南部陽一郎

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南部 陽一郎
ベンジャミン・フランクリン・メダル授賞式典
(2005年、フィラデルフィア
人物情報
生誕 1921年1月18日(93歳)
日本の旗 日本 東京府東京市
居住 日本の旗 日本
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身校 東京帝国大学
学問
研究分野 物理学
研究機関 大阪市立大学
プリンストン高等研究所
シカゴ大学
大阪大学
主な業績 弦理論の提唱
自発的対称性の破れの提唱
主な受賞歴 文化勲章1978年
アメリカ国家科学賞1982年
マックス・プランク・メダル1985年
J・J・サクライ賞1994年
ウルフ賞物理学部門(1994年)
ノーベル物理学賞2008年
プロジェクト:人物伝
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ノーベル賞受賞者 ノーベル賞
受賞年:2008年
受賞部門:ノーベル物理学賞
受賞理由:自発的対称性の破れの発見

南部 陽一郎(なんぶ よういちろう、1921年1月18日 - )は、日本生まれのアメリカ人理論物理学者シカゴ大学名誉教授大阪市立大学名誉教授、立命館アジア太平洋大学アカデミック・アドバイザー。専門は素粒子理論。理学博士東京大学 1952年)。

福井県福井市出身。自宅が大阪府豊中市にあり、シカゴ在住。1970年に日本からアメリカへ帰化したため、現在の国籍はアメリカ合衆国[1]

概要[編集]

日系アメリカ人(一世)の理論物理学者である。1952年に渡米。1960年代量子色力学自発的対称性の破れの分野において先駆的な研究を行ったほか、弦理論の創始者の一人[2]としても知られ、現在の素粒子物理学の基礎をなす様々な領域に多大な貢献をなした。とくに自発的対称性の破れの発見により、2008年ノーベル物理学賞を受賞した[3]。現在シカゴ在住だが、大阪府豊中市にもある自宅に、年に3ヶ月程度は身を寄せている。

来歴[編集]

生い立ち[編集]

日本東京府東京市にて福井県出身の父親と福島県出身の母親の間に生まれた。2歳のとき、関東大震災に遭遇し、父の実家のある福井県福井市に転居した。旧制福井中学(現藤島高等学校)卒業。父の吉郎は立命館中学校の卒業生で、福井県内の高校で英語教師を務めていた。第一高等学校に補欠合格し[4]、同校3年のとき湯川秀樹の評判に刺激されて理論物理学の研究を志し、東京帝国大学に進み1943年に課程を短縮されて2年半で卒業した後、陸軍の召集を受けて宝塚市レーダー研究所に配属された[5]

戦後の研究開始から渡米まで[編集]

1945年終戦後に東京帝国大学の理学部物理学教室(物理学科)に嘱託で復帰し、同室の木庭二郎らとともに、朝永振一郎の研究グループに参加し朝永の方法を吸収しつつ、時々訪れ議論を展開した武谷三男からも影響を受けている。コペンハーゲン学派の自由な研究を持ち込んだ仁科芳雄の下に朝永はいた[6]

1950年朝永振一郎の推薦で早川幸男山口嘉夫西島和彦中野董夫とともに大阪市立大学理工学部理論物理学のグループを立ち上げた[5]。「大阪市大での3年間は年長の教授がおらず、学生が少ないため講義の負担も少なかったため、自由を満喫できた」と後に語っている[5]。ここではベーテ=サルピーター(=南部)方程式の導出、K中間子の対発生の研究などの成果を挙げた。

渡米とその後の活動[編集]

1952年に再び朝永の推薦を受け、木下東一郎とともにプリンストン高等研究所に赴任した。プリンストンでは強い相互作用の飽和性やスピン軌道力の研究を計画していたが、難航した[7]。翌年もプリンストンに籍を置きながら、春から秋にかけては湯川秀樹が残していた資金を元にカリフォルニア工科大学でγ-π productionの研究を行なっている[7]1954年にゴールドバーガーの誘いを受けてシカゴ大学の核物理研究所に着任。同研究所には小柴昌俊らもいた[7]。シカゴ大ではグリーン関数の表示法を研究したほか、ω中間子の存在を提唱している。

1970年アメリカ合衆国帰化した。2011年現在、シカゴ大学物理科学部物理学科および同学部のエンリコ・フェルミ研究所においてハリー・プラット・ジャドソン殊勲名誉教授、大阪市立大学名誉教授、大阪市立大学特別栄誉教授大阪大学大学院理学研究科招へい教授、福井市名誉市民などの称号を持つ。大阪大学には研究室を持ち、年に幾度も来日して招へい教授として研究を続けている。自宅は、現在は米国イリノイ州シカゴ大阪府豊中市

研究[編集]

1960年代クォークの持つ自由度としてのカラーチャージの導入(同時期にグリーンバーグ[8]、韓茂栄、南部陽一郎[9]、宮本米二、堀尚一が独立して提唱)、自発的対称性の破れなど、素粒子の強い相互作用において先駆的な研究を行ったほか、弦理論の創始者の一人としても知られる。

1970年ハドロンの性質を記述する模型として弦理論(ひも理論)の提案をおこなった(同時期にレオナルド・サスキンド、ホルガー・ニールセンが独立に提唱)。しかし弦理論は、ハドロンの理論としては問題点があることが明らかになった。一方でゲージ理論としての量子色力学が確立していった時期でもあり、多くの研究者は弦理論から離れていった。弦理論はその後、ジョン・シュワルツらにより、ハドロンではなく重力を含む統一理論として研究が続けられた(超弦理論[10]

略歴[編集]

学術賞歴[編集]

栄典[編集]

著作[編集]

一般向け[編集]

H. デビッド・ポリツァーは2004年度ノーベル物理学賞受賞。対談の主催者は松岡正剛
  • 『クオークの閉じ込め』南部陽一郎(藤井昭彦訳)サイエンス
"The Confinement of Quarks"Scientific American 235-5,November 1976
クオークが閉じ込められるのは、位数3のパラ・フェルミ統計に従うからであるとする。
  • 『南部陽一郎が語る 日本物理学の青春時代』日経サイエンス 1999年3月号

教科書[編集]

  • 『大学院素粒子物理(1)―素粒子の基本的性質』 中村誠太郎 編、南部陽一郎ほか著、講談社、1997年 ISBN 4-06-153224-3

主な論文[編集]

Y. Nambu and G. Jona-Lasinio, "Dynamical model of elementary particles based on an analogy with superconductivity. I," Phys. Rev. 122, 345-358 (1961) doi:10.1103/PhysRev.122.345
Y. Nambu and G. Jona-Lasinio, "Dynamical model of elementary particles based on an analogy with superconductivity. II," Phys. Rev. 124, 246-254 (1961) doi:10.1103/PhysRev.124.246
  • オンサンガーの2次元Isingモデルの別解法
A Note on the Eigenvalue Problem in Crystal Stastics, Progress of Theoretical Physics, 5:1 (1950)
  • ベーテ・サルピーター方程式
Force Potentials in Quantum Field Theory, Progress of Theoretical Physics, 5:614 (1950)
  • 学位論文。ラグランジュ形式とハミルトニアン形式について論じている。
On Lagrangian and Hamiltonian Formalism, Progress of Theoretical Physics, 7:131 (1952)
  • オメガ (ω) 中間子の存在を提唱
Possible Existence of a Heavy Neutral Meson, Physical Review, 106:1366 (1957)
  • 一般グリーン関数の研究
Parametric Representation of General Green's Function, Nuovo Cimento Ser. X, 6:1064 (1957)
  • カラー量子数の導入(量子光力学の提唱)
Y. Nambu and M. Y. Han, "A Three-Triplet Model with Double SU(3) Symmetry," Physical Review 139, B1006 (1965)
  • ひも理論の出発点になった1970年の論文
Quark Model and the Factorization of the Veneziano Amplitude (talk presented at International Conference on Symmmetries and Quark Models, Wayne University, 1969) Gordon and Breach (1970)

論文集[編集]

  • "Broken Symmetry: Selected Papers of Y. Nambu" World Scientific Series in 20th Century Physics, Vol 13 (1995) ISBN 981-02-2356-0

エピソード[編集]

参考資料[編集]

南部の経歴・人柄に関するもの[編集]

1977年、日本物理学会の学会誌に寄稿された、南部の自伝的原稿。
2002年、日本物理学会の学会誌に寄稿された、南部の自伝的原稿。上の続き。
湯川朝永生誕百周年記念シンポジウムに寄稿された南部の原稿。素粒子物理学の発展の歴史を辿りながら、大きい軌跡を残した二人の物理学者、湯川・朝永両人との思い出について語っている。
現代化学 2009年3月号 西島肇(東京大学名誉教授)
上記の翻訳:南部陽一郎 素粒子物理学の予言者 世界の科学者:日経サイエンス 1995年4月号 pp.8-10

脚注[編集]

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  1. ^ 氏名表記、氏名の読み、生年月日、称号(シカゴ大学名誉教授、大阪市立大学名誉教授)、専門分野、博士号の種別・取得大学・取得年、出身地、国籍は、日外アソシエーツ株式会社編『新訂 現代日本人名録 2002 3. そーひれ』日外アソシエーツ株式会社、2002年1月28日、1334頁。
  2. ^ 同時期に提唱した人物として、レオナルド・サスキンド、ホルガー・ニールセンが挙げられる。
  3. ^ 日本は二重国籍を原則として認めておらず現在は日本国籍を喪失しているが、受賞対象の研究業績は1970年にアメリカに帰化する前のものであることから、日本の文部科学省は統計上はアメリカ人に算入しつつも、日本人受賞者としてその業績を紹介している(毎日新聞2008年10月15日)。
  4. ^ 「福井が育てたノーベル賞学者南部陽一郎」(3)東京での青春時代 福井新聞2008年11月15日
  5. ^ a b c 日本物理學會誌 57(1)、P.2
  6. ^ 素粒子論の発展 南部陽一郎
  7. ^ a b c 日本物理學會誌 57(1)、P.3
  8. ^ O. W. Greenberg “Spin and Unitary-Spin Independence in a Paraquark Model of Baryons and Mesons” Physical Review Letters 13 (1964) 598-602
  9. ^ M.Y. Han, Y. Nambu (1965). “Three-Triplet Model with Double SU(3) Symmetry”. Physical Review 139: B1006. doi:10.1103/PhysRev.139.B1006. 
  10. ^ 夏梅誠『超ひも理論への招待』日経BP社
  11. ^ 福井新聞2008年10月9日付特集記事
  12. ^ The President's National Medal of Science: Recipient Details:Yoichiro Nambu 全米科学財団 2008年10月11日 閲覧(英語)
  13. ^ Max-Planck-Medaille ドイツ物理学会 2008年10月11日 閲覧(ドイツ語)
  14. ^ Dirac Medallists 1986 国際理論物理学センター 2008年10月11日 閲覧(英語)
  15. ^ 1994 J. J. Sakurai Prize for Theoretical Particle Physics Recipient:Yoichiro Nambu アメリカ物理学会 2008年10月11日 閲覧(英語)
  16. ^ THE 1994/5 Wolf Foundation Prize In Physics ウルフ財団 2008年10月11日 閲覧(英語)
  17. ^ Franklin Laureate Database:Yoichiro Nambu, Sc.D. フランクリン協会 2008年10月11日 閲覧(英語)
  18. ^ The Nobel Prize in Physics 2008 ノーベル財団 2008年10月7日 閲覧(英語)
  19. ^ 29歳で教授、87歳なお最前線 ノーベル賞南部氏 Asahi.com 2008年10月7日 閲覧(日本語)
  20. ^ 福井市名誉市民・市民栄誉賞 福井市 2008年10月11日 閲覧(日本語)
  21. ^ 日経サイエンス1995年4月号p91
  22. ^ ハイゼンベルグによる場の理論の論文が1年がかりで海軍の潜水艦により運ばれ、それを元にした導波管の研究が機密論文になっていた。
  23. ^ 日経サイエンス1995年4月号p91
  24. ^ 「南部陽一郎 私の理論を理解できなかったアインシュタイン」月刊現代最終号(2009年1月)p55
  25. ^ 「南部陽一郎 私の理論を理解できなかったアインシュタイン」月刊現代最終号(2009年1月)p58

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

サイト[編集]

ビデオ[編集]