ドラッグレース

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「ドラッグスター」と呼ばれるドラッグレース専用車両

ドラッグレース: Drag race)は、アメリカを発祥とする、直線コース上で停止状態から発進し、ゴールまでの時間を競う自動車競技

概要[編集]

シグナルが変わる瞬間の一瞬の反射神経と、巨大なトルクをいかに確実に路面からの推力に変換し、さらにパワーを乗せてゆくか、シフトチェンジやペダルワーク、そしてそれらを維持する精神力を競う。

元々はアメリカの若者の間での夜中の違法レースが発祥とされている。サーキット競技とは異なり、ドラッグレース専用のハイパワー競技車の場合は数秒、ストックの市販車でも十数秒から二十数秒で勝敗が決し、またスタート前のバーンアウト(Burn out, バーンナウトとも)および、場合によっては走行中にも濛々と上がる白いタイヤスモークやナイトラス・オキサイド・システムのパージバルブを作動させたときに出る白煙、直管(サイレンサー無しの排気管)から盛大な音を響かせるエンジン等、見た目にもインパクトが強い競技でもある。そのため、競技としてではなく興行として行われることもある。

発祥地のアメリカではさまざまなクラスに分けられ、全米規模の協会もあるなど、モータースポーツとしての地位を確立している。日本国内ではJDDAやビッグエンドレーシングクラブ (BERC) のレースが知られているが、一番歴史が古くトップフューエルからナンバー付き車両まで一番エントリー台数が多いのは2012年に20回目を迎えた、富士スピードウェイで毎年7月の最終日曜日に開催されるスーパーアメリカンフェスティバル (http://amefes728.net/) である。

歴史[編集]

車が2台以上揃うと競走が始まるのは有史以来の常であり、概要に書いた通り、公道で自然発生的に行われていたレースが発祥である。ただし、このころは競技化されていない。

それを、アメリカのドラッグレース団体「NHRA(ナショナル・ホット・ロッド・アソシエーション)」が競技化したことが「競技としての」ドラッグレースの始まりとされる。

競技[編集]

スクーターからスポーツカー、果てはセムアイセミトレーラー用トラクターヘッド)やスノーモービルなどの特殊な競技車まで、多種多様な車種で行われる。車種は通常競技では統一しているが、公道での違法レースや興行の場合は異なる車種(スーパースポーツバイクスーパーカーなど)で行われることもある。

また、ほとんどの場合、1対1の形式で競われる。

距離は特に定められていない。ルールによって短い距離で行うこともあれば、長い距離で行うこともあるが、1/4マイル(約402m)で行われることが多い。特に1/4マイルでのドラッグレースのことを日本では約0-400mの競技区間であることからゼロヨンと呼ぶ。

バーンアウト[編集]

バーンアウトを行う様子

スタート直後から巨大なトルクを路面に確実に伝えるため、ドラッグレースではしばしばバーンアウトが行われる。バーンアウトとは、スタート前に意図的にタイヤを空転させて加熱させる行為であるが、同時に路面にタイヤのラバーを焼き付けて摩擦抵抗を上げる意味も持ち合わせている。この行為によって、空転するタイヤから凄まじい白煙があがる。

クリスマスツリー[編集]

ドラッグレースを行う為に左右にコースを分断された「ドラッグストリップ」。中央に見えるシグナルは通称「クリスマスツリー」と呼ばれる。

ドラッグレースは「ドラッグストリップ」と呼ばれる左右に分断された直線コース(レーン)で開催される。左右に分断されたその中央には通称「クリスマスツリー」と呼ばれる各種信号が縦に並列にならんだシグナルシステムが存在する。一般的なクリスマスツリーにあるシグナルは、上から順に下記に意味がある[1][2]

プレステージライト
プレステージライト (Pre-Stage Indicator Lights) とは、スタートライン手前にある1本目の光電管センサーを跨ぐ事で黄色いライトが点灯する。スタートラインの15cm手前であることを知らせる意味で設置されている。
ステージライト
ステージライト (Stage Indicator Lights) とは、前述のプレステージライトの先15cm地点にある2本目の光電管センサーを跨ぐことで点灯する。プレステージライトの下にあり、形状もライトの色もプレステージライトと同じである。このライトを点灯させた事によって、車両がスタート準備に入った事を意味して知らせる。複数車両で競技する場合、左右のレーンの車両が共にステージライトを点灯させた後に、下記のカウントダウンライトが点灯を開始する。
カウントダウンライト
カウントダウンライト (Countdown Lights) とは、競技に参加する全車両がステージライトを点灯させた後に始動し始めるシグナルである。前述までのプレステージ及びステージライトと形状や色が異なる場合が多く、多くのクリスマスツリーでは橙色が採用されている。したがって日本ではスリーアンバーライト (Three Amber Lights) とも呼ばれる。但し、クリスマスツリーは信号機に由来したスターティングシステムである為、このカウントダウンライトは黄色で行われる場合もある。
ストックスタートの場合は上から順に0.5秒毎にカウントダウンを行うように下に点灯する。競技のシリーズによっては、一度点灯したカウントダウンライトが消灯しながら下に降りていくものもある。
プロスタートの場合、カウントダウンを行うことなく3つのライトが同時に0.4秒間点灯する。
これらの点灯を行った後、スタートを知らせるグリーンライトが点灯する。
グリーンライト
グリーンライト (Green Light) とは、スタートを知らせる緑色のシグナルである。前述の通りプロスタートの場合はカウントダウンライトが0.4秒点灯した後にグリーンライトが点灯する。
ストックスタートの場合、カウントダウンの点灯ディレイに準拠する為、一番下のカウントダウンライトが点灯した0.5秒後にグリーンライトが点灯する。
レッドライト
レッドライト (Red Light) とは、フライングスタートを行った事を知らせる為のシグナルである。
グリーンライトが点灯する前に車両を発進させてしまった場合にレッドライトが点灯する。フライングスタートは反則行為である為、計測タイムは無効となり敗北となる。

自動車の性能を測る物差し[編集]

そのわかりやすさから、市販車等の性能を表す一つの物差しとしてもゼロヨンのタイムが使われることがある。かつてはメーカーがカタログスペックの一つとしてゼロヨンのタイムを掲載することもあった(少なくとも、かつての日本車韓国車のカタログ・CMで見られることがあった。SS:スタンディングスタート4分の1マイルx秒と表記される場合もある)。

自動車趣味において、いわゆる「足まわり」が悪く、優れた加速性能を持ちながらも、ブレーキング、ハンドリング、コーナリングなどの性能がまるで伴っていない、「SS1/4のタイムのみが取り柄」のような車に対し、そのアンバランスな魅力を認める、愛情を込めた揶揄として、「直線番長」の「称号」が与えられることがある。

また、かつての国鉄専用に用意される高速バス車両の性能要件には、「ゼロヨン29秒以内」というものが含まれていた。これは元々、高速道路上のバス停から発車し、素早く安全に本線車道に合流することを考慮したものである。国鉄専用形式はこのために、大出力エンジンと、1速を発進ギアとする特別なギア比マニュアルトランスミッションを装備していた(この目的では、日本では「ゼロヒャク」とも言われる100km/hまでの加速時間(en:0 to 60 mph)のほうが直接的な指標ではある)。

参考文献[編集]

脚注[編集]

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関連項目[編集]