場の量子論

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場の量子論
Feynmann Diagram Gluon Radiation.svg
(ファインマン・ダイアグラム)
歴史

場の量子論(ばのりょうしろん: Quantum Field Theory)は、量子化された素粒子物理ではこれが素粒子そのものに対応する)の性質を扱う理論である。

目次

[編集] 概要

現代的な立場では、量子論の中でも、基本変数として「粒子や剛体の古典力学と同じもの(たとえば位置と運動量)」に選び、足りないもの(スピンなど)は適宜補った量子論を「量子力学」と呼び、基本変数として「場とその時間微分または共役運動量」に選んだ量子論を「場の量子論」と呼ぶ。量子力学は、場の量子論を低エネルギー状態に限った時の近似形として得られる。現代では、古典的に場であったもの(電磁場など)だけでなく、古典的に粒子とみなされてきた物理系(電子など)の量子論も、場を基本変数にしたほうが良いことが判っている。[1]

場の量子論は、高エネルギーの系や、凝縮系(多体系)を記述する。場の量子論は特殊相対論的の要請を満たす形式を備え、量子力学と特殊相対性理論の両方を満足する。素粒子物理原子核物理学物性物理といった領域で、基礎理論として用いられる。

素粒子物理学 
素粒子の振る舞いを記述するのに用いられる。素粒子が反応し新たな素粒子となる現象はその一例である。量子電磁力学ワインバーグ・サラム理論量子色力学といった、実験によって検証されている理論や、弦理論等の仮説上の理論が、場の量子論を基礎として研究されている。
物性物理学 
臨界現象相転移などの多体論的効果を記述する。超伝導BCS理論量子相転移といった物理が、場の量子論の文脈により理解される。

摂動的場の量子論では、粒子の間に働く力は、力を伝える粒子の交換により生じる。例として電子の間に働く電磁力は、光子の交換により生じる。同様に、ウィークボソン弱い力を媒介し、グルーオン強い力を媒介する。

力を媒介するのと同じ場の励起である光子が、塊状の波として電磁波となり、またナノスケールの現象においては粒子のように振舞う。電子も同様で、対応した場の励起として表される。このように、古典物理での粒子と場は、場の量子論により粒子と場の2重性を持つ形式に書き改められる。

[編集] 素粒子論の基礎理論

場の量子論は多くの素粒子論の基礎理論である。標準的な素粒子模型(量子電磁力学・ワインバーグ=サラム理論・量子色力学・標準模型)、多くの研究者が集中している超弦理論が、この枠の上にある。場の量子化の形式は量子力学の多体系への拡張となっている。多体形式であるため、固体物理学への拡張が可能になり、素粒子論以外でも広く用いられる。

初めに完成した場の量子論は、電磁場に適用した量子電磁力学である。この理論は、非常に高い精度で実験結果と一致し、繰り込みゲージを用いる方法はワインバーグ=サラム理論量子色力学の基礎となった。

[編集] 意義

場の量子論は、ハイゼンベルグ・パウリが創った。その後、デイラックの相対論的電子論と同等が判明した。しかし、デイラックは、別分野(相対論的量子電子論)で式を創り、場の演算子化にかかわらず、ヨルダンの生成消滅演算子も使わない。遠い、親戚のようなもので、遺伝子の一部が一致するにすぎない。

ハイゼンベルグ・パウリの場の量子論により、量子力学に始まる場や粒子の作用素化・量子力学の基本定式化は終わる。しかし、場の量子論の存在する空間や、変換演算子は知られていなかった。問題を解くのは朝永である。

くどくなるが、相対論は、ローレンツが変換式を出し、ポアンカレーが拡張した。アインシュタインが相対性原理という原理に基づく空間を生み出し、変換式を完成させた。(ミンコフスキーはアインシュタインの空間を具現化・幾何学化した)。だれも、相対論の創始者をローレンツとは言わない。基本的に、ハイゼンベルグ・パウリにより場の量子論は形成された。

場や粒子の演算子化は、相対論に並ぶ2大原理で、この上に繰り込みやゲージ原理が成り立つ。(ただ、ゲージ原理や繰り込みは、場の量子論に限定されない。)

[編集] 数学的手法

量子化・相対論化

量子力学を場の量子論に拡張するために、場における粒子の生成/消滅を扱う生成消滅演算子を導入することで、場の量子化を行うことができる。また、場の波動関数を場の量子化によってディラック方程式に還元することで、相対論的不変形式へと相対論化できる。

ゲージ・繰り込み

素粒子間の力の相互作用はゲージ理論によって記述され、発散の問題は繰り込みで回避される。この両者により、場の量子論は確立した。ゲージは場の量子論の適用原理であり、繰り込みは場の量子論の破綻を救う構成原理である。

[編集] 成立史

[編集] 第一期

場の量子論は、量子力学が誕生した1925年から1929年に、ポール・ディラックウラジミール・フォック生成消滅演算子)、ヴェルナー・ハイゼンベルク場の第二量子化)らが原型を作った。なお、同時期にロンドンらが位相ゲージ場を創る。1921年から1926に電磁力学と重力を統一するカルツァ=クライン理論がでる。これは細く巻き込まれた余剰次元の最初の理論となる。

[編集] 第二期

1943年-1949年に、朝永振一郎リチャード・ファインマンおよびジュリアン・シュウィンガーらによる、超多時間論、経路積分、繰り込みで場の量子論は完成された。(ダイソンは、3理論の同等性を証明)

朝永振一郎による、場での変換演算子により、相互作用のみを取り出す朝永表示(相互作用表示)が可能になり、可換ゲージ繰り込みが形成される。また、ファインマン経路積分もこれらを可能にした。場の量子論は、量子電磁力学、繰り込み、ゲージ理論と重なり、ワインバーグサラム理論・量子色力学、すなわち標準模型へと発展し、これらの基礎理論となっている。(超弦の基礎でもある。)

[編集] 超多時間論前史

1938年ディラックは、多数の粒子に時間を割り振る多時間理論を発表した。朝永の、無限個ある場の各点に時間を割り振り、相対論的共変性を実現する超多時間理論はこの5年後だった。

[編集] 場の量子論及び関連理論の歴史

[編集] 背景

ジェームズ・クラーク・マクスウェル古典電磁気学では、粒子(荷電粒子)が場(電磁場)を生み、場が粒子に力を与える。これは、場の理論の最初の定式化である。

[編集] 量子力学

1925年、ヴェルナー・ハイゼンベルク量子力学を建設する。この理論は、電子の位置が波のように広がっている(波動関数)ことを意味する確率解釈を与えた。すなわち、物質粒子は物質場とみなすことができる。これは、粒子の量子力学化・波動性の理論化である。力を伝える場の問題が残っていた。

[編集] 原型

1927年から1928年、ポール・ディラックによる古典電磁気学の量子化、オスカル・クラインパスクアル・ヨルダンユージン・ウィグナーおよびウラジミール・フォックによる生成消滅演算子が形成され、場の量子論の原型をヴェルナー・ハイゼンベルクヴォルフガング・パウリが創った。これは後に、ディラック方程式と同等であることが判明する。

ハイゼンベルグは、場において粒子が力を伝えるという見解を打ち出した。これが湯川の強い力(中間子)、フェルミの弱い力(電子)の元となる。しかし、湯川の強い力にハイゼンベルグ・ボーアは否定的であり、確立されていなかった。

[編集] 相対論的共変・繰り込み

ハイゼンベルクおよびパウリらが作った原型は相対論を満たすが、相対論的共変形式を満たさなかった。1943年、朝永振一郎超多時間理論でこれを解決する。これは1932年にポール・ディラックが提唱した多時間理論(相互作用をしている電子一つ一つに独立な時間を与える)の電子の生成・消滅を含まないという欠点改めたものである。また、リチャード・ファインマン経路積分を完成し、またジュリアン・シュウィンガーもこの問題を独立して解決する。後に経路積分の方が一般的に使われるようになる。(朝永は、ファインマンおよびシュウィンガーに、相対論的共変・繰り込みで2-6年先んじている。)

超多時間理論で、場の量子論の変換演算子と式の形式が確立し、場の量子論中で、見通しよく自由に計算できるようになった。この結果、それまで不可能だった、相互作用だけを取り出し、相対論的に共変なシュレディンガー方程式を立てることが可能になった。これにより、繰り込みや相対論的に共変な可換ゲージ理論が創られる。

[編集] 意義

ハイゼンベルグは対応原理を元に量子力学を1925年形成し、その後数年で場の量子論が形成された。また、ロンドンが位相ゲージを1927年形成している。しかし、場の量子論は朝永が後に見出す演算子形式がまだ発見されず、相対論的共変形式が整備されず、量子電磁気学は発散の問題を抱え、理論として信用されていなかった。この流れで、場の量子論を越える理論が模索された。(例えば、もっと後になるが、ハイゼンベルグの非線形場、湯川の非局所場)。

この場の量子論の危機を救い、歴史を20年巻き戻したのが、朝永の超多時間論であり、繰り込みである。繰り込み後も、繰り込みへの不信からハイゼンベルグや湯川の試みはでるが、理論が驚異的な桁で成立した事、相対論的に共変であり、演算子が簡素で見通しを良くしたため、場の量子論は、基礎理論として以後の多くの理論(量子色力学QCD、ワインバーグサラム理論-標準理論)を導く基礎となる。

ゲージも、場の量子論の相対論的な共変性により足場を確立し、以後、基礎理論としての役割を確立していく。

場の量子論・繰り込み・ゲージにより理論を形成する状態は今も続き、標準理論・超弦(標準理論を取り込んだ)の基礎となっている。(超弦は、現在も批判がある。)

[編集] 意味

相対論は、ローレンツやポアンカレ(質量とエネルギーが等価を証明)が変換形式のおおよそを創り上げ、アインシュタインが相対性原理にまとめ上げた。アインシュタインは

  • 相対性空間論を確立し、
  • 変換原理を完全なものにした。

一方、場の量子論は、ヨルダンが生成消滅演算子を、デイラックが相対論的な電子論を、ハイゼンベルグパウリが場の量子論を建設する。しかし、相対論的に共変な場の量子論の空間論は知られていず、変換は困難を極めた。また、その空間での共変的な変換演算子も知られていなかった。これを朝永の超多時間論の一連の論文が解決し、その後の流れを、場の量子論を中心にするものに戻した。アインシュタインの相対性理論と比較すると、超多時間論の意味がわかる。

  • 超多時間論の確立
  • 変換原理を生み出す

[編集] ゲージ

ゲージ理論の概念は、1918年にヘルマン・ワイルが創造した。ワイルは時空点ごとに「ゲージ」(ものさし)を与え、時空点が変わっても、理論が変わらないようゲージを決める(ゲージは一種の自由度で、理論不変なようにゲージを固定する)ことを要求し、電磁場の導出を試みたが、実験と合わなかった。1927年、フリッツ・ロンドンは、長さを位相に変え、ゲージ理論の有効性を証明した。

朝永振一郎は、1943年の超多時間理論の第一報(英訳1948年)に続く1948年の第二報で可換ゲージを論じ(「量子電磁気学」-「相対論的場の量子論」の「可換ゲージ」)、第三・四報で強い力と弱い力を論ずる。新たに創った場の量子論を基に、1947-1949年、繰り込み理論を形成する。朝永のゲージ理論、第二報が出版の運びとなった1950年、一気に5つのゲージ理論がで(フィジカルレビューにはそれまでゲージはほとんどない)、基本原理との認識が広がる。

1954年、楊振寧およびロバート・ミルズが強い力・弱い力を説明する非可換ゲージ理論を打ち立てた。(ヴォルフガンク・パウリ内山龍雄、南米の研究者[誰?]も独立して同様の理論を発見している。発表が遅れたため、パウリや内山らは非可換ゲージ理論の発見者と見なされない。)内山龍雄重力場を含む形に拡張した(このため、ヤン=ミルズ=内山理論と呼ぶ人もいる)。

「「学問の系譜 アインシュタインから湯川朝永へ」 場の理論の発展と日本  九後太一郎

1918 ワイル 重力と電気力学
1921 カルツァー 5次元重力 g5μ=2αAμ U(1)不変性
1926 クライン g5μ/g55=Aμ
ロンドン  ψ⇛exp(ie/h∫A)ψ 複素場(荷電粒子の場)の位相変換
シュレディンガー(1922,26) ∂⇛∂-1e/h・Aμ 複素場(荷電粒子の場)の位相変換
1929 ワイル ゲージ不変性exp(ieλ(x))ψ
Dμ=∂-1e/h・Aμ ゲージ場の存在 極小相互作用
Fμν=∂μAν-∂νAμ 運動項
ゲージ不変性(荷電粒子の位相変換)を要求すると、ゲージ場が存在し、微分は共変微分に置き換えられ、それにより力が生じる。力学項もFμνという4次元回転の場の強さの2乗という形で決まる。
ゲージ不変性の要求により光子の存在も、最小相互作用の型も全て決まる。
1939 クライン SU(2)ゲージ理論
湯川の相互作用を含め出そうとして、高次元重力場から、SU(2)ゲージを出して見せる。(ヤンミルズ作用は出すが、最小相互作用は上手くいかない)
1953 パイス 局所アイソスピン不変性から局所相互作用が出るのでは
パウリ SU(2)ゲージ理論 パイスへの手紙
1954 ヤングミルズ SU(2)ゲージ
1956 内山  重力場を含むゲージ理論

[編集] 量子電磁力学

1946-1949年、朝永、ファインマンおよびシュウィンガーらは場の量子論の形式を使い、繰り込みにより無限大の発散の危機を回避し、場の量子論が確立する。同時に、この場の量子論を電磁相互作用に適用した量子電磁力学も完成された。量子電磁力学 (QED) は、非常に高い精度で実験と一致し、場の量子論・ゲージ(可換・非可換ゲージ)・繰り込みは、量子色力学 (QCD) およびワインバーグ=サラム理論構築の指針となり、基礎なる。

[編集] 場の相互作用

素粒子の場の相互作用は、1934年に電子を力の媒体とする弱い力のフェルミ理論、1935年に中間子を力の媒体とする強い力の湯川秀樹中間子論として定式化された。現在では、素粒子間の力の相互作用は、場の理論の一種であるゲージ理論を、場の量子論に付加することで説明される。すなわち、粒子の対生成対消滅により生じる粒子仮想粒子の物質間でのやり取りが、力の相互作用である。

[編集] 意義

湯川の強い力の理論(中間子論)は、場を担うものが粒子であることを主張した。この考えは、当時は、ハイゼンベルグやボーアのような量子力学を創った大御所から、場にともなう新しい粒子を創るなどと強い反発を受けた(日本では、仁科が湯川理論を擁護する)。

しかし、宇宙線の中に中間子が発見されると、世界の認識は、場と粒子が一対であることを認識し、状況は一気に変わる。

湯川の強い力の理論は、素粒子論の夜明けを告げるものであった。それゆえ、素粒子論の開祖ともされる。次の2点。

  • 4つの力(重力・電磁力・強い力・弱い力)のうち、強い力を初めて理論化した。さらに、フェルミの弱い力も強い力から導いた。
    強い力・弱い力は量子・素粒子の世界固有
  • 場に伴う、力を担う新粒子(中間子)を形成し、場と場の力を伝える粒子がひとつのものであることを明確に示した。
    フェルミは弱い力で、電子を力の媒介粒子としたが、電子は既知であり場と粒子が一対であることを認識させる力がなかった。

なお、湯川の強い力は、フェルミの弱い力をその内部に含む形式を備え、当時は弱い力と強い力を説明する最も基礎的な理論と認識された。

[編集] クォーク模型

1964年、マレー・ゲルマンユヴァル・ネーマンおよびジョージ・ツワイクにより独立にクォーク模型が見出された。この原型は坂田昌一による坂田模型と、そのフレーバー変換を群論形式で記述する方法を確立した大貫義郎らによるIOO理論SU(3)である。(これはクォーク模型の原型における対称性を群論で記述した最初の事例であり、素粒子論の核で群論を使う以後の流れを決定づける。

量子力学での群論の最初は、ヘルマン・ワイル1927年である。原子スペクトルの対称性を記述[2]。また、1939年、ユージン・ウィグナー原子核をSU(4) で記述する[3]。しかし素粒子論の核での使用でなかった。これらは、素粒子の基本構造に迫るものではなく、素粒子研究で注目を浴びなかった。

IOO対称性は、素粒子の基本構造を始めて確立した。その後、クウォークの基礎となる8道説や1/3電荷は、日本でも提案されたが、本格的に取り組まれないまま、ゲルマンなどのクォーク模型がでる。クォークに対応するグルーオン(力を伝える粒子)が担う場は、ゲージ理論によってゲージ場として記述される。

[編集] 自発的対称性の破れ

ゲージ理論では、ゲージ対称性を満たす場合、必然的に粒子の質量がゼロになる。しかし、光子を除く現実の粒子は質量を持ち、質量が力の及ぶ範囲を決める(注)。1964年、これを救ったのが、ピーター・ヒッグスヒッグス機構で、南部陽一郎自発的対称性の破れを使い解決した。また、自発的対称性の破れは相転移を扱い、電弱統一理論で、高温状態で電磁力と弱い力が区別できなくなることを示す。

(注)なお、現在では、質量が力の範囲を決めると言う湯川型の単純な話ではなく、距離により質量が変化するという、弦と漸近自由性の二重構造として、直観的にはイメージされている。

[編集] 意義

朝永の超多時間と繰り込みを基にした場の量子論と小川-大貫らの対称性-群論SU(3)が素粒子の流れを決定付けた原理であった。

ここに、南部が現象論的な原理といえる自発的対称性を持ち込む。これが素粒子論に大きな役割を果たし、新たな流れを生む。ヒッグス機構での質量であり、電弱理論の統一である。

[編集] 対称性の破れの歴史

自発的対称性の破れ自体は、ハイゼンベルグが固体の相転移について導入した(1927年、強磁性体モデル)。このように固体物理学の分野から相転移は産まれた。素粒子論本体への対称性の自発的破れのきっかけは、ジョン・バーディーン、レオン・クーパー、ジョン・ロバート・シュリーファーらの1957年の超伝導BCS理論の確立である。しかし、彼らは相転移に気づいていなかった。1960年に、南部は相転移を、超伝導理論に隠れたメカニズムとして見出し、BCS理論の自発的対称性の破れを素粒子論に導き入れる[4][5]。)

これを基に、ヒッグス機構やワインバーグサラム理論など、素粒子論の難題のいくつかが解決された。

[編集] 量子色力学・ワインバーグサラム理論

量子電磁力学 (QED) は可換ゲージ理論である。一方、量子色力学 (OCD) およびワインバーグ=サラム理論は非可換ゲージ理論である。量子色力学は3つの場のからみ合いであり、ゲージも3×3の行列となり、QEDの可換ゲージから、非可換ゲージにかわる。

弱い力と電磁相互作用は、1967年、場の量子論の枠組みで非可換ゲージ形式のワインバーグ=サラム理論により統一される。

強い力は、クォーク模型の完成後、1971年にヘーラルト・トホーフトの非可換ゲージの繰り込み可能性の証明を経て、1973年に繰り込み群を使ったデイビッド・グロスらによって場の量子論の枠組みで非可換ゲージ形式の量子色力学 (QCD) が完成する。

[編集] 場の量子化

[編集] 量子力学と生成消滅演算子

量子力学での生成消滅演算子について。

(電磁場はA(x,t)すなわち、空間と時間を引数とする場の量として表される。)
前提
ハミルトニアン
粒子の運動は粒子エネルギーを表すハミルトニアン H=T+Vをつかい、例えばシュレディンガー方程式で表される。
H=T+V    H;ハミルトニアン(粒子のエネルギー)、T;運動エネルギー、V;ポテンシャルエネルギー
調和振動子
ハミルトニアンは、バネに例えられる調和振動子の和として表せる。(調和振動子だけでなくいろいろな形式がある。)
生成消滅演算子  調和振動子の生成消滅演算子の項を参照
系のエネルギーH=T+Vを、虚数を使い因数分解すると生成消滅演算子が出来る。(いろいろな作り方があり、いろいろな形式がある。)
生成消滅演算子は、粒子を真空から励起させたり、消滅させたりする演算子となる。
これらを使い、場の形式になった粒子を再び場の形式に落としこめる。
量子力学
物質を場(状態-確率場)で表す。
物質粒子(電子)のハミルトニアンをψ(x,t)という場の量で記述する。この場の量は調和振動子であらわせる。
ψが従う調和振動子は、空間の微細分割個所に、バネが存在し、振動が互いに影響を及ぼしあうイメージでよい。
以上で、粒子を場で表した。
場で表した物質を粒子に戻す。
場の量ψから「粒子」の性質を導き出せる。
生成消滅演算子に変換し、状態(確率場)に作用させると、粒子がn個、励起される。これで、粒子の持つ個数の性質が出てくる。
これを第二量子化という。「励起状態」は、複数の電子の運動を表す。粒子を場にし、場を粒子に戻すという意味。場の量子化は、次。

[編集] 量子力学と場の量子論の前提 オイラーラグランジュ方程式と正準座標系

ニュートン力学は古典だが、量子力学には直接繋がらない。一度、オイラー・ラグランジュ・ハミルトンなどの抽象化を経て、量子力学につながっている。その説明

ポテンシャル面上の粒子は、最小作用をとる経路を運動する。この運動は、変分という技法により記述される。微小変動を座標と運動速度(運動量)に与え、その最小値が経路になると言うものである。
前提
最小作用変分法作用オイラー・ラグランジュ方程式
オイラーラグランジュ方程式は、座標と運動量座標(正準座標系)で記述される。奇妙だが、数学的には自然である。数学的には無駄がない・美しいということは、自然がそのような構造を持つということを示す。
実際、量子力学では、この正準座標系においてラグランジュ方程式を、作用素と状態の2つに書き換えることで、新しい方程式を得ることが出来た。
量子力学を導くもうひとつの方程式、ハミルトン方程式は、ラグランジュ方程式から導かれるが、ラグランジュ方程式とは違い、変分原理を基礎にしない。

[編集] 場の量子論

場はエネルギーであり、粒子でのエネルギーを表すハミルトニアンで記述される。場に対し、量子力学と同様の方法で、場を作用素とみなし、量子化を実行し、生成消滅演算子を作用させると粒子性がでてくる。

前提
作用素
関数を関数に移す演算。難しいようだが、作用素に記載されているように、微分D(fg)=D(f)g+fD(g)はそのひとつ。古典論から量子力学への飛躍は、例えば微分を作用素とみなす事により行われた。(ド・ブロイの物質場⇛シュレデインガー方程式)
本来、量子力学の前提として示すべきだが、場の量子論の第一の特徴なので、ここに置いた。
場の量子化
量子力学で実行したのと同じように、場のハミルトニアン(調和振動子など)を演算子とみなし、生成消滅演算子で表せばよい。
これにより、粒子と場を同等に扱う事ができる。ただ、粒子とは例えば電子であり、場とは例えば光量子で、異なる存在である。

[編集] 定義

量子力学では運動量などの物理量を演算子で置き換える量子化を行う。同様に電磁気学の電磁場を演算子に置き換えることを場の量子化という。つまり場の量子化で量子化されるのは「波動関数」ではなく「物理量としての場」である。(場の量子論での定義)

したがって、多体量子系を生成・消滅演算子で記述する理論である第二量子化とは異なる。ただ、歴史的な事情で場の量子化を第二量子化と呼ぶこともある。(量子力学と生成消滅演算子での定義)

[編集] 世界観の革新  場の量子論の特徴

物質粒子も電磁場も、空間の到る所に存在する「場」で表される。

真空には、Aやψのような場の量が存在し、場の量は僅かに振動している。完全な「虚空」は存在しない。
場の量子論は、物質と力の二元論を否定し、物質粒子も電磁場も同じ形式の場の量で表す。さらに場は粒子の形をし、粒子は場の形をし、粒子は場の力を伝える媒体となる。(ただし、粒子と場の力を伝える粒子は異なる。)
場の量子論は、粒子を場+粒子とするが、力を伝える場(電磁場)も同様に場+粒子とし、場も粒子も同一形式で扱う基礎理論である。

[編集] 場の構造とゲージ理論

前提
テンソル
電磁場は位置座標と時間座標の4つの次元での行列上で表される。しかし、一定の制約を受け、テンソルの形を取る。(行列がで書いたものが即ちテンソルである、という訳ではない)。たとえば、固体をx方向から押すと、x,y,z方向と、3つの回転を引き起こす。自由度は6であり、3×3行列の自由度9より少ない。テンソルについては、回り道だが、双線形性からの説明が明快である。
電磁場は、単なる6成分の場ではなくテンソルである。固体にみられるように、変化を示す量である。しかし、より深い空間構造があることが、示されている。その一つが、ゲージ理論がしめす空間である。
電磁場は2つの方程式で示される。これを、ゲージ理論で簡素に表現できる。ゲージ原理・理論は式の構造を限定する様式であり、多様な可能性を限定している。それは、テンソル構造の深部にゲージ構造が隠れているということで、実験でも確認されている。古典力学での正準座標が、量子力学でその姿を表したように。
多重線形性、双線形性は、座標系によらない。テンソルとは座標のとり方によらずに成り立つ構造を示す。テンソル空間で成立した式の右辺を左辺に移項すると、恒等的に0になり、座標の変更にかかわらず、この式は恒等的に成り立つ。
場の理論(内部空間)では、対称性と保存則を扱い、テンソルもこの構造を反映する。例えば電磁場では反対称テンソル(aij=-ajiと行列の添字を入れ替えた値が互いに負の関係)となり、テンソルは行列のもつ自由度より限定される。
しかし、テンソルは普通の空間座標として存在しているように見える。これは、テンソルが座標空間に反映(写像)されているためであるとも、逆に、座標上にテンソルが張り付いている(場=内部空間)とも言える。
もともと、物理学は座標系の変換について不変な構造を取るように形成されている。座標系によらないのが物理学であり、方程式はそのようになっている。
場と基底の掛け合わせとしての新たな基底
固体力学でのテンソルのように、空間・力の歪み(力の空間-内部空間)・・すなわち、空間の基底をテンソルは表すと言える。一方向に力を加えると、横にも力が発生する。このため、基底を、座標空間基底4×座標空間基底4=新たな基底4×4とするのが自然である。基底は空間構造を示し、空間構造に制約され、空間を生成する数学的道具である。曲がった空間・一般相対性理論では、接空間(接線の空間バージョン)がテンソルで表され、直線からの乖離を示す共変微分・例レビチビタ接続となる。内部空間での類似の理論が、ゲージ理論にもある。
特殊相対論に従う変換であれば、特殊相対論で記述される不定計量(-1.1.1.1)でのテンソル基からできた恒等式(「4×4テンソル」と要素の「式」)は、新たな座標においても成り立つ。ゲージ理論では、この簡素さが際立つ。
ゲージ理論
マクスウェルは、今で言うゲージ構造を理論に使っていた。ベクトルポテンシャルとスカラーポテンシャルである。その後、不要としてヘルツにより消去されヘルツ形式が電磁力学の式になっている。マクスウェルは、歯車の組み立てから式を生み出している。歯車とは回転であり、ゲージ理論も場の回転の理論といえる。
ゲージ構造は場の構造で、数学的には回転を示し、ベクトル定理に基づく自由度が存在する。自由度は非常に重要だが2次効果で、場の構造を見失ってはならない。ゲージ変換は場の要素の回転で、ゲージ変換に対し理論が不変になる要請がゲージ原理、それを満たす理論がゲージ理論である。場は微分を含み、理論に影を落とす。
量子色力学QCD(非可換)は3つの場のねじれ込みを示し、3×3行列の性質から非可換となる。数学は難しいが、可換ゲージ(電磁力学QED)からの概念的な飛躍はない。

[編集] 問題点と今後の展望

[編集] 第一原理と現象論の区別

理論の発展過程においては、第一原理現象論の区別が曖昧となる場合があるが、場の量子論は現時点において、第一原理から構成される理論としては最も進んだ理論であると見なされている。

  • 原理は、相対論・場の量子論(量子力学)を構成する諸原理であり、それらはゲージ原理や相対性原理など、対称性を元にした言葉で記述されている。
  • 場の量子論として導かれうる様々な理論のうち、自然の法則をよく記述すると認められているのは、標準模型に含まれるQED、QCD、ワインバーグ・サラム理論である。超弦理論は現在のところ、現象論の域を出ていない。
  • 現象論は、超弦・相転移論・固体物理・湯川の非局所場(原理と現象の混合)など、形態の構造から理論を限定していく方法論である。形態をつくり、形態(弦の長さなど)のパラメータを調節する事によって理論を導くのは、現象論である。

[編集] 原理とは何か

例えば、相対性理論は間違っているという議論は、現在においては広く受け入れられるものではない。同様に、相対性を極限で外れる議論が10個近く[要出典]あるが、いずれも主流とはないっていない。それらは、原理を現象論で修正しようとする試みである。相対性原理より高次な原理は、現在のところ見出されていない。

相対性理論を量子化しても、相対性原理が低次理論にはならない。相対論的量子論は相対性原理と量子論の両方を満足する理論であり、原理ではない。一方で場の量子論(量子力学を含む)は、場を演算子化し、生成消滅演算子で粒子性を与えるという単一のアプローチから、現象を記述する一式の理論を構成している。場の量子論において重力場を扱うことは、現在可能にはなっていないが、このように第一原理からブラックホールのエントロピー問題に回答できるような重力の量子的描像を構築する方法もまた、また見出されてはいない。

場の量子論の高次原理は存在しているとして、研究は進められているところである。

[編集] 超弦論とは何か

超弦理論とは弦の長さ、巻き込みの現象論である。カルツァークライン理論で、巻き込みによるQED(回転場)や、重力場が説明された。しかし、KK理論や超弦は、現象論でしかなく、巻き込み(形態)で現象を説明する。巻き込みが起こるメカニズムが欠ける理論である。現象論とは、メカニズムを別の理論に依存し、現象を形態の限定で説明する。

[編集] 統一理論での問題点

基本的な力である重力の完全な量子力学理論は、現状のところ存在しない。しかし、提案されている量子重力理論の多くは重力子が重力を媒介する粒子であると仮定している。


[編集] 理論とラグランジアンの例

以下では簡単な例について、理論の出発点となるラグランジアン(厳密にはラグランジアン密度であるが、どちらかは文脈上ほぼ明らかなので、曖昧に使われることが多い)を挙げる。ラグランジアンは基本的には、運動項とポテンシャル項の差として書かれる。

\mathcal{L}(\phi(x),\partial\phi(x))
 =(\text{Kinetic term}) -(\text{Potential term})

局所性や対称性などの幾つかの要請を課すことによってラグランジアンの形は制限される。

ラグランジアンLとラグランジアン密度\mathcal{L}の関係は3次元空間(+時間1次元)の場合、

L=\int \mathcal{L} d^3x

である。

[編集] シュレディンガー場のラグランジアン

非相対論的理論(物性理論等)で用いられるシュレディンガー場(ド・ブロイ場) ψ(x) のラグランジアンは

\mathcal{L}(\psi,\nabla\psi, \frac{\partial \psi}{\partial t})
 =i \hbar \psi^{\dagger} \frac{\partial \psi}{\partial t} - \frac{\hbar^2}{2m}\nabla\psi^{\dagger}\cdot \nabla\psi - V(x, t)\psi^{\dagger}\psi

の形となる。

[編集] スカラー場のラグランジアン

スカラー場 φ(x) のラグランジアンは

\mathcal{L}(\phi,\partial\phi)
 =\frac{1}{2}\partial_\mu\phi\partial^\mu\phi -V(\phi)

の形をとなる。ここで計量は g = diag(+,-,-,-) であり、従って、

\frac{1}{2}\partial_\mu\phi\partial^\mu\phi
 = \frac{1}{2}\dot{\phi}^2-\frac{1}{2}(\nabla\phi)^2

である。素粒子分野では多くの場合この計量が使われる(まれに g = diag(-,+,+,+) を使う場合は \mathcal{L}_\mathrm{Kin}=-\tfrac{1}{2}\partial_\mu\phi\partial^\mu\phi となる。)。

ポテンシャル項 V(φ) を φ の冪級数で展開すれば

V(\phi)=\frac{m^2}{2}\phi^2+\frac{g_3}{3!}\phi^3
 +\frac{g_4}{4!}\phi^4+\ldots

となる(1次の項は φ の再定義により常に消去できる。0次の項は論理を進める上で関与しない。)。2次の係数 m はスカラー場 φ の質量と解釈でき、この項は質量項(mass term)と呼ばれる。ポテンシャル V が質量項しか持たないとき、φ を自由場(自由スカラー場)と呼ぶ。

\mathcal{L}_\mathrm{free}
 =\frac{1}{2}\partial_\mu\phi\partial^\mu\phi
 -\frac{m^2}{2}\phi^2

ポテンシャル V の3次以降は相互作用項(interaction term)と呼ばれる。 例えば、相互作用項に \tfrac{g_3}{3!}\phi^3 が含まれていれば、φ 3つが結合定数 g3 で相互作用することを表し、2つの φ が衝突して1つの φ となったり、逆に1つの φ が2つの φ になったりし得る、と言う解釈ができる。

くりこみ可能性を課せば、4次元時空では φ の4次の項までしか現れない。更に、φ→-φの対称性を課せば、奇数次の項は現れず、結局ラグランジアンは

\mathcal{L}
 =\frac{1}{2}\partial_\mu\phi\partial^\mu\phi
 -\frac{m^2}{2}\phi
 -\frac{\lambda}{4!}\phi^4

となる。相互作用項は φ の4次の項だけとなり、これは φ4 (ファイフォー)理論と呼ばれる。

[編集] スピノル場のラグランジアン

ワイル場 ψ(x) の運動項は

\mathcal{L}_\mathrm{Kin}
 =i\overline{\psi}\bar{\sigma}^\mu\partial_\mu\psi

(σ は4次元のパウリ行列)である。くりこみ可能性を課せば、ψ の2次の項までしか現れず、ポテンシャル項は

V(ψ) = mMψψ + h.c.

となる。この mMマヨラナ質量と呼ばれる。

もう1つのワイル場 χ が存在し、ディラック場

\psi_D=
\begin{pmatrix}
\psi \\ \overline{\chi} \\
\end{pmatrix}

となる場合は、運動項は

i\overline{\psi_D}\gamma^\mu\partial_\mu\psi_D
 =i\overline{\psi}\bar{\sigma}^\mu\partial_\mu\psi
 +i\chi\sigma^\mu\partial_\mu\overline{\chi}

となり、ポテンシャル項は

m_D\overline{\psi_D}\psi_D=m_D (\chi\psi+\overline{\psi}\overline{\chi})

とすることができる。この mDディラック質量と呼ばれる。

マヨラナ質量項がある場合はフェルミオン数が保存せず、ディラック質量項の場合はフェルミオン数が保存する。単に質量と言うと多くの場合はディラック質量を指す。

スカラー場 φ とディラック場 ψ が存在する場合、くりこみ可能性を課すと、

-\mathcal{L}_\text{Yukawa}=y \overline{\psi}\psi\phi

この形の相互作用項を湯川相互作用項と呼ぶ。

[編集] 関連記事

[編集] 脚注

  1. ^ 清水明 『新版 量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために―』 サイエンス社、2004年。ISBN 4-7819-1062-9
  2. ^ Wigner Biography
  3. ^ Ann. of Math. (2) 40 (1939), 149-204
  4. ^ 南部理論と物性物理学
  5. ^ Symmetry and Symmetry Breaking
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