デュアルクラッチトランスミッション

デュアルクラッチトランスミッション (Dual Clutch Transmission) とは、自動車など車両用の有段自動変速機の一種でギアが2系統あり、それぞれにクラッチがあることからこの名前がある。
略してDCTと表記される。日本では、デュアルクラッチのほかツインクラッチとも称される。またダブルクラッチと呼ばれることもあるが、運転技法の「ダブルクラッチ」とは異なるので注意が必要である。
概要[編集]
手動変速機(マニュアルトランスミッション、MT)と同じ平行軸歯車とクラッチを2系統持つ。片方が奇数段を、もう片方が偶数段を担当し、それらを交互に繋ぎ変えながら変速する。繋がれていない方は次の段を予測し待機状態にする。クラッチ操作および変速操作はコンピュータ制御により自動的に行われるため、操作は通常のATと同じである。
2003年に市販車にトルクコンバータ無しで初採用されて以降、小排気量過給エンジンによるダウンサイジングコンセプトとの相性の良さから欧州車に採用が拡大している[いつ?][要出典]。おおむねMTの感覚を好む欧州で評価が高い反面、トルクコンバータ+ステップATのスムーズな発進と変速を好む米国と日本で評価が低い[要出典]。2014年、トルクコンバータとの組み合わせも発売された。
歴史[編集]
レース用としてポルシェが最初にセミオートマチックで使用した[1]。
実際にスムーズな発進や変速を実現するためには駆動系の高度な電子制御化も必要で、その後ボルグワーナーが開発を続け、市販化されたのは2003年アウディとフォルクスワーゲンによるDSG(Direct-Shift Gearbox )として4代目ゴルフR32に搭載されたのが最初になった。ポルシェの市販車に採用された最初は2008年のポルシェ・911である。それ以降はほかのメーカーからもDCTが採用車が発売、DCT自体も他社によっても開発され採用する車種は増大傾向にある[いつ?][要出典]。
2014年、動力伝達機構にトルクコンバーターを採用したアキュラ・TLXが発売された。
メカニズム[編集]
奇数段・偶数段は、例えば6速の場合は「1-3-5-R」段と、「2-4-6」段を分担する。二組の入力側ドライブギア(駆動側歯車)とクラッチは同軸上に配置され、片方のみが動力を伝える。停止状態から走り出す場合、あらかじめ1速がコンピュータによって選択され、シンクロ動作を終え、奇数段軸に嵌合して待機している。発進のためアクセルを開けると、奇数段軸側のクラッチを半クラッチ状態またはトルコンを経て締結し、車軸に動力を伝え前進する。その間、もう一方の偶数段の2速ギアセットはシンクロ動作を終え、軸に嵌め合わされる。偶数段軸はエンジンと接続されていないので出力軸側から駆動され、カウンターシャフトと入力軸までが空回りをしながら待機している。車が2速で走行する領域に入った時、奇数段軸のクラッチを開放し偶数段軸のクラッチを接合することで短い時間で変速する。また2速への変速が完了すると同時に、奇数段ギアセットは次の変速に備えて3速または1速のシンクロナイザの嵌合を終えて待機状態に入る。以後の変速も同様に行われる。つまり、2つの変速系統を専用クラッチで交互に切り替えて変速する。
運転状況によりギアを飛ばしてシフトアップやシフトダウンする機種もあるが、奇数段と偶数段を交互に使う関係上、ほとんどの機種では一段ずつ上下する。DCTは一段あたりの変速時間自体が短いため、複数段の変速であっても敏速である[2][出典無効]。
2系統の独立したクラッチディスクの配置方法は大別すると以下の二種類となる。まず同心円状に内側と外側に配置する構造が特許になっている。特許を持つメーカーが組み立てメーカーにクラッチ機構を納入してDCTを生産する。内側と外側のクラッチは回転モーメントが異なるので制御が難しい。もうひとつは筒状の部品で一つ目のクラッチを外側から回避し、二つ目のクラッチ入力面を回転させ、同じ直径のクラッチを同軸線上に二組、並列に配置する方法(入力面だけなら直列に配置されるが、締結機能は並列)となる。同じ形状のクラッチを二組使えるので動作が安定する。ただし軸線方向の変速機外寸が長くなる。例外的に、入力直後に平行する2つのカウンターシャフトに振り分け、それぞれのカウンターシャフトの入力端にクラッチを設け、カウンターシャフトと出力軸の間で変速機を構成し、クラッチが同軸上に並ばない配置も考案されている。しかし外寸が大きくなるため自動車に使われない。
歯車は従来のMTと同じ構成のシンクロメッシュ機構を持つ常時噛合式で、シフトフォークを油圧アクチュエータまたは電動機で作動させて変速する。DCTの変速機構は二倍に複雑なためシンクロメッシュ機構を入力軸とカウンターシャフトの双方に持つものが多い。
クラッチディスクは滑りを制御するために多板式となり、湿式多板と乾式多板がある。湿式多板クラッチは基本的に無交換で長寿命とされていたが、渋滞など走行条件によっては短時間で摩耗する場合がみられる。多くは摩耗によるストロークやクリアランスの増加は自動調整されるか、あるいは制御装置が再学習機能を持つ(日産・GT-Rは定期調整が指定されている)。湿式多板クラッチは大トルクに対応しながら滑りを制御しやすいため、大きな車種に用いられる。乾式多板クラッチは対応トルクと滑り時間が制限されるが、構造がシンプルで部品数や油量が湿式に比べ少ないため運用コストに優れる。また乾式の伝達効率は湿式に比べ高いため、省燃費性が求められる小型車種に向いている。クラッチ操作は基本的に油圧を用いる。初期の油圧ポンプは機械式だったが、後に電動式油圧ポンプも使用されるようになった。その他クラッチ操作を電動機で行い油圧フリーとした(二輪車用)電動化DCTも開発されている。
二つのクラッチを切り替える時間は0.05秒以下と短く[要説明]、エンジン回転数を合わせるために最短でも0.2秒ほどクラッチを滑らせている。シフトアップ時はエンジンの惰性をパーシャルに駆動軸に伝えながら回転を落とし、完全に締結した後に燃料噴射を再開する。クラッチの負担は多いがエンジン惰性を有効利用して変速中の大部分も緩加速している。減速時のシフトダウンでアクセルを戻していれば、通常はエンジンブレーキに燃料を出さず、トルコン無しでは滑りクラッチを長く使うのでシフトアップより時間がかかるが、スポーツモード等ではクラッチの回転数とエンジンの回転数を合わせるスロットル動作(ブリッピング)で燃費を犠牲にして早くシフトダウンする[3]。
利点と課題[編集]
MT的な有段変速機の感覚をダイレクトでリニアであることを好む者(多少の変速ショックと連続可変しない感覚を好む者)に評価が高いが、従来のMTやAMTに比べれば変速ショックは少なく、それらの正常進化と考えられる。
加速時のシフトアップの効率が良く、変速中も加速が完全には途切れない[4]。加速性能が良く、自動変速でMTより燃費が良い。一例として、2012年9月に発表[注釈 1]されたアウディ・S3(6速DCTと6速MTの2つがラインナップに用意されている)のデータでは、停止から速度100 km/hまでの加速時間がMT車の5.4秒に対して、DCT車では5.1秒となっている。また、100 km走行あたりの燃費は、MT車の7.0 L(14.2 km/L)に対して、DCT車では6.9 L(14.4 km/L)であり、さらに二酸化炭素排出量はMT車の162 g/kmに対して、DCT車では159 g/kmとなっており、加速性能、燃費性能、環境性能の全ての面でMTよりも優位となっている。
無段変速機のように常時、車速とエンジン回転数を調整しておくことはできない。
減速時にも断続的にシフトダウンが必要なのでオルタネーターで回生する第三のエコカーでは回生が中断して摩擦式CVTより不利である。出力軸側にある電動機で駆動と回生を行うハイブリッドカーの場合、エンジンブレーキの引きずりがあるので回生効率で不利[要説明]、あるいはクラッチを離して回生を優先すると、エンジン再始動を含むタイムラグが大きい。
MTと似た構造を持つため、伝達効率はMTに近いが、アクチュエーターの作動用油圧ポンプによる駆動ロスなどでMTより3 %[要出典]ほど劣る(オイルポンプ自体も騒音源となる)。 MTよりも燃費が良いのは自動変速の最適化の分である。当初から重量面での不利が指摘されていたが、VWでは2010年Q3からティグアンに搭載された7速DSGで、許容トルク量を増加させながら、リバースギアシャフトの省略など全体の見直しで、従来の6速型に比べ大幅な軽量化を果たし、競争力を確保している[5]。
DCTは変速中だけ滑りを生じる摩擦伝達を用いる。摩擦式CVTは常に少量の滑りを生じる摩擦伝達で無段変速する。この特徴の違いから、DCTは摩擦式CVTより大きなトルクに対応できる。実際、DCTは遊星歯車式ATと同様に大型トラックや大型バスおよび鉄道車両に応用済みである一方、摩擦式CVTは乗用車でさえ大容量化には限界がある[注釈 2]。ただし、摩擦式以外のCVTである電力(機械併用)式CVT[6]・油圧(機械併用)式CVTではこうした許容制限はなく、大型(建機・農機)車両や・鉄道車両・船舶等(鉄道車両・船舶での油圧式CVT使用実績は主推進系以外で)にも使われている。
利点[編集]
- MTに準じた高い伝達効率を実現している[1]。
- 変速指令でクラッチだけを繋ぎ変えるので変速が早い[1]。操作に対するタイムラグが短く、駆動力の途切れる時間を最小限にでき駆動効率が高い[1]ため、燃費が良く加速が速い[1]。
- MT(6×2速等の副変速機付多段MTを除く)を超えた多段化が可能[1]。変速差が小さいためショックが小さく[1]、低燃費を実現できる[1]。
- 道路交通法上ではAT車扱いとなる為、AT限定免許で運転が可能である[注釈 3]。
- ダウンサイジングコンセプトは小径ターボチャージャーの採用によってターボラグを抑制しているが、エンジン単体ではターボラグの存在が避けられない。DCTは短い変速時間によって、巡航から加速に移る際のターボラグを隠蔽できる[要出典]。ダウンサイジングコンセプトは、巡航時は過給圧を抑えて排気量なりの低燃費を達成する一方、加速時は過給圧を上げて排気量を超えた大トルクを引き出すことで高いドライバビリティの獲得を狙うものである。変速時間の短いDCTはシフトダウンを伴う急加速時において、エンジン回転数を素早く上げることで排出ガス流量を速やかに増加させ、短時間に過給圧を上げることができる。
- ハイブリッドではないエンジンを回し続ける通常の車種において、ターボチャージャーなどの過給機付きエンジンの場合、変速が短時間で終了するために過給圧の低下が少なくターボラグが減少する[要説明](「エンジンのダウンサイジング」の潮流にマッチしている)
- 減速中のエンジンブレーキの効きが一定で、アクセルペダルによる車速管理が容易である[要説明]。
- シフトアップ時は滑りクラッチの働きを含めて効率的、変速中も緩加速は続き、シフトショックも少ない。
- 構成要素の多くがMTの既存部品と同じで、信頼性が期待でき、生産ラインを流用できる。
- 高出力の大型車にも使える。
- クラッチ操作が自動制御されるので、クラッチの長寿命化が期待できる。
欠点[編集]
- MTと比べてクラッチ、フライホイール、ねじりダンパ、変速機構が重複し、大きく重くなる。
- MTと比べて滑りクラッチとシフトフォークの操作に油圧を用いており、そのオイルポンプのエネルギーロスを伴う。
- トルクコンバーター無しでは、エンジン回転数と合わせるためクラッチを滑らせる時間が長く[要説明]摩擦損失を生む。
- トルクコンバーター無しでは、ATと同様の感覚を期待するユーザーによっては僅かな変速ショックが問題とされる(MT愛好者のようにダイレクトで良いと評価されない)。
- トルクコンバーター無しでは、発進がスムーズではなく、クラッチ表面の摩耗や発熱からストロークが変わりショックやジャダー、作動音が出る場合がある。VW製DCTではこれらの不具合により、国際的に頻回のリコールが発生している[7]。
- 摩擦式CVTの総合効率に達していない(遊星歯車式に対しても、効率上の優位性は観測されない)。
- 減速時にも断続的にシフトダウンが必要なためオルタネーターで回生するエコカーではCVTより回生が中断して不利。
- 出力軸側のハイブリッド用電動機で回生を優先すると、再加速時にタイムラグが大きい[要説明]。
- クラッチの構造が特許で押さえられているため基幹部品は一社独占であり、製造コストが割高になる。
各社のDCT[編集]
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DCT搭載車種[編集]
2013年現在、デュアルクラッチトランスミッションはスポーツカーの代名詞的存在になっており[1]、ポルシェ[1]製品の大多数がPDKを搭載する他、フェラーリ[1]、ランボルギーニ[1]といったスポーツカーブランドだけでなくアウディ[1]、BMW[1]、メルセデス・ベンツ[1]、ボルボ[1]、アルファロメオ[1]、フォード[1]、現代自動車、ルノー[1]など多数のメーカーが一般の市販車に採用している。しかし日本車(四輪乗用車)においては普及率は低く、ホンダを除くと日産GT-Rと7代目ランサーターボ(ランエボX及びギャランフォルティス・ラリーアート)しかない。
- ドイツ
- フォルクスワーゲン - 「DSG(Direct-Shift Gearbox、Direkt-Shalt Getriebe)」の名称で6速と7速のDCTを展開。
- ゴルフ - 4代目モデルの「R32」で6速DCTが世界初のDCT搭載市販車として先行採用され5代目モデルの「GTX」「GTI」「GT TSI」で本格採用されたのを皮切りに各グレードへ普及。
- ゴルフトゥーラン - 当初のトルコン式ATからマイナーチェンジで6速DCTに変更された。2009年9月のマイナーチェンジで7速DCTとなった。
- ゴルフ ヴァリアント
- ゴルフ カブリオレ
- ポロ
- 2009年フルモデルチェンジより、「コンフォートライン」グレードに乾式クラッチの7速DCTを搭載し日本で発売。
- 2010年6月には1.2L車が登場。乾式クラッチの7速DCTを搭載。
- 2010年9月には1.4L GTIグレードが登場。乾式クラッチの7速DCTを搭載(GTIには、ドイツ本国などでも、MT仕様は用意されない)。
- ニュービートル
- ザ・ビートル
- シロッコ - 3代目モデルの「2.0TSI」(6速)と「TSI」(7速)で採用、以降Rなどに採用。
- ジェッタ - ゴルフ同様、5代目モデルの「2.0T」で初採用。以降各グレードへ普及。
- パサート - 6代目より採用。以降各グレードへ普及。
- パサート ヴァリアント
- パサート オールトラック
- シャラン - 6速DCTを搭載。
- ティグアン - 7速DCTを搭載。
- CC
- アウディ - 「Sトロニック(S-tronic )」の名称で6速と7速のDCTを展開。フォルクスワーゲングループのため、中身はDSGと基本的に同じ。
- TT - 初代の「3.2 quattro」に6速DSGを初搭載。その後2代目にモデルチェンジすると名称をS-tronicと変えてFFモデルにも採用される。
- A1 - 初代より採用。7速DCTを搭載。
- A3 - 2代目より採用。こちらも搭載グレードが拡大しつつある。
- A4 - 5代目A4、およびその派生車種より採用。縦置きエンジン用に新開発した7速DCT。
- A4 オールロードクワトロ - ベースとなったA4と同様に7速DCTを採用。
- A5
- A6 - 4代目A6より7速DCTを採用。
- A7 - 7速DCTを採用。
- R8 - 従来はMTとシングルクラッチAMTの「Rトロニック」のラインナップだったが、2012年7月に登場したマイナーチェンジモデルから、DCTであるSトロニックを搭載。V8にオプション、V10に標準装備となった。
- Q3
- Q5
- BMW - 「M DCT(M Dual Clutch Transmission )」の名称で7速のDCTを展開。
- 1シリーズ - 2008年から「135i」で当初から6速MTとトルクコンバータ併用ATから設定されたが、2010年5月頃からは6速MTと7速DCTに変更された。0→100km/hの所要時間がMTに比べ0.2秒短縮されている。
- M3 - 2008年からM3で6速MTに加え、7速DCTが用意された[8]。0→100km/hの所要時間がMTに比べ0.2秒短縮されている。
- Z4 - 2009年に発売された「sドライブ 35i」と2010年に発売された「sドライブ 35is」に7速DCTを採用。
- 3シリーズ - 2009年に発売された「335i」のクーペとカブリオレに7速DCTを採用。
- M5 - 2011年に発売された5代目M5に、7速DCTを「M DCT Drivelogic(エム・ディーシーティー・ドライブロジック)」の名称で搭載。アイドリングストップ機構に対応。またアクセルペダルを一回軽く踏むだけで最低速度での前進が可能となる「ロー・スピード・アシスタント」を搭載し、渋滞時などの低速域での快適性向上を図っている。
- ポルシェ - 「ポルシェ・ドッペルクップルング」(PDK)の名称で、ZF製7速DCTを展開。
- ポルシェ全体では当初、NAモデルのみに採用されていたが、2009年発売のパナメーラよりターボモデルへも採用された。
- 2012年発表のポルシェ・911のPDK仕様には、Dレンジ走行中にアクセルから足を離すと自動的に惰性走行状態に入ることで駆動系のロスを減らし燃料消費率を低減する機能が搭載されている。
- メルセデス・ベンツ - 「AMGスピードシフト」の名称で7速のDCTを、「7G-DCT」の名称で7速のDCTをそれぞれ展開。
- イタリア
- フェラーリ - 7速のDCTを展開。フィアットグループのため、中身はマセラティ等と基本的に同じ。
- アルファロメオ - 「アルファTCT(アルファ・ツインクラッチ・テクノロジー)」の名称で、ボルグワーナー製6速DCTを展開。
- フランス
- プジョー - 「DCS(Dual Clutch System)」の名称で6速のDCTを展開。プジョーとシトロエンが所属する持株会社「PSA・プジョーシトロエン」社が三菱自動車工業と商品供給契約を結んでいるため、中身は三菱のツインクラッチSSTと基本的に同じ。
- 4007 - 2010年モデルから、ディーゼルエンジン搭載の「2.2HDi FAP156」グレードに6速DCTを採用(4007は三菱・アウトランダーのOEM車)[9]。
- ルノー - 「EDC(Efficient Dual Clutch)」の名称でゲトラグ製乾式クラッチの6速DCTを展開。中身はルノーサムスン車で採用されるパワーシフト®DCTとほぼ同じ。4代目メガーヌから7速湿式クラッチも展開されている。
- ブガッティ・オトモビル - フォルクスワーゲンと同じ「DSG」の名称で7速のDCTを展開。
- イギリス
- 他欧州車
- ボルボ - 「パワーシフト(PowerShift)」の名称でゲトラグ製6速DCTを展開。かつてフォードグループに属していたため、中身はフォードのパワーシフトと基本的に同じ。各モデルの1.6リットル、2.0リットルのエントリーグレードに搭載されている。
- フォード
- 日本
- 三菱自動車工業 - 「ツインクラッチSST(Twin clutch SST)」の名称で6速のDCTを展開。SSTとはスポーツシフト・トランスミッション(Sport Shift Transmission)の略。本体はゲトラグより購入、クラッチについてはボルクワーナー製で制御やチューニングは三菱で担当。
- 4B11ターボ搭載車(ランエボX、ギャランフォルティス・ラリーアート)
- ランサーエボリューションX - 2007年10月1日発売のランサーエボリューションXで採用。日本車では初のDCT搭載車。
- ギャランフォルティス(セダン/スポーツバック)・ラリーアート
- 4B11ターボ搭載車(ランエボX、ギャランフォルティス・ラリーアート)
- 日産自動車 - ボルグワーナー製の6速DCTを展開。
- 本田技研工業 - 7速DCTを展開。ホンダとシェフラージャパンとの共同開発。
- フィットハイブリッド(2代目) - 2013年9月6日発売。
- ヴェゼル - 2013年12月19日発売。
- グレイス - 2014年12月1日発売。
- アキュラ・TLX - 2014年、米国で製造発売。トルクコンバーターを世界初採用。
- アキュラ・RLX - 2014年9月26日、米国で発売。
- レジェンド(5代目) - 2015年2月20日発売。
- ジェイド(日本国内向け) - 2015年2月13日発売。
- シャトルハイブリッド - 2015年5月15日発売。
- 韓国
- 現代自動車
- ヴェロスター - FS系(6速)が韓国車初のDCT搭載車となる。JS系では7速を搭載。
- ツーソン - 7速DCT。1.6Lターボと1.7Lディーゼルに採用。韓国のSUVで初。
- ソナタ - 7速DCT。1.6Lターボと1.7Lディーゼルに採用。
- i40 - 同上。但し、1.7Lディーゼルのみ。
- アクセント - 同上。但し、1.6Lディーゼルのみ。
- エラントラ - 同上。1.6Lターボと1.6Lディーゼルに採用。
- i30 - 同上。但し、1.6Lディーゼルのみ。
- 北京現代・ミストラ - 同上。1.6Lターボに採用。
- 北京現代・セレスタRV - 1.4ターボGDIに採用。セレスタセダンには未設定。
- アイオニック - ハイブリッドカーとDCTの組み合わせをホンダに続き採用。
- 起亜自動車
- ルノーサムスン自動車 - ゲトラグ製の6速DCTを展開(ルノーサムスンではパワーシフト®DCTを名乗る。ルノーのEDCと同じ)。
世界で最初の開発・発表・搭載は三菱ふそうトラック・バスである。トラック・バス用DCTは、パフォーマンス面の他にも経済的メリットが大きい(燃費面、乗客・積荷に対するショックの少なさ、クラッチ寿命延命による費用低減)ため、注目されている。
鉄道車両[編集]
北海道旅客鉄道(JR北海道)のキハ160形気動車は直噴式ディーゼルエンジンと変速1段直結2段の液体変速機の組み合わせで落成したが、その後モーターアシスト方式によるハイブリッドシステムの試験のため、コモンレール式ディーゼルエンジンと日立ニコトランスミッション製のデュアルクラッチ式4速自動変速機に換装された。
発電機兼用のアシストモーターは変速機の外に架装されており、クラッチを介して2速ギアに繋がれ、運転条件によって断続される[12]。併せてエンジンと2本のギアシャフトの間にある2つのクラッチと変速機とプロペラシャフトの間にある逆転機[注釈 4]のクラッチも制御され、駅間の基本的なパターンはモーターのみで起動してそのまま加速、45 km/h以上でエンジンを始動してモーターとの併用で走行、逆転機を中立にして惰行中にエンジンで発電、エンジンを停止して回生ブレーキによるエネルギー回収となっている。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 当時は自動的にいつどのように変速しても良い自動変速機車に対し、手動変速機車では変速タイミングや選定ギアが指定されているなど、手動変速機車に著しく不利になっていたJC08モード燃費表示時代
- ^ 摩擦式CVTは発売当初は小トルクで軽量な小型車両に限られた。その後少しずつ中型車にも使われるようになったが、それでも車両総重量2トン程度、排気量3リットル程度が限界である。この限界は摩擦式CVTのベルト・チェーンが摩擦不足で大きくスリップし、発熱することによる。
- ^ AT限定大型二輪免許には650 ccまでの排気量制限があるため、2015年までに販売されているDCT搭載の二輪車は運転することができない。
- ^ 軌陸車を例外とするほとんどの自動車とは異なり、蒸気機関車を含む片運転台の機関車や単端式気動車を除き、多くの鉄道車両は両方向へ同じ速度で走行する必要があるため、変速機の後段に出力軸の回転方向を逆転させる機構を持っている。
出典[編集]
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 『Racing On』466号 pp.42-53「テクノロジー詳説&バリエーション」。
- ^ 「フォルクスワーゲン ゴルフ TSI トレンドライン 試乗レポート 」 クルマ選びの総合支援ポータル オートックワン 2008年7月17日
- ^ ツインクラッチは走りを革新する - 三菱自動車「Twin Clutch SST」(前編)(2) サーキットでのスポーツ走行が可能な耐久性 マイナビニュース
- ^ トラック用デュアルクラッチトランスミッションの開発 自動車技術会論文集 42(6), 1409-1414, 2011 公益社団法人 自動車技術会
- ^ VWティグアンがマイナーチェンジ 7速DSGを搭載 - Auto Prove(2010年09月11日版)
- ^ 巨大なホウルトラックでは機械的な変速機を用いないディーゼル・エレクトリック方式を採るものもある
- ^ “フォルクスワーゲンの乾式7速DSGと湿式6速DSGは何が違うのか?”. CarMe (2020年1月6日). 2020年9月25日閲覧。
- ^ BMW M3コンバーチブル、欧州で発売開始(2008年4月25日 カービュー)
- ^ プジョーのSUV、4007…新トランスミッション採用(2009年9月11日 Response.掲載記事)
- ^ 2010年7月20日 環境性能・経済性能・走行性能を高いレベルで実現する小型トラック用「新型パワートレーン」を開発 〜新型エンジン「4P10」とBlueTec®システムを採用、商用車世界初デュアルクラッチ式トランスミッション「DUONIC」を新開発〜(2010年7月20日 三菱ふそうトラック・バス社プレスリリース)
- ^ 2010年6月29日 大型二輪スポーツツアラー「VFR1200F Dual Clutch Transmission」を新発売(2010年6月29日 本田技研工業プレスリリース)
- ^ 株式会社 日立ニコトランスミッション > HASTドライブの構造と動作モード
参考文献[編集]
- 『Racing On466号 特集 ポルシェ962C』三栄書房 2013年9月14日発行 ISBN 978-4-7796-1905-2
関連項目[編集]
- トランスミッション(変速機)
- マニュアルトランスミッション(MT、手動変速機)
- セミオートマチックトランスミッション
- オートマチックトランスミッション(AT、自動変速機)
- 無段変速機(CVT)
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