数(cd値)は0.53となるが、エアロパーツを装着することによって0.44まで軽減され、巡航時の燃料消費量は3-8%低減される。

エアデフレクター(ウインドデフレクター)
運転台の上に装着し、荷台上方への空気抵抗を軽減する。別名導風板(どうふうばん)。メーカーによっては「ウインドデフレクター」「ドラッグフォイラー」と称する。
サイドパニエ(ギャップシールド)
運転台と荷台との間の隙間を埋める。エアデフレクターとセットで装着すると効果が上がる。
コーナーベーン
フロントの左右端に装着。フロント部で圧縮されて速度の高まった気流を強制的にサイドに導き、気流の剥離を抑制して空気抵抗を減少させる。F1カーにおいてもサイドラジエーター前に設置するのが流行った。
フロントバイザー(ひさし)
本来は車内の日よけでは遮りきれない直射日光を抑えるために装着されるが、エアロパーツとして開発されたフロントバイザーはフロントガラス部分の空気抵抗をキャブ上方へ送り込むことで減少させる。
サイドスカート・リアスカート
目的・効果は乗用車用と同じ。ただし、通常のトラックではこの部分に燃料タンクやスペアタイヤ、冷凍装置、荷役用の機器などが装着されているためむき出しになっていることが多く、装着例は少ない。
サイドミラー
トラックは構造上死角が多くなるためフロントに多数のミラーを装着して視界を補う。しかしミラーが多くなると空気抵抗が大きくなるため、サイドミラーとサイドアンダーミラーを一体のケーシングに収めることがある。
ボルテックス・ジェネレーター
高速走行中に荷台の背後に生じる巨大な渦は大きな走行抵抗になるが、この部材により小さな渦を発生させて大きな渦の発生を抑える。

素材[編集]

エアロパーツの材質は主に合成樹脂である。競技車両用のエアロには、より軽く高剛性で小ロットで製造できるガラス繊維強化プラスチック炭素繊維強化プラスチックが用いられる事が多い。乗用車向けエアロパーツに関しては、アフターマーケット向けパーツメーカー製は小ロット生産、加工性に優れ、また万が一破損した際も補修が容易なガラス繊維強化プラスチックが主流である。また純正用品やディーラー向けアクセサリーとして用意されているエアロパーツには、大量生産に対応でき、リサイクル性に優れたポリウレタンABS樹脂などを採用する場合が多く、真空成型射出成形等によって成型される(破損時の補修は不向きとされている)。なおアフターマーケット向けパーツメーカーの中にもリサイクル性を重視したり、大量生産が見込める人気車種にはポリウレタン、ABS樹脂等を採用している場合もあるが、あくまでも一部に限られている。

注意点[編集]

パーツを装着後、車両の全長など車検証の記載内容から一定範囲を超えた場合には、記載事項の変更をしなければならなくなったり、車検の更新が受けられない場合や検挙の対象になることもあるので、市販品といえども注意が必要である。

一般市販車向けとして販売されているパーツには、小企業、零細企業、あるいは個人工房などでドレスアップ性を重視して製作しているものも多数ある。CFDを用いた空力設計や風洞による空力の検証などはほとんど行われないので、例えばGTウイングをつけることで単純に体感出来るほどのダウンフォースは獲得できても、その裏では体感し難いとされるドラッグも大幅に増大する結果にもなりかねず、本来の空力的な目的である最小限のドラッグ増(場合によってはドラッグ低減)で効率的にダウンフォースを獲得するといったシビアな効果は期待薄と割り切ったほうがよい。メーカーによってはラリースーパー耐久SUPER GT等で得られたデータを基に作成していることを謳っている所もあるが、実際のレース車両とは車高や構成エアロパーツの違いなどで全く別の車(別のセッティングが必要)と考えたほうが良いことも多く、単に販売元が消費者の信頼獲得を目的とした謳い文句となっているのが実情である。

NACAダクト[編集]

ボンネット上とドアの部分に三角形状に凹んだNACAダクトがある。

NACA ダクト[1]はNACA スクープまたはNACA インレットとも呼ばれる低空気抵抗のインレットの形状で、原型が1945年にNASAの前身であるアメリカの国家航空諮問委員会(NACA)によって開発されたことからこの名称で呼ばれる。

NACAダクトの目的は空気流の乱れを最小に抑えた状態で冷却用途等の目的で空気をダクト内に導く事である。このデザインは航空機等の流線型の機体の表面に突起物を設けずに空気を取り入れる構造から、元々は"サブマージド・インレット"と呼ばれていた。

設計上、大流量の吸気には適さない為、ジェットエンジンの吸気口での使用はYF-93ショート SB.4等、少数に限られる。内燃機関を使用する車両などにおいては一般的に使用される。

脚注[編集]

  1. ^ Frick, Charles W., et. al. NACA ACR No. 5120, An Experimental Investigation of NACA Submerged- Duct Entrances. NACA, November 13, 1945. Abstract, Full report.

資料[編集]

  • Staniforth. Race and Rally Car Sourcebook. ISBN 1859608469.  (Practical guidance on designing and building NACA ducts for motor-racing applications)

外部リンク[編集]

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